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小学生におすすめの新刊

【小学1、2年生におすすめの新刊】『そらのかんちゃん ちていのコロちゃん』

子どもたちの夢を思いっきり叶えてくれる物語

質問です。

雲の上に行ってみたいと思ったことはありますか?
空に浮かぶふわふわの雲を眺めているとなんだか乗れそうだなあとか、誰か住んでいるんじゃないかなあ、なんて思えてきたり。そんな風にもしかしたら?と想像することはとても楽しいですよね。

では、今度は視線を上から下にさげて、地下の世界。私たちが住んでいる地面の下にはどんな世界が広がっているのでしょうか。


そんな空想をめぐらせたことのある子どもたちや大人の方に、空の上から土の下の国を行き来する壮大な冒険物語をご紹介したいと思います。
さあ、かんちゃんとコロちゃんと一緒に冒険の旅へ出かけましょう!

雲の上のくにや地底のくにってどうなってるの?

そらのかんちゃん、ちていのコロちゃん

雲の上のくに 地底のくに 氷のくに

かんちゃんは、雲の上のくにに住んでいます。ある日雲からおっこちて、着いた先は、火山の中の地底温泉プール。地底のくにに住むコロちゃんと友だちになりました。ふたりは、雲の上のくに、地底のくに、氷のくにで、たっぷり食べ、遊びます。それは、幼い子どもたちの暮らしそのものです。「スノークリームにじシチュー」「こうもりつうしん」など魅力的な食べ物や脇役も登場する、不思議で楽しいお話です。全3話。

おすすめポイント!

  • 最初にこの物語が発表されたのは、福音館書店書店発行「母の友」の「こどもに聞かせる一日一話」。作者の東直子さんは、自分が子どもだったらこんなお話をお母さんにしてもらえたらうれしいだろうなあ、と思いながら、子どもだった自分に話しかけるように書いたのだそうです。この「話しかけるように書いた」というのは読んでみて納得でした。目でたどっただけでも柔らかくて優しいきれいな日本語が、さらに声に出して読んでみるとリズムの良さも加わって、とても心地良いんです。ぜひ、最初はお子さんに読んで聞かせてあげると、親子で一緒に楽しめますよ。
  • 1冊まるごと読むのはちょっと長いなと思ったら、お話は3つに分かれていますので、1話ずつ読んでみて下さい。1話ずつ読んでもとっても楽しいお話です。
  • 全てのページにカラフルな挿絵が入っていて、絵もとっても楽しいのが魅力!
  • 文章が横書きなので絵本の延長として読め、絵本から読み物への移行がスムーズにできます。
2話目「コロちゃん、くもの上」より

こんなタイプの子に特におすすめ

対象年齢は、小学校1、2年生ぐらいがぴったり。さし絵がたっぷり入っているので、親御さんが読んであげれば、4歳ぐらいから楽しめるのではないかと思います。さし絵がとても可愛らしく、色使いもきれいなので、とくに女の子が好みそうですが、2年生ぐらいまでは男の子もハマりそうです。空想するのが好きな子はもちろんのこと、どこか違う世界に行ってみたいなあ、と思ったことのある子はぜひ読んでみて下さい。

どんなお話?

「くもの上のくに」のかんちゃんと「ちていのくに」のコロちゃんが出会う1話、コロちゃんが「くもの上のくに」に遊びに行く2話、最後に、かんちゃんとコロちゃんが洞窟探検へ行き、そこで「こおりのくに」のレンちゃんに出会う話の3話と、3つのお話が入っています。

1話目で出会ったかんちゃんとコロちゃんはすぐに仲良くなり、それぞれの国を行き来するようになります。一緒におやつやご飯を食べたり、お昼寝したり、ママのお手伝いをしたり、ドライブをしたり……。それぞれに初めての体験を楽しみながら、仲良く遊びます。

 

3話目「どうくつすいろとこおりのくに」より

ここが面白い!

①「くもの上のくに」「ちていのくに」「こおりのくに」それぞれの世界にあるアイテムが魅力的!

まず食べもの!
・くものわたあめ
・やきたてのようがんケーキ
・くみたてのしみずソーダ
・こだいチョコドリンク
・やきわたぐも
・スノークリームにじシチュー
など、たくさんの楽しそうな食べ物が出てきます。その中でも特に私が魅かれてしまったのが、シチューの調味料として登場する「にじのかけら」。この「にじのかけら」、「赤いかけらは、げんきになるあじ。青いかけらは、すっきりするあじ。きいろいかけらは、目がさめるあじ」がするのだそう。他の食べものについても、それぞれ口に入れるとどんな味がしてどんな感じがするのかの説明があるので、実際に食べてみたような気持ちになれますよ。

 

その他
・ちていほたるかいちゅうでんとう
・でんとうきんぎょ
・ひかりくらげ
・こおりすいしょう
・つららふうりん
いったいどう使うのでしょう?どの場面で出てくるか見つけてみて下さいね。


②それぞれの国をつなぐ通信手段や、行き来する方法が楽しい。
通信手段は、「こうもりつうしん」「わたぐもパラシュートメール」「パラシュートたっきゅうびん」「みずぐもいとでんわ」……、それぞれの国を行き来する方法は、「くものはしご」「にじのすべりだい」「くものブランコ」など。
どの場面で登場して、どんな風に使われているのか探してみて下さいね。


③住む場所や文化が違う友だちをすぐに歓迎してくれるパパママの温かさが嬉しい!

最初に「ちていのくに」にやってきたのは、かんちゃん。それは「くもの上」から落ちてくるという突然の訪問でした。
にも関わらず、すぐに優しく対応してくれるコロちゃん。そしてコロちゃんのママも「あらあら、これはこれは、かわいい、めずらしいおきゃくさんねえ」と言ってすぐにおやつを出してくれるんです。この時かんちゃんがホッとするのと同時に、読者である子どもたちもホッと安心感を覚えるのではないでしょうか。そして「くもの上のくに」へ遊びに行ったコロちゃんも、同じようにかんちゃんのパパママにそれはそれは温かな歓迎を受けるんです。大好きな友だちをパパママが温かく受け入れてくれることってきっと子どもたちにとって、とっても嬉しいことですよね。それがこのお話ではたっぷり実現される喜びがあるように思います。

この本を作ったのは?

お話を書かれたのは、歌人で作家の東直子さん。多くの歌集や小説を発表されながら、絵本『さわさわもみじ』『あめぽぽぽ』などの「きせつのおでかけえほん」シリーズや、『ふるふるフルーツ』など読んで心地よい、研ぎ澄まされたことばの感性で人気を博している作家さんです。低学年向けの童話を書かれたのは本書が初ではないかと思うのですが、東さんのことばの表現が、童話の世界にぴったり合っているなあと感じました。

たとえば、本書の中の「くものわたあめ」についての次の表現。
「くものわたあめは、ふんわりふわふわ。とってもあまくて、ちょっぴりひんやりしていて、口の中で、じゅわじゅわ、と、すぐにとけるのです。」

なんだか味も触感もまるで本当に食べているかのように、豊かに感じられますよね。

 

東直子さんは子どもの頃、土の下にも絶対に別の世界ー地底の国があるに違いない、地面を掘り続ければ、きっとそこに辿り着けるに違いない、と思ってスコップで一心に土を掘り続けたのだそう。しかし目的は果たせず。けれどもそのころの空想癖を使っていろいろな作品を書かれていて、『そらのかんちゃん ちていのコロちゃん』もそんな子どもの時に想像したことと直結しているのだそうです。子ども心がくすぐられる秘密はこうしたところにあるのでしょうね。

 

絵を描かれたのは、100%ORANGEの及川賢治さん。『ぶうさんのぶー』や『まるさんかくぞう』など絵本の世界でも大人気のイラストレーターさんです。東直子さんが想像した楽しい世界やアイテムの数々を可愛らしく夢いっぱいに表現されています。
 

https://www.ehonnavi.net/shopping/item.asp?c=5103000601

いかがでしたか?

お話の中では、どんなところだって行けるし、冒険だって自由自在。雲の上から地底まで、かんちゃんとコロちゃんと一緒に壮大な冒険をたっぷり楽しんでみて下さいね。

 

 

秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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