「泣いてもいい」のその先へ――涙の海が大あふれする“涙全肯定”絵本3選
涙の海に漕ぎ出そう! 子どもの涙をダイナミックに描く最新涙絵本
子どもの頃(昭和でございます)。泣くと、よく「めそめそしないの!」「男の子が泣いてると、笑われちゃうわよ!」と親に叱られておりました。
かつて涙は「隠すもの」「早く止めるもの」でございました。 育児心理学などの広がりもあり、昨今は「泣いていいよ」と子どもの気持ちを受け止める声かけが主流になっております。
ですが最近、書店の絵本コーナーで出会った“涙全肯定絵本”たちは、ただ「泣いていいよ」と優しく受け止めるだけでは終わりませんでした。
ページを開くと、涙は止められるどころか、ダイナミックな冒険の舞台になったり、塩代わりにパスタを茹でるのに役立ったり(!)と、驚くほど自由に広がっているのでございます。 今回は、そんな「泣くこと」をなんとも前向き&ダイナミックに描く、イマドキ涙絵本を3冊ご紹介させていただければと存じます。
まずは、こちら。ザ・キャビンカンパニーさまによる『なきむし なきこちゃん』(福音館書店)。今年5月出版です。
たくさん泣いていいんだよ
なきこちゃんは泣き虫です。ある日、なきこちゃんが泣いていると、涙が部屋からあふれて家の外へ流されてしまいました。なきこちゃんは涙の海を独りぼっちで漂います。途中、鳥や魚が声をかけますが、なきこちゃんの涙は止まりません。そこへクジラがやってきて、なきこちゃんは今までで一番の大きな声で泣きました。「たくさん泣いていいんだよ。おおきな海をつくりなさい」。泣きたいときは泣けばいい。泣くことを肯定する絵本。
主人公は泣き虫のなきこちゃん。いつものように泣いていると、涙は部屋からあふれ出し、とうとう家の外まで流れていきます。そして、なきこちゃんは涙でできた海を、たった一人で漂うことに…。果たして、なきこちゃんの涙は止まるのか…というストーリーでございます。ザ・キャビンカンパニーさまならではのダイナミックで幻想的な絵で、ゴイスーに素敵です。(この本にも登場しますが、ザ・キャビンカンパニーさまの描く動物の絵が昔から大好きでございます)
続いては、今年1月に出版された近藤瞳さまの『えーんえーんのうみ』(日本標準)。
涙の水たまりは川になり、とうとう海になり……
パパと朝の準備をしたこっちゃん。三つ編みじゃなきゃ保育園に行かないと泣き出してしまいました。
えーんえーんと泣くこっちゃんの涙がどんどん床に広がっていきます。外ではあちこちでこどもたちが泣いていて、大きな水たまりができていました。床屋のおじさんが三つ編みにしてくれましたが「ママのみつあみがいいのー!」とさらに泣いてしまい、水たまりはどんどんたまって川になりました。保育園についても泣いているこっちゃんを見ていると、こどもたちももっと涙がでてきて、川はとうとう海になりました。そこにあらわれたのは・・・
「こどもあるある」のエピソードで思わず微笑んでしまうお話です。優しい眼差しで描かれており、温かい気持ちになります。
実はこの作品を先に読んでいたので、前述の『なきむし なきこちゃん』を読んだ際、「また涙の絵本だ!」と驚いたのでございます。主人公のこっちゃんはある朝、「ママの三つ編みじゃなきゃイヤ」と泣き出します。涙は床に水たまりをつくります。外へ出ると、あちらにもこちらにも泣いている子どもたちが溢れています。みんなそれぞれ違う理由で泣き、その涙で町中が水浸しになってまいります。果たして、こっちゃんや子どもたちは、無事に水浸しの町から脱出できるのか…というお話でございます。
3つ目は、イタリアの作家ノエミ・ヴォーラさまの『ふんすいみたいに いっぱいないたら』(アチェロ)。
なみだの意外な活用法!?
なみだの意外な活用法!? がまんしないで、泣いたらいいことがこんなにいっぱい。
ページをひらくと、そこには悲しそうなミミズ。
元気づけようと声をかけたけど…あらあら大変、泣きだしてしまいました。
なぐさめる言葉をさがしているうちに、語り手は気がつきます。
泣くのもわるくないかもしれない。
それどころか、泣いたらいいことがたくさんあるじゃないかって。
ふんすいみたいにいっぱい泣いたら、ともだちみんなが寄ってくる。
お昼どきに悲しくなったら、鍋いっぱいになみだをためてパスタをゆでよう。塩は必要なし!
木の下で泣いたら、ようなしが育つ。ようなしがあれば、ジャムがつくれる。みんな幸せな気持ちになって、なみだだってとまるかも。少なくとも、ジャムを食べきるまでは…
泣き虫なミミズと、ちょっととぼけた語り手の、愉快な“なみだ”のお話です。
なみだって、便利で、とってもステキ。
今年5月に出版された作品で、主人公は泣き虫のミミズでございます。こちらも涙であたり一面が水浸しになります。ミミズはワニの背中に乗ってぷかぷかと漂います。ただ、この作品は前の2冊以上に、「泣くこと」へのメッセージがストレートでございます。「泣くのは悪いことじゃない」どころか、「泣くと、こんないいことがある」と、ユーモアたっぷりにメリットを次々にプレゼンしてくれるのでございます。塩なしで鍋いっぱいのパスタがゆでられる、木の下で泣けば洋梨が育つなどなど。ユニークな発想で、泣くことをどこまでも前向きに描いている一冊でございます。
3冊を並べてみると、アプローチはそれぞれ異なりますが、共通して「涙は止めるべきものではなく自然に流れるもの」「その涙のそばには必ず誰かが寄り添っている」ということ。そして、涙を「困ったもの」ではなく、子どもの大切な感情の表れとして、あたたかく受け止めてくれています。そしてさらに、涙の持つエネルギーを丸ごと楽しんでいるかのようです。涙の価値を大らかに全肯定してくれているのでございます。
思い返せば、こうした兆しは以前にもあったような…。私が大好きな絵本作家、内田麟太郎さまと大島妙子さまによる『なくのかな』(童心社)でございます。迷子になった男の子が、「鬼も泣くのかな」「オオカミも泣くのかな」「侍も泣くのかな」と想像をふくらませていく、内田さまならではのナンセンス全開の絵本でございます。
この絵本が刊行された当時(2018年)は特別意識することはございませんでしたが、今振り返ると、この絵本はすでに「泣くこと」ををナンセンスとユーモアでまるごと肯定する空気を、さりげなくまとっていたのではないかと…。
この機会に、ぜひイマドキの涙絵本(涙全肯定絵本)をご体験いただければと存じます。
N田N昌さんの新刊絵本
読んだら最後、つい口ずさんじゃう!クセになる新感覚絵本
・「ぱかぱかぱかぱかぱかぱかアルパカ」 声に出して読みたくなる、不思議な言葉遊び動物園にようこそ!
・ちょこっと聞こえる次ページの言葉でクイズ遊びができます! ex.おらおら→オランウータン
・動物なりきりごっこで 大盛りあがり!
「ぱかぱかぱかぱかぱかぱかアルパカ」…。思わず声に出して読んでみたくなる、不思議なことば遊び動物園へようこそ。ページをめくればリズムがはずみ、子どもも大人もつい口ずさみたくなる、読みたくなる。ハムスターやアルマジロ、フラミンゴたちも、ゆかいなオノマトペにのってご来場をお待ちしています。読めば読むほどクセになる、口が勝手に動きだす新感覚絵本。親子で声をそろえれば、楽しさはさらに広がります。読み終わっても、気がつくと「ぱかぱかぱかぱか…」とつぶやいてしまう不思議な絵本です。
N田N昌さんの絵本
「じゃあね」「さよなら」
夕方、公園で遊んでいたこどもたちが家に帰っていきます。
「いいなぁ いいなぁ」
遊具のパンダは他の遊具が止めるのも聞かず、ぴょんぴょんと公園外に出ていってしまいました。
「ぼくもいっしょにかえっていい?」「みんなあそぶのやめてまでかえるんだからすごくたのしいことがあるんでしょ」と、一人のおとこのこを背中に乗せて、ぴょーんとその子の家へと向かいます。
「ただいまー」とおとこのこ。
(ただいまってなんだろう)。
パンダはおとこのこが入った家の窓から中をのぞいていると、ごはんをつくるママ。仕事から帰ったパパと三人で食卓を囲む楽しそうな姿が。パンダは急に公園に帰りたくなり・・・。
ふだん何気なくしている、大切なことに気づく心温まるお話。
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