【絵本と旅に出よう】南極めざして大冒険しよう!
あこがれの南極大冒険に必要な小さな冒険者のための絵本
「南極大陸」の存在を知ったのは、初めて地球儀を見た時です。まあるい地球のボールの下に位置する、白い大きな氷の大陸。そこは、世界で一番寒い場所で、世界のどの国にも支配されていない場所。まるで、物語やゲームに登場する架空の地図を見るように、見知らぬ大陸にワクワクしたのを覚えています。
「絵本と旅にでる」をテーマに、いろいろな場所へ絵本を持ってでかけてみる。旅する絵本は、お部屋の中では決して語りかけてはくれない口調で、私たちに語り掛けてきます。湖も凍る、空気も凍る、手がちぎれそうになるくらい寒い雪山に持参した今回の絵本。すっかり気持ちは、冒険者。いくつになっても南極大冒険へでかけることはできるんです。好きな時に好きな場所で。絵本が一緒なら!
オーロラにペンギンに氷山。9歳の女の子の南極体験日記
『ソフィー・スコットの南極日記』(小峰書店)は、南極までに行く道のりと南極に滞在した日々を、9歳の女の子の視点で描かれた日記風の絵本です。
南極の観測基地に滞在中の観測隊員が向き合っている厳しい自然を描いた記録とは異なり、あくまでも、子どもの気持ちで描かれたワクワクとドキドキがたっぷりつまった素敵な冒険記録になっています。
もう一つ大きな特徴としては、この絵本が空想のものではなく、作者の本当の体験談で、ノンフィクションのドキュメンタリーであることも冒険心をくすぐります。野生のペンギンやシャチを発見したり、ソフィーが陸に降りた時に感じる「陸酔い」、どのくらいのお洋服を重ね着して寒さをしのでいたかなど、事細かな描写が、絵本の読者にリアルな臨場感を与えてくれるのです。
作者のアリソン・レスターさんは、2005年にオーストラリア南極観測隊の研究員として、オーロラ・オーストラリス号に乗って、南極のモーソン基地に6週間滞在しています。その間、ご自身の南極での体験談を毎日ひたすらメールで世界中の学校やご家庭に伝えていました。すると、その体験談からインスピレーションを受けた子どもたちが、南極での生活を想像し、たくさんの絵を描いて送ってくれたのだそうです。そのリアリティーといったら、本当にお見事!!まるで、南極ですべてを見てきたかのような素晴らしい絵ばかり。その子どもたちの絵は、主人公のソフィーが描いた絵として、この絵本の中に実際に登場しています。
9歳のソフィー・スコットは、船長さんのパパといっしょに南極にいくことになりました。氷山にびっくりしたり、ペンギンやアザラシやシャチとであったり、友だちができたり、オーロラに目をみはったり、猛吹雪にあってパパの船にもどれなくなったり……わくわく、どきどきする毎日です! この本の作者、アリソン・レスターはオーストラリアの初代〈子どものためのローリエット(桂冠作家)〉に選ばれ、遠征隊の研究員として南極にいきました。この作品では、レスターの分身ともいえるソフィー・スコットが、好奇心いっぱいのまなざしで、驚きにみちた南極をながめ、日記に記します。レスターは、豆知識ももりこみながら、親しみやすく、美しい、南極物語を書きあげました。
南極大冒険のための準備その1.世界の国名をマスターせよ!
ソフィーと一緒にオーロラ・オーストラリス号に乗って南極から戻ると、気分は、すっかり南極探検隊。大満足して静かに絵本を閉じました。そういえば、ソフィーは、南極にあるオーストラリアの観察基地で観察隊員の人たちと過ごしていました。そう、南極は1959年に南極条約というルールが決定してからは、どこの国にも所属せず、世界の国々が平和的に利用している場所。日本では、昭和基地以外にもいくつか拠点にしている場所があるし、それぞれの国の基地も南極には存在するはず。つまり、南極には、研究や観察のため世界中の人が集まっているということですよね。場合によっては、お互いの基地を行き来したり、助けをお願いすることもあるかもしれません。
そうなると、南極大冒険を実行する前に、絶対知っておいたほうがいいことがあります。日本の代表として南極に行くわけだから、世界の国がどこにあるのかはもちろん、世界の国の名前もきちんと言えたほうがいいですよね。ましてや日本人ですから、日本の県名と位置は絶対に覚えておきたいところ。
でも、だいじょうぶ。地図を楽しくしっかり覚えられちゃう絵本があります。この絵本を見つけた時、子ども時代に出合えていたら、さぞかし地理が大好きになっていたはず!と悔しくなりました。それくらい愉快!痛快!です。だって、国の形を動物や乗り物の形で覚えるんですよ。これだったら私でも忘れません。今からでも間に合いますかね...。ここで、しっかり親子でマスターしていましょう。
独創的で楽しい覚え方なので、海外の人と世界地図や日本の話をする時にも話題になりそうですね!
ライオンはドイツ、獅子舞は中国、クジラはロシア……
世界中の国々の場所と大きさが、かわいいイラストでたのしくおぼえられる絵本。
小学生でしっておきたい国、約50ヵ国をピックアップ。国の特徴や首都の名前も書いてあり、受験にも役立つ内容です。
「しょうぼうしゃのかたちは島根県」ベストセラーのちず絵本がパワーアップ! 県のイラスト5点がもっとおもしろく、覚えやすく変身です。
地図と国旗の絵本と図鑑
南極大冒険のための準備その2. 止められない好奇心と観察眼を育てよう!
アリソン・レスターさんの絵本日記を見て気づいたことがあります。「冒険は記録すること」が大切だってこと。もちろん、大冒険してきた!と口で言うのは簡単だし、今はスマートフォンで写真やビデオを撮影することもできます。でも、ただビデオを撮影しているだけでは、それはなんの記録にもならない。見たものを自分の眼で心で捉えて、スケッチして描く、何をその時感じて、心を揺り動かされたのかは、自分自身の言葉で記録しなければ、冒険していない人には伝わらないのです。
ワクワクする気持ちを大切にして、好奇心をもつこと。いろいろなものをじっくりと観察して表現する能力も冒険者には必要なのでは?と感じました。
そこで、気持ちがぱぁっと解き放たれる絵本を紹介したいと思います。
『はくぶつかんのよる』(岩波書店)は、『あおのじかん』(岩波書店)のイザベル・シムレールさんの絵本。標本だったはずの黄色い蝶に誘われ、夜の博物館で、恐竜の骨、昆虫、動物の標本や、お面や仏像などが生き生きと動き出します。驚くほど美しい色の世界に大人も子どもも目が釘付けになるはずです。
重要なのは、綺麗で美しいことだけではありません。そこで表現されている動物や昆虫は博物館に展示され実在するもの。図鑑同様に名前が明記してあります。夜の誰もない博物館を想像しただけでも、ワクワクしてしまいますが、絵本のすみからすみまでしっかり観察してみましょう。気になる昆虫や動物は、図鑑でも調べてみると、その動物や昆虫が動いている姿を見たくなるかもしれません。冒険心をくすぐる要素がたっぷりつめこまれている絵本なのです。
だれもいなくなった夜の博物館.しずまりかえった展示室から,一ぴきのきいろいチョウがにげだします.それを合図に,標本の昆虫や恐竜の化石,はくせいの動物や鳥たちが,いっせいに目をさまして,動きだします! 夜が明けるまで,博物館はおまつりさわぎ.『あおのじかん』の作者がえがく,圧巻のナイトミュージアム.
南極大冒険を夢見て、ワクワクするを心くすぐる絵本
いかがでしたか?
心の中の冒険なら、絵本の力をちょっぴりかりれば、大人も子どもも身軽なまま、出かけることができます。大切なのは、出かけたままで終わるのではなく、その魔法を現実の世界へと少しだけ持ち帰ること。絵本が与えてくれた勇気や希望は、きっといろいろな場面で助けてくれると思います。
絵本と旅をすればするほど、絵本に鍛えられ、磨かれた冒険心は現実にもくじけません!お気に入りの絵本を1冊手にとって、あなたの冒険のおともに連れて行ってください。いつもと何かが違う、そう感じることができたのならしめたもの。あなたの特別な1冊を見つけてくださいね。
文・写真 富田直美(絵本ナビ編集部)
富田直美(とみたなおみ)
アメリカ在住歴7年。米国ペンシルベニア州に大学留学。卒業後、カリフォルニア州にて就職し、帰国後は、海外プロダクションと映画やゲームの映像制作に関わる。現在は絵本ナビで英語を楽しむ絵本や洋書の魅力を配信中。英語で世界の人とつながる面白さを伝えるべく、我が子におうち英語実践中。二児のママ。
【連載】「絵本をもって旅に出よう」を絵本ナビスタイルで執筆中。https://style.ehonnavi.net/post-series/25324
【連載】「絵本で楽しむ英語の世界」を絵本ナビスタイルで執筆中。https://style.ehonnavi.net/post-series/28403
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