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パパも絵本を楽しもう!

【パパも絵本を楽しもう!】読み聞かせの達人パパが選ぶ5月の絵本

「子どもに読んであげる絵本を、パパが選ぶのってすごく楽しい。パパ自身がもっと絵本を楽しんだら、いろんなことを子どもと分かち合えるし、自分にも返ってくる。ママとパパ、複数の目線で選ぶと、子どもの本棚はすごく豊かになるんです。」  そう語るのは、イベントなどでの読み聞かせ活動歴10年以上、ロングセラー絵本の知識はもちろん新刊情報もいち早くキャッチしている読み聞かせの大ベテラン、奥平パパ。2児のパパでもあります。
たとえば、好きな詩を共有するように、パパも絵本を通して子どもたちに思いを伝えられたらいいですよね。
気負わず楽しく、パパ目線で絵本選び。奥平パパから子育て中のパパたちに向けて、絵本を選ぶコツと季節のおすすめ絵本を紹介します!

パパが選ぶ、5月に読みたい絵本

ゴールデンウィークは暖かく天気も良い日が続くので、日本では出かけるのに一番良い季節とも言えるのではないでしょうか。でも今年も一部の都市では我慢が続きますね。いっぽう世の中ではワクチン接種も少しずつですが進み、また漫然と続けてきた「あたりまえ」が半ば強制的に見直されたことで環境が良くなっている部分もあるように思います。だんだん世の中は良くなっていっていると信じて……。

今月はこんな絵本を紹介します!

物語を想像する

「鳥獣戯画」を絵本で

かえるのごほうび 絵巻「鳥獣人物戯画」より

うさぎと蛙が相撲をとったり、うさぎが猿を追いかけたりと躍動感のある線でユーモラスに描かれた絵巻「鳥獣戯画」。世界に誇る国宝だが、実は謎に満ちている。詞書(ことばがき)もなく、継ぎ接ぎだらけなので、誰が何のために描いたどんな話なのか、よくわかっていない。木島始は、子どもたちが楽しめるように絵を心にしみこませ、物語を立ち上がらせた。物語として、自然に素晴らしい絵を楽しめる一冊になっている。幻の絵本(1967年刊行作品)の新装復刊。

東京上野にある国立博物館で開催している「国宝 鳥獣戯画展」は、本当に残念ながら東京での3回目の緊急事態宣言を受けて4月25日から休館となっていますが、テレビでの特集などで今回の展示の素晴らしさ、面白さを見て、ぜひ本物を味わいたいと思っていました。鳥獣戯画は、そのキャラクターを自由に使ったグッズもいっぱい作られたりしていて、国宝という響きがもたらす「格調の高さ」よりその「ゆるさ」にとても魅力があると思います。

この絵本は、1967年に刊行されたオリジナルを今回の展覧会にあわせて復刊したとのことですが、素晴らしいところは、①木島始さんが鳥獣戯画のキャラクターたちがどんな話をしているかをひとつのストーリーを建てて鮮やかに見せてくれたこと、もう一つは②その逆に、おはなしにはこの他にも様々なバリエーション、無限のストーリーがあり得ることを逆に気づかせてくれたこと、ではないかと思います。絵本は想像力を養うといいますが、この本はそれを体現してくれているように感じています。

あたりまえを見直す

どうして人はうそをつくのだろうか

うそ

「うそはくるしい」はずなのに、平気でうそをつく人がいる。大きな声でうそをつき、しらを切り通す人もいる。うそをくり返したら、ほんとうになるのだろうか。この世はほんとのことより、うそであふれている。うそをつかない人なんて、この世にはいないだろう。でも、どうして人はうそをつくのだろうか。ついついてしまったうそ。ごまかすためのうそ。自分を守るためのうそ。相手の幸せを願ってつくうそ。そもそも[ついていいうそ]と[ついてはいけないうそ]、[いいうそ]と[悪いうそ]ってあるのだろうか。あるとすれば、その違いはなんだろう。いい・悪い、軽い・重いの基準で測れるものだろうか。この絵本は、詩人・谷川俊太郎さんが1988年に発表した詩「うそ」に、イラストレーター・中山信一さんが絵を描き、構成した一冊。ある男の子がうそについていろいろと思い、考える。心の奥深いところまで届く、時おり読み返したくなる宝物のような一冊。

1988年に発表された詩に今回新たに絵をつけて絵本化したというこの作品。なんとエイプリールフールに刊行されたそうです!「うそをついてはいけない」という建前から離れて、人はうそをつくものだという前提に基づいて話が進んでいくところは、それが真実だとわかっていても結構衝撃的です。いかにも谷川さんらしい、ことばのひねりの中から向う側にある真実を問い直す、みたいな哲学的な思索をたどることができますが、僕は一回読んだだけでは十分に意味の消化ができませんでした。子どもにどう伝えていくべきかも難しいことだと思います。それでも、谷川さんの「あたりまえをあたりまえとしない」姿勢には毎回刺激を受けます。今回絵がついたことでことばの解釈が助けられることもあると思いました。これから何度も読み直したいと思える作品です。

あるとき気づくと、くまちゃんは ぼくよりちいさくなっていて......。

くまちゃんが ちいさくなっちゃった おとうさん、くまちゃんが ちぢんじゃった!

おとうさんからもらった、おおきなくまのぬいぐるみ。でも、あるとき気づくと、ぼくよりちいさくなっていて......。だいすきなくまのぬいぐるみとのふれあいを通して、少年の成長をさわやかに描いた、せつなくも心温まる絵本。

大好きな中川ひろたかさんの絵本『おおきくなるっていうことは』は、僕の保育園での読み聞かせの定番。おおきくなるとはどういうことかが子どもにわかりやすく書かれており、春に機会をいただけたらほぼ必ずラインナップに加えています。この『くまちゃんがちいさくなっちゃった』も同じような目線で「子どもの成長」を感じることができます。相棒のくまちゃんとの関係性が少しずつ変化していくところにはちょっと切なさも感じてしまいます。『はちうえはぼくにまかせて』や『どろんこハリー』の絵を手掛けたマーガレット・ブロイ・グレアムさんを彷彿とさせるジェーン・マッセイさんのイラストがとても素晴らしく、素直な男の子の表情が印象に残ります。

旅に出よう

電車乗り継ぎの旅、しゅっぱつしんこう!

しゅっぱつ しんこう!

大きな駅から特急列車に乗り、山の麓の駅で急行列車に乗りかえて、つぎに普通列車に乗りかえて……出発のときは「しゅっぱつ しんこう!」が合言葉。おじいさんとともだちが待つ小さな駅までの小旅行は、退屈しません。駅やホームでの乗客や車掌さん、電車が通る街に住む人の様子、電車が山間を抜ける爽快感を、目に映るままに克明に描きます。電車でお出かけする前に読みたい、心が躍る乗物の絵本。

本当は新緑薫る山や高原にでかけたいこの季節。なかなかままなりませんね。せめて絵本で旅に出たいと思いました。この『しゅっぱつしんこう』は子どもが小さいときには擦り切れるくらい読んだ定番中の定番。乗り物を書かせたら右に出る者はいない山本忠敬さんによる絵は、メカの細かいところまで描かれているだけでなく、列車の疾走感にあふれていてそのリアルさに大人も圧倒されます。はやくほんとうに「しゅっぱつしんこう」できるときが来ますように。

旅の絵本といえば、この「旅の絵本」シリーズではないでしょうか。

わたし』『きもち』 谷川さんの絵本にはいつも視野が開かれる。例えばこんな本。

はなをくんくん』翻訳家・木島始さんには素敵な作品がいっぱいあります。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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