【今週の今日の一冊】2月10日は「ニットの日」。ぬくぬくあったか編み物の絵本
立春を過ぎ、暦の上では、だんだん春の気配を感じる頃とありますが、まだまだ寒い日が続きますね。寒い冬の味方といえば、ニット。セーターにマフラーにてぶくろにニット帽など、お出かけ時には頼もしい存在ですよね。
今週の2月10日は「ニットの日」。「ニ(2)ット(10)」の語呂合わせで、1988年に横浜手作りニット友の会が、編み物の普及を目指して制定し、その後1994年に日本ニット工業組合連合会が、全国的な記念日として制定したのだそうです。
今週は、ニットの中でも手作りに注目し、読んでいるだけであったかくなるような編み物の絵本をご紹介します。
2023年2月6日から2月12日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
2月6日 編みものを通して生まれる、あたたかな触れあい
月曜日は『わたしがあんであげる 』(2022年12月の新刊より)
とっても寒い日、ママはるるちゃんにセーターを編んでいます。
「ねえ、わたしにも あみものおしえてよ」
「ええ いいわ」
るるちゃんは、ママに編みものを習いました。
すると、外で寒そうにしているりすさんがいます。
るるちゃんは自分が編んだのを、りすさんのセーターにしてあげました。
「るるちゃん じょうずだなあ」
そこでるるちゃんは、寒そうな森の動物たちにも、セーターを編んであげることにしました。みんな大喜びです。ところが、くまこのセーターを編む前に、毛糸がなくなってしまいます。くまこは泣いてしまいますが……?
「わたしがあんであげる」、そんなことを言えたら素敵ですよね。くまこに手伝ってもらいながら、動物たちのセーターを編むるるちゃんの顔も、とっても嬉しそう。作者のせなけいこさんは、裁縫・手芸は苦手だったけれど、娘さんに教えてとせがまれて、マフラーなら安心して「わたしがあんであげる!」と言えるようになったのだとか。
ママとるるちゃん、るるちゃんとくまこ、そして森の動物たち。編みものを通して生まれる、あたたかな触れあいのお話。なんだか自分も、挑戦してみたくなってきますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
2月7日 ムームーさんは、旅するニット屋さん。
火曜日は『ニットやさんのムームー』
ムームーさんは、旅するニット屋さん。あみぼうと毛糸玉で、くるんちょい、くるんちょい。みんなにぴったりなニットをつくってくれます。
秋になって、ムームーさんがやってきたのは山あいの小さな町。ぴったりなぼうしが見つからなくて困っているうさぎさんや、ねぞうが悪いへびさん、首が長すぎてマフラーが巻ききれないきりんさんたちにぴったりなニットをつくってあげていると、うわさを聞きつけたわたり鳥が相談にやってきます。
「冬がくるまえに引っ越すはずが、仲間がみんな風邪をひいて南に渡れなくなってしまって」
これはちょっと大変な困りごとです。ムームーさん一人だけでは間に合いそうもありません。そこで……。
どこからかやってきて、ちょこんと座ってくるんちょい、くるんちょい。いつのまにか、ニットでみんなを暖かく包みこんでいってしまうムームーさん。なんだか、とてつもない仕事をしているようにも見えますし、どこにでもいてくれるような気もするムームーさん。そのさりげなくも丁寧な仕事ぶりは、見ているだけでも心がほっと落ち着いてくるようです。
さて、次の町へ行かなければなりません。いつかみんなも、ムームーさんに出会えるといいですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
2月8日 家族みんなを包み込む長い長いマフラー
水曜日は『ねこのニャンルー』
ニャンルーは森で暮らす猫の女の子。
ある日、編み物をするおばあちゃんを見て、自分も編み物をしてみたいと言い出します。
そこでおばあちゃんが出してきたのは、亡くなったおじいちゃんの青いセーター。
ニャンルーはこの青いセーターをほどいた毛糸で、長い長いマフラーを編むことにしました。
おじいちゃんが好きな青色のセーター。
おばあちゃんが染めた毛糸で編んだセーター。
おじいちゃんがニャンルーを抱っこするときに着ていたセーター。
たった1つのセーターにも思い出がいっぱいです。
そして、ニャンルーにはマフラーの巻き方のアイデアがいっぱいありました。
マフラーが完成して、ニャンルーが巻いてみせると、みんなが言います。
「わあ、おじいちゃんの マフラー、おしゃれ!」
おじいちゃんのセーターはマフラーになっても、おじいちゃんの思い出がつまったまま。
そして、これからはニャンルーの思い出も積み重なっていくのです。
おじいちゃんは亡くなったけれど、ニャンルーたち家族とのつながりは消えません。
ニャンルーの家族みんなを包み込む長い長いマフラーのように、思い出もまた、みんなを結び付けてくれるものだと感じられるお話です。
作者は、自然豊かな森の中で、ネコたちと身近にある小さいものを大切にしながら暮らす、どいかやさん。ニャンルーたちの暮らしは、まるでどいかやさんの生活そのもののように感じます。
寒くなる季節に、心がポッと温かくなる一冊です。
(近野明日花 絵本ナビライター)
読者の声より
どいかやさんの描くイラストは鉛筆画で温もりを感じますね。
そして、こちらのお話も温かい気持ちにさせてくれます。
おばあちゃんから編み物を教わる子猫のニャンルー。
長い長いマフラーを編むのですが、その毛糸はおじいちゃんのセーターだった物なのです。
毛糸をほぐして洗って干して、再び編む・・・。
物を大切にする気持ち、次世代に続く家族の想い、たくさんのことを感じられる素敵な1冊に思いました。
これでおじいちゃんとも一緒にいられますね!
(まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子10歳)
2月9日 まこちゃんと動物たちのやさしい交流
木曜日は『まこちゃんのおたんじょうび』
3歳の誕生日に、赤い帽子、赤いえりまき、赤い手袋、赤いブーツをもらったまこちゃんは、嬉しくなって森の動物たちに
見せに出かけます。けれども森の動物たちが困っている姿を見て、次々に貸してあげて…。
読者の声より
お誕生日でまこちゃんは赤い手袋やマフラー、ブーツなどをもらいます。それを身につけてお散歩していると、いろんな動物にあいます。その動物たちに1つずつもらったプレゼントをあげていくことに驚きました。
中には足のけがした動物もいたので、なんてやさしい子なんだと感心します。そしてプレゼントをもらった動物たちがまこちゃんの誕生日を祝いにやってきてくれます。
こんなやさしい女の子に育ってくれたら素敵だなと思います。
イラストの絵が3色で描かれていて赤が協調されていて可愛らしいです。
(えりこママさん 20代・ママ 女の子0歳)
2月10日 セータ― セーター まちどおしいなあ!
金曜日は『ぼくとお山と羊のセーター』
「ただいまー」とぼくが帰ってくると、家はがらんとしています。ランドセルを置いて土間を通り抜け外に出ると「ンモー メエーヘヘヘ メエーヘヘヘ コーコココココ」 牛やにわとり、羊たちの鳴き声。「とうちゃーん かあちゃーん」と山に叫べば「おおーっ かえったかー それじゃあ羊をなあ ちょっと上の草場にうつしといてくれやーー」と叫び返されます。ぼくは羊を追って草場へ。山の集落で、ぼくは家族とたくさんの動物と暮らしているのです。
ある日食卓で父ちゃんが「来年にゃあ あの羊の毛で こんどは おまえのセーターつくれるな」とぼくに言いました。にいちゃんの次は、ぼくのセーターの番! 自給自足の暮らしの中でセーター作りはどんなに貴重なものでしょう。春の青々とした草、夏はお蚕さん、秋は干し柿、冬はあたたかそうな毛に包まれた羊を眺めながら、一年中、ずーっとぼくは待ち遠しいセーターのことを考えるのです!
絵本作家・飯野和好さんが自らの少年時代を描いた絵本。これまでもいくつかそうした作品は描かれていますが、個人的に本書はひときわ傑作だと思います。四季のめぐりと密接な少年の幸福感がこれほど香り豊かに描き込まれている日本の現代創作絵本はなかなかありません。
埼玉県秩父郡長瀞町の山間、3軒しかない集落生まれの作者にとって、育てた羊の毛を春に刈り、編んでもらった新しいセーターは、忘れられない嬉しさだったことでしょう。でもそれは家畜の世話を当たり前に担って、勝ち得たものなのです。最後に登場するセピア色の写真の中で、誇らしそうなこと!
羊から、お山からもらったものを飯野少年は忘れません。とっても気の長いおはなしだけど、だからこそぎゅっと本物の生き物のにおいが詰まっている。のびのび、もこもこ、むくむくと育つ毛や草のように、生きる喜びが湧いてくる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
読者の声より
飯野和好さんの幸福感あふれるイラストに惹かれ、手に取りました。飯野さんの作品は、「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズや『おふろ、はいる?』など、大好きなものばかりです。情感たっぷりでユーモラスなイラストに、いつも癒されています。
こちらは、飯野さんが自らの少年時代を描いた作品です。
自分がお世話をした羊の毛で、セーターを作ってもらうなんて、どんなに素敵なことだろうと感動しました。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子18歳、女の子15歳、男の子13歳)
2月11日 大変! 編んだ帽子の穴がずれている!
土曜日は『フワフワさんは けいとやさん』
フワフワさんは毛糸屋さんです。今日は、フワフワさんが編んだ目出し帽をお客様に渡す日です。でも、お客様が帽子を被ると……あら大変、大失敗! 穴がずれています!
読者の声より
クネクネさんのお話を読んで、ぜひ続編を読みたいと思っていました。
フワフワさんはお仕事で大失敗をしていまいます。
そこにいたクネクネさんとブティックシマさんの気遣いがとても素敵なんです。
友達が焦って、困っているときに何をするのか。
クネクネさんたちは、積極的に助けるのではなく(助けようにもできなかったのでしょうが)、お仕事に没頭しているフワフワさんのその場から席を外すでもない。
ただただ、終わるまでそっとそっと見守っているのです。
これを読んだ子どもたちにも、友だちって素敵だなと伝わるといいなと思いました。
絵は優しくて大好きです。
でも、このネーミングセンスと独特な雰囲気は笑えます。
ただほっこりだけじゃないのがいいんですよね。
(ろーれるさん 40代・ママ 女の子3歳)
2月12日 セータ―になれなかった毛糸玉の行く先は…
日曜日は『セーターになりたかった毛糸玉』
セーターになりたいとあこがれていた毛糸玉は、編まれててぶくろになりました。かなしむ毛糸玉ですが、男の子に気にいれられて、気をもちなおします。ところがある日、男の子とも離ればなれになって......なりたいものになれない人生って?と考えさせられる絵本。
読者の声より
私たちがこどものころ考えた大きくなったら何になろうかな・・という気持ち。
そんな気持ちを毛糸さんたちも持っている。
マフラーや、帽子・毛糸のままの人生も・・。
そんな中、どんな毛糸さんたちも憧れる人気ナンバーワンは、セーター!!
手袋になった毛糸さんは、ボロボロになってしまいます。
しかし、ネコに拾われて・・・。
ほのぼのとするおはなしです。本作は、著者のデビュー作。
他にはない視点が、素敵です。
(ふわっとさんさん 20代・その他の方)
いかがでしたか?
それぞれに誰かのことを思いながら編んでいく気持ちや、編み物を通して生まれる温かな交流が感じられて、なんだかほっこり。
またおかあさんやおばあちゃんが編み物をしているのを見て、私も編んでみたい! って思う気持ちも分かる気がします。編み物って見るのもやってみるのも、とっても楽しいんですよね。出来上がるまでのワクワク感もひとしおです。寒い日には、温かいお茶でも飲みながら、編み物の絵本でほっこりしてみませんか。
秋山朋恵(絵本ナビ 副編集長)
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