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現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本

現役学校司書の紙上ブックトーク 中学校を卒業するあなたに

中学を巣立っていく3年生のみなさんに、図書館からブックトークを贈ります

みなさんこんにちは! まもなく3月、卒業シーズン。
別れにさびしさを感じる一方で、3月は新たな生活を準備するわくわく感がありますよね。


中学3年生のみなさんは、義務教育を終えて新たなスタートです。
多くの人は、それぞれ別々の進路に羽ばたいていくことと思います。
不安と期待でいっぱいのみなさんに、私から本のお話を贈ります。
本当はみなさんと直接お話ししたいけれど、代わりに紙上ブックトークとしてお届けします。

「ブックトーク」をご存知ですか?

ブックトーク、とは本を知る手法の1つです。テーマを設けて、おしゃべりをしながら何冊かの本を紹介するブックトークが、私は大好きです。中学校では、小学校にあった「図書」の時間が無いことが多く、ブックトークの回数も、1回あたりの時間も十分に取れないのが悩みです。理想は本の一部を読んだりして、た〜〜っぷり時間をかけて紹介したい!と思う私です……。

このブックトークを通じて3年間の中学校生活を振り返り、今後の進路にワクワクできるような気持ちになってもらえたら、嬉しいです。

地図は「探究」の宝箱!

みなさんが紙の地図を使ったのはどのくらい前ですか? 最近はスマホに目的地を入れるとていねいにナビをしてくれるので、紙の地図はしばらく使っていないという人も多いかもしれませんね。
地図について最初に学んだのは小学校3年生のはず。地図記号や四方位を学習しましたよね。実は紙の地図、知れば知るほど奥深い世界なのです

この『考えると楽しい地図』は、地図の奥深さを垣間見ることができますよ。

各章「カンタン!」「フツー」「ムズイ!」「激ムズ...」まで難易度別になっています。ぜひ「激ムズ...」までチャレンジしてみてくださいね。読み終わった後には、相当地図に詳しくなれますよ。

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=177391
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さて、地図は地理の学習分野になりますが、地図から読み取れることはとても幅広いのです。歴史や産業、観光、防災やまちづくりまで、地図から様々なことが読み取れます。
地図はまさに「答えのない探究学習」そのもの。
地元の地図から遠く離れた異国の地図まで、地図の学びは無限大です!
 

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=177391
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中学を卒業するみなさんは、他の誰とも異なる自分の人生の地図を、さらに広げていくことになります。あなただけの地図は、自分で探し、求めながら作っていくもの。そして、失敗してもそこから修正することができるもの。これから紹介する本たちが、中学時代を振り返り、みなさんの未来を考えるきっかけになれたら、うれしいです。

穀物の本で高校の学びをチラ見しよう!

『地図でスッと頭に入る世界の三大穀物』

タイトルに「地図」が入っているこの本『地図でスッと頭に入る世界の三大穀物』をご紹介しましょう。みなさんが日頃口にしている「穀物」の定義をご存じですか。

 

穀物とは「人間が主食とする作物」のこと。タイトルになっている世界の三大穀物、どの3つでしょうか。実は私、この本を読んで小麦・米・トウモロコシということが初めて分かりました。

この本から3つクイズをします。

 

1. みなさんが中3になる少し前、2022年2月に戦争状態となったウクライナは、「欧州のパンかご」と言われる位、小麦の生産が盛んだそうです。ウクライナが戦争状態になり、小麦の生産が滞ると、ヨーロッパ以外の、ある国も困ってしまうそうです。その国ってどこだと思いますか?

 

2. 日本の主食でもあるコメを、世界で一番生産している国はどこでしょう?

 

3. 最近世界ではトウモロコシの生産量が増えているそうです。食用以外のとうもろこしの利用方法をご存知ですか?

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=194152

それぞれのクイズの答えを発表します。


1. 答えはアフリカ大陸のエジプト、スーダン、エリトリアなどの国。これらの国では食料の価格が上がるなど食糧危機に陥る危険があるそうです。意外ですよね。

 

2. 答えはインドだそうです。当たっていましたか?

 

3. 答えは話題のバイオエタノールの原料としてトウモロコシが生産されており、絞りかすが飼料用にも利用できるためトウモロコシ全体の生産量が上がっています。

穀物は人間の活動に欠かせないエネルギー源となるもの。高校では「地理総合」が必履修(必修)科目なんですよ。私たちの体にとって大事な穀物から、世界の地理に触れることができるこの本は、高校社会の入口にぴったりの本です。

いつか世界を旅する日のために 読んで楽しいお土産図鑑

3年前、みなさんが中学に入学した時のこと覚えていますか? 

 

そうです、新型コロナウイルス感染症蔓延防止のための全国一斉休校によって、入学から2ヶ月ほど学校に通うことができなかった、歴史的に類をみない中学生活のスタートを切ったみなさんでしたね。

 

あれから3年、新型コロナウイルス感染症も少しずつ日常を取り戻し、これからの3年は日本に外国の方が多く訪れたり、日本から外国に行く人が多くなったりすることでしょう。この3年間、窮屈な思いをしたみなさんに、広い世界を感じられる、とても楽しい一冊をご紹介します。

『地球の歩き方 W21 世界のおみやげ図鑑』

この『世界のおみやげ図鑑』は日本でとても有名な、世界の国々のガイドブックを出している「地球の歩き方」シリーズの編集部による本です。世界中に特派員がいる、この編集部ならではの情報です。世界の地域ごとに、各国の簡単な紹介と、代表的なお土産を紹介しています。今は治安が悪く、簡単に行くことが難しい国も載っています。

あの国も、あの国も行きたい! と夢が広がりますよ。自分の好きなもの、例えばお菓子やお茶、布、器など、世界を旅して好きなものを集めるのも楽しいですよね。

 

いつか、留学や修学旅行や出張などで海外に行く機会があったら、また、世界の国に思いをはせることがあったら、是非この本を思い出してくださいね!

「紙の宝石」が生まれる現場を見てみない?

卒業したら、春休みにオススメしたいことがあります。
日頃あまり連絡を取らない大切な人に、ハガキや手紙を送ってみませんか。

 

私は手紙やハガキを書く時間が、自分の癒しタイムになっています。
メールでは、誰かが作ったフォントでしか想いを伝えられないけれど、字が上手でなくても自分の字で書いて送ることで、なんだか自分の心も満たされるような感じがします。

 

SNS などで簡単に連絡が取り合える関係であっても、新しい旅立ちを控えた今の気持ちを自分の字で伝えてみませんか。

手紙やハガキに貼る切手は、小さな芸術品、紙の宝石といわれ、私たちの目を楽しませてくれます。絵本でおなじみの「ぐりとぐら」や「こぐまちゃん」のシリーズも出ているんですよ!

 

この本は日本に10人もいない「切手デザイナー」を詳細に紹介した本です。デザイナーになった経緯や、日々のお仕事、デザインした切手が紹介されています。

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=194153
http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=194153

「プロフェッショナル~仕事の流儀~」の 切手版ともいうべきこの本、番組1クール(3か月)分位の読み応えがありますよ。個性豊かな切手デザイナーと、美しいデザイン、そして切手に使われる最新技術まで分かる、とっても楽しい本です。


この本を読んだら、遠くに住む親戚や、小学校時代の先生、そして恋するあの人(?)に、お気に入りの切手を貼って送ってみたくなります。

中学卒業後に広がる自由な活動のために

みなさんの中学校生活は小学校と比べてどのような違いがありましたか?
教科ごとに先生が異なり、放課後はそれぞれ異なる部活に参加して、小学校の時より多様な生活をエンジョイできたでしょうか?

 

中学卒業後はもっとこの自由度が広がっていきます。みんな一緒の活動だけでなく、自分で探したり始めたりする活動にもぜひチャレンジしてください。そして勇気を出して、その活動を何らかの形でアウトプットできるといいなあと思います。

好き! を表現してみよう

こちらの本は、同じ趣味を持つ人たちによる冊子「同人誌」と「同人活動」に特化したものです。好きな漫画やアニメ、アイドルを自分でも表現したい! と思う時の手段が、同人活動。私の友達も、高校生になってから同人誌のイベントに行ったり、絵が得意な人は創作を始めたりしていました。

身近な所で同人仲間を探すのは、なかなか勇気がいるものです。この本は、同人誌にちょっと興味があるかも、というあなたに同人誌作りのHow to を教えてくれます。

同人誌の作り方から印刷発注だけでなく、イベントグッズの作り方まで載っています。
冒頭には二次創作のルールやマナーが載っているので、必ず確認を。

 

大人気の漫画家さんには、同人誌からスタートした人がたくさんいます。夏目漱石などの文豪も、同人雑誌のメンバーでした。このブックトークを聞いた人の中から未来の大作家が生まれるかも!? この絵本ナビスタイルで、紹介できる日が来たらとってもうれしいです。

大人になることは、責任のある行動をすること

この本のタイトルの「人を傷つけたなら」という言葉には、ドキッとさせられますよね。
私たちは人と関わり合って生きる限り、傷つけられる可能性も、傷つける可能性も持っているのです。大人に近づきつつあるみなさんに、一度読んでほしいと思って、紹介します。

 

この本の著者は少年院の先生を務めていたこともある、YouTubeチャンネル「犯罪学教室のかなえ先生」による本です。いじめ、インターネット上の犯罪、成人年齢引き下げに伴う少年法の改正、少年犯罪への落とし穴とみなさんに必要な「犯罪学」の情報を、被害に遭う側、加害者の側、両方の視点に立って分かりやすく解説しています。


旅立ちのはなむけのお話に「犯罪学」なんて、ふさわしくないんじゃないか、と思われる人もいるかもしれません。でも、義務教育を終えて、少しずつ自由の範囲が広がるみなさんにやっぱり伝えておきたいのです。自由の範囲が広がることは、多様な人との出会いの可能性があり、同時に自分が負う責任の範囲も増えるということ。心身に苦痛を感じるいじめに遭ってしまったとき、どうしたらいいのか。また、自分の発言がSNS上で誰かを傷つけてしまったときに、どうしたらいいのか。法律でどのようにルールが決められているのか、知っておくことは大事です。


また、著者が少年院の法務教官であった経験から、非行少年の現状や更正についても書かれています。同じ世代で法に反する行為を行う非行少年たちの背景に、どういった問題があるのかを知ることは、知らないことによる差別や偏見をなくす一歩になります。


かなえ先生の書き方は、どの章も頭ごなしにこれはダメ! というのではなく、淡々とルールや現状を示した上で、みなさんを犯罪から守ろうとする優しさがにじみ出ています。

中学卒業を機にぜひ読んでみてください。

性別にかかわらず、個性を大事に、助け合える社会に

次に紹介するのは漫画です。この本には5編のお話が載っています。それぞれのお話は、サウジアラビア、モロッコ、インド、日本、アフガニスタン、と世界各地に住む魅力的な女の子が主人公です。すべてマンガなので、文字を読むのが苦手な人にも、そしてタイトルに女の子とついていますが男の子にも、ぜひ読んでほしいです。
 

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=194154
http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=194154

どのお話も主人公は10歳の女の子。それぞれ異なる事情ですが、みな女の子として生きることへの疑問や、生きづらさを抱えて生活しています。
「女の子として生まれた」というだけで、ハンディキャップとなることがある、ということをそれぞれの話から知ることができます。
この本のいいところは、それぞれに困難がありながらも、希望がある点です。


また、登場する男の子たちがとても魅力的なのです。サウジアラビアのファイ、日本のなつき、まりえのパパ、男女が共に生きることを自然に思えるような、新しい時代の男の子たちが登場します。
性別にこだわらず、それぞれが持つ魅力や能力を活かせる社会になってほしいと切に願います。そうした社会を実現するのはみなさんです!

未来はあなたの目の前に。目の前の「いいこと」を探そう!

みなさんの中学生活の3年間、国内外で悲しいニュースが多くあったように感じます。政治、環境問題、病気、格差……このままでは自分たちの未来は真っ暗だ! なんて感じていませんか。

 

最後に紹介するこの本は、人間の優しさや可能性に焦点を当て、明るい未来を展望しながら行動をしていこう!というテーマの本です。この説明ではちょっと分かりにくいかもしれませんね。世界の危機や問題は確かに存在しているもの。それらに目をつぶることなく、しかし悲観的なニュースだけにとらわれることなく、世界で見落とされがちな「グッドニュース」を紹介しながら、みなさんに行動するヒントを与えてくれる本なのです。

例えば、世界中で環境破壊が進んでいることは、よくニュースで目にしますよね。でも、南米のコスタリカでは「2019年に国全体のエネルギーの99%をクリーンエネルギーにすることに成功」しました。ご存じでしたか?


他にも環境に優しい交通手段を持っている都市が結構あることを、私はこの本ではじめて知りました。各章には「目標を達成するために、私たちにできること」が書かれています。まずはこの中の1つをやってみませんか。


未来の「グッドニュース」をもたらすのはあなたかもしれません。

卒業後も本と仲良しでいてね

みなさんが中学卒業後の世界で、のびのびとごきげんに、毎日を送れるよう願って、卒業を前にしたブックトークを終わります。卒業後も、本がみなさんの楽しみとなり、成長の糧となり、支えとなってくれることを、切に願います。


みなさん、卒業おめでとう。そしてこれからの人生に幸あれ!
 

今月のスペシャルコンテンツ

今回も絵本ナビスタイルの読者さん限定の音声スペシャルコンテンツを用意しています。
「学校図書館ラジオ」を配信しているstand.fm で聴くことができます。
下のQRコードからのみ、聴くことができる限定配信です。

QRコードを読み取っていただくか、URLをクリックして聴いてみて下さいね♪

今回の配信では、前回アンケートに回答くださったTamiさんからのご質問をテーマにお話ししました。保護者の方のお悩みあるある「中学生にどこまで大人の本を読ませていいの?」に、学校司書が答えます。中学男子にオススメのミステリーもお話ししています。
 

【連載】現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本から、こちらの記事もおすすめ♪

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Q3. 質問やご感想をお寄せください。

山下ちどり
 

現役学校司書。
音声メディアstand.fm「学校図書館ラジオ〜本とともにごきげんな毎日」のパーソナリティ。
比較的新刊のお気に入り本や、学校図書館、出版周辺のトピックスなどを配信している。Twitter @nagisalib

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