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子どもの本と出会うばしょ

【子どもの本と出会うばしょ】東京・西荻窪 トムズボックス

本との新しい出会いを楽しみに、街の本屋さんや図書館へ…。心惹かれる一冊を手に取る瞬間は、心躍りますね。

オフィスで毎日絵本に囲まれている絵本ナビスタッフですが、プライベートでもやっぱり絵本があるばしょをウロウロしています。

個性あふれる児童書専門店や、絵本や児童書に力を入れているこだわりの書店さんや図書館……。

思いのこもった「子どもの本との出会いのばしょ」を、ぜひ読者の方たちと共有したい、そんな気持ちからスタッフ突撃企画をスタートしました。

第7回にご紹介するのは、西荻窪の古書店「トムズボックス」。

トムズボックスといえば、吉祥寺の絵本専門店、絵本ファンが集う聖地として知られましたが、2015年に惜しまれつつ閉店。2019年6月末に、西荻窪で古書店として新規オープンしました。

 

店主の土井章史さんは、フリーの絵本編集者で、同じく絵本編集者で・装丁家の小野明さんとともに絵本ワークショップ「あとさき塾」を主催。編集プロダクション・トムズボックス代表として、数多くの絵本の制作に携わっている方でもあります。

「西荻窪の駅から東京女子大へ向かう通り、吉祥寺方向へ10分ほど歩いた場所にあります。赤枠の窓と扉がかわいい外観と、箱からのぞくクマの看板が目印です。こじんまりとした店内に、絵本がぎっしり! なかなか手に入らない貴重な本もあちこちに…。

営業は、木・金・土の週3日間。週末は、近所の親子連れのほか、絵本ファンや作家さんが遊びに来て、店主と話し込む光景も。時々、絵本作家の加藤志異さんが店番しているときもありますよ。
(絵本ナビスタッフ・K)

看板は和田誠さんのデザイン!

店内に並ぶ本は、およそ2000冊。そのメインを占めるのは、店主の土井さんが30年以上集めてきた蔵書。長新太さん、井上洋介さん、和田誠さんなどを中心とした、こだわりの作家の作品が、壁一面の本棚にずらりと並びます。開店にあたって、ほぼ買い付けがいらなかったというコレクション量は驚きです!(そしてまだまだ数年分の在庫があるのだとか…!)

絵本は、作家ごとにまとまって並べられています。

中央のテーブルは、企画棚。伺ったときは、トムズボックス編集の本やトムズボックス謹製ピンバッジが陳列されていました。

入口の面出しの本棚には、お手頃な200円の絵本のコーナーも。

店主・土井さんに伺いました!

――トムズボックスを古書店としてオープンした理由を伺えますか?

吉祥寺でトムズボックスを開いていた頃から古書の扱いはあって、新刊と古本を混ぜて置いていたのですが、もともと古本が好きだったから、古書店をやりたいというイメージをずっと持っていました。それと、古本屋という立場だったら、好きな作家の作品で、尖りすぎて時代に合わなかったり、作家性が出すぎて売れなかったものなど、埋もれている作品にも光を当てられる。そういうところが魅力だった。マニアックなファンに、「この作家は、こんな仕事もやってたんだ!」という新しい発見になるような出会いを作れたら面白いと思います。

子どもは作家で絵本を選んだりしないから、こういうのは大人の絵本の楽しみ方なんだけど、ここが、好きな作家の作家像を探ったり、そういうファンの人が集う空間になったら嬉しいよね。

――絵本の古書との出会いを教えてください!

もともと古書収集はしていたのだけれど、『一億人の昭和史 漫画大図鑑』(1982年 毎日新聞社)というムック雑誌の編集に加わったときに、昭和の漫画の歴史をまとめた中に「異色コーナー」という枠で、一枚漫画の長新太や井上洋介を紹介したのがきっかけです。彼らを追いかけたら、やなせたかしや東君平の児童書と出会って、そこから収集対象を絵本に変えちゃった。そこから長新太、井上洋介を頂点に面白い作家が裾野にどんどん広がっていって、木場井悦子、丸木俊、たむらしげる、スズキコージ、飯野和好、ささめやゆき、荒井良二……と、コレクションが増えていったんだよね。

――古書を扱う面白さとは、どんなところですか?

古本屋は独断で本の値段をつけるわけで、お客さんは高いと思ったら買わない。その値付けに共感してくれる人だけが買ってくれるわけです。一冊一冊が定価と違うところで勝負できるのが古本の面白いところだと思います。

古書価値というのは、時代で変わるので、僕が買っていた時代より今は相場が明らかに安くなっていて、買ったときよりずっと安く値段をつけないといけないのがつらい作業。評価している本を、泣く泣く買ってもらうための値付けをする、そこのふんぎりのつけ方が古本屋のテーマだね(笑)。

自慢の逸品を伺いました!

ご紹介いただいたのは、土井さんがひそかに忍ばせているというイチオシのお宝本。

1945年刊行の、ソウル・スタインバーグの作品集『ALL IN LINE』。

※ソウル・スタインバーグ(Saul Steinberg):ルーマニア出身、アメリカで活躍した漫画家・イラストレーター

これは、和田誠が高校生のときに、友達のお父さんから3日間借りて模写したという画集です。その友達のお父さんというのは佐次たかしという漫画家だったんだけど、これは、和田誠の原点みたいな本だね。

「トムズボックス」店主・土井章史さん。長新太さんの絵本とパチリ。

絵本ナビ読者へメッセージをいただきました!

絵本は、子どものものだけにしておくにはもったいないメディアだと思います。大人も好きな作家を見つけて楽しみましょう!

トムズボックス

 

〒167-0042
東京都杉並区西荻北3-11-16
03-5303-9737

営業日:金曜日・土曜日(12時~20時)・日曜日(12時~18時)

(営業時間は変更になることがございますので、SNSをご確認ください。)

公式サイト twitter

通販サイト

店内の一角には、土井さんが編集を手掛けた本も、一部並んでいます。

長新太さんのお気に入りだったレコードが店内のBGMにかかっていることも。

ぜひ、あなただけの宝物の一冊を探しに、出掛けてみてくださいね。

改訂増補版 絵本をつくりたい人へ

2014年に出版したムック版を改訂増補してボリュームアップ、より詳しく絵本づくりの極意をお伝えします。 
著者は、人気の絵本作家養成ワークショップ「あとさき塾」で30年以上のキャリアを誇り、私塾でも数々の有名絵本作家を輩出しているトムズボックスの土井章史氏。
はじめに、絵本の様々な種類や本の基本的な構造の紹介を紹介し、その後、絵本のつくり方の基礎や心構え、留意点などをわかりやすく解説してきます。また、人気絵本作家や絵本業界で活躍する方々のインタビュー、著者のコラムなども盛り込み、読み物としても楽しい1冊になっています。

★作家インタビュー プロの作家や、絵本業界の声を届けます。
・及川賢治(100%ORANGE)
・酒井駒子
・島田ゆか
・どいかや
・荒井良二
・内田麟太郎
・若月眞知子(ブロンズ新社 代表)
・磯崎園子(絵本ナビ 編集長)

https://www.ehonnavi.net/style/110/7/ 【長新太没後10年記念連載】土井章史さんインタビュー

子どもの本と出会うばしょ
全国にある書店さんや図書館に絵本ナビスタッフが訪れて、今イチオシの絵本やおすすめポイントを伺い、連載形式でお届けします。
オフィスの場所柄、都心が多めとなりますが、ときには遠方へも足を伸ばせたら…と意気込んでおります!
読者のみなさんも、ここの書店や図書館がおすすめ!というお気に入りのばしょがありましたら、ぜひアンケートより情報をお寄せくださいね。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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