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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

「社会のしくみを知る力」、絵本でどう伸ばす? 

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

身の回りのことから社会に興味を持とう!

連載第4回のテーマは、「社会のしくみを知る力」。

いま、子どもたちをとりまく社会は、昔よりとても複雑になっています。生活を支えるさまざまな物は、多くの人々や広い地域、国々が関わっています。いつもスーパーで買っている食べ物は、いろいろな場所、国から運ばれていること、そして、いま住んでいる「日本」という国の当たり前と、ほかの国の当たり前とはそれぞれ違うこと。意識していなければ、あまり気づかないかもしれません。ですが、そういった身のまわりのものに興味や疑問をもつことは、これからとても重要となってきます。

環境活動家のグレタさんやノーベル平和賞を受賞したマララさんのように、子どもでも自分の意見を発信し、人々を動かすことが可能な時代となりました。世の中への疑問はすぐにインターネットで調べることもできます。自分たちのまわりのできごとに、まず興味をもって考えること、身近なものへ疑問を持つことが、新しい物を生む力になると思います。

そこで今回は、そうした”社会のしくみ”に興味をもち、考えていくことのできる絵本をご紹介したいと思います。自分たちをとりまく「社会」に興味をもことで、生活を助けてくれる人々を応援したり、手に入った物に感謝したりするきっかけともなるはずです。

身近なものは、どうやって作られている?

チョコレートはどこから来るの?

チョコレートがおいしいわけ

カカオの実のカカとポドが案内役で、アフリカから工場、お店と、チョコレートができるまでを追います。
おいしそうなチョコレートがいっぱい。

現代の地球規模でのモノづくりがみられる絵本が『チョコレートがおいしいわけ』です。子どもたちが大好きなチョコレートの材料カカオ豆がどのように作られて日本に運ばれてくるのかが、とても楽しく描かれています。見開きにもカカオ豆の栽培国がどこかや、チョコレートに関わる豆知識がたくさん載っているので、読み応え抜群です。

羊の毛から服ができるまで

ペレのあたらしいふく

男の子が羊や近所の人たちの協力で、青い服を手に入れるまでの楽しいお話。男の子のお返しの労働が、美しい自然を背景に生き生きと描かれて胸をうちます。

また、洋服がどうやってできるのかが分かる、『ペレのあたらしいふく』も、おすすめです。羊の毛から服が作られていく過程がとても楽しく描かれています。家庭で布を織ったり糸をつむいだりという時代は、はるか昔のこととなりました。この絵本では、羊の毛を洋服にするまで、どれだけの手間ひまがかかっているのかよく分かります。ほんっとーに!とても手間がかかるので、昔の日本では「布」はとても貴重品とされていたそうです。ですので、布が古くなってきたら、服をほどいて作り直したり染めなおしたり、ボロボロになっても雑巾にしたり縄をよったり、最後まで使い切っていたのです。

現代では、服はとても安くなり、毎シーズン買い換えたりもできるようになりましたが、この絵本からは、モノを作ることの大変さとともに、なぜ現代では安く売ることができるようになったのか?などからも、モノづくりや社会の仕組みについて親子で話すきっかけになると思います。

そして、この絵本のすごいところは、洋服を作ってもらうために、ペレが“はたらいて”いることです。子どもが3,4歳くらいになると、お手伝いをしてもらうようになると思いますが、そのお手伝い(はたらき)の価値はどのくらいのものなのか、絵本をきっかけに、それぞれのご家庭でお話ししてはいかがでしょうか。

物の値段や価値は、どうやって決まるの?

消防車の値段、知ってる?

くるまの ねだんのえほん

「消防車はいくら?」「スポーツカーは?」無限の数の世界に親しめる絵本。

タイトルそのままで、いろいろなタイプの車とその値段を書いてある「だけ」の絵本です。ですが、シンプルなだけに、非常に深いところまで考えることができるんです。

男の子が大好きな「くるま」の写真とともに、それぞれの値段が示されます。数字で、「新車=2,226,000円」などと書いてあるので、最初は私も、「子どもに数字の読み方を教えようか」くらいの気持ちで手に入れました。しかし、繰り返し読んでいるうちに、どんどん子どもたちに「なぜなに?」と疑問がわいてくるのです。

たとえば、この絵本の中で一番値段の高い車は消防車なのですが、おなじ車なのに、なぜその値段が一番高いか、子どもに疑問がわきます。そうすると、大きいといろいろな材料を使うから高くなるんじゃないか、でも、それより大きいダンプカーはもっと安いぞ、たくさん走っている車と、少ししか走っていない車のちがいかな? 少ししか走ってない車が高いのはなぜ?……など、物には値段があり、その値段はどうやって決まっていくのか?ということまで考えることができる絵本なんです。

物に値段があることを知ると、お店に行っても「なぜ同じお肉でも高い安いがあるのか」など、世の中の値段や価値というものについて、話し合えるようになると思います。ちょっと昔(2004年刊行)なので、現代の値段はどうなっているのかも興味深いですが、値段はどうやって決まるのかに気づくことのできる良い絵本です。小学1年生以上くらいの子には、『100円たんけん』(くもん出版)もおすすめですよ。

国と国との関わりって?

せかいで いちばん つよい国

「せかいじゅうの 人びとを しあわせにするため」に世界中を征服した、ある大きな国の大統領のおはなし。強者のゆがんだ論理を明るいユーモアで皮肉たっぷりに描いた寓話絵本。

お友達同士で仲良く遊んだり、ときにはケンカをしたり……人と人との関わりについてはパパママも自分の経験からなんとか説明できると思いますが、国と国とがどう関わっているのか、ましてや争いについて、子どもたちにどう説明したらよいか、考えてしまいますよね。ですが、ニュースなどを聞いていると、だんだん子どもたちは世界の国々のできごとにも興味をもってくると思います。そういったときに、まず『せかいでいちばんつよいくに』をおすすめします。

世界でいちばん強い国が、ある小さな国を攻めていくお話ですが、小さな国にはなんと、兵隊がいません。兵隊がいなければ戦争はできません。大きな国の兵隊たちを招き入れた小さな国の人々は……という物語です。

いろいろな方向から考えさせられます。この絵本では、大きな国が、なぜほかの国を攻めたのか理由が描かれていますが、そこから「正義」っていったいなんだろう?ということや、小さな国と大きな国、本当に強いのはいったいどちらなんだろう? などなど、「ただしさ」「つよさ」という、人や国によってさまざまな考え方のあることに対して一緒に考えることができる絵本です。

ほかにも「世界」に興味を持ち始めた子におすすめの本

モノが私たちの手にとどくまで

はしれ!たくはいびん

宅配便の車に乗って、おじいちゃんの畑のりんごの、町までの旅が始まります。大きなトラックに乗り換えて……楽しい乗り物絵本。

最近では、ネットで物を買ったり、遠い場所から品物を買うことも増えてきました。ときには、外国から品物を買うこともあります。そんなとき、買うことはできても、届けてもらわないとその物を手に入れることができません。そんな「届ける」お仕事の大切さを描いているのがこの絵本です。

荷物をすばやく届けるためには、宅配便屋さんはどのような工夫をしているのか、どれだけ多くの人たちが荷物を運ぶことに関わっているのかを、しっかり取材していて、とてもわかりやすく伝えてくれます。この絵本では、日本の中の移動なので車で運んでいますが、外国から物を送ってもらうにはなにをつかう?島へ運ぶにはなにをつかう?などもお話ししてみるとおもしろいですよ。

さいごに

子どもたちにとって、もっとも身近な社会は、スーパーや商店などお金と物を交換する場所ではないでしょうか。我が家も、連れて行かざるを得ない年齢の子どもたちなのでいっしょに買い物をしますが、おもちゃのついたお菓子が買いたい、ガチャガチャしたいなどなど、いろんな誘惑がいっぱいです。ですが、『くるまのねだんのえほん』のおかげで、すべての物には値段というものがありそれに見合うお金が必要なのだということがわかってきたようです。さいきんでは「〇〇円までよ!」など値段の話もできたり、「このお菓子は、このおかずと同じくらい高いのよ」など比べて諭せるようになりました。

また、なにかの待ち時間に、「これは何からできているでしょうか?」など、まわりのものの原材料当てゲームなどをすることもあります。チョコレートがカカオ豆からできるという知識も新鮮だったようですが、コーヒーもお豆からできているのよ、大豆からできている物ってこんなにたくさんあるのよ、など、身近な商品にどれだけの人の手が加わっているのかと、子どもたちも感じ入るようです。時間つぶしにもなって、おすすめですよ。

うちの子どもたちは、今のところ、今回紹介した絵本に対して面白がりつつも、そこまではっきりと世の中について考えているかどうかはわかりません。ですが、今の子どもたちは、スマホやタブレットを自在に操って様々なことをしらべたり、広い世の中につながることができます。社会の仕組みに興味を持った子は自分からさまざまな情報をえて、世界をどんどん広げていくことができます。あまり興味がないと、情報に対して受け身となってしまいます。身の回りのことに興味をもって行動するかどうかで、その子の生きる世界は大きくも小さくもなると思うのです。

今回ご紹介した絵本をきっかけに、身近なものが、大きな社会の仕組みにどうつながっているか、家族でいっしょにお話ししてみてください。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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