【特別編】クリスマスのお楽しみは何ですか?
絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!
この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。
今回は、クリスマス特別編でお送りします!
クリスマスを目いっぱい楽しむための絵本 8選!
街にはイルミネーションが輝き、クリスマス気分が高まってきましたね。ところで、クリスマスといえばサンタさん、プレゼント、クリスマスパーティー……などなど楽しみがてんこもりですが、クリスマスというと、みなさんは何を一番楽しみにしていますか?
それぞれのご家庭でのクリスマスのお楽しみの要って、けっこうちがうと思うんです。今回は、そんなクリスマスの楽しみそれぞれに焦点を当てて、ウキウキワクワクを高めていける絵本をご紹介したいと思います。
クリスマスを待つ楽しさ
クリスマス本番を迎えるまで、いろんな準備がありますよね。ツリーをかざりつけたりプレゼントやパーティーの買い出しをしたり、アドベントカレンダーなどで毎日クリスマスまでの日を数えては近づいてくるクリスマスを待っていると、どんどん気分が浮きたってきますよね。
そんな、クリスマスを待つドキドキワクワクを描いた絵本をここではご紹介します。
クリスマスの準備をしながら読みたい絵本
季節と行事を楽しむ新シリーズ誕生!クリスマスのキラキラした気持ちをとじこめた美しい絵本。
いっしょにお買い物を楽しんでね!
うさぎのはなちゃんは、お友だちとクリスマスのお買い物に行きます。
細部まで描きこまれた商店街の様子が楽しく、クリスマスのわくわくする気持ちが伝わってくる美しい絵本です。
巻末に「クリスマスの由来」も掲載。
つんつく村の、もみの木でできたもみの木マンションに住む動物たちはみんななかよし。クリスマスイブにはみんなでクリスマスパーティーをします。パーティーの準備にみんなは連れ立ってお買い物に出かけます。商店街につくと、それぞれクリスマスケーキの材料やプレゼント選び、クリスマスツリー飾りの買い物などをああでもないこうでもないと、とっても楽しそう。もみの木マンションに帰ると、楽しいパーティーの始まりです!
クリスマスシーズンは街もキラキラしていてお店もクリスマスカラー、絵本にも出てきましたが聖歌も響き、見るもの聞くものなんでも特別感がありますよね。そしておうちに帰ればみんなでもみの木マンションに飾りつけ、パーティーのごちそうやクリスマスケーキ作りをして……などなど、クリスマスは当日本番ももちろんですが、それを迎える準備もまた楽し!という、クリスマスを待つ気分がどんどんあがってくるほっこりしたお話です。
もうひとつ、物理的にクリスマスがどんどん近づいてくるドキドキ感を伝えてくれる絵本がこちら。
寒い日、家族4人はバスに乗っておでかけ。「すてきなところ」へ行くといいますが、おとうさんは行き先を教えてくれません。スケート場やゆうえんち、デパートなど、たくさんのすてきな場所に停車しても、おとうさんは「きょうは べつのところ」と降りようとしません。いったいどこ行くの? と思っていたら……。
バスに乗っている間に雪が降り始め、街は白くイルミネーションもキラキラしてクリスマスの雰囲気。読者は「クリスマスのおでかけなんだろうな」と思いますが、素敵な場所は最後まで明かされず、ワクワク感は最後まで続きます。しかもこの絵本は、元の町から遠くまでずいぶん来たなということが分かるしかけ絵本となっていて、最後には「わ~すてき!」と驚かされるしかけも隠されています。バスが進む間に「このあといったいどうなるの?」とドキドキ感が高まっていく楽しい絵本です。
クリスマスって待つ間が本当に楽しいよね!ということが伝わる絵本たちです。
やっぱりサンタさんがいなきゃ!
お次は、クリスマスといったら「サンタさんでしょ!」というみなさまにおすすめの絵本を。
この絵本のサンタさんは、プレゼントを用意し、そりでプレゼントを配るところまでは普通のサンタさんと同じですが、ただそれだけではないんです。本当に“いい人”なんです!
クリスマスイブの夜、サンタさんはプレゼントを配ろうと家々をまわりますが、行く先々で、捨てねこや捨て犬、捨てられたぬいぐるみやおもちゃに出会ってしまいます。サンタさんは、なんせ「気のいい」人でしたから放っておけず、プレゼント配りの合間にと拾っていき、気づけば行きのそりよりも乗せるものが増えてしまいました。大勢を引き連れてサンタの家に帰ると……?
今年の春に亡くなられた、さとうわきこさん作の本当にお人好しなサンタさんの絵本です。いろいろなサンタさんが主人公の絵本がありますが、さとうわきこさん流の「みんな このじいさんに まかせとけって!」という、きっぷのいい風味に「こんなサンタさんいたら楽しいよね」とにんまりしてしまう絵本です。
お次は、サンタさんをめぐる大事件の行く末は……?というお話。
サンタさんがさらわれた?!
大どろぼうたちが、ロケットでサンタクロースをぬすんだ。事件をしった世界中の子どもたちが大さわぎ。サンタクロースをとりもどそうと、どろぼうたちをおいかける。子どもたちのせいで、ロケットはどこにも着陸できず、どろぼうたちは大よわり。そしてサンタさんは…?
大都会に、よりぬきの大泥棒たちが集まって作戦を練っています。なんと、「サンタ・クロースをぬすもう」というのです。みんなサンタそっくりに変装しロケットに乗り込み飛び立ちました。そして、そりの鈴の音を聞きつけるとサンタにピストルをつきつけ、そりごと誘拐してしまったのです!
サンタさんの絵本としてはなかなかすごい始まり方ですが、そんな犯罪を許さなかったのが子どもたち。いまかいまかと耳を澄ませて待っていたサンタさんがさらわれたと知り大激怒。泥棒たちのロケットを全世界の子どもたちが怒鳴りながら追いかけるのです。ついにお手上げとなった泥棒たちは……?
サンタさんの誘拐というとんでもない展開のこの絵本。この後も泥棒たちとサンタさんがひと汗かくのですが、子どもたちにこんなに慕われるサンタさんの仕事って本当にいいよね、とすっきり笑える絵本です。
クリスマスケーキは何にする?
クリスマスパーティーに欠かせないもの、それはやっぱりクリスマスケーキではないでしょうか? 我が家でも、大きなケーキはお誕生日かクリスマスしか出てこないので、サーティーワンのアイスケーキか仮面ライダーのケーキを注文するか自分たちで作るか、クリスマスのだいぶ前からあーだこーだと楽しく迷っています。
そんなクリスマスケーキが主人公の、一癖あるユーモア絵本です。
クリスマスの夜、豪勢なごちそうとクリスマスケーキを並べパーティーの始まりです。チキンはパリッと、エビフライはプリップリで「おいしくって ほっぺたが おちそうだね」とぼくが言ったら、「ほんとうねー おちそうねー」と返事が返ってきました。でも、それはおかあさんの声ではありません。
「い… いまのは だれ?」と驚くと、「あたいだよ」としゃべったのはケーキ! ケーキがごちそうを食べながらしゃべっているのです。
さらにケーキは、「このまま あたいと いれば すごーく いいこと あるのに」と言うのです。ケーキを食べずにいると、なんと翌朝からエンドレスでクリスマスが繰り返されて……!
クリスマスケーキの名前は“クリコ”。「あたい」なんて言うちょっとはすっぱなクリコはクリスマスケーキの見た目なのに、納豆ご飯やおにぎりをバクバク食べて「ほんと おくさん。おりょうり じょうず!」と家族に溶け込んでいる姿がなんともシュール。さすがシゲタサヤカさんの絵本!
クリコの秘密は最後に明かされますが、クリスマスという概念の根底から覆されそうな爆笑クリスマス絵本です。
クリスマスパーティーは特別!
クリスマスパーティーって、ふだんは食べられない豪華なごちそうやケーキがあって、家族や友達でワイワイできて、それ自体がとっても楽しみですよね。特に海外のクリスマスパーティーは家族、親戚一同が勢ぞろいで日本のお正月のよう。昔『ホーム・アローン』を見て、にぎやかで華やかであこがれたことを思い出します。そんなにぎにぎしいクリスマスパーティーを描いた絵本がこちら。
家の中はぎゅうぎゅうづめ!
クリスマスの前の日、思いがけないお客様が次々に現れて、家の中はぎゅうぎゅうづめ。床の上や廊下はもちろん、お風呂や流しの中までベッドにする始末。サンタクロースははたして、まちがいなくみんなにプレゼントを届けることができるのでしょうか? クリスマススピリットあふれる一冊です。
ベンとジェインの家に、クリスマスのお祝いのため、おじいちゃんとおばあちゃんが泊まりにきました。もう片方のおじいちゃんおばあちゃんもやってきます。次に、友だちのアメリアとアニーとエイモスの3人きょうだい。バーソロミューおじさん、おかあさんのお友達のリリーさんと赤ちゃん、教会の牧師さん夫妻と4人の子どもたち、隣の家のこども3人に5人のおばさんたち、さらには車が壊れて動けなくなった太った男の人と女の人2人ずつに5人の子どもたち……と、ひとつの家の中にとんでもない人数がずらり。全部で何人になったか分かりますか?そして、この大勢のおきゃくさまたちは、無事に泊まることができるのでしょうか?
どんどん増えていくおきゃくさまたちを、食器棚や流し台まで寝床に仕立てて無理矢理?泊めていく様も楽しい、にぎやか絵本です。いろんな人たちがたくさん集まるからこそパーティ―もひときわ楽しい! そんな喜びが伝わってくる絵本です。
プレゼントが楽しみだなあ
子どもたちはサンタさんが大好き。サンタさんのことがなぜ好きかというと、プレゼントをくれるからですよね。どんなプレゼントがもらえるのかな? そんな気持ちをテーマにした絵本をご紹介します。
「もっともっと大きなのがほしい!」
大ベストセラー『ちいさなあなたへ』の作画家ピーター・レイノルズがクリスマスに贈る最新作。待ちに待ったクリスマスの朝、ローランドが見つけたのはこれまででいちばんちっぽけなプレゼント。「こんなのはいやだ! もっともっと大きなのがほしい!」と願うローランド。より大きなプレゼントをさがしに、ローランドはなんと宇宙へ! 果たして彼の願いはかなうのでしょうか? 大きなクリスマスプレゼントをさがしもとめる子どもの冒険を思いがけないストーリー展開で描きます。ほんとうにたいせつなものがなんなのかを考えるきっかけになる心温まる絵本です。
「ことしの プレゼントは なんだろう?」と毎日ワクワクしながらクリスマスを待っていたローランドは、今までで一番小さなプレゼントを見てがっかり。
「どうか おおきな プレゼントに かえてください」と願います。すると、プレゼントがぐんと大きくなりました。でも、もっと大きなプレゼントがほしい。ローランドがさらに願うと、プレゼントはさらにぐんと大きくなりました。
ローランドは、もっともっともーっと大きく!と願い続け、ついにはとびきり大きなプレゼントを探しに宇宙に飛び出しました。そして、宇宙をさまよううち、おとうさんおかあさんのいる地球はどんどん小さくなっていき……。そのとき、ローランドは何を思うでしょうか?
舌切り雀の民話のように、大きな包みの方が素敵なものに違いない!とつい思ってしまいますよね。ですが、プレゼント・本当にほしかったものは、大きさなんかでは決まらないよ?と、優しくプレゼントの本質を伝えてくれるお話です。
クリスマスはみんなの特別なとき
最後に、クリスマスはすべての人に特別で、かけがえのないひとときであることをじんわりと思い起こさせてくれる絵本をご紹介いたします。
クリスマスに感じたいやさしさ
チャーリー・ブラウンやスヌーピーたち『ピーナッツ』の仲間といっしょに、クリスマスを楽しくすごそう! 『ピーナッツ』描き下ろし絵本として刊行されて60年、待望の日本語版、誕生。
あの人気キャラクター・スヌーピーの登場する漫画『ピーナッツ』をから生まれた絵本集のクリスマスバージョンとなるこの絵本。スヌーピーだけでなく、おなじみチャーリー・ブラウン、ルーシー、ライナスらが、「クリスマスってどんなとき」なのかを、ユーモラスにシニカルに、そしてやっぱり温かく、画面ごとに綴っていきます。
「クリスマスはまた1年がすぎちゃったっていうあのいやな気分」とチャーリー・ブラウンが言い、
「クリスマスは送っていない人たちからもらうクリスマスカードばっかり!」とルーシーがぼやきます。
私たちの「あー、師匠も走る12月きちゃった!」みたいな感じがクリスマスにもあるんだ! と、シュルツの描くユーモアにニヤリとしますよね。
そんなシニカルさも描かれているかと思えば、
「クリスマスはだれかのためにちょっとしたおまけをしてあげること」
とクリスマスに人々が感じるちょっとした温かさも描かれ、いろいろな人々が感じるクリスマスの特別感をいろいろな角度から描いています。元のタイトルは「CHRISTMAS IS TOGETHER-TIME」、まさにクリスマスは一緒の時間と、クリスマスに私たちが共通して感じる、何とも言えないやさしさが伝わります。
この絵本を訳しているのは詩人の谷川俊太郎さん。つい先日、今年の11月に亡くなられましたが、この絵本は谷川さんの最期の翻訳絵本となります。スヌーピーの漫画『ピーナッツ』の日本語訳を長年にわたり谷川さんが手がけられていますが、シュルツのユーモアを谷川さんがさらに洒落をきかせて訳したことで、この絵本も子どもも大人も楽しめる作品となっています。
本文ページに使われている紙はクリスマスカラー、英語の原文も載っていて、プレゼントにもぴったりのおしゃれな一冊です。
さいごに
クリスマスには本当に様々な方向の楽しみ方がありますよね。小さなころは、サンタさんやプレゼントにワクワクドキドキしますが、大人になると、みんなで集まる楽しさに比重が大きくなっていったような気がしませんか?
パーティーやプレゼント選びの準備なども楽しいのですが、私は特にクリスマスのキラキラ輝く飾りつけを見ると、ふだんとは違った特別なシーズンを感じてドキドキしてきます。青年期から中年期、分かりやすく世を斜めに見ていたので「クリスマスは稼ぎ時っすよ」なんて、バイトや仕事をいつも以上にゴリゴリやっていたものですが、そんなときでも帰り道、駅のイルミネーションを見るだけでふわっとした気持ちになれたんですよね。
『クリスマスツリー』(吉村和敏 アリス館)という、世界のクリスマスツリーやイルミネーションの美しさを写真で紹介した絵本もありますが、冬の寒さと、灯りの温かさやクリスマスカラーのきらびやかさの対比で、クリスマスを特別温かく感じることができるのかなと思います。
子どもだけでなく大人もワクワクドキドキしてしまうクリスマス。子どもはサンタさんへ手紙を書いたり、大人はクリスマスグッズをついつい買ったりと、楽しくも落ち着かない日々ですが、本番までカウントダウンしながら、親子で絵本を片手に、より盛り上がってみてください。
徳永真紀(とくながまき)
児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児の母。
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