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【季節のおすすめ読み物】『みどりのスキップ』

春から初夏へと移り変わる一瞬のきらめき 

お花見は春の大きな楽しみのひとつ。空に細い枝をめいっぱい広げて咲きほこるうすピンク色の桜の景色は、何度見てもいいものですよね。ああ、この美しい景色をできるだけここにとどめておきたい、ずっと眺めていたい。そう思ってしまうのは私だけでしょうか。しかしハッと気づいた時には、いつの間にか葉桜となり緑の景色に変わっていたりして。いつの間にこんなことに?

そう思っていたら、その一瞬のような季節の移り変わりをじっくり堪能させてくれるこんなお話があったんです。

『みどりのスキップ』

みどりのスキップ

出版社からの内容紹介

安房直子の名作に美しい挿絵をつけた絵童話

大好きな花かげちゃんを、寝ずの番で守ろうとするみみずくの、はかない思いと、たからかにやってくるみどりのスキップの様子が、美しい文章と絵で綴られます。

どんなお話?

ある日、林の中で「花かげちゃん」に出会ったみみずく。花かげちゃんは、黒いかみの毛をさらさら揺らしてうすいさくら色のきものを着て、満開の桜の下に座っていました。そのあどけない笑顔を見て以来、みみずくは花かげちゃんを守ろうと決めます。雨がふらないように、風がふかないように、わるものがしのびこんでさらっていかないように、花の季節がけっしておわらないように。桜林の中にだれかが一歩でも入ってこようものなら鋭い目でひとにらみするので、だれひとり入ってくるものはおらず、林の中はいつも花ざかりでした。
けれどもあるとき、大きなこうもりがさをさした小さな人がいちもくさんに林の中に飛び込んできたのを最初に、次には「トット トット トット トット」という足音が。ただごとじゃない、ただごとじゃない、と思いながらもまぶたがどんどん重くなっていくみみずく。ぐっすりと眠り、いったん目を覚ますと、桜林はなんとなく様子が違っていて、大事な花かげちゃんもうすくなっていたのです。それからというもの、夜も昼も決して眠らず、番をいっそう強めるみみずくでしたが……。

 

「それでもちゃんと、くるのよ。どんなにとめても みどりのスキップはくるのよ。」
という花かげちゃんのことばが、心に残ります。

対象年齢は?

挿絵がたくさん入っていて、易しい文章で書かれているので、2年生ぐらいから読めるお話です。想像を膨らませれば膨らませるほど豊かな世界が広がっていきますので、できればはじめは大人が読んであげると、イメージが大きく広がってより楽しめるのではないかと思います。お話は短めですが、高学年の子や大人の方にもじっくり味わっていただきたく、幅広い年代の方におすすめしたい作品です。

おすすめポイント

  • 目に浮かぶような美しい桜林の色、、風の音、花の歌声、「トット トット トット トット」という小さな足音、眠くて眠くて仕方のないみみずくの様子、緑がやってくる時の匂いなど、お話を読んでいると、さまざまな音や匂いや感じが伝わってきて、五感に働きかけてきます。まるでみみずくと一緒に林の中にいるような臨場感が味わえます。
     
  • 「花かげちゃん」「雨こぞう」「みどりのスキップ」など可愛らしい登場人物はいったい何者なのでしょう。いろいろ想像を膨らませてみて下さいね。
     
  • 物語にぴったりの幻想的で色彩豊かな出久根育さんの挿絵は、ずっと眺めていたいほどの美しさ。とくに花ざかりの林のピンク色の景色と、まぶしいほどの青葉に溢れた緑色の景色は圧巻です。みみずくの大きな鋭い目にもご注目を!
     
  • 最後のページにおまけとして、寝ずに番をするみみずくを励ますためにきつねのおくさんが入れてくれたコーヒーのレシピが紹介されています。大人の方は真似して入れてみたり、子どもたちはどんな味がするのかなあなどと楽しく想像してみて下さいね。

みんなの声より

5歳の息子に読みました。

美しいけれども短い桜の季節の哀しさが、みみずくと花かげちゃんのやりとりを通して描かれます。桜の花が散って、葉桜になる、ほんの短い間の出来事です。日本の自然の美しさを感じさせてくれる童話です。

漢字にはルビが振ってありますが、結構難しい漢字も使われているので、自分で読むなら小学校中学年くらいかと思います。そして、桜の季節に読みたいですね。
(さみはさみさん 30代・ママ 男の子5歳、男の子1歳)

娘とふたり、桜の季節に読みました。
あまりの美しさに心がふわあっとさらわれるようでした。
花ざかりの桜林の様子も、みどりのスキップの様子も。
あたりが緑に変わるようすって、確かにスキップするような
感じだものなあ。うきうきするし(みみずくさんは決して
うきうきしなかったわけですけれども)
安房さんの物語も、出久根さんの挿絵も素敵で、物語の中に
ひきずりこまれました。
季節の移り変わりがある国に住んでいて本当によかったなあと
思いました。
この本を読みながら、匂いとか、色とか、空気や風を感じました。
(ぽこさんママさん 40代・ママ 女の子6歳)

このお話を書かれたのは?

児童文学作家の安房直子さん。
柔らかな語り口と美しい文章、日常の世界からふんわりとファンタジーの世界へ気持ちよく誘う物語は、小さな子から大人の方まで幅広い年代の方に愛されています。
ほのぼのとした作品から、ときに人間のさみしさや悲しさ、欲深さなどの感情を繊細に描く作品も多くありますが、いつも温かい読後感に包まれる作風が魅力です。
たくさんの作品を残されていますが、国語の教科書に採用された『きつねの窓』がとくに有名なのではないでしょうか。

最後に安房直子さんの絵本や読み物のおすすめを対象年齢別にご紹介します。

個人的には、春や秋の季節になると安房直子さんのファンタジー作品が読みたくなります。自然の美しさを感じる作品が多いからでしょうか。この『みどりのスキップ』のお話は、出会って以降、満開の桜が葉桜に変わっていく頃に必ず思い出す1冊となりました。

 

秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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