絵本ナビスタイル トップ  >  絵本・本・よみきかせ   >   絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力   >   子どもの「読解力」、絵本でどう伸ばす?
絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

子どもの「読解力」、絵本でどう伸ばす?

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

学力の要! 絵本で「読解力」を鍛えるには?

今回は、満を持して!「読解力」をテーマに絵本をご紹介したいと思います。読解力は、これからますます必要となる力です。パパママが絵本に最も期待することかもしれません。もちろん読書は読解力を高めますが、本を読む年齢になる前に、子どもたちが読み取る力を鍛えられる絵本をご紹介したいと思います。

思考力や論理力、子どもたちにはこれから多くの力が問われますが、その土台には読解力が不可欠です。何を問われているのかまず読んで理解しなければ、論理的に考え、答えることはできません。どんなジャンル、どんな科目を勉強するにも、これからは一問一答ではなく文章で問われます。そのとき、何を聞かれ、何を答えるべきか理解するためには、まず読解力が必要なのです。

読解力の向上を目標にするためには、まず文章に慣れ親しむこと、そして、文章を具体的に立体的に思い浮かべることのできる読み方を習慣づけることが何より大切です。

今回は、そんな「読解力」を養うのに効果的な読み方のできる絵本を選んでみました。ぜひ、参考にしてみてください。

情景を思い浮かべながら読もう

「この文章はなにが書いてあるのかな」と考える際、その情景を思い浮かべられると、理解がぐんと早くなります。そうした“思い浮かべながら読む”のにぴったりな絵本が、こちらです。

登山の楽しさが詰まった絵本

ポレポレやまのぼり

今日はみんなで山登り。
先頭ではりきるハリネズミくん、鳥の声に耳をすますゾウくん、大荷物のヤギくんは、いったい何をもってきたの!?
頂上についたら、テントをたてて、ごはんをつくって・・・・。
わくわくキャンプのはじまりです!

森をぬけ、岩を登り、雲を越え、闇に包まれる・・・・。
山の絶景も見どころです。

この絵本は、やぎくん、はりねずみくん、ぞうくんの3びきで楽しく山を登り、下りるまでのお話です。3びきの性格もそれぞれ、あわてんぼう、おちょうしもの、しっかりものと分かれていて、それぞれが山を登っていくとき、頂上についたとき、山の上で寝るとき、などの行動も三者三様。一つの物語の中に、それぞれの登場人物の時間の流れがあり、それを把握するのには実は高い読解力が必要となります。

ですが、そこが絵本のすばらしいところで、「山登りの途中の3びきはどんな感じだったか」「山の上で一番最初に寝てしまったのはだれか」など、直接文章で書かれていないことも、絵を見て理解しイメージすることができます。このように、物語の情景を思い浮かべながら読むことが習慣づくと、読解力が自然に身についていくはずです。

また、立体的に思いうかべて読むと楽しい絵本に、こんな作品があります。

おばあちゃんの家へ、田舎道をまっすぐまっすぐ……!

ぼくはあるいた まっすぐ まっすぐ

ある春の日、「ぼく」はおばあちゃんの家へ、はじめて一人で向かいます。おばあちゃんに電話で教えてもらったとおり、田舎道をまっすぐまっすぐ・・・。途中、いろいろな“はじめて”に出会いますが、ぼくは臆せず歩き続けます。「ここがおばあちゃんのおうちかな?」最後にのぞいたお家で待っていたのは・・・。
たっぷりの余白・やわらかい色彩で描き出され 春の空気感と光が全体に広がります。文章は「ぼく」のセリフのみ。「絵が語る」1冊です。

ある日、おばあちゃんに電話で遊びに誘われたぼくは、おばあちゃんの、「おうちの まえの みちを まっすぐ、いなかみちを まっすぐ まっすぐ」という道案内を聞いて、出発します。ですが、途中でおばあちゃんの言う「まっすぐ」と、ぼくの思う「まっすぐ」が違ってしまっていることに読者は気づきます。おばあちゃんのまっすぐは、道沿いにまっすぐ。ですが、ぼくは道をそれて、ひたすら直線でまっすぐ進んでいってしまいます。ハラハラしながら読者は見守りますが、ぼくはなんとかおばあちゃんのうちにたどり着きます。

以前この絵本を読んだとき、我が子から「道をそれたのに、なぜおばあちゃんのうちにたどり着いたのか」と質問されました。私は「鋭いけど、めんどくさいこと言うなあ……」と思いながらも「ぼくが通った林と川と小山がこのあたりで、おばあちゃんの言ったいなかみちがこの辺を通っていれば……」といっしょに地図を描いてみました。作者の方々に聞かなければ地図が正解かどうかはわかりませんが、絵本のイメージを図示したことで、「この画面の”ぼく”はここにいて、おばあちゃんのうちまであとこのくらい」など、クリアにイメージでき、文章で表された物語の流れがすっと理解できました。

 

もう1冊、登場人物それぞれが活躍し、かつその筋道が図として示されていて、とっても楽しく情景がイメージできる絵本をご紹介します。

町の中を通り抜ける自動車レース、ようい、どん!

5ひきのすてきなねずみ まちのじどうしゃレース

あきかんを利用した手づくりのじどうしゃで、レースにでることにした5ひきのねずみたち。優勝賞品はなんと、「みたこともないくらいおおきなチーズ」です!さあ、いよいよスタートのあいずがなりますよ……。大人気、5ひきのすてきなねずみシリーズ、第3弾。

この絵本も、『ポレポレやまのぼり』のたしろちさとさんの絵本です。

それぞれ特技や性格の違う5ひきのねずみが、ねずみじどうしゃレースに出場します。
5ひきそれぞれが活躍し、レースの場面もどんどん移り変わりますが、それぞれのキャラクターと活躍箇所がしっかりつながり、見返しについているレース地図をたどりながら「ここでは5ひきのねずみは何位で、ここで1台抜いて……」と流れを確認しながら読むこともでき、分かりやすく楽しい1冊です。前半にちりばめられていた伏線がどんどん回収されていくところもまるで映画のようで、「あ、あの準備はここで必要だったんだ!」などハラハラドキドキ感が自分たちも自動車レースを観戦しているように物語のイメージを伝えてくれます。多くの登場人物が出てくるので、文章量が多く感じる人もいるかもしれませんが、読み聞かせしてみてください。子どもたちは移り変わるストーリー展開にずっとひきつけられっぱなしです。

こうして絵本の情景を思い浮かべて楽しむことが、自然と読解力につながっていくと思います。

主人公の気持ちのうつり変わりを感じよう

国語の問題にはよく、「このときの登場人物の気持ちを説明しよう」というものがあります。「作者じゃあるまいし、知るわけないよ」と思ったりもしますが、普段から「登場人物に入りこんで読むこと」ができていると、そう構えずに問題に答えられるはずです。そういった読み方にぴったりで、主人公のさまざまな気持ちの移り変わりが味わえる絵本をご紹介します。

少年と小さな“りゅう”の 出会いと別れが胸に迫る感動作。

ふでばこのなかのキルル

おじいちゃんのふでばこの中にいた
へんてこないきもの・キルル。

ぼくとキルルの楽しい日々は永遠だと思ってたけど…。
50年たっても、100年たっても
キルルがぼくのことを忘れませんように。

とてもふしぎなおはなしで、主人公のぼくが、机の中でへんてこな生き物、キルルを飼うところから始まります。物語が進むにつれ、ぼくはさまざまに気持ちが移り変わっていきます。

初めの気持ちは興味津々。ワニにも似ているしトカゲにも似ているけれど、ちいさな火を吹くから竜かもしれない、でも違うのかもしれない、とあれこれ想像します。そして、悲しそうな声を出したり何も食べなかったりするキルルを心配する気持ちがつのる場面もあります。その後、キルルがうちにいた真相が分かり、別れが近づきます。いつまでも一緒にいたい気持ちと、受け入れなければいけない気持ちが入り交じり、お別れのときがくるのです。

ぼくの気持ちとキルルの気持ち、おじいちゃんの気持ちが交差し、ぼくの気持ちになりきってみると、とても切なくなる物語ですが、素直に心情が描かれているので、子どもたちも、その心の動きに沿って追体験ができます。

この絵本のように、登場人物に夢中になれるおはなしは、入り込んでいくことで理解する力を育みます。ぜひ、それぞれの子どもたちが夢中になるおはなしを探してみてくださいね。

読解力の土台になる「語彙力」

文章を読むときに、知らない言葉が出てくると、そこで理解は止まってしまいます。子どもたちに語彙が増えていくと、頭の中でイメージもしやすく、複雑な物語でもどんどん状況を理解できるようになっていきます。そうした読解力の土台となる“語彙力”を養うのにおすすめの絵本が、こちらです。

くろくまくんの ことばえほん うごきのことば

かわいく元気なくろくまくんといっしょに、絵さがししたり、声にだしたりして楽しみながら、ことばに親しむ絵本。幼児に身近な約80語の動詞をたくさんの文例で収録。

「くろくまくんがあるく」「うさぎくんがあるく」「かばがあるく」
絵本のなかの文章を 声に出して言ってみましょう。
リズムのある、二語文、三語文は、声に出すと楽しいものです。この絵本では、こうしたリズムのよい文章がたくさんでてきます。親子で、いっしょに声にだして言っているうちに、子どもたちは、自然と言葉の意味や、使いかた、文字に親しんでいきます。それは、日本語を身につけはじめた幼児たちにとって、新鮮で楽しい体験となり、そうした楽しい体験が言葉の世界を広げるきっかけになるでしょう。

この絵本で触れることばは、日常生活に不可欠なものです。お散歩して歩きながら、「“○○ちゃんが あるく” だね」「“△△くん、くつを はく”だね」などとお話することで、言葉の意味や文字への興味を高めていくことでしょう。

また、この絵本では、大きな絵のページで、絵さがしができます。まずは、同じ絵さがししましょう。見つけた絵について、親子で「くろくまくんは、あめを なめているね」などとお話して楽しみましょう。

楽しくて元気、ちょっとおとぼけで人気のキャラクター、くろくまくんと、その家族、仲間たちが繰り広げる世界で、楽しみながら、ことばの意味や使いかたに親しむ絵本です。

この絵本は、我が家でも大変お世話になりました。「うごきのことば」という、いわゆる「動詞」の多くのパターンを絵で表しています。名詞とちがって動詞は言葉で説明するのが非常に難しく、子どもに聞かれても「えーとえーと」と私も苦戦していました。しかし、この絵本は一つの動詞に3パターンの例が描かれていて、例えば「つくる」では

・くろくまくんが おしろを つくる

・おじいさんが かぼちゃを つくる

・おばあさんが りょうりを つくる

と、違った用例を絵で分かりやすく示してくれています。おなじみのくろくまくんや仲間たちが楽しい絵で描かれていて、我が家では2歳になる前くらいから子どもたちが見て楽しんでいました。絵でシチュエーションが示されているので、ひらがながまだ読めなくてもなんとなく分かるようで、早い段階から「一つの言葉にはたくさんの意味がある」ということを理解して、「言葉」というものに興味を持つようになりました。

 

そして、最近では、こちらで大はしゃぎしております……。

めざせ、おやじギャグ王!

かいけつゾロリのおやじギャグ200連発!

いつでもどこでもつかえるさむーいおやじギャグがなんと200コ! 色々なジャンルに分けたおやじギャグコレクションを紹介します。

おやじギャグというものは、冷静に考えれば同音異義語を絶妙に組み合わせたなかなか高度な言葉遊びです。

しかし、聞かされた方はみごとに脱力させられ、そんな反応がさらに面白いのかゲラゲラ笑いながら、休みなくおやじギャグ(覚えたおやじギャグだけではなくオリジナルのおやじギャグまで)をかましてきまして、「すごいねー(棒読み)」という毎日です。

しかし、おやじギャグを作れるということは、様々な言葉の意味を知っているということで喜ばしいことなんだろうなとも思います。

それに、語彙力が増えていくと、一つの事象を説明する際にも何通りもの言い方があることがわかってきます。それは伝える力にもつながりますし、おやじギャグの連発に関しては、しょうがないなー(苦笑)と思いながらも、ぜひ褒めたおしてあげてください。

細かい変化をつかみながら読んでみよう

さいごにご紹介するのは、こちらの絵本です。

「これはおかえしのおかえしのおかえしです」

おかえし

タヌキの家の隣に引っ越してきたキツネの奥さんは、引越のあいさつにかごいっぱいのいちごをもってタヌキの家にいきました。タヌキの奥さんは喜んでいちごを受けとると、おかえしに筍をキツネの家にもっていきました。そこでキツネの奥さんはおかえしのおかえしに花と花びんをもって……。よろこんでもらえてよかったわ、と次から次へとおかえしの連続で、とうとう家の中のものは……。

この絵本は、目まぐるしく変化する状況がポイントです。状況を的確に読み取ることで高度な読解力につながります。

おはなしは、きつねの親子がたぬきの親子の家のとなりに引っ越してくるところから始まります。そして、きつねのおくさんは「ほんのつまらないものですが……」と引っ越しのあいさつにイチゴを差し出します。たぬきのおくさんは喜びつつ「わたしも、なにかおかえししなくっちゃ……」とたけのこをおかえしに渡すのですが、そこからは二人のおかえしの応酬となります。「これはおかえしのおかえしです」「これはおかえしのおかえしのおかえしです」と次々とお互いの家の中のものを渡しあい収拾がつかなくなるのです。

同じ画面の中で、きつねの家の中とたぬきの家の中を見ることができ、絵をヒントにして読者も「今度はこっちのものがこっちにうつって~」と変化を楽しみながら読むことができます。

ついには、おかえしするものが何もなくなって、とんでもないものを二人はおかえしすることになります。そのときのきつねとたぬきの子どもたちの表情などがなんとも微妙で、そのあたりから状況の変化だけでなく、不可解なお話の流れを楽しむこともできます。先の見えない展開にハラハラしながらも、最後は「そうきたか!」と、見事な着地をみせます。

細部のポイントを正しく押さえて理解することが読解力には重要ですが、そうした読み方を楽しみながら行える、とってもおすすめの絵本です。

さいごに

読解力が問われる場面というと、多くの人がやはりテストや入学試験といった場を思い浮かべると思います。近年は大学入試だけでなく、中学受験でも記述式の比重が多くを占めています。ただ、なぜこれだけ読解力を問うようになったかというと、社会でも必要とされるからだと思うのです。

多種多様な情報を自分で取捨選択しなければいけない時代、多くの文章を読み解きポイントを押さえなければ正しい情報は得られませんし、要約する力も必要です。そう考えると、読解力は様々な力の土台になるのは必然です。

読解力を養うには、読み聞かせをしながら質問してやり取りをするのが効果的、という話も聞きます。ただ、これに関しては我が家はできておりません。(うまく質問できればよいとも思うのですが、あまのじゃくタイプの息子たちなので、聞いたところで「わからなーい」としか返ってこないんですよね……。)

ですので、読み聞かせはしているのですが、どこにおもしろみを感じているのかな?と静かに観察に徹しております。職業上、その本のどこに興味を持って、どこに引っかかりを感じるか見てしまうのですが、興味をひかれさえすれば、「ちょっと長いかな? むずかしいかな?」と思っていてもぐいぐい読み進めますし、こちらが聞かなくても「これはどういうことなの?」と聞いてきます。そして、好きな本であれば親を巻き込みたいのか、「これ見てみてよ」「おかあさんはどこがおもしろかった?」(立場が逆な気がします……)などと言ってきます。

ですので、読解力を養う最初の段階として、まず、その子が好きそうな本をひたすら目の前に用意していくやり方はいかがでしょうか。好きな方向性が定まり、一つでも好きな本の世界をつかむことができれば、そのあとはどんどん「いろいろなことを知りたい」と読み進めます。好きな本に関しては驚くほど細かいところまで覚えています。そうした読書体験を積んで、楽しかった絵本のことをありありと思い浮かべられるようになれば、読解力の土台がしっかり培われているはずです。

読解力があれば、空想の世界も、過去の世界も、科学の世界も、さまざまな世界を楽しみ実際に飛び込むことができます。まずは、お子さんの好きな世界は何なのか、たくさんの絵本を読みながら、観察してみてはいかがでしょうか?

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
この記事の関連キーワード
人気連載
JavaScriptをOnにしてください