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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

パパママも一緒に楽しめる! 「大人ユニーク」な写真絵本

子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介! 
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。

発想やアイディアがユニークな見立て絵本から、科学絵本まで! 大人心を刺激する写真絵本

以前、「“Eテレ”ファン必見! 大人の知的好奇心を刺激する写真絵本」というタイトルで写真絵本を特集いたしましたが、今回は、その第二弾でございます。

今回は、パパもママも楽しめるちょっと変わった写真絵本をご紹介したいと存じます(ひょっとしたらパパママの方がハマってしまうかもでございます)。

まずは、6月に出版されたミニチュア写真家の田中達也さまの絵本『くみたて』(福音館書店)でございます。

見慣れたものが 別のものに見えてくる!

くみたて

分解された状態の日用品。それをミニチュアの作業員たちが、せっせと組み立てます。パーツの状態だと何か分からなかったけれど、完成するにつれて、それが何なのか分かってきます。完成した日用品は、ミニチュア世界の住人たちにどんなふうに使われるのでしょうか。「組み立て」と「見立て」で繰り広げられる、身近なものが別のものに見えてくる驚きと面白さにあふれた写真絵本です。海外でも大人気のミニチュア写真家・見立て作家 田中達也による初めての絵本。

田中達也さまは、ジオラマ用の小さな人形と身近な日用品や食品をモチーフに、独特な"見立て"の世界を表現するミニチュア写真家。

メディアでもしばしば取り上げられてご存知の方も多いかと存じます。先日も「徹子の部屋」(テレ朝系)にご出演、徹子さまもその作品に魅了されておりました。

ブラシを稲に見立てて田園風景を再現したり、ラムネアイスを海に見立てたり、2011年から身の回りの日用品などを別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を、自身のSNSで日めくりカレンダーのように毎日投稿。これが話題となってメディアで続々取り上げられるようになり、現在のInstagramのフォロワーは360万人超(2022年7月現在)でございます。ちなみに、この11年間、Instagramは休むことなく毎日投稿を続けておられます。Instagramのフォロワーの7割はなんと海外、海外からの人気も高く展覧会には国内外問わず大勢のファンが詰めかけております。私もフォロワーの一人でございますが、そのユニークな“見立て”、発想がとにかくゴイスーなのでございます。是非、ネット検索して見ていただければと存じます。

 

そんな田中さまが絵本にチャレンジするということで、私も興味津々でございました。田中さまご自身も子どもの頃、絵本を読んでおられ、今はお子様と一緒に読んでいるそうで、いつかは絵本を作りたいと思われていたそうです。

で、いったいどんな作品になったのか…。最初は、作品集のような絵本になるのかなぁと想像しておりましたが、見事に裏切られました。日用品をジオラマ(ミニチュア)の作業員が組み立てていく物語になっております。

 

ネタバレになりますが、最後にこの絵本自体も登場するなど、とにかくユニークな発想を存分に楽しめる絵本でございます。この絵本を見て「自分も作ってみたい!」と思うお子様、パパママも多いのではないかと。

 

そしてなんと!はやくも2作目が…。『おすしが ふくを かいにきた』(白泉社)が、10月に発売予定とのこと。表紙を見るだけで、いったいどんな内容なのかゴイスーに気になっております。

そして、二冊目はこちら。こちらも“見立て”、発想がゴイスーにユニークな写真絵本でございます。

『じゃない!』が進化して、再登場!

やっぱり じゃない!

今回は、食べ物『じゃない!』ものも!
電球…じゃなくて、たまご! 宝石…じゃなくて、くだもの!
新たな『じゃない!』ワールドが楽しめます。
前作同様、ものの見方を変えてみること、想像することの大切さを伝えるとともに、種別は超えられる、世界は自らの手で変えることができる、という多様性や無限の可能性も訴える作品となっています。

昨年11月に出版されたボディーペイントアーティストのチョーヒカルさまの『やっぱり じゃない!』(フレーベル館)でございます。

こちらは、2019年8月に出版された『じゃない!』の第二弾でございます。『じゃない!』は、キュウリじゃなくてバナナ、ミカンじゃなくてトマトなど、〇〇じゃなくて〇〇というコンセプトのかつてない斬新な写真絵本でございます。CG・合成写真にしか見えませんが、本物のバナナ(の皮)にヒカルさまがキュウリの絵をペイントされております。この『じゃない!』は、全国学校図書館協議会選定図書に選ばれ、第1回親子で読んでほしい絵本大賞入賞など数々の賞を受賞しております。チョウさまは、この『じゃない!』の出版のタイミングで海外留学され、帰国後出されたのが『やっぱり じゃない!』でございます。第二弾ということで進化しております。今回は、食べ物ではないものも登場しております。例えば、電球じゃなくて、たまごだったり、宝石じゃなくてくだものだったりいたします。前回とはまた一味違った世界観が楽しめる写真絵本になっております。

ちなみに、新刊絵本『なにになれちゃう?』も出版されました。こちらは、本来のスタイルに近い、体にペインティングされている写真絵本でございます。瑞々しい桃じゃなくてヒジだったり、動物のゾウじゃなくてヒザだったり、でございます。

三冊目は、数々の写真絵本を手がける写真家の小川忠博さまが2020年2月に出版された写真絵本『りんごだんだん』でございます。

だれも見たことのない、変わりゆくりんごの姿を追った346日の写真観察絵本

りんご だんだん

おいしそうな「りんご」。
食器棚に1年ほどしまっておいたら、どうなると思いますか。
その過程をそのまま写真で紹介する絵本です。
最後は、衝撃的です。
誰も見たことのない「りんご」が朽ちていく姿。
すべての生き物は、最後は土にかえるのですね。

こちらは写真絵本の定番、科学絵本でございます。ただし、内容が少々シュールでございます。りんごを1年間放置、その様子を写真で記録し、紹介されております。たまに冷蔵庫に放置されていた……なんてことはございますが、こちらのりんごは衝撃的です。大人は、まさに怖いもの見たさでお楽しみ頂ければと存じます。

最後にご紹介するは、2019年に出版された月刊絵本『こどものとも年少版』(12月号)の『パンくうこう』(福音館書店)でございます。

こどものとも年少版 パンくうこう(2019年12月1日)

作:古川 タク
出版社: 福音館書店

作者は人気絵本作家でイラストレーターの古川タクさまでございます。こちら、ここまで紹介させていただいた写真絵本とは若干異なります。厳密には写真絵本とはいえないかもでございます。古川さんの絵の中に実物のパンの写真が貼り付けられている絵本でございます。パンの写真絵本としては、『ぽんちんぱん』(福音館書店)が有名。パンを題材にした絵本は大人気でたくさん出版されていますが、こちらの『パンくうこう』はゴイスーに画期的なアイデアのパン絵本ではないかと存じます。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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