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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

絵本で伸ばそう「生活習慣力」!

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

変化していく生活習慣

今回は、子どもたちに、生活習慣の大切さを伝えるのに役立つ絵本をご紹介したいと思います。

コロナが世界に広がった2020年冬から、1年と半年以上が過ぎようとしています。その間に人々の衛生観念や生活習慣はものすごい勢いで変化しました。マスク生活の当初は出がけにマスクを忘れたり、着けても違和感で落ち着かなかった子どもたちも、気づけば率先してマスクを着け、親の方がうっかり忘れてしまうこともあります。マスクがなければどこにも行けないので、カバンの中には必ず予備マスクが入っています。また、体調不良で学校や仕事に行くことは控えなければいけないので、体調管理も今まで以上に大切なことになりました。

そうした毎日の中で、体を守るために生活習慣を維持することはとても大切なことです。しかし、子どもたちに自分でコントロールしてもらうことは至難の業。睡眠、歯みがき、手洗い……。口で言っても子どもにはなかなか身に付きづらいものです。

ですので、今回は「毎日の生活習慣が健康につながるんだよ」とやさしく伝えることで、毎日の生活習慣に落とし込める絵本をご紹介したいと思います。

今や、もっとも大事な“手洗い”

新型コロナウイルスの流行から、これまでよりさらに重要となった“手洗い”。「お外から帰ってきたら」、「ご飯を食べる前」と、子どもたちは小さなころから手洗いしようと伝えられていますが、遊ぶのに夢中で忘れたり丁寧に洗うことがめんどうだったり、自分から進んでとなるとなかなか難しいものがあります。そんなときに、手洗いを楽しもうと伝えてくれる絵本があります。

楽しく手洗いするには?

ルルロロのてあらいだいすき!

「くまのがっこうジャッキーのいもうと」で登場し、その後NHK-Eテレアニメ「がんばれ!ルルロロ」で大人気となったふたごのキャラクター、ルルとロロのふたりが「手洗い」に挑戦します。

おばあちゃんと一緒に泡で遊んだり、歌を歌ったりしながら、どんどん手洗いが上手になっていきます。最後はおばあちゃんの手作りタオルで手をふいて、はい、終了!
子どもの手洗いは水をかけただけ。そんなことで困っているママたちはたくさんいます。
でも、この絵本があればもう大丈夫。
大好きなルルロロと一緒に楽しく手洗いすること、それまでめんどうだった手洗いが大好きになる絵本です。

アニメでもおなじみ、なかよしふたごのルルロロちゃんのおはなしです。ルルロロちゃんは、手洗いを忘れたり適当に手を濡らして終わらせちゃったり。そんなルルロロちゃんに、おばあちゃんは二人が楽しく手洗いできるよういろいろな工夫をしてあげるのです。

 子どもたちの性格は千差万別。手洗いに関しても、何度言っても適当にすませちゃう子や、逆にウイルスにおびえすぎて手がガサガサになってしまう程洗ってしまう子など、それぞれ違います。ですので、こうした楽しい手洗いを描いた絵本は、親にも子どもにもプレッシャーをかけすぎず、工夫をして生活習慣を楽しむことを伝えてくれて、とてもありがたい存在です。

病気になったらどうする? どうなる? 

まずは身近な風邪のことから。風邪の初期段階の「鼻水」についてです。ずるずる出しっぱなしだと、いろいろなところにくっついてほかの人にもうつりかねませんし、飲み込んでしまうとウイルスや汚れをのどや体の中に入れてしまうので、鼻をかんでもらいたいのですが、小さい子どもにとっては「“鼻をかむ”ってなに?」なんですよね。「鼻から息を出してー、ちーんとしてー」と言っても伝わりませんし、親もどう教えていいのかわからない……ということもあると思います。

そんなとき、本っ当にありがたかったのが、こちらの絵本。

上手に鼻をかむコツがつかめる

じぶんで はなを かめるかな

ユウタくんは鼻をかむのがにがてです。
ある時、力を入れてこすると顔から鼻が逃げ出しました!
逃げた先に現れたのは……ティッシュの神様!?

魔法のトレーニングで上手に鼻をかむコツがつかめる絵本です。

自分で鼻をかめないユウタくんのところに、ティッシュの神様がやってきます。鼻のかみ方を教えてくれるのですが、とても楽しそうに、そして段階的に少しずつ教えてくれるのです。「片方の鼻のあなに丸めたティッシュをつめてー」など絵本のとおりに一緒にやってみると、それまでまったく自分で鼻をかもうとしなかった我が子もなんと1回でできるようになりました! 風邪を悪化させて咳き込んだ状態になると、外出もままならないこのご時世、鼻かぜ段階で対応できるすばらしい絵本です。ぜひご活用ください!

そして、子どもたちに正しい生活習慣を身につけてほしい根本的な目的は、そうしないと病気になってしまうからですよね。ですが、病気になったその先はどうなるのでしょうか? 大人はなんとなくわかっていても、子どもは病気のその先を聞かれてもポカンとしてしまうと思います。もしくは、わからなさすぎて恐怖心を持ってしまうかもしれません。「病気になったら大変だけれど、もしそうなったらしっかり立ち向かえばいいからね」と子どもたちに教えられる絵本があります。

入院したらどうなるの?

ひとまねこざるびょういんへいく

はめ絵のこまをキャンデーとまちがえてのみこんでしまったこざるのジョージは,おなかが痛くなり,さあたいへん! 子ども病院に入院したジョージは,ここでも子どもたちの人気の的です.

あの、“おさるのジョージ”の絵本です。ここでは、絵本の表記と合わせて“じょーじ”と呼びますが、しりたがりやのおさるのじょーじは、あるとき病院に運ばれることになります。病院に運ばれ診察を受け、検査のあと入院することになる過程がとてもていねいでわかりやすく描かれています。じょーじの場合は病気というよりもうっかりミスの誤飲が原因なのですが、おなかも痛んで手術後は気分が苦しくてつらそうなじょーじの姿に、子どもたちもドキドキすると思います。ですが、病院で回復していくにつれ、いつもの好奇心旺盛のじょーじに戻っていき、引き起こしてしまった大騒動を読んだ後は、「ちゃんと直せば、元気になれるんだ」と励まされるはずです。

病気をすると苦しいけれど、そうなってしまったら、きちんと治療をすれば大丈夫、ということを優しく伝えてくれます。

おトイレはがまんしない!

「排泄」って健康のためにとっても大事なことですよね。ですが、デリケートな部分でもありますので、子どもたちも学校や幼稚園のトイレを恥ずかしかったり、おうちのトイレ以外では落ち着かなかったりして、排便習慣が不安定になることもよくあります。おなかの調子を整えるために食事に気を配ってあげることはできても、すべての排泄を親がチェックするのも無理があります。そこで、子どもたち自身に排泄に関心をもとうと伝える絵本をご紹介します。

気持ちよくトイレにいけるようになる

うんぴ・うんにょ・うんち・うんご

うんこは、はずかしいものではなく、生きていくうえで自然で大切なこと。だから、いっしょにうんこを考えてみよう。楽しいネーミングをしたりアイディアいっぱいで、気持ちよくトイレにいけるようになる絵本。

うんちの大切さ、体の調子によってうんちの状態が変わることがとてもわかりやすく描かれたロングセラーです。うんちをがまんしてしまうと体に良くないことも伝えてくれます。

そしてもう少し小さい子の場合は、「うんちの後始末が自分でできるか」が問題であったりもします。おむつははずれて、おしっこは一人で問題なくできるけれど、うんちのおしりは一人ではふけない、という子はけっこう多いようです。おしりの位置が自分では見えなかったりトイレットペーパーを丸めるのが難しかったり、おしりふきには大人が思っている以上にハードルがあるようなのです。

そんなときに、またとってもありがたかった絵本が、前述の『じぶんではながかめるかな』と同シリーズのこちら。

自分でおしりをふくトレーニング!

じぶんで おしり ふけるかな

ひろきくんがうんちをしていると、いつのまにか金色の船で海に出ていました。出会う動物たちが「おしりをふけるかな?」と聞いてきます。新しいトイレトレーニングの絵本。

とてもわかりやすく、どうやったら子どもでもおしりをふくことができるのか、手順を追って描いてくれています。

一人でおしりがふけないので幼稚園保育園のおトイレにしりごみしてしまう子も、この絵本でやり方をイメージできれば、最初は丸めたトイレットペーパーを親が渡すところから始めても、何回か繰り返せばいつのまにか「ぜんぶできたよー」とパンツを履いて出てくるようになります。うちの子もおむつがはずれてだいぶ経ってもおしりがふけずハラハラしていましたが、この絵本のおかげでいつのまにかできるようになっておりました。本当にすばらしいシリーズです!

歯みがきに手を抜かない

「じょうぶな歯」は健康の要。ですが、歯みがきはめんどうですし、口の中にものを突っ込まれることに抵抗がある子は多いですよね。親は「むし歯になってからじゃ遅いのよ!」と必死で磨かせようとしますが、むし歯になったことがない子には「むし歯はいたいのよー」「歯が無くなると大変なのよー」と言ってもぴんとこないと思います。そんなときには、ぜひこの絵本を!

むしばあちゃんに怒られる!

むしばあちゃん

みんなの口の中には「むしばあちゃん」がいる。みんなが寝ている間に、歯をピカピカに掃除してくれるんだ。でも、お菓子ばかり食べて、ちゃんと歯みがきしないと、「あばれむしばあちゃん」に変身するぞ! そうすると、虫歯がどんどん痛み出して、こわーい歯医者さんに連れて行かれるんだ。だからむしばあちゃんを怒らせないように、ちゃんと歯みがきしようね……。「歯は一生の友だち」と実感できる、楽しくてためになる絵本です。

むしばあちゃんは、みんなの口の中に住んでいて、食べかすのついた歯をきれいにしてくれる良いばあちゃん。けれど、歯みがきをしないであんまり汚しすぎると、「うりゃあー」と怒り始め、その子の歯はじんじん痛み始めるのです。歯医者さんに行って治してもらうことで、むしばあちゃんは怒りを鎮めます。でも、それでも懲りずに歯を磨かないでいると……というおはなしです。口の中に歯をきれいにしてくれるおばあちゃんがいる、という設定にほっこりさせられつつ、むし歯ができるとどんなに大変なことになるかを子どもたちにとてもよく伝えてくれます。

歯の大切さをインパクトたっぷりに楽しく伝えてくれる絵本です。

寝ることに親しみを

健康な生活の土台となる “睡眠”ですが、子どもたちに身につけてもらうのに、もっとも手こずる生活習慣だったりします。まだまだ遊びたいしテレビも見たいし、寝たくない気持ちもわかります。「寝ないと明日ふらふらになるのよー」「免疫が落ちちゃうのよー」と言われても、何のことやらで終わってしまうと思います。「なぜ睡眠をとらないといけないのか」と解説しても、結局目の前の快楽にかなうわけないのです。残された手段としては「寝る」ことに興味をもってもらって繰り返し習慣化していく、それにつきるのではないでしょうか。

そんな手こずる「睡眠習慣」につながる絵本のまず一冊目です。

おふとんをかけて寝る準備

おやすみなさい

くまさんに、うさぎさんに、ねこさんに、おふとんをふんわりかけてあげましょう。みんな、めをつぶって「おやすみなさい」。

対象としては0、1歳くらいの子向けなのですが、しかけ絵本となっていて、絵本の中のくまさんに、「おやすみなさい」とページをめくると、おふとんをかけてあげることができるんです。おふとんをかけてあげると、くまさんも目を閉じてすやすや。ほかの動物たちにもおふとんをかけてあげて、ねんねをさせてあげられます。いつもは無理やり寝かせられる子どもたちも、自分が寝かしつける側に立ってねんねの手順をふんでいくと、なんとなく「さあ、じぶんも」と納得しておふとんに入ることができるようです。自分で寝るための心の準備ができる楽しい絵本です。

そして2冊目は、もう少し大きな子に向けたこちら。

優しい気持ちで眠りにつけるおはなし

シルクハットぞくはよなかのいちじにやってくる

シルクハットぞくは、夜中の1時にやってくる。
空をとんで、窓のすきまをするりとぬけて、
ぐっすり寝ている人のまくらもとに立つ。
そうして、ふとんのはじっこをそっと持つと…。
いったい、何をするのかな?
「(シルクハットは)うちにもくるの?」「ほんとにいるの?」
「いないよー」「いるかもしれないよ」と、子どもたちに大反響! 
ちょっぴり不思議な、おやすみ前の絵本。

これは、夜の神秘的な世界を子どもたちに想像させてくれるステキな絵本です。4.5歳を越えると、それぞれの性格にもよりますが、寝るのを嫌がる子は寝室から脱走を繰り返すわ「俺は不眠症なんだ」などと言うわ(全部うちの子です)、とりあえず何を言っても効果がありません。ですので、神秘的でちょっと大人っぽい世界が堪能できる、こんな絵本で夜の世界に誘ってはいかがでしょうか?

シルクハットをかぶりマントを羽織っている黒ずくめの集団、“シルクハットぞく”。彼らが真夜中の一時に集まって、いっせいに空へ飛び立ち行う仕事とは?? というおはなしなのですが、まっくらでなんとなく不安な夜でも、彼らが見守り続けてくれていると思うと、夜もちょっと楽しみになってくるのではないでしょうか? 親子でとってもとっても優しい気持ちで眠りにつける絵本なので、ぜひ読んでみてください。

さいごに

生活習慣の目的は「健康を守って生活すること」につきると思います。ただ毎日のことですから、繰り返して定着するまで時間も気力もかかりますよね。さらに、コロナによって衛生観念が厳格化しましたので、親も子も毎日チェックすることが増えて大変だと思います。

そして、良い意味でも悪い意味でも子どもは影響を受けやすいです。我が家でもコロナの当初、子どもがいろいろな情報におびえてしまい、一瞬庭先に出ただけでもひたすら手を洗ってガサガサになってしまったり、外出から帰ったらお風呂で全身を洗わないと気が済まなかったりと、不安で行動が行き過ぎてしまうこともありました。子どもが目にする情報を親がコントロールしてあげるべきだったと反省しています。今は落ち着いて生活していますが、普通の生活を行いつつ正しい生活習慣によって身を守る、という方針をなんとか続けねばと思う毎日です。

子どもを脅かすというよりも、「こうするとずっと健康でいられるんだよー」「一緒にやってみよう」といった方向で進めたり、習慣を定着させるのが難しければ、工夫や仕組みで続けられるようにするという考えの方が、「健康を守る」という目的達成のためには良いのではと思います。それに、時代が変わると生活習慣や衛生への考え方も変わってきます。最近では、大人も子どもも、体調が悪い時は無理に仕事や学校へはいかないという考え方にもなり、皆勤賞をやめる学校も増えているようです。そういえば、私の父親の時代はローカルルールかもしれませんが、「田植えで学校を休んでも休みにカウントされなかった」そうです。時代によって優先するものの基準が変わるものですね。

これからも、時代によっていろいろと基準が変わってくると思います。子どもたちが、基本的な生活習慣を身に着けつつ、様々な変化に対応して身を守っていくことができるよう、楽しく生活習慣についてお話ししてみてください。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。

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