【季節の絵本選びとプログラム作り】2023年6月、雨の絵本とドラマ登場人物の伝記絵本
絵本講師として10年以上ご活躍中のふわはねさん。絵本講座や絵本コンサル、絵本の読み聞かせ会などを年に200回以上こなしています。そんなふわはねさんに季節にあった絵本と読み聞かせ会の流れについて語ってもらいました。
二十四節気(にじゅうしせっき)を感じる
二十四節気とは… 1年を12か月さらにその半分、24個に分けた季節を表す名称です。
6月では…
芒種ぼうしゅ(6月6日)「芒」とは稲の穂先にある硬い毛のことで田植えの季節とも言われる。梅の実が色づき蛍が飛び交う季節。
夏至げし(6月21日)一年中で一番昼間の時間が長い日。東京でも日照時間は14時間以上になり、最も昼の短い「冬至」に比べると4時間50分も長いそう。しかし日本では梅雨の真っ只中。日照時間の長さや暑さを感じることはあまりない。
6月のおはなし会
日本第5の季節とも呼ばれる梅雨のシーズン到来です。
お外で遊べず、子どもたちもつまらないかもしれませんが、そんな時こそ絵本の出番。
絵本と一緒に歌ったり踊ったり、季節の手仕事もご一緒に。
朝顔の観察もいいですね。絵本には遊びのヒント、学びのヒントがいっぱい。
そんなきっかけになるといいなと今回も絵本をご紹介します。
【はじまりの絵本】
まずは大人気のお歌の絵本から。
『どんないろがすき』
どんないろがすき?
「あか」
あかいいろがすき
いちばん さきに なくなるよ
あかい クレヨン(p1本文引用)
みんなの大好きなあの歌が1冊の絵本に!
絵は大人気イラストレーターの100%ORANGEさん
その絵はあたたかく可愛くおしゃれで大人女子の心をも射抜く。
子どもたちは、同じ色が大集合しているページが大好き。
知っているものを指差したり、教えてくれたり、声を合わせて歌う楽しさも相まって大人気の一冊。
最後はぜーんぶ!で虹が。
歌うと心がウキウキとしてくるこんな一冊からスタートです。
読み聞かせ時間目安<2分15秒>
【季節の絵本】
雨の日には雨の絵本を『コッコさんとあめふり』
梅雨の季節です。
雨の日には雨の絵本をと思っています。
それはこんな始まり
まいにち まいにち あめふりです。
コッコさんは てるてるぼうずを つくりました。
てるてるぼうず てるてるぼうず
あした てんきに してください。
(p1-6 本文引用)
次の朝も雨はまだ降っています。
コッコさん、今度はてるてるぼうずの中に手紙を入れてお願いします。
コッコさんのシリーズから『コッコさんとあめふり』。
この淡々とすぎる素朴な小さな子どもの一生懸命さが好き。
雨がやみますようにとてるてるぼうずにお願いするコッコさんですが、なかなかやまない雨に、てるてるぼうずはどんどんふとって…。
声に出して心地よく、読んでいると段々と心が落ち着いてくるコッコさんシリーズ。
おすすめです。
読み聞かせ時間目安<2分5秒>
毎日毎日、雨降りです。コッコさんはてるてるぼうずを作りますが、雨はなかなかやみません。そこで、コッコさんはてるてるぼうずに手紙や宝物などを詰め込みます。まるまると太ってしまったてるてるぼうず、ちょっと疲れてしまったみたい。コッコさんはふとんをしいて、優しく看病してあげるのでした。さあ、コッコさんの願いは天に通じるでしょうか?
子どものころ、誰しもが一度は作ったことのあるてるてるぼうず。それは、晴れを待ち望む純粋な願いがこめられた、特別なものだったはず。著者の片山健さんは、娘さんが実際にてるてるぼうずを作って、そこに手紙やおもちゃ、宝物などを入れて、熱心にお願いしていた姿にヒントを得て、お話を作ってくださいました。心あたたまるエピソードに加え、透明感あふれる、みずみずしい色彩で彩られた雨の風景もまた魅力的。その美しさに心打たれることでしょう。片山健さんのコッコさんシリーズ、第5作目です。
雨の日にのんびり読みたい『100ぴきかぞく』
雨の日にはおうちでのんびりこんな絵本はいかがでしょう。
『100ぴきかぞく』
この絵本は98匹のねこの子どもたちとお父さんねことお母さんねこの総勢100匹のお話。
今日はおばあちゃんとおじいちゃんのお家へ遊びに行く日。
歯を磨いて、顔を洗って、次は洋服に着替えて…。
さぁ100匹のねこたち。みんな名前がついていて顔も性格も違います。
お気に入りの1匹を追いかけるもよし。みんなを楽しむもよし。
大勢の前で読むのは向いていないかもしれませんが、お話になっているので読むこともできます。
でもこれはやっぱりじっくりゆっくり一人で、親子で、お友達と楽しみたくなる、ずーっと見ていたくなる、そんな絵本です。
読み聞かせ時間目安<4分15秒>
【新刊絵本】
スーパーに青梅が並ぶ季節になってきました。
季節の手仕事として毎年梅のジュースを作るのですが、梅のいい絵本がないかなぁと思っていたところ、新刊に念願のまさにドンピシャな絵本が出ました。タイトルはずばり!
『はじめての梅しごと』
梅シロップをつくろう というサブタイトル。
絵本はまだ冬の寒さが残る頃に咲く梅の花から始まります。
花のあとから3、4ヶ月たった梅雨の頃、実がなります。
さあ、たくさんとれた梅の実。何を作りましょう。
この絵本には梅シロップを作るために用意するもの、そして梅の下ごしらえ、瓶の消毒の仕方、作り方に、完成するまでがとても丁寧に描かれています。梅の実の種類や砂糖の種類を変えてみたり、おいしい飲み方やレシピまで!
昔から梅の実で作られてきたいろいろなものなど、この絵本1冊ですっかり梅しごと名人。
子どもたちと一緒に季節の手仕事を楽しんでほしいと思っています。
ぜひ絵本と一緒に梅シロップを作ってみませんか。
「梅しごと」とは、古来から梅の実でさまざまな食べ物、飲み物を作ってきた手仕事の総称です。この本では、その中の「梅シロップ(梅ジュースとよばれることもあります)」の作り方を主に紹介します。梅の実を洗って砂糖とつけ込む、というシンプルなものですが、ひとつずつの工程すべて子どもでもできることで、保育園などで作ることもあるくらい、はじめての手仕事におすすめです。作りながらこの絵本を読めば、梅の実が実るために必要なことなどの知識も補えます。梅の実がどんな風にくふうされて食べられてきたのか、ほかの梅しごとや、梅シロップでできるおいしいもの、なども紹介。
【話題の絵本】
最後は今話題の連続テレビ小説『らんまん』の主人公のモデルとなった、植物学者・牧野富太郎博士の絵本はいかがでしょうか。
それはこんな始まり
江戸時代のおわりごろのことです。
いまの高知県のある村に、
男の子が生まれました。
大きな酒屋さんのひとりむすこで、
名前を牧野富太郎といいました。
富太郎は、ものごころついたころから、
草や木がだいすきでした。
(p2本文引用)
伝記という分類に入る絵本です。誰かの生涯を知ることで私たちはよりその世界や考え方に興味を持つようになります。
「この植物はなんだろう」という極めて明解な生物に対する好奇心を原点にもった牧野富太郎氏。
草木を愛し草木に生涯を捧げた一人の日本人の物語。
少し長いですが、小学校中高学年や中学生への読み聞かせにもおすすめです。
何かに熱中できるものを持つ人の強さを教えてくれた『牧野富太郎ものがたり 草木とみた夢』。
1冊の本がそのきっかけになることもあると思います。
読み聞かせ時間目安<13分>
小学校中退の独学で日本初の本格的な植物図鑑を送り出し、「日本の植物学の父」とよばれた牧野富太郎。
貧しさや困難に見舞われながらも「草を褥に木の根を枕 花と恋して九十年」の言葉どおり、ひたむきに植物を愛し、その魅力を伝えることに情熱をそそいだ生涯を、簡潔な文と美しい絵で描く、あたらしい伝記絵本。
巻末に国立科学博物館植物研究部研究主幹・田中伸幸氏の解説を掲載。見返しに「本書に描かれた牧野富太郎ゆかりの植物」と「牧野富太郎年譜」つき。
【その他 6月の読み聞かせにおすすめの絵本】
絵本の読み聞かせについて思っていること
絵本はコミュニケーションツールです。 絵本は子ども達の歩みを助け、その成長を促してくれるかもしれません。 しかしそこには読んでくれる人の温もりを通した生きた声が不可欠です。 人と人とが向かい合い、片手間にはできない読み聞かせだからこそ愛情が注がれるのです。 子どもの持つその心のコップを絵本を使って愛情で満たしてあげてください。大好きな人の声で温もりの中聞く美しく豊かなお話。それはあっという間の子育ての濃密な時間を助け、後にその子どもたちの長い人生の心の支えとなるでしょう。
ふわはねプロフィール
ふわはね(内田 祐子)
大学で児童文学を学ぶ。2005年絵本講師1期生として絵本講師資格取得。関西を中心に企業での定期教室をはじめ、
絵本のつなぎてとして、絵本の作り手と読み手を。親と子を。人と人を繋いでいる。
子育てアドバイザー・JPIC読書アドバイザー
大学3回生と高校3年生の娘をもつ。インスタグラム @fuwahane
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