vol.10 どちらも兼ね備えた絵本『まっかっか トマト』
「酸っぱい味がすごく好き」
そう言って、今日も酢の物をひたすらおかわりする息子。
これは、最近、酢にハマってしまった私の影響。
「チョコレートは苦いから嫌い」
小さい頃から決してチョコレートを食べようとしない息子。
これは、恐らく2歳の頃、バレンタインデーにおませな女の子からもらった大人っぽいチョコレートの味の記憶のせい。
誰でもそうだと思うのですが、「すごく好き」「すごく嫌い」には、たいてい具体的な「きっかけ」や理由があるもの。息子の場合は、特に味に対しての好みが経験で決まっていくらしいのです。
ところが、それにくらべて、野菜や肉の好みは明確ではありません。嫌いではない。なんとなく好き。食べにくいからあんまり好まない、など。料理によって印象も変わりますしね。
そんな中、唯一、愛して止まない野菜が「トマト」。より正確に言えば「プチトマト」です。どのくらい好きかと言えば、小学生の頃、珍しく訪れたホテルの朝食のビュッフェで、大きなお皿にプチトマトを山盛りに乗せて、それしか食べなかったくらい。もったいないです。どうしてそんなことになったのでしょう。記憶を遡ってみると…。
思い出しました。
小さい頃、外で遊んでいる時に、お友だちのおばあちゃんが、庭で採れたプチトマトを口にぽいっと入れてくれたのです。その美味しさにびっくりして、何個ももらうだけでなく、庭まで訪れて、ほとんど食べ尽くしてしまったのです(今思えば、申し訳ないことをしたものです)。この時の味がきっかけなのでしょうか。それとも、直接もぎとって食べた感動の方なのでしょうか。それとも、お友だちのおばあちゃんの優しさも込みなのでしょうか。とにかく、トマトに関しては、味だけでなく、イメージで好きになっている部分もあるのでしょう。
まあ、野菜を好きになってくれるなら、どちらでも嬉しいですよね。肝心なのは「きっかけ」です。そして、実体験だけでなく、そのきっかけづくりに多いに貢献してくれるのが…絵本だと思うのです。
特に、こんなふうに瑞々しく美味しそうに描かれた絵本っていうのは、記憶の中にある「味」も「イメージ」も、どちらも刺激してくれます。どちらも兼ね備えている優秀な絵本を読んでいると、いつのまにか「好き」から「大好き」に昇格していってしまう確率も大きいはずなのです。
まっかっか トマト
「どーんとやさい」シリーズ第5弾。まっかなトマトが登場です。
はっぱの かおり むむん むん
あおいみ どこどこ そだってる
あおあお トマト
いつのまに まっか?
あれっ しろくなったよ
青い実から赤い実へ変身していくとき、いちど白っぽくなる時期があるんですって。
よーく見ると、実にはおへそがあったり、たねの部屋がいくつもあったり。
いつも食べているトマトだけどはじめて知ることがいっぱい。
たねから芽をだして、ぐぐぐいーんと大きく育ち……、えっ、こんなに伸びるの、というくらい、生命力がはじける縦長の絵は見どころです。
色々な種類のトマトがころころと並んでいる絵がかわいい!
裏表紙にはシリーズ恒例、「ほんとうのおおきさ」のたねの絵もあります。
『きゃっきゃ きゃべつ』『どっかん だいこん』などシリーズの他の本と、たねの大きさを見比べてみてくださいね。
子どもの好奇心を育てる野菜絵本。
親子はもちろん、幼稚園や保育園で読んでも楽しそう。
自然界や食材に興味をもちはじめた3歳から小学校低学年くらいの子どもたちにぜひ読んであげたいです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
どちらかというと、「好き」になるにもストーリー性を重視してしまう私にとっては、同じトマトでも、こんな絵本たちからイメージをいただいたりしています。
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磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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