【パパも絵本を楽しもう!】読み聞かせの達人パパが選ぶ7月の絵本
「子どもに読んであげる絵本を、パパが選ぶのってすごく楽しい。パパ自身がもっと絵本を楽しんだら、いろんなことを子どもと分かち合えるし、自分にも返ってくる。ママとパパ、複数の目線で選ぶと、子どもの本棚はすごく豊かになるんです。」 そう語るのは、イベントなどでの読み聞かせ活動歴10年以上、ロングセラー絵本の知識はもちろん新刊情報もいち早くキャッチしている読み聞かせの大ベテラン、奥平パパ。2児のパパでもあります。
たとえば、好きな詩を共有するように、パパも絵本を通して子どもたちに思いを伝えられたらいいですよね。
気負わず楽しく、パパ目線で絵本選び。奥平パパから子育て中のパパたちに向けて、絵本を選ぶコツと季節のおすすめ絵本を紹介します!
パパが選ぶ、7月に読みたい絵本
去年の今頃も、いつもと違う夏を残念に思っていましたが、少しは変わったこともあります。少し前から保育園での読み聞かせが、感染対策を十分に施した上で復活し、再び毎月通うようになりました。ちょっとずつでもやれることを、ちょっとずつでも前に進もうと。
さて、そんな7月はまず七夕の絵本からご紹介します。
怒られてばかりいる子の心の中を描いた絵本
「ぼくは、いつでもおこられる。家でも学校でも…。休み時間に、友だちがなかまはずれにするからなぐったら、先生にしかられた」いつも誤解されて損ばかりしている少年が、七夕さまの短冊に書いた願いごとは…?
【作者のくすのき しげのりさんよりコメントいただきました!】
『おこだでませんように』について
お母さんや先生や友だちに言うのではなく、七夕様のお願いの短冊に、一文字一文字けんめいに書いた「おこだでませんように」。このお話の「ぼく」にとって、それは、まさに天に向けての祈りの言葉なのです。子どもたち一人一人に、その時々で揺れ動く心があります。そして、どの子の心の中にも、祈りのような思いがあるのです。私は、そんな子どもたちの心の動きや祈りのような思いに気づくことができる大人でありたいと思います。
『おこだでませんように』は七夕の時期の作品としてよく紹介されますが、この季節にだけ読むのがもったいない、季節問わない傑作です。
おかあさんに「また いもうと なかして!」と怒られたときの(いもうとのくせに わがままばっかり いうからや)、「まだ しゅくだい してないの!」と言われたときにも(いもうとと あそんでやってたからや)、ほかにも(ふたりが さきに いじわる いうたんや)、(でも、『なかまに いれてやらへん』と、いわれたのは、ぼくの こころが もらった パンチやで)という「ぼく」の言葉、これはみんな「言ったら怒られる」と思って口に出さなかった心の声。頭ごなしに怒ってばかりの大人たちが「おこだでませんように」という願いで、「ぼく」の心の声に気づく。くすのきさんの作品はいつも温かなまなざしに満ちていますが、この作品は特別です。石井聖岳さんの描く子どもたちの表情が感情に溢れていて感動に拍車をかけます。
鮮やかな赤色に夏を感じる絵本
ある暑い夏の日。真っ赤なトマトさんは小川に泳ぎに行きたくなりました。でも、体が重たいので転がることができません。悲しくなったトマトさんは涙をぽろりと落とします。
奥さんの実家では米や野菜を作っているので、これからの季節はきゅうりやナス、それにトマトが庭の畑にいっぱいなります。毎夏、畑で熟しきったトマトを収穫して食べる、そんな贅沢なくらしを続けていましたが、去年、そして今年もそんな夏休みにはなりそうにもありません。この『トマトさん』は鮮やかな赤色で、独特なトマトさんの表情がちょっと癖になるような、すごく味わいのある作品です。とかげや虫、みみずなんかがトマトさんを助けるといった、子どもたちも大好きなエピソードもあります。絵本の中にトマトさんに太陽があたって「ずんずん あつくなって、ピカピカの ほっぺが いたいくらいになった」という描写がありますが、はちきれんばかりに熟したトマトはきっとそんな感じだろうなと、そんなところからも夏を感じる素敵な絵本です。
花の精と漁師の優しい絆を描く美しい絵本
湖に一人で暮らす、貧しい漁師のローおじさん。
ある嵐の日にもらったふしぎな種からハスが生え、花の中から、リアンという少女が現れました。
でも、リアンの魔法でおじさんの暮らし向きがよくなったのを、欲ばりな姫が知り…?
泥の中から清らかな花を咲かせるハスをモチーフに、
『ウェン王子とトラ』『この世でいちばんすばらしい馬』の作者で
パリ在住の中国人作家チェンが、
花の精と親切な漁師の優しい絆を描く美しい大型絵本。
7月はハスの花が咲き出す季節、7月中旬には見頃を迎えるようです。それで今回は「ハスの花の精リアン」という美しい絵本をご紹介します。不思議なおばあさんが親切なおじさんにくれたハスの種を湖にまくと、たちまちハスの芽が出て花が咲き、ひとつの蕾からリアンという少女が生まれます。リアンは不思議な力を持っており、親切なおじさんに豊かなくらしをもたらします。そしてその噂を聞きつけた欲深い王様と娘は兵をくり出しリアンを捕まえに来る、その後リアンとおじさんは......。
この連載の中で、チェン・ジャンホンさんをいつか紹介したいと思っていました。中国・北京の出身で母国で美術を学んだあとパリに移住されたそうです。絵は、中国の伝統的な水墨画の雰囲気ですがとても洗練されていて美しい、しかも判型は大型のおかげですごく迫力があります。僕はこれまで彼の絵本を4冊手にしてきましたが、絵だけでなく、お話もそのどれもが幻想的で、まるでミニシアターで芸術的な短編映画を見ているかのような充実感を得られます。いま16歳になる息子も大ファンで、彼は特に『ウェン王子とトラ』がお気に入り。何度読んだかわかりません。どれをとっても大人も楽しめる素晴らしい作品です。
骨太の詩を詩情あふれる絵が彩る珠玉の一冊
ユーフラテス、コンゴ、ナイル、そしてミシシッピ―。悠久の流れをたたえる川。
川とともにあった人々の魂の声を語り伝える。ハーレム・ルネサンスの中心人物、ラングストン・ヒューズの代表作に詩情あふれるイラストを添えた珠玉の作品。
続いて、同じように絵が圧倒的な迫力のある作品として『川のうた』(原題:The Negro Speaks of Rivers) をご紹介します。これを描いたのはE.B.ルイス。水彩で描かれた各ページの絵は、骨太の詩の言葉のイメージを増幅させる力を持っていると思います。そしてその骨太の詩の作者は、ハーレム・ルネサンスの代表的詩人、ラングストン・ヒューズ。ユーフラテス川からコンゴ川、ナイル川、そしてミシシッピ川まで来たところでリンカーンが登場するというその雄大な詩を18歳で書いたというのだから驚きます。昨今、BLM運動が注目を浴びていますが、この本から今に至るアフリカ系アメリカ人の歴史を改めて思い起こすこともできると思います。同時期に活躍したルイ・アームストロングやデューク・エリントンを聴きながら読むのも一興じゃないでしょうか。
まだまだたくさん! 奥平パパセレクト、パパが読みたい7月のおすすめ絵本
『ウェン王子とトラ』チェン・ジャンホンさんの本はどれも素晴らしいですが特にこれを。
『なかよしの水 タンザニアのおはなし』 『川のうた』を訳したさくまゆみこさん。アフリカといえばさくまさんなのですが、この本はティンガティンガという民族画の手法で描かれており、鮮やかな色使いがサイコー。
『きこえる?きこえるよ』この中の花火や蝉取りのシーンが好き。いろんな音が聞こえてきそう。
掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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