【今週の今日の一冊】絵本の世界をもっと深く!「絵本の日」に読みたい「絵本論」特集!
日本において、戦後、“絵本”に関する基本的な考え方を最初に示し、その後の絵本の世界に大きな影響を与えた瀬田貞二さんの『絵本論』(福音館書店刊)。こちらの『絵本論』が1985年11月30日に発行されたことにちなんで、民間図書館「絵本と図鑑の親子ライブラリービブリオ」が、毎年11月30日を「絵本の日」に制定しました(日本記念日協会によって2012年に認定)。
そこで今週は、絵本の見方や世界をもっと深めてくれる、さまざまな「絵本論」をご紹介します。たくさんの絵本や翻訳絵本、読み物を生み出してこられた絵本作家さんの、創作にかける熱意や子どもたちに込められた祈りのような思いを知ることで、絵本の世界をもっと深く感じてみませんか。
2024年11月25日から12月1日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
11月25日 絵本で豊かな心の体験をした子には、希望や自信が…
月曜日は『本・子ども・絵本』
「生まれてきて良かった」と子どもに思わせたい。
絵本で豊かな心の体験をした子は、人生に希望と自信を持ちます。
カラーの撮り下ろし写真など増補し、待望の文庫化!!
子育て中のお母さんお父さんなど、子どもと向き合う全ての方へ贈る名エッセイ。
「ぐりとぐら」でおなじみの山脇百合子さんの可愛いイラストも多数掲載。
長年保育士だった中川李枝子さんが、絶大な信頼を寄せる絵本や児童書、子どもへの向き合い方、自身の生い立ちや童話作家の原点について綴る。
〈中川さん絶賛の絵本30冊&児童書58冊が本文の中で紹介されています〉
絵本「ぐりとぐら」で知られる中川さんが、「本・子ども・絵本」をテーマとし、絶大な信頼を寄せる絵本や児童書、子どもへの向き合い方、自身の生い立ちや童話作家の原点について綴った名エッセイがついに文庫化!
初版は1982年で、改訂版、新版とリニューアルされてきたロングセラーに、巻頭16頁にわたり、撮り下ろしの写真やイラストをカラーで追加。
物心つく頃から本に夢中になり、沢山の本を読んで育った中川李枝子さん。長年務めた保育士時代は、大勢の子どもたちに絵本の読み聞かせをしました。「本は子どもに人生への希望と自信を与える」と信じる中川さんが、信頼を寄せる絵本や児童書を紹介し、子どもへの向き合い方などアドヴァイスを綴っています。小川洋子さんの解説も、必読です!
〈胸にしみいるメッセージがいっぱい〉
幼児とのつきあいにはユーモアのセンスが必要/
私たちは子どもに与えたい絵本を選んでいつも身近に用意しておき、チャンスがくるのを楽しみに待っていればよいのです。押しつけは禁物です。/
子どもは愛情に敏感です。そして愛情を示されることと、自分から愛情を示すことに無上の喜びを感じています / などなど。
読者レビューより
「生まれてきて良かった」と、子供に思わせたい
もうこのことにつきるなぁ、と思いました。
我が家も中川李枝子さんの絵本はたくさんたくさん読んできました。
もう子供は中学生になったので、親が今までの子育てを振り返りながら思い出しながら読みたい1冊に思いました。そして変わらない愛情を注いでいきたいと。
(まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子12歳)
11月26日 全ての親子へ贈る、希望の未来のメッセージ
火曜日は『未来のだるまちゃんへ』
迷い道の人生、絵本創作の原点……
『だるまちゃんとてんぐちゃん』など、数多の人気絵本を世に送り出してきたかこさとし。19歳で敗戦を迎え、態度を変えた大人に失望した著者は、「子どもたちのために役に立ちたい」と、セツルメント活動に励むようになる。そこでは、絵本創作の原点となる子どもたちとの出会いがあった――。
国民的人気絵本作家が、自身の人生について初めて語った記念すべき自叙伝。
サラリーマンとの二足のわらじ生活、自身の子育て、震災と原発事故を経て思うことなど、
秘話が盛りだくさん! 絵本に込めた願い、尊敬してやまない子どもたち、「生きる」とはどういうことか……柔らかい口調そのままの文体で読みやすく、深い含蓄のある言葉に励まされる内容です。
『ぐりとぐら』で知られる中川李枝子さんが、かこさんとの知られざる邂逅について綴った文庫解説も必読!
90歳の絵本作家が全ての親子へ贈る、希望の未来のメッセージです。
読者レビューより
かこさとしさんの生き方に感銘します。いろんな絵本を読んでいて、なぜ?こんなに子ども達に人気ですかれているのか?それは、かこさとしさんの子ども達への思いがいっぱいつまっているからだと思います。
彼は第二次世界大戦に行くと思っていたのですが、目が悪くて特攻隊には行けず、仲間の人がたくさん亡くなり悲しい思いをされたのだと思います。当時の世相では軍国主義の教育されていて、戦争に行くのが当たり前で行かないと国賊と呼ばれて肩身の狭い思いをしていたのでしょう。かこさとしさんは1945年8月15日の終戦で日本が戦争に負けたとき大人が態度を180度かえた人を見て、なぜ?と疑問に思ったと書かれています。戦争の絵本はなかなか描けなかったとも書かれています・・・・苦悩された様子が分かります。
そして子ども達は生きているその子ども達から元気をもらい、「誰かに言われたからそうする」のではなく、自分で考え、自分で判断できるそういう賢さというのを持ってほしいと書かれています。
生態系のことも考えて生きていく。生きると言うことは、本当に喜びです。子ども達には、生きる事をうんとよろこんでほしいとメッセージを書かれています。
二度と戦争をしてはいけません(同じ間違いをしてはいけません)。
今の子ども達もいろいろな競争の中で生きていて、先日教科書の閲覧に行きました。子ども達が学校で学んでいる教科書に、道徳が導入されています。道徳とは何か? 中学校でも来年度から道徳教育が導入されようとしていますが、本当に、かこさとしさんの述べられている自分の頭で考える人間に育つような教育を望みます!
この本には 原発のことも書かれています。是非大人が読んで、子ども達の未来のことを考えてほしいと感じました。
(にぎりすしさん 60代・その他の方 )
かこさとしさん代表作
11月27日 どうぞ幼い子どもたちに、本を読んでやってください
水曜日は『えほんのせかい こどものせかい』
カラーのオリジナルページを多数追加し、待望の文庫化!
「ちいさなうさこちゃん」「パディントン」シリーズの翻訳などで知られる著者の松岡享子さんは、長年児童文学の翻訳や研究をし、図書館や家庭文庫で大勢の子どもたちを観察し続けてきました。そんな松岡さんが、「子どもが読書の楽しさを発見する為に大人は何を手助けできるか」という事を著したのが本書。1987年に単行本が刊行され、24刷まで版を重ねている大人気のロングセラー本です。
本書では、子どもが最も喜んだ34冊を紹介し、読み聞かせのコツや優れた絵本を選ぶポイントを解説。また、松岡さんが東京子ども図書館の「おはなしのへや」で子どもたちに語りかける様子や、バラの咲き誇る図書館の素敵な外観などを撮り下ろしたオリジナルページもカラーで多数、追加収録しました。
『おさるとぼうしうり』『おやすみなさいのほん』『ぐりとぐら』『三びきのやぎのがらがらどん』『ちいさいおうち』……可愛い絵本の写真がたっぷりと入っていますので、見て楽しく読んで面白い絵本ガイドです。
読者レビューより(※1987年刊の旧版のレビューより抜粋)
絵本ってほんとに素敵、そう思います。大人が読むのでも、子どものために読むのでも。思いながらも、どこがどうして素敵なのだろう?といった具体的なことは、いつもさほど考えたことがなくって。松岡さんはその「具体的なこと」をこの本の中で教えてくれるのです。
何年も前、小学校の先生をしている友達に「絵本を子どもに読んであげる時は、あれこれきいたりせずに、読むのがいいんだよ」と教えてもらったことがあります。それまで私は「ほらほら、これはなんだろうね?あれはどこにあるかな?」などと物語とは関係ないことをきいてしまう読み方をするタイプだったのですが(甥っ子に対してそんな読み方をしようとしていた)、友達の話をきいて考えを改め、娘に対しても気持ちはこめて物語だけを基本的に読むようにしていました。(娘にきかれた時は別ですが)。その「読み方」についても松岡さんは書いていて、なるほど、やっぱり、それでいいんだなと納得した次第。静かに話を聞いたり、それについて、心の中で思いをめぐらしたりする経験。物語の世界にはいりこんで、現実とは別の世界での体験をすることは貴重なのですね。
これからも、どんどん娘を物語の世界にひきずりこもうと思います♪
(ぽこさんママさん 40代・ママ 女の子4歳)
松岡享子さん代表作(翻訳作品含む)
11月28日 すぐれた絵本には、大事な情緒と想像力と知恵が…
木曜日は『心に緑の種をまく』
子どもたちの心に「緑の種」をまき、芽を育て、根を太く育ててくれた絵本たち。すぐれた絵本には、人間が人間であるために、いちばん大事な情緒と想像力と知恵が、いちばん単純な形でこめられていますーー児童書の翻訳や創作で知られる著者が、自らの子育て体験と共に綴る、子どもと読みたい名作絵本45冊の魅力。図版多数。(付記=渡辺鉄太)
読者レビューより(※2007年刊の旧版、新潮文庫版のレビューより抜粋)
渡辺茂男さんの、絵本そのものの作品も素晴らしいですが、何よりも日本の絵本界の発展に与えた影響は計り知れません。
ご自身の子育ての時の体験、よくお子さんに読んでいらっしゃった絵本のこと、図書館員として触れた絵本や、その作者との交流が語られています。古典と呼ばれる古き良き絵本がたくさん紹介されています。
まだ読んだことのないものもあるので、子どもたちと楽しみたいです。
(シーアさん 20代・ママ 男の子5歳、男の子1歳)
渡辺 茂男さん代表作(翻訳作品含む)
11月29日 赤羽末吉さんの絵本への愛と創作の熱意が溢れる一冊
金曜日は『新装版 私の絵本ろん 902 中・高校生のための絵本入門』
『スーホの白い馬』などで知られる国際アンデルセン賞受賞の絵本作家が平易な言葉で語る絵本論。自著創作秘話や評論など絵本への愛と創作への熱意があふれる名著、新装版。
読者レビューより
まだ読み始めたばっかりで途中なんですがこれは、じっくり腰を据えて読みたい!
でも、とにかく赤羽さんのユーモアというかお人柄が出ている文章というかとても興味深い本なもんで、早く、皆さんに読んでいただきたい!!(笑)
いろいろな本でのエッセイや評論、絵本ができるまでーがあって、まずは、解説や新装版に寄せて等の文章を読んでから読み始めてみました
子どもに対しての考え方が素敵ですし、とてもわかりやすい文章で全体を俯瞰して見ているような感じというんでしょうか。
保育士の頃、「スーホーの白い馬」が大好きな2歳児クラスがありました。何度読まされたことか・・・
その頃、子どもたちのほうがこの作品のよさを知っていたのだと思われます。それを、教えられたんですね。
別な年のやはり2歳児クラスでは、「おおきなおおきなおいも」がそれはそれは大好きで、これは、私も大好きだったので心底一緒に大笑いして楽しみました。
こどもが感じるーような描き方なんだ!!と、いまさらながら感心します。
(しいら☆さん 50代・その他の方 )
赤羽 末吉さん代表作
11月30日 「ひとの最初に出あう本、それは絵本です。」
読者レビューより
自分が幼いころに読んだ本の多くが瀬田貞二さんであったことに気づき、どういった方なのか知りたくて購入しました。
内容は流石の一言、絵本とはこんなに深く考えるべきものだったのか、と何度もうなりながら読みました。
絵本についてに限らずどの評論もそうですが、権威だからと、うのみ盲信する必要はなく、一本筋の通った選別眼の一つをお借りするつもりで何度も読みこなしていきたいです。
(まろやさん 30代・ママ 女の子1歳)
瀬田貞二さん代表作(翻訳作品含む)
12月1日 せなけいこさんによる、最初で最後の自伝的絵本
日曜日は『ねないこはわたし』
1969年に刊行されてから、いまだにあらゆる幼児に読み聞かせられる永遠の名作絵本『ねないこだれだ』。誰もが見覚えのある独特の貼り絵、そして夜更かししていた子どもが「おばけ」になって連れていかれてしまうという衝撃的なラストで、発行部数は200万部以上です。
実はこの絵本はせなけいこさんのデビューシリーズ4冊のうちの1冊でした。当時37歳、2児の母だった遅咲きのデビュー作が、決定的な代表作となり、せなさんはその後も「おばけ」の絵本を描き続けることになります。
その『ねないこだれだ』は、子どもを寝かしつけるしつけの本ではなかった、という驚きの告白からはじまる本書は、せなさんが初めて「自分のことを書いた絵本」。
各章では、デビュー4冊の『にんじん』『いやだいやだ』『もじゃもじゃ』『ねないこだれだ』などを入り口に、その独特すぎる世界、画風、文体やアイデアの源泉、そして本と絵への愛情をつづっていきます。
本書にはまた、貴重な貼り絵の原画の写真が満載。絵本作品ともひとあじ違う見え方で、さまざまな原画を楽しめます。誰もが知る名作はもちろん、絵本デビュー前の雑誌のカットまで、せなワールドをたっぷり楽しめます。
子育てをした人、子育てをする人、絵本が好きなこども、すべての人へ贈る、自伝的絵本。
読者レビューより
「ねないこ だれだ」「にんじん」 「いやだ いやだ」「めがねうさぎ」など、せなけいこさんの代表的な作品についてのご本人のお話が、とってもおもしろいです。登場するキャラクターがますます愛おしく感じ、また今までと違う見方も出来たり、せなけいこさんの作品をもっと楽しめるようになりますね。
せなさんの描くおばけは、なんであんなに愛嬌があって、こわいというか友だちになりたいくらい可愛らしいのだろう。。そんな疑問も、この本を読めば納得!なぜなら、息子さんが友だちになれるおばけを描きたくて、描いたのがあのおばけなんです!
だから、せなさん自身も喜んでおばけになって飛んでいきたかったのだそうです。同じ親目線で、読んでもおもしろく、共感することも多かったです。 そして、子どものように純粋で好奇心旺盛で、想像力豊かなせなけいこさんがとても素敵な方だなぁと改めて、思いました。
(ピーホーさん 30代・ママ 女の子4歳、女の子2歳)
いかがでしたか。
他にも、絵本作家、児童文学作家、編集者、翻訳家、研究者による、絵本のこと、児童文学のこと、子どもと本との関わりについて、じっくり学べる「絵本論」や絵本ガイドブック、作家さんの自伝・エッセイなどがあります。「絵本の日」をきっかけに、気になるものから手にとってみませんか。
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構成・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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