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小学生におすすめの新刊

【小学4年生から大人の方におすすめの新刊】イアリーの魔物<1> 『マラマンダー』

伝説の恐ろしい魔物の謎と、出生の秘密をさぐる冒険ファンタジー

なにかドキドキワクワクさせてくれる冒険物語がないかなあ、と探している子がいたら、イアリーの魔物<1> 『マラマンダー』はいかが?

こちらは、イギリス版『ハリー・ポッター』のイラストを手がけたトーマス・テイラーが紡ぐ本格ファンタジーシリーズ。本国では、発売されるやいなや10万部越えのブレイクをはたし、20ヶ国以上で翻訳出版も決定している人気ぶりなのだそう。このたび、2021年10月に日本に上陸したということで期待が高まりますが、さて、どんなお話なのでしょう?

 

どんなお話?

舞台となるのは?

お話の舞台は、海辺の町イアリー。夏はにぎわう観光地だけれど、冬になると濃い霧に包まれ、一気に不気味な雰囲気に変わるという場所です。とくに冬の暗い海辺には、「マラマンダー」という恐ろしい魔物がうごめいているとの伝説が古くから伝わっており、その海は「魔海」と呼ばれていました。

主な登場人物は?

主人公は、ハーバード・レモン(通称ハービー)という、たぶん12歳の少年(たぶん、というのはお話を読むと理由が分かります)。ハービーは、イアリーの海辺の中心地に建つ「魔海ホテル」の忘れもの係を任されています。そのハービーのところに転がり込んでくるのが、バイオレットという少女。バイオレットの見た目は、うす茶色の肌に濃い茶色の瞳。髪はもじゃもじゃで爆発しそう。キラキラした目が楽しそうにくるくる動いています。

 

最初の手掛かりはひとつだけ‥‥‥

バイオレットは、ハービーに、自分自身が忘れものだと言い、助けを求めます。バイオレットは12年前に「魔海ホテル」の部屋に置き去りにされ、それ以来行方不明の両親を探しているというのです。ハービーは自分が扱っているのは忘れものだけで、人間じゃない、ぼくじゃなくて、探偵かなにかに頼んだ方がいい、と伝えるのですが、どんどんバイオレットのペースに巻き込まれていきます。

 

バイオレットの両親を探す手掛かりはひとつだけ。バイオレットが赤ちゃんの時に寝かされていたホテルのベッドの中にあった1枚のカードだといいます。カードには、表にシルクハットをかぶったサルの絵(下半身が魚)、裏には文字と数字がならんでいました。はたしてこのカードだけで、両親の謎にたどり着けるのでしょうか。

ここが面白い!

ポイント①ハービーとバイオレットの性格の違い
おてんばで危険を顧みずにどんどん行動するバイオレットの行く先はドキドキハラハラの連続! 一方、慎重で、どちらかというと保守的なハービーですが、結局面倒見が良く、いつもバイオレットを見守っている優しさがあります。その違いが引き立っているとてもいいコンビです。 

ポイント②登場する場所が面白くて魅力的!

バイオレットの行方不明になった両親を探すため、ハービーとバイオレットはイアリーの町のさまざまな場所へ足を踏み入れます。そのどこもがとっても魅力的です。

たとえば‥‥‥

 

「イアリー書方箋局」
まず、本が好きな子なら、一番魅力を感じる場所では? ここは、好きな本を貸してくれる図書館とも好きな本を売ってくれる本屋とも違う、世界にひとつしかない、本の書方をしてくれるお店。つまり、本の方がお客を選ぶお店なんです。お店にいる機械仕掛けの不気味なサル「マーモンキー」もとっても気になる存在。詳しくは読んでのお楽しみで。

「シーゴル・ダイナー」
イアリー海岸の桟橋の中ほどにあるフィッシュ&チップスの店。優しい店主のシーゴルさんが、お腹をすかせたハービーとバイオレットにおいしいフィッシュ&チップスを出してくれます。

 

「漂流物スタジオ」
砂浜で漂流物を集める「ビーチコマー」をしている、フォッシルさんの漂流物コレクションのお店。中は漂流物が山積みで一見ガラクタばかりのようですが、フォッシルさんによれば、特別な人へのプレゼントを探している若者にはぴったりだといいます。

 

「イアリー博物館」
古いお城の中にある博物館。医者でもある「ドクター・タラシ」が管理しているため、診療所が1階にあり、上は塔の部分も含めて博物館となっています。

 

「戦艦リバイアサン号の残骸」
何年も前に難破したという戦艦。

 

他にも魅力的な場所やアイテムがいろいろ登場します! ぜひ本の最初に載っている「海辺の町 イアリーの地図」も見ながら、一緒にイアリーの町を冒険してみて下さいね。

ポイント③登場人物がみな個性的で謎めいている。はたして敵なのか味方なのか?

ハービーとバイオレットに関わってくる人物たちは、それぞれになにか秘密がありそうで、はたして敵なのか味方なのか、やりとりにハラハラさせられます。

 

・ホテルのオーナーの「レディ・クラーケン」
・イアリー書方箋局のオーナー「ジェニー・ハニヴァー」
・作家の「セバスチャン・イールズ」
・砂浜で漂流物を集めている「フォッシルさん」
・町の医者でもあり博物館の管理もしている「ドクター・タラシ」
・バイオレットを追っている「フック怪人」
・不思議な力を持つ?猫の「アーウィン」‥‥

どんな子におすすめ?

ひとりで読むなら、小学4、5、6年生ぐらいがおすすめです。男子も女子も楽しめるお話です。中心となるハービーとバイオレットの性格はまったくの正反対。どちらの性格に自分が近いか、どちらに共感できるか、など考えながら読んでみるのも面白そうです。また、大人の方にも魅力的な要素がたくさんありますので、ぜひ親子で一緒に読んで感想を交流してみては? 大人はとくに、イアリーの町に登場するさまざまな場所の存在に、旅するような楽しさを味わえるのではないかと思います。

お話を書いたのは?

イギリス版『ハリーポッター』のイラストレーターであるトーマス・テイラー。絵の才能だけでなく、こんな文才があったとは!と世界がおどろいているのだそう。トーマス・テイラーは、このお話で物語の書き手としての才能も開花させ、イギリスの児童文学新人賞<Waterstones Children’s Book of the Month>にも選出、発売されるやいなや10万部越えとブレイクし、すでに25万部超となっており、20ヶ国以上で翻訳出版も決定している人気ぶりです。また、映画化も進められているそうです。日本でも映像で見られる日が待ち遠しいですね。

 

この後も、イアリーの魔物<2> 『ガーガンティス』が2021年12月に刊行予定で、どんどん続きそうな予感の「イアリーの魔物」シリーズ。慎重だけれど面倒見が良く優しいハービーと、おてんばで冒険心旺盛なバイオレットの絶妙コンビは、この後もどんな冒険を見せてくれるのでしょうか。お早めにチェックしてみて下さいね。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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