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あなたが「今」好きな絵本3冊は、なんですか?

【vol.3】自分の素直な原点に戻ってみると<『暮しの手帖』編集長・北川史織さん>

 

あなたが「今」好きな絵本3冊はなんですか?

ふいにこんな質問を投げてみたとしたら、どんな答えが返ってくるのでしょう。
この質問を投げかける相手の条件は「絵本の読者」。絵本ナビ編集長・磯崎による連載企画。

絵本を通して「今」が見えてくる

第3回に登場してくださったのは、憧れのあの雑誌の……!? 

「連載へよせて」全文はこちら>>

お話を聞くのは…

 

北川史織(きたがわしおり)さん

 

『暮しの手帖』編集長。フリーペーパーや住まいづくりの雑誌の編集部を経て、2010年に暮しの手帖社に入社。以後、数多くの本誌記事や別冊を担当し、2020年より現職。好きな分野は、料理、住まい、人物ルポルタージュ。

 

暮しの手帖社HP

第3回に登場してくださったのは、1948年の創刊から70年以上、暮らしの知恵を伝えてきた雑誌『暮しの手帖』の北川史織編集長です。磯崎との出会いは、昨年の11月に発売された『暮しの手帖 第5世紀9号』に、付録として絵本『しろいみつばち』(絵・文 きくちちき)が収録され、その発売記念トークイベントに呼んでいただいたことがきっかけでした。(『暮しの手帖 第5世紀9号』刊行記念オンライントークイベント「きくちちきさんからの贈り物」磯崎編集長出演

 

ちきさんのお話はとても面白く、思い出深いイベントとなったのですが、その打ち合わせでお会いした際に、北川編集長が「この自粛期間、絵本を読むようになった」とおっしゃっていた言葉がとても印象的でした。普段から絵本を読んでいる私たちとは、きっとまた違った視点のお話が伺えるのではないかと、今回思い切って声をかけさせていただいたのです。インタビューは、「絵本っていいなあ」と、改めて気が付かされる内容になりました。

自分の素直な原点に戻ってみると

―― 今日はよろしくお願いします。お忙しい中(取材は最新号発売日の次の日に行われました)、ありがとうございます。私にとって雑誌づくりの仕事というのは未知の世界ですが、最近はずっと在宅で行われているんですか?

 

実は、コロナのことがある少し前から、在宅でも仕事ができるようにと会社全体で少しずつ準備はしていたのです。子育て中のスタッフも多いですから。でも、まさかこんなことになるとは思っていませんでした。私が編集長という立場でつくり始めたのは『暮しの手帖 第5世紀4号』(2020年1月24日発売)からで、その後6号の頃にはほぼ在宅ワークが中心に。それ以来、慣れない状況の中で、ずっとバタバタしながらの制作が続いているという感じです。

―― そうだったんですね。でも、そんな中で、ふと絵本を手に取り読まれるようになったとお話されていましたね。

 

普段の私は、絵本というのは好きではあるけれど(絵本ナビの会員でもいらっしゃるそうです!)、月に何冊も買ったり、夜寝る前に必ず読む、というほど絵本のある生活をしていたわけでもなかったんです。日々仕事に追われている中で、取材でお会いした方にいただいたり、仕事のために取り寄せたりということはありましたけど、自分のために絵本を買うということは、ここしばらくなかったと思います。

 

ところが、昨年4月頃からコロナ禍の影響で取材がままならなくなっていき、不安定なことが次々に降りかかってきて。それでも発売日は決まってますので、朝から晩まで校正紙に向き合う日々で、気軽に同僚に相談したり、雑談をしたりということも出来なくなって。全く一人の状態で、段々と精神的に追い詰められていき、自分自身が非常に不安定になってしまった時期があったんです。

 

こんなことは初めてでした。割と楽天的で、締め切りに追われていても平気なタイプなんです。これは良くないなと思って、普段は心の拠り所としている小説を読んでみても、活字が頭に入ってこない。同僚に相談しようにも、あまり不安にさせるようなことも言えないですし、世間ではもっと苦しい思いをされている方もいるでしょうし。そんな解消できない悩みというのが、どんどん自分の心の中に沈殿していってしまったんですね。そういうときに、なんだかふと読みたいと心に浮かんできたのが「絵本」だったんです。

 

―― では、ここで質問を投げかけてみますね。

あなたが「今」好きな絵本3冊は、なんですか?

そのときに、最初に手に取った絵本がこちら。『ふたりは ともだち』(アーノルド・ローベル・作 三木 卓・訳 文化出版局)です。

愛され続ける がまくんとかえるくんの物語

ふたりはともだち

仲よしのがまくんとかえるくんを主人公にしたユーモラスな友情物語を5編収録。読みきかせにもふさわしいローベルの傑作です。小学校の教科書に採用されています。

―― ローベルの名作ですね!どうして思い浮かんだのでしょうね。

 

実は、一昨年のクリスマスに、同僚のお子さんにこの絵本をプレゼントしたのです。本屋さんで目にしたときに、ああ懐かしいと思いまして。

 

―― 子どもの頃に読まれていたんですか?

 

大好きでした。「おてがみ」というお話を教科書で読んで、いいなあと思って。きっと他のお話も面白いと思い、買ってもらったんだと思うんです。繰り返し読んでいました。そのお子さんには、年齢的にはまだ早かったんですよね。でも、興味を持ってくれたという話をしてくれて、同僚も喜んでくれたんです。そういうこともあって、またこの絵本が無性に読みたくなって、自分のために取り寄せたんです。

―― 改めて読んでみて、どうでしたか?

 

私が今求めているのは「人とのつながり」だったんだ、ということがよくわかりました。

 

―― と言いますと?

 

正直なところ、自分は孤独が好きだと思っていたんです。海外旅行も一人で行きますし、食事や映画も一人で楽しめる。一人に強いと思っていましたし、仕事だって一人の方が集中できるんじゃないかと思っていたんですよね。ところが、この絵本を読んでいるうちに、何人かの親しい友人たちの顔が浮かんできて、じんわりと温かな気持ちになってきて。人と会って、お茶をしながら、ちょっとしたことを話す。そういうことを大切にしていたんじゃないかと。

 

―― がまくんとかえるくんのやりとりや、暮らしぶりを見ていると、本当にそう思いますよね。

 

ほとんど二人しか出てこない静かな世界だけれど、がまくんもかえるくんも、満ち足りているということが伝わってくる。「ああ、そうか。ともだちってこういうものなのか」と。少しワガママで、ときには憎まれ口をたたくがまくんと、理知的で優しいかえるくん。全く性格の違う二人が、助けあったり、思いやったり、あるいは好き勝手なことを言い合ったり。格好つけた部分だけじゃなく、素直な自分を見せる相手がいるのって、いいものだなあ、と。

―― 確かに、この年齢になったからこそ見えてくる「ともだちの有難さ」というのもあります。

 

世の中では、愚痴を言っちゃいけないという様な風潮もありますけど、許しあえる相手と言い合う分には構わないんじゃないか。自分の格好悪さや弱さを見せるというのも、悪くないんじゃないかと思いますよね。

この「すいえい」というお話もとても面白くて。水着姿のがまくんを見て、みんなが大笑いする。そして驚くことに、かえるくんまで笑っている。お腹を抱えて大笑いしている。ともだちだから堪えるという訳でもなく、意地悪という訳でもない。それって、すごく人間らしくていいなあって。その後の会話も可笑しくて、後味が悪い感じもしないのです。確かに教科書には載らないかもしれないけれど、このお話を子どもたちに差し出すローベルも、訳されている三木さんもすごいですよね。読者を信頼しているな、と感じるんです。どのお話も、教訓や道徳的なことに留めていない。冴えたユーモアがすみずみまで行きわたった文章です。

「このがまくんの表情もたまらないですよね!」と、絵本を見ながら盛り上がってしまいます。

―― 読んでいると、自分がどういう子どもだったかというのも思い出したりして。

 

そうなんですよね。私は、二人の暮らしている家の情景に憧れていた、ということを思い出しました。例えば、二人が座ってお手紙を待っている玄関先のポーチですとか、寝ているベッド、お茶のセットやスタンドなど。何もかもが可愛い。壁にかかっている時計やカップボードなんかも……どれも本当に愛おしく描かれていますよね。特に、かえるくんがお手紙を書くときに使っているこのライティングデスクがすごく好きで。たまたま友人の家にそっくりなデスクがあって、羨ましいと思っていたことまで思い出しました(笑)。

 

もちろん当時は「しっかりした暮らし方だ」なんてことは思わなかったですけど、今改めて見ると、暮らしを大切にしていないと描けない絵だということが伝わってきますよね。

北川さんが憧れたというライティングデスク、確かにこれは素敵です……。

―― もしかしたら、北川さんの原点がそこに……?

 

そうかもしれないですよね。憧れの原点。再び出会えることができてよかったです。

 

―― 本当ですか? この企画をお願いした私も、嬉しいです。それでは、2冊目を教えてください。

 

2冊目は『くうき』(まど・みちお・作 ささめやゆき・絵 理論社)です。

ささめやゆきさんが描く、まどみちおさんの詩「くうき」

くうき

「くうき」はだれかれのへだてなく、まったく普通に、気づかせもせずに、そこにいてくれる。全ての中にゆきわたり、あらゆるものをつないで流れて行く…。100年を見つめてきた詩人・まどみちおの絵本。

最初に出会ったのは詩でした。『暮しの手帖 第5世紀6号』の取材で、生命学者の中村桂子さんをお訪ねしたとき、中村さんが、まど・みちおさんの「空気」という詩のことを話してくださったのです。コロナの影響が出始めた頃のことで、今ほど深刻な状況ではなかったものの、中村さんはすでに危機感を持っていらしたんだと思います。「私たち生きものには内と外の境界なんてない」というお話のなかで、引用されました。

 

「ぼくの 胸の中に いま 入ってきたのは いままで ママの胸の中にいた空気」から始まるこの詩を、人間だけが特別だとおごり高ぶる愚かしさはもちろん、私たちがつながりあって生きていることの不思議、いのちの奇跡を、ものすごくシンプルな言葉で伝えてくれている、と。

 

お話をしてくださった当時は、まだあまり実感がありませんでした。ところが、この号の校了作業に入った頃にはコロナが深刻な状況になり、一人孤独に仕事をしながら、私の中でも、感染やよくわからないものに対する「恐れ」や「不安」みたいなものが、大きくなっていったんです。そのときにこの詩を思い出し、詩集を取り寄せて読んでみると、なんだか納得したのです。世界中に広がる空気はつながっている。私たちもつながっているからこそウイルスの感染が起こるんだ、と。当たり前のことなんだけれど、落ち着きが胸の中に生まれ、くよくよするのはやめようと思えたんです。

『暮しの手帖 第5世紀6号』発売は5月でしたが、取材をされたのは1月だったそうです。

ある日、絵本翻訳家の伏見操さんとお会いしたときに(ご近所なのだそう!)お互いに好きなささめやゆきさんの絵の話になったんですが、そのときに「ささめやさんが絵を手掛けた『くうき』という絵本がすごくいい」と教えてくださったのです。

 

―― それは、すごい偶然ですね!

 

そうなんです。それですぐに絵本を取り寄せて読んでみたところ、詩だけでも響くものがあったのに、ささめやさんの絵が入ると更にイメージが膨らんで。ささめやさんの絵には、個人的に大人っぽい(艶っぽい)印象を抱いていたのですが、この本の絵には何だか子どもの絵の様な瑞々しさがあって。詩が、さらに身近になりますよね。これが絵本の力なんだと実感しました。

 

もしかしたら、子どもは絵本から入っていった方がわかるのかもしれませんね。絵を眺めながら、耳から言葉を入れて。すっと理解できるんじゃないでしょうか。子どもの頃からこの詩を知っていたら、どんなにいいだろうかと思いました。

 

―― 改めて今読んでみると、どきっとしますよね。物に触れないようにしなきゃ、空気を分断しなきゃ、人と会わないようにしなきゃと気を張っているところに、この内容。大人だって混乱してくる。だけど、変えようのない事実というのを、敢えて言ってもらうのは大切なことのようにも思います。

 

確かに、ウイルスは意思があって悪事をはたらいているわけじゃない。そういうことがわかっていても、しんどいですよね。まどさんや中村さんには、今の状況とは関係なく、もっと大きな視点があるんだと思うのです。私たちは何かと関わりがなければ生きていけない。誰にも迷惑をかけずに生きているような気がしているんだけれど、そうじゃない。そういうことって、普段はなかなか気がつけないですよね。詩の最後の「すべての生き物が兄弟であることを…」と言う言葉、以前だったらもう少しぼんやりと捉えていたと思うのですが、今はすんなりと入ってくる。コロナを経験したからこそ、人間だけが特別じゃないという事実が理解できる。

「すべての いきものが 兄弟であることを…と」

―― 読み終わると、なんだか安心感が生まれてくるのも不思議です。

 

まさに、安心という言葉がぴったりくるかもしれませんね。大きな世界の中で、自分は生かされているんだなと思うと、安心する。そういうことを忘れないでね、と優しく語りかけてくれているのがこの絵本だと思います。


―― それでは、最後3冊目を教えてください。

北川さんの特に好きな場面の一つがこちら。

―― それでは、最後3冊目を教えてください。

 

『ゆうかんなアイリーン』(ウィリアム・スタイグ・作 小川悦子・訳 らんか社)です。

 

この絵本に出会ったのは昨年の8月、真夏ですね(笑)。9号の「わたしの手帖」にご登場いただいた、小川悦子さんが翻訳された絵本です。取材のときに小川さんが読んでくださり、もう大好きになりました。

心からの「頑張れ」を感じる絵本

ゆうかんなアイリーン

病気になったお母さんの代わりに、猛吹雪とたたかってドレスを届けるアイリーン。日が暮れ道に迷い足をくじいたアイリーンは、お母さんを思うことで奮起します。

―― この表紙の絵からワクワクしますよね。

 

本当に。主人公のアイリーン、このいたいけな小さな女の子が、吹雪の中を大きな荷物を持って果敢にも出発する。いくら熱を出してしまったお母さんの代わりとはいえ、なかなか無茶な展開ですよね。そして、道に迷ったり、雪にうずもれたり、これでもかっていうくらいにひどい目に遭う。その姿は健気なのですが、それでいてお涙ちょうだいにはならず、どこか可笑しみを誘うのです。

 

―― 「アイリーン、がんばれ!」と応援しながらも、つい笑っちゃう。

 

この表情が大事ですよね。「負けるもんか」とつぶやく逞しい顔、雪から出てきたときのきっとした顔。箱をそり代わりにして滑っているときの嬉しそうな顔。これがもし活字だけだったら、こんなに面白い感じにはならないのかもしれない。もっと悲壮感にあふれていたかもしれない。心情をずらずら書かなくても、顔で物語っている。絵本ならではのユーモアなのでしょうね。

 

物語のラスト、お屋敷に着いてからのお話もとっても好き。アイリーンをいたわる大人たちがみんな優しくて、品性を持って彼女に接するんです。ドレスを恭しく受け取り、暖炉の前で美味しいご飯をご馳走し、きちんと馬車で送り届けて。彼女を一人前のレディとして扱って。気持ちのゆとりを感じますよね。大人ってこうでありたいし、世の中ってこういう風であってほしい。ひとことで言うと「善意」になるのでしょうけど、そういうものの気持ちよさ、優しさというものを感じます。お母さんが、素晴らしいお子さんだとほめられて、「でも、このことは おかあさんが 一番よくしっていたのです。」という最後のセリフにもしびれます。なんてあたたかく、そしてかっこいい終わり方なんだろうって。

 

今のこの時期、「頑張れ」と言われてもなかなか頑張れない、というか、もう十分に頑張っているよ、という気分にみんながなっていると思いますが、この本には心からの「頑張れ」がありますよね(書いてはありませんが)。人生は辛いことが多いけれども、捨てたものではない、そんな気分に素直になれてしまうのだから、絵本はすごいものだなと思います。

 

―― いつの間にか、力をもらっていたりもして。

 

小川さんが取材の中で「絵本においても、生き方においても、ユーモアがとても大事。色んなことがあるけど、人生って笑っちゃうことが大事よ。」とおっしゃっていて。まさにこの絵本に重なるところがありますよね。今、皆さんそれぞれ大変な思いをされているかと思いますし、「笑いなさいよ」とは簡単には言えません。だけど、ときに自分を「笑っちゃう」という感覚は大事なんじゃないかなと思いました。

アイリーン、うもれちゃってます……(笑)。

―― とても素敵な3冊!出会い方がそれぞれ違うのもいいですよね。どこか共通点は感じられましたか?

 

どの絵本を読んでいても感じますけれど、絵の力って大きいですよね。

 

―― 言葉に敏感な北川さんならではの選書だと思いましたけれど、絵の世界や表情にも癒されているんですね。

 

がまくんとかえるくんや、アイリーンなんかも、顔の表情や仕草が絶妙なニュアンスを伝えてくれています。それを最小限の言葉が支えている。そぎおとされた世界だなって。だからこそ、何度でも読めてしまう。絵本の上質さというものを感じます。

 

3冊とも、たった今の世の中の状況を見ながらつくられたものではないですよね。例え描かれている時代が違っていても、そこには、人が生きていく上で何を大事にして、何を嬉しがって、何を支えとするのか、そういう普遍性というものがしっかりと描かれている。もちろん小説もそうでしょうけど、絵本というのは、無駄をそいでいってシンプルな形で出していく。表現としては、すごく難しく、洗練された世界なんだと思います。何十年経っても読み返せるというのは、そういうことなのかな、と。

 

―― 確かに、読み継がれている絵本というのは、どの時代に読んでも違和感がない。

 

でも、言いたいことはちゃんと伝えるという強さもある。言葉だけじゃなく、絵があるからこそ、そこには説得力が必要になってきますよね。私が好きな絵本には、暮らしがきちんと描かれている。気持ちをすみずみまで行き届かせてつくられているんだな、と感じます。子どもって、その絵本に描かれていないところまで想像しますよね。自分の世界に影響を及ぼすほど入り込むことができる。絵本というのは長い時間をかけてつくるんだと聞いていたのですが、しっかりと読めば読むほど、「これは時間がかかるなあ」と、納得してしまいます。

 

――まさに北川さんも、こういう時期だったからこそ入り込めたということもあるかもしれないですね。

 

家から外に出られなかったので、余計にしっかりと絵本に向き合えました。1冊をこんなに何度も読むことって、他のジャンルではないかもしれませんよね。絵本が自分の支えになってくれるものなんだと、感じることができました。大人になると、やっぱり雑事の中で生きていますよね。色々な関わりの中でバランスをとって生きている。自分が何をしたいのか、何が好きなのか、優先順位が後ろになるにつれ、わからなくなってくる。でも、絵本を読んでいると、自分の素直な原点に戻れる、というのがあると思います。特に気持ちが張っている今だからこそ、本当の自分に向き合うためにも、絵本というものに没頭するのはいいことなんじゃないかと思いました。

―― どんな風に絵本を選んだらいいと思いますか?

 

私は、読んで良かった絵本の作家さんを読破するのが好きです。でも、今回伏見さんにおすすめしていただいたように、人から聞いて読んでみるのもいいなあと思いました。「好きな絵本ある?」と聞くと、いろんな答えが返ってくるのが楽しい。周りの人におすすめしてみたり、プレゼントするのもいいですよね。もらって嫌な人はいないでしょうし、感想の言葉の中に、その人のまた違った一面が見えてくることもあるかもしれない。なかなか会えないからこそ、同じ絵本を通して、オンラインで感想を言い合うのも楽しそうですよね。

 

―― まさにこの取材のことですね(笑)。目から鱗の言葉がたくさん飛び出して。本当に面白かったです。

 

こちらこそ、楽しかったです。この1年で出会った絵本があるからこそ、そこに関わっている人の話を聞きたい、会ってみたいという気持ちが生まれてくるということがあります。これからの「暮しの手帖」の特集にも、きっと影響していくことはあるんだろうなと思っています。

 

―― 楽しみにしています。今日はありがとうございました!

『暮しの手帖』最新号は絵本ナビでも購入可能です!

現在発売中の最新号『暮しの手帖 第5世紀10号』のキャッチコピーは「迷惑かけたっていいじゃない」。インタビューからつながっていくような気がしますよね。この号に添えられた、北川編集長の言葉もまた素敵でしたので、是非読んでみてください。

 

何気ない日々をいつくしむ ——編集長より、最新号発売のご挨拶>>>

暮しの手帖 第5世紀10号

[目次]
五つの詩
(まど・みちお、谷川俊太郎、工藤直子)

迷惑かけたっていいじゃない
(取材・文 石川理恵)

長尾智子のおいしい干し野菜
(料理 長尾智子)

初心者歓迎! 天ぷら教室
(料理 本田明子)

有元葉子の旬菜 第5回 早春
「冬野菜の名残と春のはしりを味わう」
(料理 有元葉子)

なっちゃんの大きくつくるプリン
(料理 千葉奈津絵)

ミロコマチコさんの家づくり
(文・写真 平野太呂 絵 ミロコマチコ)

ちぎり絵のグリーティングカード
(指導 鈴木雄大、鈴木ひらり)

贈り物をすてきに包めたら<後編>
包装紙で基本のラッピング
(指導 外川まり子)

よっちぼっち――家族四人の四つの人生
第10回「ナマモノのことば」
(写真・文 齋藤陽道)

あの人の本棚より
(伊藤亜紗)

また旅。 第7回 「宮崎へ」
(文・写真 岡本 仁)

わたしの仕事 第10回 「移動図書館の運転手/井上 保」
(取材・文 阿部直美)

ミロコマチコ 奄美大島新聞 第8回
(絵・文 ミロコマチコ)


ほか、続きはこちら>>>

※次号は3月25日発売予定です

暮しの手帖 5世紀11号
生きることは、楽しいことばかり

 

[目次より]

・わたしの手帖 「童話屋」田中和雄さん

・銅版画家・南 桂子 夜中にとびたつ小鳥のように

・おべんとうにも、ふだんのおかずにも

・飛田和緒さんのひらめきサンドイッチ

・身近な素材で、アクセサリーを

・おとなのための帆布バッグ

・ファミリーホームを知っていますか?

・若松英輔 詩が悲しみに寄り添えるなら

取材・文 磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

編集・看板イラスト 掛川 晶子

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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