世界はわかってないから、おもしろい!? 世界をもっと知りたくなる絵本
「世界のしくみを全てしりたい! 」
ところが、調べれば調べるほど、どんどんわからないことが生まれてくる。
「自分はなんのために生きているんだろう?」
考えれば考えるほど、わからなくなってくる。
子どもに限らず、大人だってそんな壁にぶつかってばかり。だって、世界はわからないことだらけ。どこまで進んでいっても、答えなんて見つからない。だから、飽きることはないし、おもしろい。
さあ、頭の中を「?」でいっぱいにして。「わかっていない」この世界を、もっと深く楽しんでみませんか?
世界はわかってないから、おもしろい!?
わかっていることの先にはいつも…
世界には、わかっているようでわかっていないことがたくさんある。知っているようなつもりでも、その先のことはやっぱり知らない。そんな動物の秘密がたくさん登場するのがこの絵本。
どうぶつのわかっていること・わかっていないこと
キリンはほとんど声を出さない。
それはわかっていること。
でも、なんで声を出さないのか。
それはわかっていない。
なんでだろう?
他の動物は色んなことに声を使っているし、人間だって色んなことに声を使っている。もしかして、ツノに秘密があるのかな。それとも首が長すぎるから? それとも……。
世界には、わかっているようでわかっていないことがたくさんある。わかっていることの先には、いつもわかっていないことがある。ゾウの鼻がイヌの何百倍もいいのはなんのため?ユキヒョウが世界で一番高いところに住んでいるのはどうして?
京都大学の野生動物研究者の監修によって誕生したこの絵本。わからないことを「わかった!」にする第一歩は、自由な発想でたくさんの仮説をたて、じっくりと考えていくことから始まるのだと教えてくれます。これからの子どもたちに必要とされている、「答えのない問いに向き合う力」。こんな遊びの延長からついていくものなのかもしれませんよね。
さあ、頭の中を「?」でいっぱいにして。「わかっていない」この世界を、もっと深く楽しんでみることにしましょうか。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「なんなんなんのために いきているんだろう?」
「なんのために生きているんだろう」。その答えは色々な人に聞いてみればわかるのかな。それとも……。「なんなんなん?」の響きが心を軽やかに刺激してくれます。
なんなんなん?
花たちに声をかけながら庭仕事をしているおばあちゃんに、ぼくは聞いてみる。
「ね、なんのために いきているのかな?」
おばあちゃんはなんなんなんでも知っている。
「なんなんなん……」
言いかけて、おばあちゃんはぼくにささやいた。
「そのこたえを さがすんだよ」
ぼくは旅に出た。出会った人たちに聞いてみる。
「なんなんなんのために いきているんだろう?」
漁師さん、俳優さん、町はずれのねこ、大工さん。みんながそれぞれ答えを持っている。ぼくはそれを聞いて、わかるようなわからないような。他の人にもどんどん話を聞いていく。そして、ある時出会った哲学者の話を聞いているうちに、ぼくはいてもたってもいられなくなって……。
アメリカのベストセラー作家のコンビによって生まれたこの絵本。「人は何のために生きているのか」。聞くと難解に思えるこの問いかけに、これ以上ないくらいシンプルに、けれど壮大なスケールで、全体的にユーモラスな雰囲気を漂わせながら答えてくれるこの絵本。声に出して読めば、小さな子どもにも身近で楽しく読ませてくれるのは、ユニークな翻訳の効果でもあるのでしょう。
ぼくの旅は決して短いものではないけれど、大切なのは自分の中から何かが「わいてくる」ということ。そのためだったら、いつまででも旅は続けていられる。そんな風に思わせてくれるこの絵本は、忘れられない一冊になりそうです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ことばがあるのは、なんのため?
言葉がなかったら、どうやって会話をするんだろう。どうやって、自分の気持ちを表現したらいいんだろう。言葉がなかったらきっと困る。友だちだってできないかもしれない。それって本当かな?
ことばとふたり
ことばを知らない生きものがいた。浜辺でごろんと横になり海をじっと見つめたり、時には小石を放りなげてみたり。のんびり気ままに暮らしていた。
「たのしい」気持ちになった時には、腕をのばし鳥のようにパタパタし、「おいしい」ものを食べた時は、うしろむきにくるりと三回宙返り。けれどそれをことばで何というのかは知らない。心に冷たい風が吹きぬけ、どうしたらいいのかわからなくなった時、顔をゆがめてただ苦しそうに唸っている。この気持ちを何というかだって、ことばにできないのだ。
ある日、その様子を見ている生きものがいた。ことばを知っている生きものだ。
「かなしい ことが あるんだ」
すぐにわかったその生きものは、ことばを知らない生きものに近づいていき……。
イギリスの高名な詩人ジョン・エガードと絵本作家きたむらさとしによるコラボレーションで生まれた、「ことばのない世界」と「ことばのある世界」で暮らす生きものの、出会いの物語。それぞれのんびり気ままに暮らしていた二人が、最初に心を通わせることのできた「ことば」とは?
自分の気持ちをことばで伝えあい、ことばが多すぎる時はただ黙ってそばにいる。誰かとわかりあえるって、こんなにも素敵なことなんだ! 二人で一緒に過ごす時間を見ながら、誰もがそう思うことででしょう。「ことば」について、感情表現について、そしてコミュニケーションについて。色々な考えを広げていってくれそうな一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
みんなの声より
この世には、わかりあえない人がいる。言葉がわからないと、心のドアを閉じてしまう。でも、わからなくても寄り添えることはできるんですね。だって、みんな感じることはできるのだから。
目を凝らして耳をすませて触れ合えばほらっ。もう、心は通いあうんです。大切なのは、わかりたいという想い。わかってほしいと願う心。みんながみんなそう思って寄り添いあえたなら、争いなど起こることはないのにと思います。
全てを包み込んでくれるハグ。誰もが安心してハグし合えるような、平和な世界が訪れますように。
(あさみーこさん 50代)
花が散ってしまった理由はわからないけれど
ぼくのともだちは、あたまに はながさいている
ぼくの友だちデイビッドの頭には、きれいな花が咲いている。デイビッドは、頭の花びらみたいにふんわりしていて優しい。みんなデイビッドのことが大好きだ。
ぼくたちはいつも一緒に遊ぶ。はしゃいだり、歌ったり。鳥の家族がデイビッドの頭に一か月もいた時は、おかしくってみんなで笑ったり。ところがある日、デイビッドの頭の花びらが一枚ずつとれていき、デイビッドは笑わなくなってしまった。おしゃべりもしないし、遊ばない。枯れ枝みたいなデイビッドの頭を見ながら、ぼくはいいことを考えた……。
いつもと様子がちがう友だちを見て、自分のことのように胸を痛める「ぼく」。決してその訳を問いつめるでもなく、隣にそっと寄りそいながら、自分のできることを考えるのです。こんな風に、相手の状況を想像し、共感することができたなら。その優しい気持ちは、きっとまわりの子たちにも伝わっていくはずです。
その子がその子らしくいるためには、どうしたらいいのか。この絵本に登場する「ぼく」を見ながら、色々なことを考えてしまいます。デイビッドの元気が戻ってきても、彼をずっと見守りつづける「ぼく」。それはきっと、「ぼく」にとっても、友だちが元気でいることが大切なことだとわかっているからなのでしょうね。
そんな二人の様子を、ふんわりと優しい絵で描き出すこの絵本。読む人みんなの心にも花がさくような、幸せな気持ちにさせてくれる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
木が会話してる!?
木に なろう!
木が、会話をするのを知っていますか?
木ぎたちが、根っこの菌根菌をとおして会話をすること(www=ウッド・ワイド・ウェブ)が近年知られてきました。それを子どもたちにもわかりやすく紹介します。木は身を守るために大切な情報を知らせあい、栄養をわけあい、わかい木や弱った木を守ります。それは自然が生み出した、おどろくべき仕組み。支えあい、いっしょにいることで、より強くなれるのです。木ぎたちのいとなみは、わたしたち人間がよりよく生きていく方法を、やさしく教えてくれます。
巻末には木の仕組みについての解説も!
しずまりかえった真夜中、やってきたのは……。
まよなかのゆうえんち
動物たちのすむ森に移動遊園地がやってきました。人間たちが、楽しそうにあそんでいます。いつもひそやかな森のよるは、はなやかな明かり、にぎやかなざわめき、はなをくすぐるにおいでいっぱいです。しずまりかえったまよなか。やってきた動物たちは……。
ケイト・グリーナウェイ賞の中でも、子どもたちの投票によって決められるシャドワーズ・チョイス・アワード2022を受賞しました。光と闇の幻想的な描き方と、においや音を感じられるような臨場感のある構成が魅力の、文字なし絵本。
わからなくても楽しめる絵本、わかっていなかったことに気づく絵本
知らないことやわからないことがあったって、隠さなくてもいいのです。だって、その先にはもっと知らないことが待っているんですから。この世の誰もが答えを探している途中なのかもしれませんよね。絵本だって同じ。わからないまま楽しむことを恐れないでくださいね!
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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