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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

親子で学びたい! サスティナブル教育

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

子どもたちが受けているサスティナブル教育とは?

前回は、子どもたちを取り巻く「ジェンダー、多様性」教育について考えられる絵本をご紹介しました。今回は前回と連動して、子どもたちが現在受けている「サスティナブル(持続可能な)教育」、特に環境や消費について考えることのできる絵本をご紹介したいと思います。

 

SDGsという言葉が広く知られるようになりました。子どもたちは、学校で「SDGs」に基づき、様々なサスティナブルに関わる教育を受けています。

2015年に国連でSDGsが採択され、子どもたちにサスティナブルな社会の作り手となる資質や能力の育成を推進するため、ESD教育(持続可能な開発のための教育)という教育が示されました。日本では2020年度から学校教育の中で盛り込まれるようになったそうです。例えば、環境に配慮して生きていくことを学ぶため、小学校の生活科では「活動や体験を通して自分と身近な人々、社会及び自然とのかかわりに関心をもち、生活について考えさせる」という目標があり、 家庭科では自分の生活と身近な環境とのかかわりに気付き、物の使い方などを工夫することを学びます。私自身、SDGsについては知っていましたが、学校教育においての実践“ESD教育”については、恥ずかしながら「知らなかったー」という状態でした。

子どもたちは毎日そうした教育を受けているのに、私たち親世代は自分から情報を知ろうとしない限り、持続可能な社会に向けての知識に、子どもたちとどんどん差が生じていってしまいます。そこで、これからのサスティナブルな社会を親子で担っていくために、子どもたちと一緒に考えることのできる絵本をご紹介したいと思います。

地球環境への意識をもとう

環境問題を知る

小さな子どもにもわかりやすい環境絵本

ペンギンかぞくのおひっこし

小さな子どもにもわかる環境を考える絵本

地球がどんどん暖かくなってきたので、ペンギンの家族は、居心地の良い場所を探してお引っ越しすることにしました。さて、すてきな場所が見つかるでしょうか? 小さな子どもにもわかりやすい環境絵本です。

イタリア在住で、世界で活躍する刀根里衣さんの新刊絵本。
刀根里衣さんのこのシリーズは、動物の家族・兄弟が主人公の幼児向けのストーリー絵本です。
「うさぎ」「ひつじ」「カエル」に続き、今回は「ペンギン」のお話です。

ペンギンの家族は、住んでいる氷が狭くなってきたので、もっとすてきな場所を探してお引っ越しすることにしました。
「南の方にきれいな海があるって聞いたよ!」
「よおし、いってみよう」
ところが、そこには、真っ黒な海しかありません。
「北の方に・・・・・」
どこに行っても、すてきな場所は、どこにもありません。

さあ、ペンギンの家族は、どうするのでしょうか?
住むのにぴったりなすてきな場所を見つけることができるのでしょうか?

物語に登場する84羽のペンギンは、1997年に開かれた地球環境を考える国際会議で採択された京都議定書に署名した84か国を象徴しています。

小さな子どもたちにも理解できる言葉で語りかけます。

まずは、持続可能な社会に向かうための大前提として、現在の環境問題について知ることのできる絵本です。

この絵本は、温暖化によって氷が溶け引っ越しを目指す84わのペンギンたちが主人公。とても愛らしい姿のペンギンたちは、新天地にウキウキわくわくと胸をときめかせていますが、次のページをめくると想像とはまったく違った世界を目にしてがっかりしてしまいます。きれいな海、きれいな原っぱがあると聞いて夢見ていたのに、そこにあったのはまっくろな海やまっくろい煙が立ち込めた街……。期待はことごとく裏切られます。その光景は現実の地球の姿を描いているのですが、とても優しいタッチの絵で描かれているだけにペンギンたちの悲しさが伝わります。ただ、この絵本はそうした悲しさだけにとどまりません。ペンギンたちも、地球上の生き物の一員として何かをせねば、と最後決意するのです。

「84わ」という数字にも秘密があり、温室効果ガス排出の削減を目標とする条約“京都議定書”に最初に署名した84か国を象徴とした数字です。ちなみに、京都議定書では先進国を中心とした国々のみが条約を結びましたが、その後パリ協定ではすべての国が温室効果ガス排出削減に向け努力することが決まりました。温暖化だけでなく、海の汚染、大気の汚染、砂漠化などなどの環境問題をやさしく伝えてくれる絵本です。

環境への関心をひろげる絵本

CO2のりものずかん

CO2 は地球温暖化の原因といわれています。でも、なにがどのくらいCO2 を出しているか
知っていますか?身近なのりものを比べることで、目に見えないCO2 を実感し、環境への関心をひろげる絵本です。
 

温室効果ガスとは、温暖化への影響が大きい気体のことを指しますが、その中でも温暖化への影響がもっとも大きい気体が「二酸化炭素=CO2」です。このCO2が人間たちの活動と切っても切れないことを伝えてくれる絵本が、こちらです。

この絵本では、人が乗り物を使うとどのくらいのCO2が出るのか、ぱっと見てわかるように作られています。人は、生活するためには乗り物が欠かせません。乗り物の発展とともに人の生活も発展を遂げてきました。しかし、乗り物が速く大きくなるほど、排出するCO2はとてつもなく大きくなっていきます。環境的には、飛行機での移動は行わない方がよいという意見もありますが、そうした理由も一目でわかります。

また、乗り物そのものの排出量だけでなく、その乗り物を使った場合の一人分の排出量もしっかり見せることで問題点をはっきり伝えてくれます。一人当たり排出量でいうと飛行機についで乗用車の排出量が多いことも見て取れます。そこから、なぜ世界的にガソリン車からEV車への転換が急務となっているのかなど、子どもたちと様々な方向から語り合える絵本です。

エネルギーと資源を守る意識を

地球にやさしいくらしを考える絵本

おさるのジョージ木をうえよう

科学博物館で,環境についていろんなことを知ったジョージは,館長さんに「みどりの日のつどい」の手伝いをしてほしいとたのまれます.ジョージは,つぎの日,リサイクルに使えるものをたくさん集めて公園にむかうのですが…….親子で楽しみながら,地球にやさしいくらしを考える絵本です.

おなじみのおさるのジョージが、3R(リデュース・リユース・リサイクル)活動を知ります。お手伝いが大好きなジョージは、紙のリサイクルを手伝うためにたくさんの紙を一生懸命集めようとしますが、またまた騒動をまきおこしてしまうのです。

“環境問題”というと問題が大きく、子どもたちもとらえ方が難しい部分もありますが、この絵本では日常生活でどのように環境にやさしい生活をすることができるか、ジョージと一緒に分かりやすく学ぶことができます。特に巻末では、「昼間はカーテンを開けて家の中を温めましょう」「近いところに行くときは自動車に乗らずに歩くか自転車に乗りましょう」など、ふだん、どのような行動で、資源とエネルギーを守ることができるか、子どもたちでもできる身近な試みが示されていますので、「この活動はなぜ必要なのか」いろいろと話し合うこともできますよ。

資源の循環について考える

“ゼロウェイスト”という言葉をご存じでしょうか? 「ごみをゼロにする」ことを目標に、できるだけ廃棄物を減らそうとすることを指し、世界に急速に広まっているライフスタイルです。個人がゴミの出ない生活をするだけでなく、企業が資源を浪費しない製品の生産方法を行うことも含めます。そうしたゼロウェイストの概念に通じる絵本が、こちらです。

アップサイクルを教えてくれる絵本

おじいさんならできる

ヨゼフが赤ちゃんの時、おじいさんがブランケットをぬってくれました。そのブランケットは古くなりましたが、おじいさんの手によって次々と新しい使い物に変身していきます。

ヨゼフにはおじいさんがいます。ヨゼフが赤ちゃんのときに素敵なブランケットを縫ってくれました。しかし、ヨゼフが大きくなるにつれてブランケットは古ぼけ破れてしまいました。すると、おじいさんは「ちくちくすーいすい」と縫うと、ブランケットをジャケットに作り変えてくれたのです。おじいさんは、ジャケットが小さくなるとベストに、ベストをネクタイに、ネクタイをハンカチに、ハンカチをボタンに、捨てることなく次々と素敵なものに作り変えていって……。

この絵本は、細かいところまでていねいに考えられており、ブランケットを作り変える際に出たハギレまで、ネズミたちが再利用してすてきなベッドカバーやカーテンにしている絵があります。まさに“ゼロウェイスト”です。それだけでなく、廃棄する物を使って新たな価値を加えた商品を作ることをリサイクルならぬ“アップサイクル”といいますが、おじいさんもネズミたちも元のものとは寸分劣らぬ新たなものを生み出した点ではアップサイクル商品を作り出したともいえます。

実は、アップサイクルの概念は最近のものではなく、日本でも昔から古くなった着物はほどきなおして作り直したり染め直したりしてきました。江戸時代、当時の江戸は大都会であったにもかかわらず、ほとんどゴミは出ず、紙や着るものはほとんどリサイクルされていたそうです。生ゴミや糞尿は肥料に回され、リサイクルできないゴミも現代のようなプラスチックごみはないため土壌で分解され埋立地に利用されたそうです。資源を最後まで使い切り、また別の価値を持ったものにアップサイクルすることは、昔の暮らしからも学べるかもしれません。

そして、資源の循環として押さえておきたいのが「水の循環」です。

私たちが安心安全に水を利用することができるのは、一度使った水もきれいにして再利用できるようにしてくれる水道システムのおかげです。そんな水道の仕組みを図解してくれているのが、この絵本です。

すいどう

 

作:百木 一朗 

出版社:福音館書店

私たちの生活に水道は欠かせません。手を洗うにも水を飲むにも水が必要です。蛇口からはきれいな水が出て汚れた水は排水口から流す、そんな水道の仕組みは、大人はおぼろげにわかっても子どもたちはいったいどういうシステムなのか、なかなか把握しづらいと思います。

我が家の下の子は一時期マンホールが大好きだったのですが、「マンホール」や、そこに書いてある「下水道」とはいったいなにかと聞かれ、説明してもいまいちピンときてくれず、様々な蛇口を指しては「これは上水道か下水道か」ひたすら聞かれて弱ったことがありました。そんなときこの絵本を見つけ、水道管とはどういったものなのか、汚れた水はどう下水処理場までつながっているのか、マンホールはどういうときに使うのか、がシンプルに図解されていて、子どもも上水道と下水道をあっという間に理解してくれました。それだけでなく、小下水道の仕組みは、私たちが安心して水を利用するために必要不可欠であることもまた教えられました。

水も限りある資源です。海から蒸発した水蒸気が雨となり水として使われた後は処理場できれいにされ、また海へと戻り循環しています。しかし、日本の下水道の普及率は世界有数レベルではあるものの100パーセントではありません。汚れた水がそのまま河川に流れ汚染されてしまうこともありますし、必要以上の水の使用は処理が追いついていません。私たちが配慮なく水を使用していくと、海や川の汚染が拡大し安全に水を利用することが難しくなってしまうのです。

この絵本は、「水道」という仕組みから人々は水をどう使っていくべきかを考えることができます。

月刊絵本で単行本ではないので、今のところ図書館でバックナンバーを見るしかできませんが、必要な内容をシンプルに伝えてくれるおすすめの絵本なので、ぜひご覧ください。

ものを大切にするために

限りあるものや資源を守るための基本は、「今あるものを大切にすること」ではないでしょうか。そのためには、その物がどんな手間暇をかけて作られた知ることが大事だと思います。そうした物づくりの過程を知ることができる絵本をご紹介します。

牛乳ができるまで

たいせつなぎゅうにゅう

私たちがいつも飲んでいる牛乳は、どうやって作られているのでしょう。
人気写真家のキッチンミノルさんが、北海道・別海町のたんぽぽ牧場を泊まり込みで取材。
「牛乳ができるまで」をダイナミックな写真とあたたかなまなざしで伝えます。

子どもたちに身近な牛乳がどう作られるかが分かる写真絵本です。牛乳が牛の乳ということはわかっていても、その牛乳を安全に届けるためにどんな努力がなされているか、その過程までは具体的なイメージは難しいと思います。この絵本では、牛乳が自分たちの手元に届くまで牛がどう育てられ、雑菌が入らぬよう安全管理しているかが写真でわかりやすく伝わってきます。

最近、コロナ禍で業務用の牛乳が使われなくなり、牛乳がかつてない規模で余ってしまう事態が起きました。牛乳は保存ができないので余ると廃棄されます。廃棄が続くと牛乳を作る酪農家が減っていきます。そうすると価格が上がり、栄養のある牛乳を必要な人々が簡単には手に入れられなくなる恐れもあります。ただ単に「だから余らないように飲みましょう」というよりも、ここからがサスティナブルな課題として、「牛乳を廃棄しないように生産量を考え、かつ酪農家が安定して牛乳を作り続けるには?」といったことを親子で考えられる契機となる絵本でもあります。

また、日本ではおなじみの“おすし”のできる過程をリアルに伝えてくれる絵本があります。

「命をもらって生きている自分を大切に」

おすしやさんにいらっしゃい!生きものが食べものになるまで

キンメダイ、アナゴ、イカなど、釣り上げた魚をさばき、
だんだんと美味しそうな切り身へとかわって行く様子を、
動画のような連続性で見せる写真絵本。
魚のとくちょうや部位の名前も解説。
最後はお寿司になって登場!みんなで美味しくいただきます。

「命をもらって生きている自分を大切に」とメッセージを贈ります。

こちらも写真絵本で、釣った魚たちがどのようにお寿司の姿となっていくのかを伝えます。キンメダイのお寿司はおいしいですが、うろこを削り、内臓・骨を取りさばいて、皮は固いからあぶって、など食べられるまでに様々な加工をほどこす必要があります。ほかにも、ふだん魚屋さんでは丸ごと見られないアナゴやイカの姿も見ごたえがあり、それぞれが口に入るまでどれだけの手間暇がかかるのかがよくわかります。

お寿司は子どもたちも大好きです。家族で回転ずし屋さんへ行ったりと、とても身近な食べ物だと思います。これだけの手間暇がかかっている食べ物を安易に残さないことももちろんですが、海の汚染が広がり、様々な国で魚を採ることで漁獲量も減り、これからこのように安価で食べ続けることができるのか、までいろいろと考えさせられる絵本です。

さいごに

地球環境の問題は、もはや一部の人、一部の国の努力だけではどうにもならないところまできています。これまでのような消費型の社会が続けば、いずれ地球環境は限界に達することは明らかになりました。だからこそ、SDGsの「誰一人として取り残さない」という、いいかえれば「全人類で取り組まなければならない課題だ」という宣言がなされたのだと思います。

私の子どもたちも、それぞれの小学校・幼稚園で、「限りある資源を大切に」「最後まで使い切る」と日々教えられ、「まだ使えるからもったいないよ!」「使ってないスイッチは切って!」と私の方が言われることも多いです。子どもが小学校にあがり、学校教育の内容に環境問題がかなり取り上げられていることも、自分の時代と比べて驚きでした。私自身も、現代の環境問題の状況にそれほど詳しくはなく、改めて調べてみましたが……あまりに解決の方法が見えず、暗澹とした気分になってしまいました。そう考えると、環境活動家のグレタさんが、あれだけの怒りを持っていることにもうなずいてしまいます。「このままでは子どもたちの未来がなくなってしまうのに、大人たちはいったい何をやっているんだ!」。ですよね。悠長にかまえている場合ではなく、私たちは次世代の子どもたちに受け渡していくために、本当に今何とかしないといけないわけです。

ただ、子どもたちについて考えたとき、私は先行きの暗さだけではなく、新しい時代となっていく無限の可能性も感じています。経済成長を目指す時代は終わりました。環境問題をはじめ問題が山積みですが、これからは資源の循環をふまえ、人々にはどんどん新しい価値観や発想が生まれてくると思います。そうした時代のリーダーとなれるよう、今の子どもたちはサスティナブル教育を受けています。今は、新しい時代への転換地点だと思います。私たちの世代は、子どもたちが新しい時代に適していけるよう、生きていく資源に困らぬよう、その土台を整えていかなければいけないと思っています。

大人は、次世代に向けて何ができるかを、子どもたちは、未来に向けて何ができるかを、ともに行動するきっかけとして、今回ご紹介した絵本で語り合っていただきたいなと思います。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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