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小学生におすすめの新刊

【小学3、4年生におすすめの新刊】『トムと3時の小人』

物語と現実の世界が交錯する不思議いっぱいのファンタジー

古道具屋さんで出会った1冊の古い本‥‥‥。そこから次々に謎が出てきて、古い本のお話の中にも謎があり、気づけば、物語と現実がつながっている!? 読み終えた後、しばらくお話の世界から抜けられないような、抜けたくないような、心地良い余韻に包まれる不思議いっぱいのファンタジー。
 

2021年6月にポプラ社さんより刊行された「GO!GO!ブックス」シリーズの創刊第1号である『トムと3時の小人』は、物語の楽しさを存分に味わえるお話です。いったいどんなお話なのかということや、おすすめポイント、また「GO!GO!ブックス」シリーズについても詳しくご紹介します。

出会いをテーマとしたファンタジー。さて、主人公のつとむに訪れたのはどんな出会い?

トムと3時の小人

出版社からの内容紹介

小学生のつとむが古道具屋で見つけた、赤い表紙の本『トムと3時の小人』(下)。図書館で同じタイトルの本を読んでみると、それはトムという少年と「3時の小人」との出会いと別れの物語でした……。
主人公のつとむと、つとむが読んだ本の主人公トム、ふたりの少年の視点から日常の中にひそむ不思議を描いたファンタジー。
「本」にまつわる新しい発見に心はずませる少年の姿を、たかどのほうこの文と平澤朋子の絵で、生き生きと描きます。

どんなお話?

小学生のつとむは、ある日偶然入った古道具屋で1さつの古い本を見つけます。それは、赤い表紙に金色の線でくるくるしたもようが書いてある『トムと3時の小人』(下)という本でした。

面白そうと思いながらも買わずに帰ってきてしまったつとむはどうしても読みたくなり、次の日、町の図書館で本を探します。司書のおばさんにたずねると出してくれたのは、赤い本にそっくりでありながらも、表紙に(下)という文字がない、青い表紙の本でした。図書館でも1冊しかなく古くて貴重だというその本は貸出禁止だったため、つとむは、図書館の旧館にある閲覧室で読み始めます。

つとむが図書館で読み始めた青い表紙の『トムと3時の小人』

お話は、トムという男の子が、しんせきのフローラおばさんの家で体験した1週間の不思議な物語。

時間のたびに青いハトが飛び出してくる山小屋の形のハト時計、いつのまにか数がへっているおやつのゼリービーンズ、毎晩かならず見るまぶしいくらいの明るい夢‥‥‥。
「あしたの3時に、見はってごらん」
数々の不思議の理由は、いったい誰のしわざだったのでしょう。

 

物語を読み終えたつとむは、さらにつづきが読みたくなり、もしかしたら古道具屋で見かけた赤い表紙の本がつづきなのでは? と考え、ふたたび古道具屋をおとずれます。
はたして赤い表紙の本はまだ残っているでしょうか?


さらに、古道具屋で、物語の中に出てきたものと同じような山小屋の形のハト時計を見つけたつとむは、本にまつわる新しい発見をし、心をはずませるのでした。

ここが面白い!

  • 主人公のつとむの体験にも、出会った古い本『トムと3時の小人』のお話の中にも、謎がつぎつぎと現れて、その謎のわけがとても気になります。『トムと3時の小人』の中の謎が解けても、主人公のつとむの謎は残っていて、最後まで謎を解く楽しさが続きます。全部解明されるまで気になってしまうので、気づいたら最初から最後まで読み通せていた、という体験ができるのではないでしょうか。
    (謎の中身はたとえば、古本屋で見つけた赤い本にはどんなお話が書かれていたのか、図書館で見つけた本はなぜ赤ではなく青い表紙だったのか、お話の中のトムのおやつがなくなるのはなぜなのか? などなど)
     
  • 1冊の本の中にもう1冊本が挟まっているというしかけが贅沢。他ではあまり見たことのない本のつくりのしかけに驚きがあります。
    ぜひ手に取って体感してみて下さいね。
     
  • 物語の世界と現実の世界が交錯する体験‥‥‥、これまで感じたことのない不思議な感覚かもしれません。これは読んでみないと体験できないので、ぜひ読んで感じてみて下さい。
     
  • 作者のたかどのほうこさんの遊び心がお話のあちこちに感じられる楽しい1冊です。
     
  • 全ページカラーで描かれる平澤朋子さんの色彩豊かなさし絵や、本の中に登場する古い本の懐かしい雰囲気の挿絵もとても生き生きとしていて、魅力的です。

どんな子におすすめ?

小学3、4年生の子どもたちにとくにおすすめです。

文字は横書きで、全ページオールカラーの挿絵がついて読みやすく、けれども物語はぐんと読み応えがあります。

本が好きな子はスラスラ読めるでしょうし、どちらかというと苦手という子でも易しく読めるお話なので、「読めた!」という自信につながることでしょう。

 

お話を書かれたのは……

高楼 方子(たかどのほうこ)
函館市生まれ。『へんてこもりにいこうよ』『いたずらおばあさん』で路傍の石幼少年文学賞、『十一月の扉』『おともださにナリマ小』で産経児童出版文化賞を『わたしたちの帽子』で赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞をそれぞれ受賞。その他の作品に『すてきなルーちゃん』『トランプおじさんとペロンジのなぞ』『トランプおじさんと家出してきたコブタ』『お皿のボタン』、「つんつくせんせい」シリーズ、『紳士とオバケ氏』『まあちゃんのながいかみ』『ねこが見た話』、「ゆかいなさんにんきょうだい」シリーズ、『ピピンとトムトム』などがある。札幌市在住。

絵本から小学校低・中・高学年向けの読み物、YA作品まで、読書を楽しむ年齢の子どもたち全年齢向けに、と言えるほど、どの年齢向けにも心がはずむようなお話を紡いでくださっている高楼 方子(たかどのほうこ)さん。子どもの気持ちに寄り添ったユーモアたっぷりのお話や、日常からふわりと不思議な世界へ誘ってくれるワクワク感で、物語の楽しさを存分に味わわせてくれます。高学年向け以上の読み応えのあるお話では、主人公の心象風景が丁寧に描かれ、繊細でロマンチックでユーモラスで、時にはちょっと皮肉も混ざっているような世界観は独特の心地良さで、子どもだけでなく、大人のファンの方も多い作家さんです。対象年齢別にたくさんの作品がありますので、気になる作品があったら、ぜひ手にとって読んでみて下さいね。

 

『トムと3時の小人』が創刊第1号となった「GO!GO!ブックス」シリーズとは?

『トムと3時の小人』と、『どーすんの!?おもちゃゲット大作戦』を創刊2冊として、2021年6月にポプラ社から刊行開始となった「GO!GO!ブックス」シリーズ。どんなシリーズなのかをご紹介します。

「GO!GO! ブックス」は、読書が苦手な子も、読むのが楽しくなる、本を選ぶ楽しみが味わえる、自分にぴったりな一冊と出会える、小学校中学年向け・創作読み物の新シリーズです。

 

「小学校の低学年のうちはたくさん本を読んでいても、中学年・高学年へと年齢が上がるにつれて読書習慣が続かない」「ゲームや漫画など他のメディアとの接触も増える中で、何を読んだらいいかわからない」いうおうちの方の声に応える新シリーズとして誕生しました。

 

豪華な作家陣と画家陣による、創作読み物の豊かな世界を気軽に楽しめる工夫が満載です。

「読みやすい」3つの特徴

1.全ページオールカラー・漢字すべてにふりがなつき
お話の世界に引き込まれるようなイラストは、全てカラーで掲載。漢字にもすべてふりがなつき。
漢字が苦手なお子さんも、長いお話を1人で読むのがはじめてのお子さんも、親しみやすい工夫がされています。

 

2.テーマ×ジャンルの組み合わせで本を選びやすく
「出会い×ファンタジー」「友情×ユーモア」など、テーマとジャンルを各巻に記載。

自分の興味・関心にあった本が選びやすく、自分にぴったりの1冊を選ぶ楽しみを体験できる。
 
3.読書をサポートする「GO!GO! しおり」つき

カバーの折り返し部分を切り取って作る「しおり」つき。普通のしおりとしてはもちろん、読みたい行に当てることで、視点を集中させ読みやすくするという活用法も紹介。

いかがでしたか。

こちらの「GO!GO!ブックス」シリーズ、このあとも、魅力的なテーマ×ジャンルで、楽しく読みやすいお話の刊行がぞくぞくと予定されているそうです。次はどんなお話が読めるのか楽しみですね。中学年からの読書を応援してくれる頼もしい存在として、注目していきたいと思います。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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