【現役東大生が教える「読書を楽しくする魔法」】なぜ子どもは本が苦手になる?〜読み聞かせのその先へ〜
こんにちは、読書教育のYondemyです。
子どもが本に親しむための最初の一歩として、絵本の読み聞かせは重要です。
親子のコミュニケーションの一つでもあり、多くのお母さんお父さんが、忙しい中でも時間を見つけて取り組んでいますね。
今回お話しするのは読み聞かせについてではありません。
「その先」についてお話ししたいと思います。
実は本が嫌いな子どもなんていない!?
本を読むことが苦手で、読書がなかなか好きになれない子どもっていますよね。
でも実は、そもそも子どもはみんな本が好きなんです。
本が嫌いな子どもはいないんです。
保育園や幼稚園の読み聞かせ会の風景を思い出してください。
おしゃべり、積み木、お絵かき。子どもたちはそれぞれが思い思いのことをしています。
でも先生が絵本の読み聞かせを始めると、面白いように子どもたちは絵本に吸い寄せられていきます。その時していた遊びは投げ出して先生のもとへ駆け寄る子もいれば、気がないような顔をして聞き耳を立てている子もいます。
子どもはみんな「おはなし」が大好きなんです。
いつ子どもは本が苦手になるのか
「本が嫌いな子どもはいない? うちの子どもは本が嫌いなんだけど。」
こんなことを思った方もいるかもしれません。
でも、それは少し違います。
本は、おはなしは、好きなんです。でも、あることが苦手なだけです。
本を「読む」ことが苦手なだけです。
「本は嫌い」とは言っても、テレビのドラマやアニメなどの「ストーリー」、つまり「おはなし」は好き。そんな子どもはかなり多いのです。
では、子どもはいつ本が苦手になるのでしょうか。
多くの子どもが絵本は好きです。でも、例えば文庫本や小説が好きな子どもはグッと減ります。
鍵になるのは絵本と文庫本の間。
つまり、「読み聞かせのその先」です。
読み聞かせと、その先に待ち構えている読書体験には、主に二つの違いがあり、それらは子どもたちにとって大きなハードルとなり得ます。
ハードル(1)「うちの子はなかなか自力読みをしてくれなくて……」
これは、読書に関する講演会をした時に実際に親御さんからあがった悩みです。
読み聞かせは喜んで聞くのに、決して自発的に自力で絵本を読もうとしない。
おそらく多くの親御さんが直面する悩みでしょう。
「読んでもらうのを聞くだけ」という受動的な読書体験から、「自分で文字を読んで理解する」という主体的な読書体験へ。
教室の中、家の中で読み聞かせをしてくれている声に耳をかたむけるという体験から、
自ら本棚まで行き、本を手に取り目で文字を追うという体験まで。
これが一つ目の「読み聞かせとその先の子どもの読書体験の違い」です。
ハードル(2)「子どもがちゃんと理解して本を読んでいるのか不安……」
これも実際にある親御さんが悩んでいたことです。
この悩みからわかる二つ目の「読み聞かせとその先の子どもの読書体験の違い」。
それは、「お母さんお父さんと一緒」という共有される読書体験から、「自分一人で」という孤独な読書体験への変化です。
読み聞かせは親御さんと一緒に絵本を楽しみます。親御さんも子どもの表情などを見て、難しそうなら二回三回と繰り返し読み聞かせてあげるなどの工夫をします。
でも自力で読むとなると、難しかったと感じた時にも子ども自身でなんとかしなくてはいけなくなります。
冒頭で、読み聞かせは親子のコミュニケーションの一つであると書きました。
でもその先の読書は、親子のコミュニケーションとして捉えられていない。
だから、「子どもがちゃんと理解して本を読んでいるのか不安……」という悩みが出るのです。
この2つのハードルを乗り越えるために家庭でできる読書へのフォローはあるのでしょうか。
答えとしては、「Yes」です。
読み聞かせの次に必要なフォローとは
二つのハードルを超えるために有効とされる、具体的なコミュニケーションの取り方をいくつか紹介します。
皆さんは、「考え聞かせ」という言葉を聞いた事がありますか?
考え聞かせとは、ずばり一言でいうと
「読み聞かせをしながら、読み手(親御さん)が考えていることを伝える」ということです。
最近読んだ私の好きな絵本を例に説明します。
森絵都さんの『ぼくだけのこと』(偕成社)です。
「ぼくだけのこと」「わたしだけのこと」って言われたら、何か見つけられる?
うーん、何だろう。すごく足が早いわけでもないし、珍しいペットを飼ってるってわけでもない。
ようたくんの「ぼくだけのこと」はこんな感じです。
「お兄ちゃんと妹、3人兄弟のなかで、ぼくだけ、右のほっぺにえくぼがある。
これは、ちょっと嬉しい ぼくだけのこと。」
お兄ちゃんも証言してくれています。
「確かに弟にはえくぼがあります。笑うとできるし、怒るとなくなります。」
それから、家族の中ではぼくだけ、いつも蚊にさされるし、
仲良し6人組の中では、ぼくだけ、逆立ちあるきができる。
452人いる学校の生徒の中で、ぼくだけ、運動会の閉会式で貧血をおこしてたおれたり、
町内だと、ぼくだけ、隣の家の犬にほえられないんだ。
ようたくんってどんな子なのか、だんだん見えてくる。
そんな「ぼくだけのこと」がたくさん重なった「ぼく」とまったく同じ子がいるとしたら、
それってすごい奇跡!ぼくは世界にただひとり。
「ぼく」が過ごす新しい一日、これも全部ぼくだけのこと。
そう思うとすごいよね。
人気の児童文学作家であり、直木賞受賞作家でもある森絵都さんによる心に残る絵本。
スギヤマカナヨさんの明るくて可愛い絵が、この絵本を親しみやすく魅力的なものにしています。
「ぼくだけのこと」「わたしだけのこと」。
家族や友だちに聞きながら、ゆっくりでいいから見つけてみようかな。
この1ページ目で、もし私が考え聞かせをするとしたらこんな感じになります。
「ぼくにはきょうだいがふたりいる。おにいちゃんがひとりに、いもうとが、ひとり。ほんとだ、二人となりにいるね。おにいちゃんはサッカーが好きなのかな? いもうとはぬいぐるみをもっているね。さんにんきょうだいのなかで、ぼくだけ、みぎのほっぺにえくぼがある。3人とも笑っているけど、たしかにえくぼがあるのはぼくだけだ。あれ、私ってえくぼあったかな。ない気がするな。これはちょっとうれしいぼくだけのこと。えくぼがあるってのはぼくにとって嬉しいことなんだな。このあともきっとぼくだけのことが出てくるんだろうけど、それも嬉しいことなのかな、それとも悲しいことなのかな。気になるね。」
太字部分が本文、普通に読み聞かせをするように読みます。細字部分が「私(読み手)の考えていること」です。
読み聞かせをしながら、同時に読み手(親御さん)が考えていることも伝えるのです。
考え聞かせの大きな目的は、「自分の本の読み方を子ども(聞き手)に譲り渡す」ということです。
まだまだ読書初心者である子どもたちに、読書の先輩である大人の私たちはこんな風に本を読んでいるよ、ということをリアルタイムで体感してもらう。
これは”本の読み方”を誰からも習うことのない子どもたちにとって、とても大きな意味をもつはずです。
「自分で考えながら本を読むと楽しいんだ。」「一人で読んでも、本って楽しいんだ。」と子どもたちが気づいてくれたら嬉しいですよね。
そして考え聞かせの次の段階として、一人で読書している子どもに対してこんな関わり合いをしてあげましょう。
「親も同じ本を読んでおいて、その本の感想を子どもと共有する。」「子どもに読んだ本をおすすめしてもらう。」
どちらも子どもを孤独にしないためのサポートです。
また、「絵本を一冊読んであげたら、お返しに、子どもに一冊読み聞かせをしてもらう。」「一度読み聞かせをしてもらった絵本のあらすじを説明してもらう。」といったフォローも効果的でしょう。
これは、子どもの受動的な姿勢を主体的な姿勢へと変えるためのサポートです。
「本が好き」を大事に
そもそも子どもはみんな本が好きなんです。
でも年齢が上がるにつれて、読む本のレベルが上がるにつれて、どこかで挫折してしまうことがあるのです。
読み聞かせが本の世界への入り口だとしたら、せめて自転車に乗って本の世界を自由に走り回れるようになるまでは、サポートしてあげた方がいいのではないでしょうか。
いきなり補助輪なしで自転車に乗るのは無理です。
最初は補助輪をつけてあげましょう。
子どもたちの「本が好き」という気持ちを大事に育んでいきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございます。
読書教育のYondemyは、
本が嫌いな子どもなんていない。
ただちょっと読書が“苦手“なだけ。
日本中の子どもたちに本と親しむきっかけを届け、「本が好き」
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