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現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本

中学生にオススメしたい「緑」の本

みなさんこんにちは。
中学校では中間テストが終わって、心と体を解放している頃でしょうか。
季節は初夏になり、草花はぐんぐん成長しています。
初夏は植物たちがみなさんと同じ「成長期」を迎える季節! ということで、今回は「緑」という言葉をキーワードに、紙上ブックトークをお届けします。

「ブックトーク」をご存知ですか?

ブックトーク、とは本を知る手法の1つです。テーマを設けて、おしゃべりをしながら何冊かの本を紹介するブックトークが、私は大好きです。中学校では、小学校にあった「図書」の時間が無いことが多く、ブックトークの回数も、1回あたりの時間も十分に取れないのが悩みです。理想は本の一部を読んだりして、た〜〜っぷり時間をかけて紹介したい!と思う私です……。

今回はこの連載で初めての「紙上」(画面上)ブックトークです。実際のブックトークとは異なり、読んでくださるみなさんの反応を直接確認できない不安もありますが、「緑」をテーマに、私のお気に入りの本たちを紹介します。ぜひ読んでみてくださいね!

『庭をつくろう!』

1つの家族が新しく庭づくりを始め、1年が経つまでを描いた外国の絵本です。
お話は主人公の一家が、大きな庭のある家に引っ越しをするところから始まります。パパとママ、僕、妹のキャロリーヌ、それぞれに割り当てられた庭で、各自が思い思いに好きな植物を植えることができるのです。こんなチャンスを得たら、みなさんならどんな庭にしますか? お花でいっぱいにする、自分の好きな野菜を育てる、長期計画で木を植える、日本庭園を作る……色々ありますね。この家族も、それぞれの個性があふれる庭ができそうですよ。
植物が植えられる庭にするためには、固い土を掘り返し、肥料をまき、草取りをして……とまずは準備が必要です。キャロリーヌと僕は庭づくりに詳しいリサおばさんの手ほどきを受けながら、土を耕し、種を買いに行き、自分の思い描く庭を作り始めます。

 

この絵本の魅力は、庭づくりをきっかけに、人との新しい出会いや、動物たちとのかかわりなど、植物以外との関係も少しずつ広がっていく様子が感じられる点です。
隣の建物に住む車椅子の男の子や、庭の木にやってくる鳥たち、こうした広がりの他に、後半は「時間」という見えない広がりをも感じることができます。植物は動かず、会話もできません。時間をかけて少しずつ育つ植物は、スピードや積極性が求められる現代の私たちと対極にあるかもしれません。だからこそ、植物は私たちに新しい視座を提供してくれます。読み終わった後には、とても穏やかで優しい気持ちになれる本です。毎日があわただしく過ぎている人に、ぜひ読んでもらいたいです。

『園芸はじめました』

先ほどの『庭をつくろう』はヨーロッパの絵本ですが、こちらは日本版の『庭をつくろう』ともいえそうです。庭のある家に引っ越したのをきっかけに、園芸を始めるところは同じ状況です。さてみなさん、中学生になって植物を育てる機会はありますか? 小学校の時には、1年生→あさがお、2年生→プチトマト、4年生→稲……と毎年のように学校で植物を育てる機会があったと思います。中学校では栽培委員会など限られた人のみ、という人も多いかもしれませんね。土を耕して、野菜や花を育てる「園芸」。身近にできる屋外の趣味、と最近は老若男女問わずブームです。とはいえ、中学生が園芸!? と思うかもしれませんが、忙しい中高生にこそ、花や野菜を育てる機会を私はおすすめしたいです。

 

この本は、園芸初心者の夫婦が、自宅の庭を使って土作りから園芸を経験する様子を描いています。土づくりはもちろん、苗選びなど「基本のき」から学べます。水やりだけでも6pにわたって書かれていて、そこには「水やり3年」(それほど奥深いということです)という言葉が出てきます。簡単に思える水やりも実は奥が深いということが書かれています。水やりなんて、水を根元にかければそれでいいと思っていた私は、へぇ~! と驚きながら読みました。漫画やイラストが豊富な本で、園芸に興味がない人もコミックエッセイのような感じで楽しめます。

『天地ダイアリー』

中学校の栽培委員会で活動する少年を主人公にした小説です。YA小説といわれる中高生向けの物語には、意外にも(?)中学校の園芸部や栽培委員会をテーマにした本が結構あります。この作品は、精神的にマスクを外すことが難しい、マスク依存の中1男子が、栽培委員会の活動を通して変化していく物語です。
主人公の広葉はお父さんの転勤で引っ越しして(なんと今まで紹介してきた3作すべて、冒頭に引っ越ししております!)小学校時代と異なる環境で中学生活を始めます。小学校でクラスの人間関係に失敗した広葉は、心の中では毒舌ぶりを発揮しますが、環境に馴染むことが苦手で、マスクを付けないと安心できません。そんな彼は、人と関わることが少なそうで、スクールカーストの下層に位置していそう、という理由で栽培委員会に入ります。ちょっぴり苦手意識のある同じクラスの栽培委員会のメンバーとともに、個性豊かな先輩たちに見守られつつ活動を始める広葉。彼らが育てる植物と、主人公の広葉は、新しい環境で無事に根付くことができるのでしょうか? ストーリーを追いながら土と植物の関係や、植物の適応について自然と詳しくなってしまう、そんなすてきな作品です。
植物の元気が無くなって、広葉たちがたどりついたのは、図書室の本! あぁ、なんてすてきな展開なのでしょう! そして『園芸はじめました』で紹介した「水やり3年」ということばがこの作品にも出てきて、その難しさの理由がわかります。広葉の成長を追ううちに、あなたも園芸の魅力にすっかり取りつかれてしまうはず!

『牧野富太郎 植物の神様といわれた男』

「日本の植物学(植物分類学)の父」と呼ばれる牧野富太郎をご存じですか?
 2022年は没後160年に当たり、2023年春のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)では、牧野富太郎をモデルにした主人公を神木隆之介が演じる「らんまん」が放映されます。高知の佐川という地の酒造屋の御曹司として生まれた富太郎は、幼い頃から植物に興味を持ち、野山で気になる植物を採取しては夢中になって調べます。植物に魅了され、その生涯を植物分類学ひとすじに生きた富太郎。植物への熱意はもちろん、あらゆることにスケールが大きく、驚きのエピソードはつきません。お金に無頓着で、おしゃれで、甘い物好き。研究のためなら、湯水のようにお金を使ってしまい、借金がとんでもない額に……! 子どものように無邪気な富太郎は、生活力に欠けても、ピンチのたびに彼に惹かれる人たちに助けられ、綱渡りで研究を続けていきます。アンバランスだけれど、強い魅力を放つ富太郎が、生涯を通じて植物に惹かれた理由を知ってみませんか。

 

この本には、富太郎がよく口にしていたという「人間がいなくても植物はちっともこまらないが、植物がなくなると、人間は生活できん。植物に感謝の真心をささげるべきだ」という言葉が紹介されています。植物をそのように見たことがなかった私ですが、なるほどその通りだと感じます。植物を愛し、植物のとりこになった富太郎を通じて、人間と植物の関係を見直してみませんか。

『世界一やさしい!アロマ図鑑』

みなさん、ハーブの香りを体や心のリラックスや生活に役立てるアロマテラピーってご存知ですか?
最近はアロマオイルや入浴剤など、アロマグッズが身近に売られているので、目にしたことや手にしたことがある人も多いかもしれませんね。香りのある植物は、人の心と体を癒やしてくれます。この本は、「世界一やさしい!」のタイトルにふさわしく、各種アロマが擬人化されたキャラクターになり、イニシャル3文字や坂道でおなじみのあのアイドルグループみたいに紹介されている、とっても楽しい本です。香りのカテゴリーごとに各香りの特徴、使い方、歴史などが書かれています。

 

私は時々、その日の気分に合わせてアロマオイルをお風呂に数滴垂らして楽しんでいます。それでは私が好きなアロマ2つを例に、この本を紹介していきましょう! まず「チームシトラス」からはグレープフルーツ! アイドルのような可愛いキャラクターのそばには「いつも明るい楽園娘。特技はリンパトリートメント。」とキャッチフレーズが書かれています。グレープフルーツの香りには、リンパを刺激して、体内の水分や老廃物を排出する働きがあるんですって。それぞれのアロマ紹介ページには植物の写真や四コマ漫画がついていてとっても読みやすいですよ。


アロマというと西洋の香りを想像しがちですが、日本の伝統的な香りもあるんです。「チーム・ニッポン」からは、「上品で、甘くて、それなのにシャープ。これから人気が出そうなネクストブレーク枠」として紹介されている「クロモジ」を紹介します。キャラ絵には、着物を現代風に着こなしているような女の子が描かれていて、親近感が湧きます。クロモジは、茶道のお茶菓子に添えられる楊枝にも使われている黒い枝です。アロマにも使われているなんて、初耳でした! 擬人化されたアロマキャラによって、香りの世界がぐっと身近になる本です。

合わせておすすめしたい1冊!

『世界一やさしい!アロマ図鑑』で、アロマについて詳しくなったら、精油を使ってアロマグッズを作ってみませんか?棒付きアイスのようなかわいいせっけんや、バスソルト、安眠を誘うピロースプレーなど、アロマオイルを使ったさまざまなアロマクラフトのレシピが載っています。しかも、日本の四季におすすめのアロマオイルを使って、季節に合ったクラフトが紹介されているんです。これから梅雨を経て夏となり、湿気や高温に悩まされる季節になります。楽しく手作りして、心地よい香りとともに、ご機嫌な暮らしを演出してみませんか。

 

 

 

『いちばんやさしいキャンプ入門』

新型コロナウイルスで混雑したところを避けるようになり、がぜん脚光を浴びたのが、密を避けて緑多い自然の中で過ごす、キャンプ! ここ2年の間にキャンプを経験した、という人もいるのではないでしょうか。

 

この本はオールカラーで写真が充実しており、キャンプをこれから始める人、キャンプを始めたばかりの人にぴったりの本です。「キャンプ」といっても、日帰りで手軽に行うデイキャンプから、ゴージャスなグランピングまで、様々なキャンプスタイルがあります。キャンプ未経験者さんの中には、まず何を揃えたらいいかわからない、どこに行ったらいいかわからない、という理由ではじめの一歩を踏み出せない人もいるはず。この本は、テントや、アウトドア料理の用具など、キャンプスタイル別に揃えたい道具リストがまとまっています。さらに、どんな用具を選んだらよいか、選び方のポイントも書いてあるので安心です。後半には、キャンプ料理(どの料理も美味しそうで、見ていてお腹が鳴りました……)や自然遊びが紹介されていて、読んでいくうちにキャンプに行きたい気持ちでうずうずしてしまいますよ。緑あふれる自然の中で数時間でも過ごすと、心がほどけるようにやわらかくなります。
今年の夏は、キャンプにチャレンジしてみませんか。

『みどりのゆび』

2022年に生きるみなさんに、ずばり、読んで欲しい本です。

 

チトは美しくて裕福な両親のもと、多くの人に祝福されて生まれた男の子。お父さんが経営する会社の跡取りとして期待されていますが、その会社とは、戦争に使用する武器や戦車を製造する会社だったのです。チトの両親は、将来チトが会社を継げるよう、心を配ります。しかし、通い始めた学校で、チトは早々に不適応を起こしてしまいます。授業を受けようと頑張っても、夢の世界に入ってしまう(居眠り!)のです。そこで、学校の座学ではなく、専門分野の先生に直接指導を受ける学びに変わりますが、先生たちのチトに対する評価は様々です。
そんな中、チトは庭師のムスターシュおじいさんから受ける「庭の授業」に夢中になります。そしてムスターシュおじいさんから、チトが「みどりのおやゆび」を持つ特殊な才能の持ち主であることを知らされるのです。「みどりのおやゆび」で触れた種は、たちどころに見事な花を咲かせる、そんな不思議な才能をチトは持っていたのです。チトは「みどりのおやゆび」を使って、密かに街のさまざまな場所で奇跡を起こします。奇跡が起きた場所は刑務所、病室、貧困者の住む地域……それらの街に植物があふれることで、人や動物が変化していきます。ついにチトは、2つの国の戦争を「みどりのおやゆび」で休止させることに成功しますが、それはチトのお父さんの会社の息の根を止めることでもありました……。

 

今、連日ロシアとウクライナの戦争が報道されています。美しい街が戦争によって破壊されていく様子を、目の当たりに見ていることと思います。戦争がなくならないのは、戦争によって莫大な利益を得る人たちがいることも一因となっています。武力を武力で抑えようとしても、憎しみは残り、戦いは繰り返されます。「みどりのゆび」のように、思わぬ方法で平和を実現することができるかもしれません。この本を読んで、みなさん一人ひとりにぜひ考えてほしいと思います。

『緑と赤』

『みどりのゆび』では互いに攻撃し合う「戦争」と、それを支える軍需産業が描かれていました。
最後に紹介する『緑と赤』という小説には、私達にとても身近で、複雑な関係を持つ2つの国が描かれています。この作品タイトルの「緑」ってなんだと思いますか? これまで紹介した「緑」はいずれも植物を指していましたが、この作品は違います。みなさん、クイズだと思って「緑」の意味を考えてみてください。ヒントは「海外に行くときに必ず必要なもの」です。わかりましたか? 「緑」は日本のお隣の国、韓国のパスポートの色。「赤」は日本国籍の人に発行される10年有効のパスポートの色。

(【参考】日本の最新のパスポート:https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/pss/page23_002803.html

食やドラマや音楽など各種韓流ブームで日本の中学生も馴染み深い……お隣の国、韓国ですが、旅券は国籍によってこんなにもはっきりと区別されています。在日韓国人の知英、K-POPファンの良美、韓国カフェで働くジュンミン……緑と赤、それぞれのルーツを持って生きる男女を主人公にした短編が組み合わさって、両国の複雑な事情が語られていきます。韓流ファンの聖地、新大久保やK-POPなどが登場し、中学生にも親しみやすく読みやすい作品です。その一方で、この作品にこめられたメッセージはとても多様で複雑です。読後に明確な方向性が見いだせるわけでもありません。この作品の魅力は、読んだ人の心に1つの「くさび」が静かに打ち込まれるような、読む前と読んだ後では何かが変わっているような、心の揺さぶりがあり、しかしそれが全く押し付けではないところにあると思っています。
「グローバル化」というキーワードをよく聞きますが、「グローバル(世界的規模)の第一歩は、身近な隣人を理解することで、実はそれはとても難しい」ということを体感できる本です。

今回のスペシャルコンテンツ

最後に、今回も絵本ナビスタイルの読者さん限定の音声スペシャルコンテンツを用意しています。
「学校図書館ラジオ」を配信しているstand.fm で「今月のちどりのもう1ブックトーク」を聴くことができます♪
下のQRコードからのみ、聴くことができる限定配信です。

QRコードを読み取っていただくか、URLをクリックして聴いてみて下さいね♪

おわりに

中学生に贈る「緑」の本、のブックトークはいかがでしたか?
この連載を読んで、おもしろかった、読んでみたい本があった、と思ってくれる人が一人でもいたら、とっても嬉しいです。
……ですが、この紙上ブックトークづくり、何より私が楽しませてもらいました。コロナ禍ということもあり、なかなかブックトークの時間が持てなかったので、思う存分ブックトークができて気分はサイコーです! いやはや、ブックトークはたまらなく楽しいです。

 

みなさんも、学校や近くの公共図書館などでチャンスがあったら、ぜひブックトークを聞いてみてくださいね。この連載を書きながら、「画面の向こうのみなさんとブックトークで交流したい!」と野望を持ちました。密かな野望が、いつか叶いますように。

 

次回は「中学生におすすめする読書感想文特集2022」です。

来月の連載もどうぞお楽しみに!

連載【現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本】では、読者のみなさんからの感想や質問を募集しております。アンケートよりご意見をお寄せください。

Q1. お名前またはニックネーム(記事でのご紹介が可能かどうかもご記入下さい)

Q2. 属性(可能な範囲で)例:小学生、中学生、高校生、保護者、学校関係、図書館関係、その他等

Q3. 質問やご感想をお寄せください。

アンケートのご回答へのコメントです♪

前回の記事「新年度を迎えた中学生に贈りたい本 ~本と迎えるごきげんな新学期~」に感想をお寄せいただいた皆さま、ありがとうございました。

もんきちさん
アンケートに入力してくださり、ありがとうございます。
中学生なんですね!読んでくださって嬉しいです。
今、周りで流行りの本や、扱ってほしいテーマがあったら、ぜひまた書き込みしてくださいね!

まーさんさん
アンケートに入力してくださり、ありがとうございます。
「中学生にカツを入れるような本」保護者の方のアイデアとして、しっかり受け止めました。中学生自身も、自分で自分にカツを入れたい、入れてほしいと思っている子がきっといるはず…。
今年度後半のテーマとして、検討させてください!
これからも、ご意見・ご感想をお待ちしております。

そのほか、ご意見・ご感想を頂いたみなさま、ありがとうございました!

山下ちどり
 

現役学校司書。
音声メディアstand.fm「学校図書館ラジオ〜本とともにごきげんな毎日」のパーソナリティ。
比較的新刊のお気に入り本や、学校図書館、出版周辺のトピックスなどを配信している。Twitter @nagisalib

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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