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現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本

中学生にオススメしたい、世界を旅する本

ちどり航空へようこそ♪

皆さま、今日もちどり航空770便をご利用くださいましてありがとうございます。
この便の機長はJohn Smith、私は客室を担当いたします山下ちどりでございます。
まもなく出発いたします。
シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。

 

本日の運航ルートについてご説明いたします。
絵本ナビ国際空港出発後、韓国、カンボジア、オーストラリアと経由いたしまして、南極に駐機いたします。その後、フィンランド、イタリア、イギリスから南アフリカ、アメリカを経て、絵本ナビ国際空港に戻る予定でございます。

 

この航空機の飛行時間はお客様が満足して読み終わるまで、を予定しております。
それでは、ごゆっくりおくつろぎください。

スペシャルコンテンツのお知らせ 1

出発の前に、今回は絵本ナビスタイルの読者さん限定の音声スペシャルコンテンツを2つ用意しています。お聞きになれる方は、まず最初に1つ目のこちらをお楽しみください。
※下のQRコードからのみ、聴くことができる限定配信です。

QRコードを読み取っていただくか、URLをクリックして聴いてみてくださいね♪

それでは、世界の旅へいってらっしゃい!

韓国『保健室のアン・ウニョン先生』

「見えないもの」が見える保健室の先生が、BB弾とおもちゃの剣を武器に学校を守るべく奮闘!

韓国で大人気の作家チョン・セランが、保健教師(日本では養護教諭といいます)を主人公に高校と高校生を描いた作品です。


舞台は韓国の私立M高校。保健室のアン・ウニョン先生は、普通の人には見えないものが見えてしまう体質です。見えないものって? 例えば、壁の中にいるおばさんや、学校に漂うゼリーのような凝集体……。え? よく分からない? そうですよね。私も読み始めは「なんだこりゃ?」と思いました。表の顔は保健室の先生、裏の顔は邪悪な見えないものを退治する魔術師!? スーパーヒロイン? それにしては武器がBB弾とおもちゃの剣というアンバランスさで、全編「怖さ」よりも「ちょっと変でおもしろい」雰囲気に包まれています。


幼なじみに恋する気持ちや、邪悪な気が宿った脇毛を剃ることで問題行動が直った男子2人組、学校の池にやってきたアヒルを熱狂的に愛でる生徒たち、学校の悪い虫(邪気の象徴?) を食べるためにやってきた古風な転校生……。あるあるな学園風景に、不思議な設定が入り混じり、日本のエンターテインメント小説と同じように気軽な気持ちで読めますよ。

 

とはいえ、これは韓国が舞台の作品。内申点を稼ごうとするのは日韓で同じようですが、韓国は賞罰を足し引きして記録する「簡易賞点確認証」というものが存在していたり、「伝統飾り結び工芸部」があったり、元気を出すものとして高麗人参をなめたり、過去から何度も転生している先ほどの転校生の記憶が百済の初期(!)からあったり……。へぇぇ! ほぉぉ! と違いを楽しみながら楽しめる、韓国の一押し! スクールエンタメ小説です!

カンボジア『お母さんの生まれた国』

カンボジアの内戦から、戦争が奪うものの大きさについて考えられる本

主人公の早坂未来はカンボジア難民だったお母さんと、国際ボランティア組織で働くお父さんを持つ女の子。お母さんは、30年以上自分が生まれた国であるカンボジアに帰ったことがありません。そして、未来はお母さんからカンボジアの国のことや、そこでどんな暮らしをしていたかということを聞いたことがありません。お母さんのお兄さんであるトーンおじさんの提案で、夏休みに関係者8人でカンボジアを旅することになります。


成田空港からベトナムの首都ホーチミンで乗換え、カンボジアの北部にある都市シェムリアップ空港へ。空港に降り立って、カンボジアの雨季の湿度と気温の高さに驚く未来。それぞれの国の香りや空気の感じって、飛行機を降りた途端に感じるんですよね。今回の旅の目的は、お母さんの故郷であるカンボジアの歴史と現在を知ること、そしてなぜ育った国を出てお母さんたちが日本に来ることになったのかを知ること。それは、辛く悲しい過去を掘り起こすことでした。


カンボジアに到着した日の夜に未来のお母さんが語ったのは、未来と同年代の子どもが経験するには壮絶すぎる出来事でした。隣の国ベトナムで起こったベトナム戦争が終結した後、カンボジアではポルポト軍が都市部や知的階級の人々を迫害し、強制労働や虐殺行為を繰り返していました。教師だったお父さんは連れ去られ、お母さんは行方不明に……。奇跡的に再会した子どもの頃のトーンおじさんとお母さんは、命からがら国境を越えてタイの難民キャンプにたどり着きます。


翌日、一行はお母さんが話していた体験を裏付ける戦争の爪痕で、例えばキリングフィールドの慰霊塔ではガラスに収められたたくさんの人骨を目の当たりにし、地雷博物館では30年以上前の内戦の被害がまだ続いていることを知ります。他にも、カンボジアの伝統工芸品の生産場所や市場など、現在のカンボジアの生活も見学します。

 

未来のお母さんたちが語るカンボジアの内戦の歴史は辛く悲しいものですが、少し前の時代に確かにあったことです。そして戦争は今も世界で続いています。本は平和な場所で文字を通じて過酷な体験ができる、貴重なメディアだと、この夏私はひしひしと感じました。

 

この本で印象的なのは、物語の終盤で起こる「あるトラブル」です。きっとみなさんの心の中にも存在する、気づかないほどの小さな偏見や思い込みに気づかせてくれることと思います。

 

カンボジアには、世界文化遺産となっているアンコール遺跡群があり、この小説にも登場します。このアンコール遺跡群はクメール美術の最高傑作といわれますが、内戦によって破壊が進みました。創造と破壊という2つを併せ飲むこの小説は、カンボジアを例に、人間の優しさと愚かさを教えてくれます。

オーストラリア『Masato』

オーストラリアの文化と言葉の壁を乗り越える、少年の成長物語

Masato

Masato

著:岩城けい
出版社: 集英社

海外で暮らせたら英語がペラペラになって、国際人になれるかも!? という人は居ませんか? 実は私は「親の転勤など、チャンスがあったら海外生活を経験したかったなぁ!」とずっと思っていました。でもこの本を読んで「海外生活は思っているよりずっと大変! 言葉や文化の違いに適応するのは本当に骨の折れることなんだ!」と自分の甘い考えを反省したものです。


主人公の真人は、4年の任期で駐在する父親に伴ってオーストラリアに家族で移り住みます。お母さんの「英語がうまくなって、国際人になるいい機会」という希望もあり、真人は現地校に転入します。
転入当初の真人は、英語もしきたりもわからない中、クラスメイトの男子たちにからかわれ、孤独で辛い日々を過ごします。苦労しながらも英語に少しずつ慣れていきますが、英語ができるようになればAll OKかというと……? 全然そんなことはないのです。え? なんで? と思った人はぜひこの本を読んでみてください。ああ、そうか、そんな悩みが! と気づきがあることでしょう。現地の生活に苦労しながらも溶け込んでいく真人の悩みも、いつまでも日本を恋しく思い現地に馴染めないお母さんの悩みも、どちらも分かるはずです。


小学校を卒業し、現地のハイスクールの進学を考える真人は、ちょうど思春期にさしかかる時期。こればかりは万国共通なのですね。今までは絶対だと思っていた親の意見に、少しずつ疑問を感じ始めるあたり、中学生のみなさんはきっと共感できるはずです。


オーストラリアの子どもたちの日常の遊びや学校生活(真人の駐在仲間によればタコさんウィンナーは恥ずかしくてランチタイムには絶対に持っていけないらしいです)、アメリカの単語とオーストラリアの単語の違いなど、読んでいるうちに現地生活を体験しているような気持ちになります。文化の違いってどんなものかな、と思ったら手にとってみてください。イギリス『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』と併せて読むと、文化の多様性をより深く理解することができます。

南極『南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる』

地球の果ての極寒生活を、知恵と工夫とユーモアで乗り切る!

主婦が南極昭和基地で働きたいと思い立ち、3度目の挑戦で憧れの第57次南極越冬隊員になった女性の南極隊員生活記です。寒〜い南極での日々ですが、著者の綿貫さんを始めとする越冬隊員たちの熱い思いに、うっかりやけどしてしまいそうな本です。


みなさん、日本から南極に毎年観測隊が派遣されていることをご存知ですか? 1956年(昭和31年)の第1次南極地域観測隊以降、65年以上続く日本の国家事業なのです。

(参考:https://www.nipr.ac.jp/antarctic/

 

著者は第57次南極地域観測隊に調理隊員として参加しました。調理隊員の仕事は、隊員30人の食事を1日3食(+おやつや夜食)✕365日作るというものです。調理隊員はたった2人、しかも食事は行きに積み込んだものを1年間かけて使います。それだけでも想像を絶する過酷さである上、手が空いているときは除雪や土木作業も担います。観測チームに随行して基地の外で調理をすることも。日本の「ごはん作り」のイメージとは随分かけ離れた調理隊員の仕事ぶりに、1ページ1ページ驚きが隠せません。


日本から南極までも数ヶ月かかるため、南極到着時にはすでに生では賞味期限切れ(!)となっている食材をどう調理するか。使用できる水や排出できるゴミの量にも制限がある中でどうエコな調理を心がけていくか、みなさん想像できますか? 答えはこの本の中に書いてあります! 厳しい条件下でただお腹を満たせばよい、というわけではなく、季節感を表す行事食を作ったり、隊員の誕生日を祝ったり、南極隊員を胃袋で支える大事な役割を調理隊員は担っているのです。


著者は、普通の主婦から熱意と努力で夢を勝ち取りました。その様子は本の最初の方に書かれているので必読です。ちなみにコンビニで売られている「悪魔のおにぎり」は綿貫さんが南極で隊員たちに出したおにぎりのレシピを元に作られているんですって。


南極はマイナス30℃を下回る日もあるくらい寒い地域です。日本の猛暑を緩和してくれそうな南極の様子ではありますが、隊員たちは熱すぎるほどの情熱を持っています。Cool & Hot を同時に味わえる本です。

フィンランド『かもめ食堂』

フィンランドで食堂を開いたサチエたちのように、 ふらりと海外生活をしてみたくなる!

かもめ食堂はヘルシンキの街の中にある小さな食堂。サチエという小柄な可愛らしい日本人女性が営んでいます。人見知りのフィンランド人たちは、子どものような見た目のサチエが一人で切り盛りするこの食堂をこっそり「こども食堂」と呼んで、気になって仕方ありません。かもめ食堂に集う日本人女性とフィンランド人のゆったりとした、でもどことなくちょっと切ないお話です。


古武道を教える父のもとで育ち、「素朴でいいから、ちゃんとした食事を食べてもらえるようなお店を作りたい」という夢を持つサチエは、ある日外国の、それもフィンランドで食堂を開店しようと思いたちます。そこに日本が大好きなトンミ君や謎の日本人女性ミドリ、お店の外でいつも怒っているフィンランド女性など、ひと癖もふた癖もある登場人物が絡まって、お話が展開していきます。最近日本ではサウナが大流行していますよね(「ととのう」という感覚を私も味わってみたいです)、サウナ発祥の地といえばフィンランド!『かもめ食堂』のお話にもサウナが出てきますが、フィンランド人にとってサウナはどんな風に考えられているのでしょうか。ぜひ読んで確かめてみてください。


この話の魅力は、妙齢(いわゆる、オバさんでしょうか)になっても謎の行動力でフィンランドに来てしまう突拍子のなさや夢のようなこともありながら、うまくいかない現実もしっかり押さえられている、バランス感にあるように感じます。
サチエが料理のお店を出すきっかけになった「あの味」を、フィンランドの人々はなかなか受け入れてくれません。その日本食とは、なんでしょう?


かもめ食堂の一番人気メニューは、シナモンロール。これにたっぷり生クリームをのせてコーヒーと一緒に、フィンランドの森を感じながらいただきたい! そんなふうに思う私です。フィンランドについてもっと知りたい人は、フィンランドの留学体験をつづった『青い光が見えたから』もおすすめです。

イタリア 『アドリブ』

中世の趣が残るフィレンツェ郊外の町を舞台に、フルートに青春をかける少年たちの熱い物語

主人公のユージは一般的な「学校」である中等教育学校と、国立音楽院の2つの学校に通う男の子。フィレンツェ郊外の日本食レストランで働く母とのつつましい二人暮らしです。


幼い頃から母に連れられて様々なクラシック音楽に親しんでいたユージは、ある日国立音楽院の生徒が奏でるフルートの音色に魅了されてフルートを志します。類まれな音感とリズム感を持つユージは、フルート未経験ながら国立音楽院で著名なフルート奏者の指導を受けることになります。
ユージは同級生でありライバルでもある仲間達と切磋琢磨しながら、音楽の理解を深めていきます。彼は仲間の中でも表現力に優れ、努力家ですが、楽器の買い換え(純銀製のフルートはとても高価なのです)を期に音楽の世界でやっていく覚悟に揺れます。音楽学校ならではの科目や、コンクールや長期休みのマスタークラス(著名な指導者のもとで指導を受ける数日の特別講習)、才能あるわが子を支える親たちの期待など、音楽学校の日常がとても興味深いです。


イタリアの景色の描写はあまり多くありませんが、湿度が低くからっとしている空気や、夏は午後10時位まで太陽が出ていること、物語の後半でユージがバッハのパルティータという曲を解釈する時に思い描いた夕暮れの情景など、物語の中でさり気なくイタリアを感じることができます。イタリア都市部の派手さはないものの、この小説で描かれているのは、観光では味わえないイタリアの風景です。


中学生のみなさんは、国が違っても中高生が悩むことは結構似ているんだなと共感を持てることでしょう。進路に悩んだり自分の能力に自信を持てないユージと自分を重ね合わせることもあると思います。クラシック音楽に興味がない人でも、小説の中にたくさん出てくるフルートの名曲を、一つ一つ聴いてみたくなりますよ。


本当は書きたくて仕方ないのですが、読み終わったらイタリア在住の著者佐藤まどかさんの「あとがき」をぜひ読んでみてくださいね。そうだったんだ! という驚きをきっと感じるでしょう。

 

カラッとしたイタリアの夕日を背景に、美しいフルートの音色が風にのって聴こえてくるような、爽やかかつ情熱的な青春小説です。

イギリス『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

爆発的な人気となった「ぼくイエ」。 旅行では味わえない英国の現代的諸問題と多様性の難しさを感じられる本

2019年に書籍となり、本屋大賞ノンフィクション本大賞他、多くの賞を受賞した本です。現在は続編となる『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』や、この本の中に登場する「エンパシー」という言葉について掘り下げた『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』も出版されています。


この本は、イギリスのブライトンに住み、日本人の母(著者)とダンプカーの運転手であるアイルランド出身の父を持つ男の子が、元底辺校の公立中学校に入学してさまざまな偏見やヘイトを見聞きし、多様な人々と関わりながら成長していく記録です。


ヨーロッパの地図やここ数十年のイギリスの歴史を傍らにおいて読むと、一層理解が深まると思います。本書を読むと、これまでのみなさんの常識が面白いくらいに覆されることでしょう。例えば、経済的に中流層が多く通う学校と、貧困層が多く通う学校、さまざまな人種がいるのはどちら? 英国では、貧困層が通う学校は白人労働者階級がほとんどで多様性が少ないそうです。少し意外に感じませんか?


イギリスはシチズンシップ・エデュケーションが義務教育に取り入れられており、成熟した多様性を重んじる国と思われるかもしれません。しかし、本書を読むと経済格差や人種差別が問題になっているようです(それだけ差別というものに敏感だということかもしれません)。中学生の日常生活を通じて、差別や多様性ということを学ぶことができます。『Masato』と合わせて読めば、日本人を含む東洋人に対する偏見を双方の本から知ることができるでしょう。また、イギリスから母の故郷である日本に滞在したときの、日本人の偏見も『Masato』と重なるところがあります。時間があれば、ぜひ併せて読んでみてくださいね!

南アフリカ『白いキリンを追って』

アフリカの鳥獣保護区で、イギリスからやって来た少女が奇跡を起こす物語

この本の主人公は突然の悲劇によって南アフリカの鳥獣保護区に住む祖母の元へ引き取られた、イギリス人の女の子です。24の短い章で構成され、その第3章から南アフリカでの日々が始まります。主人公のマーティンが暮らすことになるサウボナまでの道のりではこんな描写があります。

空は澄みわたり、海は濃い青色だ
丈の高い黄色い草の中に、トゲのある木や、ぼさぼさの灌木が点在している
黄色い草原は、夏の燃えるような日をあびて、下からも光がさしているかのようにかがやいていた

サウボナの町はズールーという人たちが多く住み、ズールー語も本書に出てきます。このズールー語は、映画やミュージカルにもなった「ライオンキング」の歌に多く出てくる、南アフリカの公用語の1つなんです(オープニングの「サークル・オブ・ライフ」の印象的な冒頭もズールー語です)。サウボナ鳥獣保護区に住むのは、ゾウ、ダチョウ、シマウマ、ヌー、ライオン、イボイノシシ、ヒヒなど、ライオンキングに登場する動物たちと重なります。


料理上手なグレースおばさんがまとう鮮やかな伝統衣装や、秘密の谷で見た洞窟の壁画、草原を走り抜けるジープなど、アフリカの大自然が目の前に広がってくるような描写です。


さて、この本はハラハラと、ドキドキのストーリー展開が魅力です。おばあさんとその側近テンダイは、主人公のマーティンに何か隠し事がある様子……。それは亡くなったマーティンのお母さんが生前アフリカについて全く語らなかったことや、マーティンが見かけた白いキリンと何らかの関係がありそうです。マーティンは夜中に家を抜け出して、深夜の保護区を探検に出かけます。夜の保護区は毒を持つ動物やライフルを持つ密猟者も潜む危険な場所。何度もピンチに陥りながら、マーティンは白いキリンとの交流を求めて行動します。


次々と危険がやってきて、ハラハラしながらページをめくる手が止まりません。最後の神々しいようなマーティンの凱旋は、まるで「風の谷のナウシカ」の映画のラストシーンのようです。アフリカの夜を舞台にした、ドキドキの冒険小説を読んでみたいあなたにおすすめです。

アメリカ『スターガール』

彼女の行動は偽善? 真実? あなたは愛と調和のどちらを選ぶ?

角川文庫 スターガール

※こちらの書籍の販売は終了しています

場所はアメリカのアリゾナ州、ソノーラ砂漠のあるマイカという町。時は9月の新学期(アメリカでは9月が新学期です)。ハイスクールの2年生になった主人公のぼくは、見知らぬ顔の女の子が校内で注目を集めていることに気がつきます。

 

その名はスターガール・キャラウェイ。

 

名前のようにきら星の如く現れた彼女は、これまでホームスクーラー(自宅学習生)で学校に行っておらず、新学期からマイカ・ハイスクールに通うことになった1年生。他の女の子と違って化粧っけがなく、鹿のように大きな目が印象的なスターガールは、周りの目を全く気にしない自由奔放な行動で、ハイスクール中の注目を浴びます。


スターガールはランチルームで見知らぬ子にハッピーバースデーを歌い、廃部寸前の弱小フットボールチームを自由気ままに応援して勝利に導き、あっという間に生徒たちによって学校のスターにまつりあげられます。語り手のぼくは、ディレクター兼プロデューサーとして司会役の親友ケビンとともに校内テレビの番組「ホット・シート」を制作しています。毎月1人ずつ生徒にインタビューをする、この人気番組にスターガールを登場させようとするのですが……。


対戦相手の敵チームを応援してしまったことで、スターガールの人気は地に落ちていきます。人気絶頂期に出演依頼をした「ホット・シート」の収録は、スターガールを徹底的に攻撃する場となってしまい、放送はお蔵入り……。しかしぼくはスターガールに好意を寄せて、ふたりは互いの好意を確かめ合います。


学校の中でたった一人孤立するスターガールと、スターガールを愛するぼく。スターガールと同様に、学校の中で誰も話しかけてもらえない孤独感をひしひしと感じます。
スターガールは普通になろうと見た目を変えて努力しますが、周りの生徒たちは受け入れません。アーミッシュのしきたりである「遮絶」(家族でさえ過ちを犯した人を徹底的に無視すること)のような仕打ちを、全校生徒から受けるスターガール。ぼくはスターガールを愛する気持ちと孤独に耐える気持ちの間で揺れていき……。


風のように現れて、ハイスクールに旋風を巻き起こしたスターガール。ランチタイムやダンスパーティーは日本の学校とだいぶ違うけれど、妬まれたり、仲間はずれにされたり、同調圧力に潰されそうになる様子は、アメリカもまた同じなのかもしれません。アメリカの青春ドラマで見るようなハイスクールの光景が眩しい小説ですが、本を読み終わった後は、ずっしりと心に何かが残る考えさせられる作品です。

ご搭乗ありがとうございました。

皆さま、ただいま絵本ナビ国際空港に着陸致しました。
この飛行機は、9番ゲートに到着致します。
シートベルト着用のサインが消えるまで、シートベルトはそのままお締め下さい。
また、お降りの際には、本などのお忘れ物をなさいませんよう、シートポケットなどをお確かめ下さい。
日本の天気は晴れ、本日も高い気温が予想されております。
本日もちどり航空をご利用下さいまして、ありがとうございました。

スペシャルコンテンツのお知らせ 2

最後に、絵本ナビスタイルの読者さん限定の音声スペシャルコンテンツ2のお知らせです。こちらを最後にお楽しみください。
※下のQRコードからのみ、聴くことができる限定配信です。

QRコードを読み取っていただくか、URLをクリックして聴いてみて下さいね♪

アンケート募集のお知らせ♪

連載【現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本】では、読者のみなさんからの感想や質問を募集しております。アンケートよりご意見をお寄せください。

Q1. お名前またはニックネーム(記事でのご紹介が可能かどうかもご記入下さい)

Q2. 属性(可能な範囲で)例:小学生、中学生、高校生、保護者、学校関係、図書館関係、その他等

Q3. 質問やご感想をお寄せください。

アンケートのご回答ありがとうございました!

前回の記事「中学生の読書感想文にオススメの本8選(2022年版)」にはたくさんの方から感想をお寄せいただきました。ありがとうございました。それぞれの方へのコメントはあらためて、またこちらの記事でお知らせさせていただきます。

山下ちどり
 

現役学校司書。
音声メディアstand.fm「学校図書館ラジオ〜本とともにごきげんな毎日」のパーソナリティ。
比較的新刊のお気に入り本や、学校図書館、出版周辺のトピックスなどを配信している。Twitter @nagisalib

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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