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小学生におすすめの新刊

【小学3年生から大人の方におすすめの新刊】『ぼくのとうさん わたしのおかあちゃん』

親子で読みたい、家族への応援歌

お父さん、お母さんの仕事について考えたことはありますか?
その仕事内容について思っていることはありますか?
この本には、お父さんやお母さんが一生懸命働く姿を見つめる小学生の素直な想いが詰まっています。親の仕事をすごいな、と思っている反面、友だちの前では複雑な気持ちに見舞われたり、子どもなりの優しさで親に気を遣うことがあったり。
実際の小学生の詩から生まれたというこちらの物語、友だちの話を聞くように、気楽な気持ちで読んでみませんか? またお父さん、お母さんも一緒に読んで、子どものエールを感じてみませんか。

わらいとなみだのなかにある、限りないエール

ぼくのとうさん わたしのおかあちゃん

出版社からの内容紹介

『ぼくのとうさん』『わたしのおかあちゃん』は、それぞれ独立した作品です。
両作品とも、親のしごとをモチーフに、実際の子どもの詩に着想を得て、物語にしました。
「ぼくのとうさん」のしごとは、市の清掃車でのしごとです。
暑かったり、くさかったり、ときには残飯の水しぶきを浴びたりすることもあって、決して容易なものではありません。
そんなとうさんのしごとをバカにされた主人公(3年生)のこころの葛藤、またバカにしてしまった友人のこころの痛みと成長を「はたらくこと」の意義と尊さをとおして描きます。
「わたしのおかあちゃん」は、居酒屋で働きながら二人の子どもを育てています。
明るく元気なおかあちゃんですが、主人公(4年生)の女の子は、母親の働くことの苦労も理解しています。
ある日、平穏な三人の生活のなかに、居酒屋の店長さんが登場します。
他人を受け入れることへの不安と苛立ち、故人である父親への想いを家族の絆、社会とのつながり、将来への希望をとおして描きます。
ささやかだけど、お互いを思いやる日常のひとこまを描いた二つの作品は、わらいとなみだのなかに、「とうさん」と「おかあちゃん」への限りないエールであふれています。
同時に、「はたらくこと」や「しごと」を意識することで、「未来の自分」や「社会の一員としての自分」、
また人々とのつながりについて、考えるきっかけにもなると思います。

おすすめポイント!

  • 子どもの詩が元になって生まれたお話なので、友だちが目の前で喋っているのを聞いているような、あるいは、日記を読ませてもらっているような感覚で読める1冊です。本を読んでいるという堅苦しい感じが全くなく、すいすい読めます。
     
  • 「ぼくのとうさん」で、「ぼく」がとうさんのことを思う気持ち、「わたしのおかあちゃん」で、「わたし」がおかあちゃんを思う気持ち、また友だちの目が入ると恥ずかしい、と思ってしまう気持ちなど、共感できる気持ちがたくさん見つけられるでしょう。
     
  • さまざまな仕事が存在するということを知るきっかけになります。とくに、人が嫌がる仕事が世の中でどれぐらい必要とされているか、ということに気づけるなど、仕事を見る目が養われます。
     
  • 「ぼくのとうさん」も「わたしのおかあちゃん」も、子どもが奥に抱えている気持ちに気づいた時、それをまるごと受け止める愛情に溢れています。本の中でその愛情に触れるだけで、子どもが読んでも、大人が読んでも気持ちが温まるようです。

    (お父さん、お母さんが読まれた場合には)
  • どんな仕事でも一生懸命働いているお父さん、お母さんの姿は子どもたちにとって自慢であること。また子どもは親の姿をよく観察しているということを実感するようなお話です。
     
  • 子どもがお父さん、お母さんを大切に思う気持ちや、大好きな気持ちがたっぷり伝わってきます。親に気を遣う子どもなりの優しさに、じんとしてしまう場面もありそうです。

どんなお話?

1冊の中に「ぼくのとうさん」と「わたしのおかあちゃん」という2つのお話が入っています。


【1つ目のお話】

「ぼくのとうさん」の仕事は、市の清掃のしごとです。
とうさんの仕事は朝が早いので、夕方には帰ってくるのですが、時々、学校帰りの「ぼく」とバッタリ会うことがあり、「ぼく」はそれがすごく嬉しいと感じています。家の中では当たり前なのに、どうして外で偶然に会うことがこんなにも嬉しいんだろうと「ぼく」は言います。
ゴミの仕事をしているとうさんは、汗とゴミのにおいで夏はとくににおいます。けれども「ぼく」はとうさんを気づかって、それを決して口にはしません。焼却炉まで行ってとうさんの仕事を見せてもらった時には、くさいし、暑いし、十分もいられなくて、こんながまんのところでゴミとたたかっているとうさんたちをウルトラマンのようだと感じます。でもとうさんの働く作業着姿を友だちに見られるのは恥ずかしくて。そんな中、同じクラスのいじめっ子からとうさんのことをバカにされます。そこで言い返せなかった自分を悔しく思い、複雑な気持ちを抱えてすごす「ぼく」。その後、とうさんからそのいじめっ子と「男の約束」を交わしたと聞かされて!? とうさんが「ぼく」に身をもって仕事における大事なことを教えてくれる姿が頼もしく感じられます。


【2つ目のお話】

「わたしのおかあちゃん」の仕事は、居酒屋の店員さんです。
おかあちゃんは、「わたし」が学校から帰って来るのを玄関で待っていてくれます。そこで「わたし」とおかあちゃんは両手でバトンタッチをして、おかあちゃんが出かける番になります。お店でのおかあちゃんの担当は、そうじと接客、それとやきとりで、やきとりはお店の看板メニューで、一番人気。夜の七時におかあちゃんが休憩で帰ってきて一緒に夕飯を食べる時間は、弟とおかあちゃんの取り合いです。私も弟もおかあちゃんに聞いてもらいたい話がたくさんあるからです。そんな「わたし」の心配事は、お休みの日にたまに電話をかけてくる店長さんのこと。そんな中、動物園に家族で行く予定だった土曜日、急に店長さんも来ることになり、「わたし」はショックを受けます。そんな「わたし」に対しておかあちゃんがとった行動とは? おかあちゃんと「わたし」と弟の三人の家族の絆が温かく描かれます。

お話を書かれたのは……

さくら文葉さん

教科書会社勤務を経られて、2000年にこの本の出版元である「フローネスト桜蔭社」を設立。
著書に『王さまのスプーンになったおたまじゃくし』(PHP研究所)、編著に(ご本名の石川文子で)『くじらぐもからチックタックまで』『おとなを休もう』(両作品ともフロネーシス桜蔭社)があります。

いかがでしたか。

それぞれの家族の絆が感じられる2つのお話。

子どもから大人の方まで、親子で一緒に読んでみて下さいね。

 

秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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