【プラチナブック選定作品】芸術の秋にオススメの小さな「・」をめぐる物語。『てん』(あすなろ書房)
絵本ナビに登録されている「絵本」ジャンルの作品(約2万4,000作品)のうち、
レビュー評価・レビュー数・販売実績などから算出された、TOP3%のとびきりの人気作品が「プラチナブック」です。
全国の書店店頭には、プラチナブックメダルの目印をつけて、並んでいます。
絵本ナビ1000万人ユーザーが選んだ”とびっきり”の人気作からご紹介するのはコチラ!
お絵かきなんて大嫌い! 苦しまぎれに描いたのは、小さな小さな《てん》ひとつ。そのちっぽけな《てん》にかくされた大きな意味を知って、ワシテは変わり始める。 水彩絵の具と紅茶で描かれた、色とりどりの美しい絵本。
1000万人の絵本ナビユーザーの心をつかんだ魅力とは?
魅力① 主人公・ワシテに寄りそう先生の姿に感動!
ワシテは絵を描くのが大嫌いな女の子。
お絵かきの時間が終わっても、紙は白いまま、何も描かれていません。
そんなワシテに、先生は「なにか しるしを つけてみて。そして どうなるか みてみるの」と言います。
苛立ち紛れにマーカーでたったひとつ小さな「・」と自分のサインをつけるワシテ。
翌日、その紙はきれいな額に収められ、教室に飾られていました。
それを見たワシテは「もっと いい てんだって わたし かけるわ!」と、今まで開いたこともなかったパレットのふたを開けることになるのです。
嫌いなことに対してやる気が出ない、好きなことと嫌いなことで態度が違うというのは、誰でも一度は経験があると思います。
でも、そのとき、誰かが寄り添ってくれることで、その後の人生がガラッと変わることがあることを、この絵本は教えてくれます。
魅力② ワシテの成長物語に共感!
どんなに誰かが親身になっても、本人がやる気にならなければ、結局道は閉ざされてしまうものです。
たったひとつの点から、思いもしなかった偉業を成し遂げるまでに至るのは、ワシテ自身の努力と成長によるもの。
自分が変わることで、大きな成功を得ること、周りを幸せにできることをこの物語は教えてくれます。
そして物語のラストのエピソードでは、ワシテがかつての先生のように、誰かに寄り添える立場になったことを知り、読者はその成長をより強く感じることができることでしょう。
魅力③ 大人の絵本としてもオススメ!
「絵本は子どもが楽しむもの」そう思われている方に、この作品の持つメッセージと深みはとても新鮮に映ると思います。
「こんな先生に会いたかった」
「私も我が子にこういう言葉をかけられる大人になりたい……」
絵本ナビでも、多くの大人の方からのレビューが寄せられています。
お子さんと一緒に楽しむのはもちろん、大人の方への贈り物としても喜ばれる一冊です。
ユーザーの声をご紹介します。
ワシテの気持ち、分かります。
同じ作者の「ちいさなあなたへ」が、とても好きだったので、本屋さんで手に取りました。
私は、小さいときから絵を描くことが好きだったし、絵本を読むことも好きでした。
でも。
大きくなると、自分がいちばんうまいんじゃないことに気づきました。
もっとうまい子なんてたくさんいるのです。
それを知ったとき、絶対にかなわないって思ったとき・・・描けなくなりました。
だから、ワシテの気持ち、よく分かります。
上手に描けるかどうか、誉められるかどうか・・・いろいろ考えすぎて、手が動かないのです。
周りの大人の評価や対応で、子どものやる気って簡単にしぼんでしまうのですね。
ワシテの先生は、真っ白なままの画用紙を見て「ふぶきのなかの ほっきょくぐまね」なんて、とてもユニークです。
ワシテは反発して「やめてよ!」なんて言っていますが、
ワシテの描いた「てん」に、先生はサインを求めます。
その「てん」が、額に入れて飾られ、展覧会まで開かれて・・・
ワシテはどんどんやる気になっていきます。
そして、かつてのワシテのような男の子にも、「サインして」と励まします。
先生がしてくれたように。
こうやって、いい連鎖がつながっていくなんて、とてもステキです。
みんながみんな、展覧会を開けるほど評価されるなんてことはないのだろうけど、大事なのはそこじゃないですよね。
自分に自信を持つということ、ありのままの自分を出せばいいのだということ、自分にできる精一杯を出し切ればいいのだということ。
それを教えてくれる絵本だと思います。
私も、子どもができた今は、絵を描くこともなくなり、もっぱら絵を見る側です。
まだ2歳の息子なので、ぐちゃぐちゃと線を引いて「ちょうちょ!」って言っていても、
「上手だね。天才!」なんて言ってあげれていますが、
ワシテくらい大きくなっても、この先生のように言ってあげられてるだろうか・・・って考えてしまいました。
「大きくなったんだから、このくらい上手に描けるはずだ」なんて期待しすぎてしまわないように、
時折この絵本を読み返して自分を戒めたい、と思いました。
(シーアさん)
我が子のよさを誰よりもわかってあげたい
先生(または親、大人)の一言が、どれだけ子どもの心(可能性、将来)に大きな影響を与えうるかを再認識させられた一冊でした。
子どもの短所やできないことを指摘するよりも、よいところを1つでも多く見つけて、ほめてあげること・・・その大切さは、重々心得ているつもりではいましたが、娘が学校に入学した途端に、その1番大事なことを忘れかけていました。
それは、これまでの親と子の1対1の関係から、先生という第3者が間に入ることによって、他人の目による娘への評価に、自分自身の心が右往左往してしまうことになったからです。
最初の子どもで、しかも自分が小学校時代を過ごしたことのない国での入学・・・本当に戸惑いと驚きの連続でした。
初めての宿題は、アルファベットの書き方も、色塗りも、ほとんど“Messy”(ぐちゃぐちゃ)と書かれて返されてました。
自分自身、親に宿題を手伝ってもらった記憶もありませんし、子どもに対しても、本人のやる気に任せ、その子の興味やペースに合わせて学んでいけばいいと思っていたので、こちらの学校の「親の手助けがすべて」というようなやり方には、ついていけない感がありました。
それでも、「ぐちゃぐちゃ」と書かれれば、娘もがっかりして、傷つきますし、私も親の意地で、評価を上げたいという気持ちがわいてきます。
そして、気がつくと、娘の心を無視して、「そんなふうにかいたら、また“Messy”って書かれちゃうよ。そうしたら、悲しいでしょ。」なんて言って、型どおりの書き方(描き方、塗り方)を求めるようになっていきました。
心の中では、「はみ出しちゃったけど、元気いっぱいでいいよね。」とか、
「とってもきれいな色使いだね。ママ、こんな明るい色、大好きだな。」って、ほめてあげればいいのに・・・、と思っていてもです。
子どもがもって生まれた良いところを伸ばしてあげるどころか、良い芽をどんどん摘んでしまう言葉ばかり口にしている自分が情けなくなりました。
それから数ヶ月。評価は“Messy”から”Excellent”に変わりました。
でも、それがどれだけの意味があるのだろう?と、今でも考える毎日です。
この絵本を読んで、「こんな素晴らしい先生に出会えたらいいなあ」と思ったのはもちろんですが、現実には、担任の先生は選べません。
学校で、先生が子どもに投げかける一言一言に聞き耳を立てているわけにもいきません。
だからこそ、先生にどんな評価を受けようと、いつでもあるがままの我が子のよさを信じ、それを子どもにも伝えられる親になりたいな、と思いました。
娘は、絵を描くことも、文章を書くことも大好き・・・上手い下手でなく、「大好き」という気持ちを何よりも大切にしてあげたいと願っています。
(ガーリャさん)
『てん』を生み出したのはこのお二人!
ピーター・レイノルズ(作)
1961年カナダ・トロント生まれの絵本作家、イラストレーター。
『てん』(あすなろ書房)、イラストを担当した『ジュディ・モード』シリーズ(小峰書店)『ちいさなあなたへ』『っぽい』(共に主婦の友社)など、作品は多数。
米国マサチューセッツ州在住。
谷川俊太郎(訳)
1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。
1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、詩、絵本、翻訳など幅広く活躍。
1975年日本翻訳文化賞、1988年野間児童文芸賞、1993年萩原朔太郎賞を受賞。ほか受賞多数。
絵本作品に『ことばあそびうた』(福音館書店)、『マザー・グースのうた』(草思社)、『これはのみのぴこ』(サンリード刊)、『もこもこもこ』(文研出版)、「まり」(クレヨンハウス刊)、「わたし」(福音館書店)、「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)他多数の作品がある。翻訳作品も多数。
ピーター・レイノルズの作品
プラチナブック4月選定作品
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