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【おはなし会】絵本講師ふわはねによる季節の絵本とお話

【ふわはね絵本のある時間】2021年7月におすすめの本

絵本講師として10年以上ご活躍中のふわはねさん。絵本講座や絵本コンサル、絵本の読み聞かせ会などを年に200回以上こなしています。そんなふわはねさんに季節にあった絵本と読み聞かせ会の流れについて語ってもらいました。

二十四節気(にじゅうしせっき)を感じる

二十四節気とは…一年を12か月さらにその半分、24個に分けた季節を表す名称です。

 

7月では…

小暑しょうしょ(7月7日)小さく暑いと書いて小暑。本格的な夏のはじまり。梅雨明けを迎え夏本番を迎える。暑中見舞いはこの頃から。

大暑たいしょ(7月22日)大きく暑いと書いて大暑。一年で一番暑い頃といわれる。太陽は容赦なく照り続け、暑い暑い夏の真ん中。

 

梅雨明けを迎えると夏本番。セミは短い夏を謳歌しようと大合唱を始める。

今年はどんな夏になるのでしょう。水と遊び虫と戯れ、砂浜を駆け氷の冷たさにびっくりしその美味しさに頬を緩める。

この夏は一生に一度しかない。太陽の下伸び伸びとマスクをはずし笑える日が1日も早く来ますように。絵本と共に!

【季節の絵本】

セミの声が聞こえたらこれです!『セミくんいよいよこんやです』

セミくんいよいよこんやです

地中で暮らすセミくんの元に一本の電話が…「いよいよ今夜」って何が起こるのかな?

セミの声を聞いた瞬間!毎年夏が来たー(笑)と思うのは私だけでしょうか。

今年は梅雨入りも早かったですがセミの声を聞いたのも早かった。

そしてセミの声を聞くと思い出す絵本がこちら。

『セミくんいよいよこんやです』

土の中のセミの幼虫くんのお部屋の電話がなるところから、始まるこの絵本。
ジリリリーン リリリリーン

はい もしもし、ムニャムニャ…
ええ そうです、いよいよ こんやです
せみくん。とうとう今夜地上へと行く日が来たようです。

電話の相手は、カブトムシのおじさん。

地上では、セミくんを迎えるパーティの準備がたくさんの虫たちの手で行われています。さぁどうなるのでしょうか。

 

工藤ノリコさんとの出会いの一冊でした。
細部までこだわって書かれた絵は見るたびに、新しい発見があり子どもたちを飽きさせません。
特にこのセミくんの絵本は、土の中での長い生活を、脱皮した服?がハンガーにかかっているのに表されていたり、その部屋を去る時にセミくんが一言。 「さよなら おうち ありがとう」
というところなんかは、もうこの部屋にはもどってくることのない運命を知っているかのようで、少しジーンとします(おおげさ!?) 表紙から裏表紙までまるごと楽しめる。
そんな絵本です。

セミの声を聞いたら思い出す。
セミくんいよいよこんやです。

七夕のお話知っていますか?『たなばたものがたり』

たなばたものがたり

織姫と牛飼いは出会ったとたん恋に落ち、自分の仕事を怠るようになります。

7月7日は七夕です。
色とりどりの星飾りに、願い事を書いた短冊。

この時期、幼稚園や小学校、お店などでも短冊に願いごとを書く人たちの姿が見られます。

娘たちの七夕の願いごとを毎年楽しみにしていた私。だんだん大きくなると短冊に書く機会も減ってきます。

今年は七夕飾り、おうちでもしようかなぁ。

七夕といえば、この笹飾りに、織姫彦星のお話ではないでしょうか。

ではこの織姫彦星のお話。
しっかりと子どもたちに伝えられますか?

織姫と彦星はなぜ、年に一度しか会えないのでしょうか。

そんな疑問に答えてくれる絵本がこちら。

「行事の由来えほん」というシリーズからの一冊です。

星の世界の王様、天帝に織姫という一人娘がおりました。
織姫は天帝の言いつけで明けても暮れてもはたを織り、世にも美しい服を作り続けていました。

忙しすぎて身なりも構わない姫をかわいそうに思った天帝は、姫にお婿さんをもらってやることにしました。

天帝がお婿さんに選んだのは、天の川のほとりで牛の世話をしている働き者の牛飼いでした。

引き合わされた途端、お互いを好きになった織姫と牛飼いの彦星。ところが二人は一緒に暮らすようになると、天帝のことなど気にもかけなくなり・・・。

改めて読むと、へぇー。こんなお話だったんだと、うすぼんやりわかっていたつもりだったお話がしっかりと心に落ちてきました。

文章量もそう多すぎず、小さなお子さんから幼稚園、小学校低学年の子たちも楽しんで聞いてくれます。

行事の由来えほんのシリーズは他に、節分やひなまつり、母の日など全8冊あり、なかなか面白い。

日本の伝統文化や、季節や行事の暦ごと。これからの世代へ私たちが伝えないといけないこと。

絵本の力を借りながら、こどもたちと楽しんでいきませんか。

【発展体験の絵本】

読み終わった後砂場へ駆け出したくなる絵本『どろだんご』

どろだんご

泥だんご作りは、土を掘って、水を入れて、どぼどぼかき混ぜて、ぐにぐに握って、という泥遊びから始まります。子どもたちの手が泥となじんで、その感触が全身の喜びとなってから、泥だんご作りに入っていきます。「どろだんご つくろ すいかみたいに でっかいの つくろ だんごむしみたいに ちっちゃいの つくろ ビーだまみたいに ぴかぴかの つくろ」で始まり、泥のスープや泥のクッキー、泥のおむすびを作った後、いよいよ固くて光る泥だんご作りがスタート。泥の固まりに、乾いた砂をまぶして、更に握っているうちに、「できたぞ できたぞ どろだんご ずっしん ずっしん てつの ボールだ ぼくのは すずめの たまごだよ わたしの ぴかぴか ひかったよ」。最後は、みんなで、泥だんごを坂から転がして、固さ比べだ!

砂遊びは形のないものから想像力を働かせ、無限の可能性を含んだ遊びと言われています。

脳を働かせると共に、その砂の手触りは触感を刺激し、自由な発想で自発的に遊べる五感を育てる遊びとしてともいいと言われています。

次にご紹介するのは、そんな砂遊びの絵本。

リズムよく絵本は進みます。

砂に水を入れます。どぼどぼざりざりたぷたぷぐにぐに

擬音語が心地よく砂遊びの様子を豊かに伝えます。

のさかゆうさくさんの絵がまたよくて!主役のどろだんごを引き立てます。

絵本を読み終わった後には公園行こう!お砂場行こう!どろだんご作りたい!となる一冊です。

【課題図書より】

アジフライは海で泳いでいるわけではありません『どこからきたの?おべんとう』

どこからきたの? おべんとう

農家さん、漁師さん、配達員さん、スーパーの店員さん、お母さん…
みんなの愛情、い~っぱい詰まってる!

おべんとうには卵焼き、アジフライ、ポテトサラダなど、おいしいものがいっぱい! でも、どこから来て、どうやって食べられるようになったのかな。食材の生産現場、流通過程、調理の仕方もわかるユニークな食育絵本。

おべんとうの中身は、どこからどのようにやってくるのでしょうか?
ひとつのおべんとうから、世界のつながりが見えてくる。
遊び心たっぷりの絵で、何度読み返しても楽しめること間違いなし!

【著者:鈴木まもるさんメッセージ】
アジフライは海で泳いでいるわけはないし、卵焼きも野原を歩いているわけではありません。
いろいろな所から、いろいろな人の力で運ばれてくるのです。いつも食べている物が、
どこから来て、どうやって食べられるようになるのか調べるのは楽しいことでした。
 食べ物だけではありません。自分のまわりの、いろいろな物も、いろいろな所からやってきます。
みんなの力で自分は元気に生きているのだと思います。
 この絵本も同じ、いろいろな人に届いて、元気に生きる力になることを願っています。
                           〈作者 鈴木まもる〉

2021年度の青少年読書感想文全国コンクール、小学校低学年の部(1.2年生の部)の課題図書でもあるこの絵本。

今日はのはらでお絵描き。お昼になってお弁当。あれ?中にお母さんからの手紙が入っているよ。

「きょうのおべんとうのおかず」

このたまごやきはね
メスの にわとりさんが あさ うんだ たまごを
ようけいじょうの ひとが あつめて
きれいに パックに いれて
ダンボールばこに いれて
トラックで はこんで
スーパーマーケットに ついて
スーパーマーケットのひとが ならべたのを
おかあさんが かってきて
しおを いれて よく まぜて
フライパンに ながして
クルクルまいて とろけるチーズを まぜて
クルクルまいて できあがり
6つに きって
2つは おとうさんの おべんとう
2つは おかあさんも おひるに たべます
やわらかいけど よく かんで たべてね
(『どこからきたの?おべんとう』p5.6引用)

そしてポテトサラダもおにぎりもアジフライも・・・。この絵本は私たちが普段食べているものや身の回りのものがどこから来てどうやって作られているかが描かれています。

そう。鈴木まもるさんの言葉。

アジフライは海でおよいでるわけでも、卵焼きも野原を歩いているわけではありません。いろいろなところから、いろいろな人の力で運ばれてくるのです(帯抜粋引用)

たくさんの人の手を通して私たちの生活は成り立っている。

身近な当たり前だけれども、普段目にすることの、考えてみることの少ないテーマは子ども達にとっても身近で新鮮で、読書感想文も描きやすいのではと思いました。

初めての読書感想文を書くお子さんにはぜひ一緒に読み、一緒に考え質問などしながら、言葉を引き出してあげて欲しいなと思います。

【児童文学を読む】

本を読もう!『ゴリランとわたし』

ゴリランとわたし

9歳まで施設で育ったヨンナは、ある日ゴリラの養子になりました。町外れの古い工場で廃品を言葉たくみに売りつけ、本を愛するゴリランとの生活。初めはおびえていたヨンナも、一見ぶっきらぼうなゴリランのやさしさに気がつきます。ところが、土地開発計画が二人の暮らしをおびやかすことに……。目には見えないものの大切さを、ユニークに描いた物語。

4月に出たばかりの新刊です。

孤児院に暮らす九歳の女の子。この本を読み始めたときに私は『あしながおじさん』を思い出しました。

ジュディーにとってのあしながおじさんがヨンナにとってのゴリラのゴリランだったのです。

物語は一見ありえない世界にもかかわらずそれがなんとも自然。ゴリラを見る目はそれは自然ではなく、皆怯え見下します。

帯にもそして本書にもあった言葉「物事はいつも見た目どおり、ってわけじゃない」という言葉が読了後の心に残ります。

ながしまひろみさんの絵が本当に愛おしくて。さらにこのお話の虜になりました。

子ども達の細やかな心情が絵と共に読み手を深く掴み、その素晴らしい伏線のはり方は、読み終わった後に大人もまたもう一回!と叫びたくなる。そんな一冊です。

【質問にお答えします】夏休み、小3の長男にどんな本を選んだらよいですか?

小3の長男がいます。最近もっぱら漫画を読んでいます。

児童書を読む時もありますが、まずは表紙で判断する所があります。おばけズカン、ゾロリ、おしりたんてい、名探偵シリーズとアニメ映画の児童書版が好きです。
色んな本を読んでほしいなぁと思いながら、強制は出来ないし好みがあるしなあと‥。
もうすぐ夏休みですし、読書感想文の本の選び方に悩んでいる母です。
本の選び方で何かアドバイスあればよろしくお願いします。

(小3男子のママより)

答え

夏休みに本を読ませたいというお母さんからどんな本がいいですか?という質問をよく受けます。

昔から長い年月読み継がれてきたからいい!というわけではありません。

長いお話を、これ昔からあるからいいだろう。という感じで手渡しても本人の興味をそそられるものがなければ、最後まで読み切るというのは難しいかもしれません。

まずは表紙で選んでも大丈夫。ジャケ買いとはよく言ったもの。

表紙は第一印象。一目惚れからはいるなんてことはよくあること。

一緒に本屋さんへ行き、選んでみるのもいいかもしれませんね。

シリーズものやアニメ映画などからの児童書は元々のお話を知っているから読むのが楽なんですよね。

いちから登場人物、時代背景、地理などを頭の中で整理しながら読み進めるのはしんどい。

本人の意向を優先しながら、読んで欲しいなと思う本はお母さんが購入して読んでみるというのもいいかもしれませんね。

そんなときに主人公の年齢というのがひとつ目安にしてもいいのかなと思います。

主人公の年齢が近いほど、同じ思いへの共感もしやすいのではと思うからです。

もしお母さん自身が読んで、面白いと思えばしっかりと実感のこもったプレゼンテーションを!

自信を持って子どもにおすすめしてみましょう。

 

【その他 7月の読み聞かせにおすすめの絵本】

絵本の読み聞かせについて思っていること

絵本はコミュニケーションツールです。 絵本は子ども達の歩みを助け、その成長を促してくれるかもしれません。 しかしそこには読んでくれる人の温もりを通した生きた声が不可欠です。 人と人とが向かい合い、片手間にはできない読み聞かせだからこそ愛情が注がれるのです。 子どもの持つその心のコップを絵本を使って愛情で満たしてあげてください。大好きな人の声で温もりの中聞く美しく豊かなお話。それはあっという間の子育ての濃密な時間を助け、後にその子どもたちの長い人生の心の支えとなるでしょう。 

ふわはねプロフィール

ふわはね(内田 祐子)

絵本講師・子育てアドバイザー・ふわはねえほん 主宰
 

大学で児童文学を学ぶ。2005年絵本講師1期生として絵本講師資格取得。関西を中心に企業での定期教室をはじめ、幼児教育に携わる先生や書店員への研修。絵本講座、研修、絵本コンサルなどを行っている。大学1年生と高校1年生の娘をもつ。インスタグラム @fuwahane 

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