【今週の今日の一冊】子どもの権利について考えてみよう。
今年(2023年)4月に、「こども家庭庁」が創設されるのと同時に、「こども基本法」が施行されます。「こども基本法」というのは、すべてのこどもが幸せに暮らせる社会の実現を目指してこどもに関するさまざまな取り組みを進めていくための法律です。この「こども基本法」を知る上で欠かせないのが「子どもの権利条約」。世界中すべての子どもたちがもつ権利を定めた条約で、国連で1989年に採択され、日本では1994年に批准されました。
では、この「子どもの権利条約」には、どんなことが定められているのでしょう? まずは大人が知り、考えてみませんか。
今週は、「子どもの権利条約」について分かりやすく紐解き、理解を深めてくれる本を集めました。
2023年3月27日から4月2日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
3月27日 子どもの権利を、子どもの気持ちから紐解く絵本
月曜日は『きかせてあなたのきもち 子どもの権利ってしってる?』
子どもには、どんなときも、
休む権利や、遊ぶ権利があります。
子どもには、どんなときも、
一人ひとり大切にされる権利があります。
あなたはいま、どんな気持ち?
非常時に後回しにされがちな子どもの気持ちにより添い、
子どもの権利を考える絵本。
「気持ちと権利はつながっている」という新しい着眼点にも注目。
3月28日 地球上に住むすべての子どもたちへのメッセージ
火曜日は『子どもの権利ってなあに?』
本書は、子どもが権利を持つとはどういうことかについて伝える絵本です。食べ物を得る権利に始まり、水を飲む権利、家に住む権利、学校に通う権利、暴力を受けない権利、きれいな空気を吸う権利など、たくさんの権利について取り上げています
こうした権利は地球上に住むすべての子どもが持つものです。「肌の色が違っても、小さくても大きくても、お金持ちでもそうじゃなくても、この国で生まれてもほかの国で生まれても」持つ権利なのです。すべての人がこうした権利を尊重することに大きな意義があります。
この絵本が紹介しているのは、人権という概念です。とりわけ、国連子どもの権利条約で取り上げられている子どもの権利について説明しています。この条約が制定された後、世界中で子どもの権利についての意識が高まりました。しかし、豊かな国であれ貧しい国であれ、子どもの基本的なニーズを満たしていない国がたくさんあります。
この絵本は、子どもたちに伝わるように、著者であるアラン・セールが子どもたちに直接話しかけるような言葉遣いで書かれています。オレリア・フロンティの生き生きとしたイラストからは、子どもの権利が大事なものであるというだけでなく、特別なものでもあることが伝わってきます。
読者の声より
子どもに、「あなたたちは愛されて、守られて当然なのよ」と伝える絵本です。
安心して住める、学校に行ける、男女の平等、むりやり働かされない。どれも当たり前のことすぎて、子どもは、その幸せそうな絵と、例えのおもしろさを楽しんでいました。
世界中の子どもたちが、この絵本を読んでも「え?そうなの…?」ってならず、にこにこ笑ってこの絵本を楽しめるような、そんな世界を大人が作っていかなくてはいけないなと感じました。
(みっとーさん 30代・ママ 男の子10歳、女の子8歳)
3月29日 イラストと共に条文を分かりやすく紹介する一冊
水曜日は『はじめまして、子どもの権利条約改訂版』
子どもの基本的人権を国際的に保障することを目的に、1989年に国際連合で採択された「子どもの権利条約」全54条の中から17の条文を抜粋。スウェーデンの画家チャーリー・ノーマンが描いたシンプルで力強いイラスト17点とともに、オールカラーでわかりやすく紹介。家庭や教育現場で、おとなも子どもも一緒に読んでもらいたい絵本。
刊行から4年が過ぎた今回の改定版では、条文をさらにわかりやすく、より柔らかな文章に。子どもが一人でも読めるように、フリガナを付けました。
3月30日 だれもが平等に「ライツ(権利)」を持っている
木曜日は『主人公はきみだ ライツのランプをともそうよ』
この世界でいちばんすばらしい発明、それは、だれもが平等に「ライツ(権利)」を持っているということ。「きれいな未来を子供たちに手わたしたいから」と訴えて参議院議員を一期務め、現在も市民運動を続ける著者が、子どもの権利条約採択30周年のいまこそ伝えたいメッセージとは。すべての子どもと、子どもに寄りそうあなたにとって、心強い味方となる「ライツ」の知恵と勇気を届けます。
巻末に世界人権宣言・子どもの権利宣言・子どもの権利条約・日本国憲法・だれかに相談したいときの窓口リストを収録。
憲法学者・木村草太氏推薦!
3月31日 子どもの権利条約の父と呼ばれる先生の生涯と理念
金曜日は『ぼくたちに翼があったころ コルチャック先生と107人の子どもたち』
20世紀初頭のポーランド・ワルシャワで、愛と理想主義を貫く孤児院運営をし、ユダヤ人孤児たちとともにガス室に消えたコルチャック先生。その「孤児たちの家」では、信頼と自立・協働に基づく暮らしが息づき、子ともたちの生きる喜びが輝いていました……。施設にいた経験を持つ何人かへの聞き取りや詳細な調査をふまえ、戦争と暴虐に踏みつぶされるまで続いた輝くような日々を克明につづる、渾身のノンフィクション・ノベル。
読者の声より
ユダヤ系ポーランド人で医者であり、教育者であったヤヌシュ・コルチャックと、彼がその生涯を捧げた「孤児たちの家」の子どもたちとの生活を描いたノンフィクション・ノベルです。
「かけこみ所」と呼ばれる孤児収容施設で虐待により足の骨を骨折した後、コルチャック先生のもとで生活を始めるヤネクという少年の目を通して、コルチャック先生の教育方針、つまり子どもたちの権利を尊重し、ひとりひとりの特質を見抜き、的確なアドバイスを与えて伸ばしていく、そのような「孤児たちの家」での様子を描きます。子どもたちはお互いの存在を認め、許し合い、信頼関係を築いていきます。
それはまさに、2015年8月に出版された『暴力は絶対だめ!』(アストリッド・リンドグレーン 石井登志子訳 岩波書店)でリンドグレーンが訴えた子どもを人格のあるものとして愛するという教育、体罰によらない教育、大人が子どもを信頼し、自ら規範をしめす教育を具現化したものでした。
この物語は第二次世界大戦勃発の前の「孤児たちの家」の様子を描いて終わっています。その後、ナチス・ドイツによってコルチャック先生と子どもたちはワルシャワ・ゲットーに移され、自分だけは恩赦を受けられる機会があったのにコルチャック先生は子どもたちと共に強制収容所に行き、共にガス室で虐殺されてしまいます。この本は、多くのことを私たちに投げかけてくれています。小学校高学年くらいから読める作品です。なお、著者の前作『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』(母袋夏生/訳 岩波書店 2011)と共に子どもたちに手渡してほしいと思います。
(若葉みどりさん 50代・ママ 男の子17歳)
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4月1日 わたしもたいせつ、そして、みんなもたいせつ。
読者の声より
何を当たり前のことを…?と言えるような言葉がならんでいるのに、そこにうつる写真は、当たり前じゃない世の中があることを伝えています。
写真を見るだけだとだとわからない世界の状況、背景も、最後に撮影者の「撮影ノート」の部分で伝えてくれています。
なるほど…確かに…。そうなのか…と、小さな文字を読んで知ったことや感じたことを、写真を見ながらもう一度子どもと一緒に見ていくと、世界の状況を親子で学ぶことができました。
早く、世界中の人がこの宣言を「当たり前やん」と思える世の中になってほしいと、切に思いました。
(みっとーさん 30代・ママ 男の子10歳、女の子8歳)
4月2日 心・体・お金を守る!子どもの権利の使い方
日曜日は『きみの人生はきみのもの 子どもが知っておきたい「権利」の話』
心・体・お金を守る! 子どもの権利の使い方
「校則を変えたい」「いじめにあっていてつらい」「親にお年玉をとられた」…子どもが抱える24の悩みや問題を取り上げ、「権利」を紹介しながら解決への道を示す。相談先の情報も収載し、子どもが自ら考えて行動したり、人生を切り拓いたりしていける。学校では習わないけれど、生きていくうえで重要な知恵と情報が詰まった冊!
いかがでしたか。
一見難しそうに見える本でも手にとって開いてみると、とても分かりやすく、読みやすい本ばかりです。大人が読んで理解を深められたら、次はぜひ子どもたちに手渡してみてくださいね。
秋山朋恵(絵本ナビ 副編集長)
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