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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

絵本で育む「協働力」!

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

「協働」で世界を変える

グローバル社会で生きていくために必要な力、「協働力」。文化も考え方もバラバラな人たちが暮らす世界で、地球規模の課題は山と迫ってきています。問題を解決していくためには、他者と力を合わせていかなければいけません。第17回では、「多様性」をテーマに取り上げましたが、多様な人々とつながり、多様な価値観を理解して協働していくことが、社会では必要となってきます。

今、世の中では「協働する」という本当の意味を考えさせられるできごとが起こっています。自分の利益、立場、プライドということではなく、相手を認めつつ、どう協働して問題を解決していくべきか問われています。

絵本には、様々な能力の登場人物が協力して物事をやり遂げる物語がたくさんあります。一人ではできないことも、協働することで成し遂げることができると、子どもたちに伝えられる絵本をご紹介していきたいと思います。

協働するってどういうこと?

まずは、「協働」とはどういうものなのかが物語からわかる絵本をご紹介します。

つみきだいさくせん

積み木たちは、たんすのてっぺんに置きざりのまるちゃんを助けようとしますが、くずれてしまいます。お城作戦でも届きません。そのとき、動物たちが手伝ってくれて、ついに到達。ラストの片観音開きが効果的で楽しい絵本。

だれかが泣いている声がします。積木のまるちゃんが、高い棚の上に取り残されて泣いていたのです。積木たちは「みんなでたすけるぞ」と、どんどんみんなで積みあがっていきますが、なかなか上までたどりつけません。トライアンドエラーで、積み上げ方もいろいろ変えてみますが、あと一息、どうしてもまるちゃんまで届きません。積木たちは困り果ててしまいますが、そこに……。

小さな子から楽しめる積木遊びの絵本ですが、「協力すれば、難しいことでもできるんだ」ということを、ヴィジュアルでわかりやすく伝えてくれます。

もう少し大きい子向けには、それぞれががんばって一つの目的を達成していく姿が楽しめるこんな絵本もあります。

びゅんびゅんごまとは、板の真ん中の二つの穴にひもを通して、そのひもを引っ張って回して遊ぶ昔のおもちゃのことです。

一年生のこうすけが通う学校には、運動場の隣に自然の遊び場がありました。ある日、こうすけは丸木の一本橋をふざけて渡り、落っこちて骨折してしまいます。それから遊び場には大きなカギが掛けられ使えなくなってしまいました。こうすけたちは、新しく赴任してきた校長先生に、「遊び場のカギをあけてください」とお願いするのですが、校長先生は、びゅんびゅんごまを渡し「まわせるようになったら、たのみも きこうじゃあないか。」と、意地悪な顔でにやりと笑うのでした。こうすけたちはびゅんびゅんごまに必死で取り組んでいきますが……というお話です。

校長先生の意地悪には考えがあるのですが、子どもたちが「遊び場のカギをあけよう」と、校長先生にそれぞれの方法で立ち向かっていく姿や、責任を感じてあきらめないこうすけの姿などにハラハラドキドキしながら読み進められます。

「共に目的に向かう、助け合う」という物語から“協働とは”を知ることのできる絵本たちです。

自分の力を知ろう

共に何かを成し遂げるためには、まず、自分には何ができるのか、何によって協力することができるのかを知ることが大切です。そうした、「自分の力」について考えられる絵本がこちらです。

ぼくは いったい なんやねん

長いこと使われていなかったために、自分が一体なんだったかわすれてしまった、”ある道具”のお話。
悩んだ末に、思い切って自分探しの旅に出ますが、何をやってもうまくいかず、落ち込みます。

そんな矢先に、奇跡的な出会いが……。
果たして、答えは見つかるのか?!
岡田よしたか流、ユーモア絵本。

「みなさん、ぼくが だれだか わかりますか? じつは、ぼくにもわからんのです。」という言葉から始まるこの絵本。語っている「ぼく」の姿は、ふだんあまり見かける姿ではなく、使ったことがある人でも正直なところ、「あれはなんだったっけ?」というレベルの認知度です。細長いぼくに似た姿の耳かきや釘ぬき、編み棒と出会いますが、彼らのできることがぼくは全くできません。「あー、わからんわー」と右往左往さまよいますが、最後ようやく「ぼくのしごと」がわかるのです。

 この“ぼく”はなかなか特殊な仕事をするので、他のことにはまったく向いていません。ですので、途中気持ちも折れかけますが、「自分の仕事」を思い出すと、他の誰にもできない仕事ぶりを見せるのです。

そして、弱みだと思っていた自分の力も、違う見方をすれば「強み」だよ、ということを教えてくれる絵本がこちら。

番ねずみのヤカちゃん

ある家にすむ母さんねずみと子ねずみたちは、人に気づかれないよう静かに暮らしていました。ところが末の子ねずみヤカちゃんの声の大きいこと。きっと大変なことがおこるでしょう!

あるところに、おかあさんねずみと四ひきの子ねずみがいました。子ねずみのうち、三びきはしずかでしたが、四ひきめは「やかましやのヤカちゃん」と呼ばれています。ヤカちゃんたち一家は人間のドドさんの家のすき間に住んでいました。ヤカちゃんたちは、こっそり住んでいましたからドドさんたちに気づかれないよう静かに暮らさなければいけません。でもヤカちゃんは、どんなに気をつけていても声だけは小さくすることができませんでした。なにか言おうとすると、そのたびにとてつもなく大きな声がでてしまうのです。その度にみんなから「しーっ、しずかに!」と言われてしまいます。ですが、ねずみとしては短所と思われるその大きな声が、ヤカちゃんの長所として認められる事件が起きるのです。

ヤカちゃんは、自分の大きな声を短所だと思い込んで、それまでしょんぼりとしていましたが、短所と長所は表裏一体です。これは子どもでも大人でも当てはまりますよね。例えば怖がりで新しいことにしり込みしてしまう性格は、裏を返せば慎重で危険を回避することができるという長所とも言えます。この絵本からは、「自分のいいところに目を向けよう」ということが伝わってきます。

自分の力ってなに? 自分の力は何に使える? ということを考えさせられる絵本たちです。

みんなと同じでなくていい

協働するとき、一人ひとりが同じ力を持っている必要はありません。むしろ、それぞれ違った力があるほうがよい結果を生むかもしれません。そんな「みんな同じじゃなくていい」ということが考えられる絵本をご紹介します。

だいぶつさまのうんどうかい

今日は、仏さまたちの運動会。玉入れ、まんじゅう食い競争、組体操……いろいろな競技をがんばります。初めて参加の大仏様は、大きなからだで、失敗ばかり。でも仏様たちがケンカをはじめて、大仏様大活躍!

仏さまたちが集まって運動会が開かれることになりました。様々なことをつかさどる仏さまたちだけあって、姿かたちもいろいろ、個性もいろいろです。そこに、ひときわ異彩を放つ、大きな体の“大仏さま”がやってきました。しかし、ほかの仏さまたちの何倍も大きい大仏さまは、まともに競技に参加できません。運動会に出るためだけに1000年ぶりに立ち上がったのに……としょげかえる大仏さま。ですが、大仏さまにもようやく活躍の舞台がやってきて……。

考えてみれば、子どもを救うために子どもと同じ姿をしているお地蔵さまや、千の手で人々を救い上げる千手観音さまなど、仏さまたちはそれぞれの能力に特化した個性のかたまりの皆様なわけで、大仏さまも、“宇宙”を表す大きさというだけあって、その大きさだからこそ活躍する場がありました。違う個性があるからこそ、できることが増えていくことを教えてくれる仏さまたちの、楽しい絵本です。

 

そして、次は、「できない」ことに目を向けるのではなく「できる」ことに目を向けたステキなお話です。

おにいちゃんと ぼく

ぼくのお兄ちゃんは、目が見えない。

夜、暗い部屋でも指で本が読めるし、おねだりしていないのにかわいい犬がもらえて、いいな。ぼくにできない、いろんなことができるすごいお兄ちゃんがいて、いいでしょ、ぼく!

“ぼく”には、すごいおにいちゃんがいます。おにいちゃんは記憶力がよくて、暗やみの中でも本が読めます。お話を作るのも上手です。

おにいちゃんは目が見えません(絵から分かります)。ですが、ぼくにとっては、おにいちゃんは自分にできないたくさんのことができる存在で、「おにいちゃんはいいなあ」と思っています。そして、そんなおにいちゃんがいるぼくのことも「いいでしょ」と誇らしく思っているのです。ぼくが、おにいちゃんが大好きなことが伝わってきて、とってもステキですよね。

それぞれ違った能力、魅力があるからこそ、思ってもみない未来が待っているのだ、と思わせてくれる絵本です。

得意技をつかって!

人とはちがう自分だけの力をもちよって、どんなことができるでしょうか? それぞれの力をパズルのように組み合わせていくとすごいことができるんだよ、という物語がこちらです。

くれよんのくろくん

クレヨンたちは、真っ白な画用紙を見つけて大喜び!チョウ、お花、木…。みんな、つぎつぎと描いています。ところがくろくんだけは仲間に入れてもらえません。でも…。記念すべきシリーズ第1作!

くれよんたちが、楽しそうに絵を描いています。きいろのくれよんは、ちょうちょを描いて、ピンクや赤のくれよんはお花を描いて、みんなできれいな絵を描いていますが、くろくんだけは出番がありません。ですが、くれよんたちの個性がぶつかり合ってむちゃくちゃになってしまった絵が、くろくんが入ることで思ってもみないステキな物に変わるのです。

次は、それぞれが必要とされる場所で、適切な力を使うことが大事という絵本です。

すすめ!きゅうじょたい

『せんろはつづく』の竹下文子 & 鈴木まもるの絵本
はたらく車がたすけにいくよ 6人の小さな救助隊が大活躍!

ぼくたち、救助隊。困ったことを発見したら、すぐに出動して、救助するよ。みんなで力を合わせれば大丈夫。ショベルカー、高所作業車、ダンプカー、ホイールローダー、クレーン車、ヘリコプターと子どもたちが大活躍!

困ったことが起きたときにさっと駆けつけてくれる、6人の救助隊の絵本です。6人は、それぞれ高所作業車やブルドーザーなど、特殊作業車に乗っています。そして、たかい木にのぼって下りられなくなっているくまの子をヘリコプターが発見すると、高所作業車によって救助するという連係プレーを行います。高いところにはのぼれなくても、がけくずれの現場などではブルドーザーやダンプカーがザックザックと掘り進み、どんな困りごとでも適材適所で力を発揮し見事に解決していくのです。

 

そして、最後に古典絵本の名作。

王さまと九人のきょうだい

子どものいないおじいさんとおばあさんのところに、ある日9人も赤んぼうが生まれました。ちからもちに、くいしんぼう、はらいっぱい、ぶってくれ、ながすね、さむがりや、あつがりや、切ってくれ、みずくぐり。このきょうだいが成長したとき、王さまがつぎつぎと難題をふっかけてきました。――中国の少数民族のお話の傑作絵本です。

ある村の年寄りの夫婦が子どもを願っていると、ふしぎな老人から子どもを授かる丸薬を九つもらいました。いっぺんに飲んでしまうと九人の赤ん坊が生まれました。「ちからもち」「くいしんぼう」「はらいっぱい」「ぶってくれ」「ながすね」「さむがりや」「あつがりや」「切ってくれ」「水くぐり」という名前で、それぞれの特徴を表しています。”まんまやないか”という気もしますが、分かりやすいです。そして、それぞれの特徴を合わせて悪い王さまに立ち向かっていくのです。

このお話は中国の民話を元にしているそうです。この九人の個性も突き抜けていますが、日本の三年寝太郎なども「三年寝て活躍は一瞬!」で、昔の方が、ある種おおらかと言いますか、「どんな人でも、その人がやるべきことがあるんだから」という、すかっとしつつも、人への穏やかな信頼感を諭してくれる絵本です。

さいごに

今回は「協働力」を伝える絵本をご紹介しました。

4月は、子どもも大人も新しい環境、新しい世界に入っていくことが多いと思います。人は、誰かと関わらないと生活していけません。その中で一人ひとりが「自分は何ができるかな?」と考え、それが繋がっていって何かを為していくのだと思います。

協働力は、ただ「みんな仲良く」ということとは、ちょっと違っています。自分と相手は立場が違って考え方も違う、そのことを互いに認めたうえで、「どうすればより良くなるのか」、一方的な勝ち負けではなく、最も良い形に向かって共に動いていく。それが協働の力ではないでしょうか。全てにおいてパーフェクトであるよりも、今の世の中は、何か「一点突破」できる能力がある方が、協働する際、必要とされることが多いと思います。ですので、子どもたちは、自分の好きなこと、できることをガンガン磨いていって欲しいと思います。

 

国と国との間で人が多く移動し、世界が経済的に繋がっている現代。私は「武力」というものを遠く感じていました。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻が起こって紛争を身近に感じ、「自分の子も戦いに行く時代が訪れたらどうしよう」と冷汗が出ました。また、武力の時代に戻っていく危機感を感じつつも、だからこそ今、「互いを認めつつ、共に働いていくこと」を常に考えていなければならないと思います。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児の母。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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