【今週の今日の一冊】絵本で深呼吸! 新緑の季節に読みたい、緑あふれる絵本
変化の多かった4月、楽しいGW、そして母の日を過ぎて、またここから…という感じの5月中旬でしょうか。晴れている日でもまだ暑すぎず、吹く風も心地良い季節。周りの景色を眺めながらゆっくりお散歩するのも気持ちがいいですよね。植物や木も生き生きとしています。そんな新緑の季節に合わせて、今週は、木や森を描いた緑あふれる絵本をご紹介します。ちょっと疲れたかな、という日には、絵本を眺めながら深呼吸してみませんか。
2023年5月15日から5月21日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
5月15日 季節ごとに移り変わる木の風景から生命力を感じて
月曜日は『木のうた』
絵本を開けば、そこに立っているのは一本の木。真っ白な雪で覆われた地面にしっかりと根を据えて、太い幹からはたくさんの枝が伸び。葉っぱ一つない枯れ木となってもその姿は思わず見とれてしまうほど実に堂々と頼もしく。
そう、この物語の始まりは冬の景色です。
やがて、地面の下で眠っていた動物たちが目覚める頃、枝は芽をふき、鳥が新たな巣をつくりにやってきて、周りの草花も咲きはじめ。気が付けば大木はすっかり青々と繁り、小さな動物たちの活動の拠点となっていて。その清々しい季節が過ぎると、たくさんの実をつけ、紅葉をし、小鳥たちは巣立ち、動物たちは巣ごもりの準備を始めるのです。そしてまた冬が訪れて……。
季節の移り変わりとともに、自身もその姿を大きく変化させながら、ずっと動かずに立ち続けている大きな木。イタリアの人気作家イエラ・マリにより描かれた、グラフィカルでありながら抒情的で、ため息の出るような美しい自然の景色を眺めながら、私たちは、そこに住む小鳥や動物たちの生態を観察し、生命の根付く力強さとその愛情を全身で受け止めるのです。
絵本の中に文字は何もありません。それでも、じっと耳をそば立てれば、葉のこすれる音や鳥のさえずり、吹き抜ける風のうたが聴こえてくるようです。開けば木はいつでもそこにいて、季節はいつでも動き出す。手元に持っておきたい絵本の一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
みんなの声より
イエラ・マリの字のない絵本。
題名の通り、ある木を定点観察した作品です。
表紙の緑色の姿が何とも美しく、命の存在を感じさせます。
オープニングは雪景色から。
季節が移ろい、また雪の季節のエンディングへ向かいますが、
木の変化とともに、そこに集う生き物たちの姿も活写されます。
巣ごもり中のリス、巣作りの鳥たち、植物の成長。
静止画なのに、五感を揺す振られる迫力を感じます。
そして、生き物たちのストーリーも、絵が語ります。
小学生くらいから大人まで、五感で感じてほしいです。
(レイラさん 50代・ママ)
5月16日 砂漠を緑の町にかえた ある女のひとのおはなし
火曜日は『木のすきなケイトさん』
副題に「砂漠を緑の町にかえた ある女のひとのおはなし」とあります。
そんなことできるの?と思った方は読んでみてください。
これは本当にあったお話なのです……。
ケイトは、森で遊ぶのが好きな女の子でした。
葉っぱを集めたり、花といっしょに編んでネックレスやブレスレットを作ったりしました。
お外遊びが好きな多くの子どもたちは、あ、わたしと同じ!と思うでしょう。
ケイトがちょっと違うところは……
その頃、約150年前のアメリカでは、女の子は手を汚すことをしてはいけないと言われ、女の子が科学を学びたがるなんてとんでもないと思われた時代でした。
でもケイトは平気でどろんこになり、周りにどう思われても、熱心に科学の勉強をしつづけたのです。
カリフォルニア大学を「はじめての女性の科学者」として卒業し、茶色の砂に覆われた砂漠の町、サンディエゴで働くことになりました。
学校の先生として赴任したケイトでしたが、どうしても木や森をサンディエゴに増やしたくてたまらなくなり、先生をやめて園芸家になります。
ケイトがしたのは、世界じゅうの木について調べること。
世界じゅうの園芸家に手紙を書き、種をとりよせ、暑く乾いたサンディエゴの気候にぴったりの木を探しつづけました。
友だちに「そんな木を見つけるなんてむりだ」と言われてもあきらめませんでした。
「きっと見つかる」
ケイトはそう思っていたからです。
ケイトがどんなふうに木を植え、緑の町を作り出したのか。
ジル・マケルマリ―描く、あざやかな風景を楽しみにページをめくってみてくださいね。
今ではサンティエゴの観光地として有名なバルボア公園、それこそが、ケイトが作りだした緑の庭園です。
強い日差しを遮り、涼しげな緑陰を広げる木々を、1種類ずつ探してきて植えはじめたのは、ひとりの女のひとでした。
どんな小さなことも、「すき」という気持ちからはじまること。
そして、たったひとりのあきらめない気持ちが、広い風景を変える力があることを、教えてくれる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
みんなの声より
木が大すきなケイトさん。
木がたくさんあると、空気が綺麗で気持ちがいいし、緑は目にも優しい。
木がすきな人はたくさんいるけれど、じぶんの手で、都市レベルで木を増やそうと考える人は、そういないでしょう。
「女性として初めてのこと」をいくつも成し遂げてきたケイトさん。
決して、易しい道ではなかったことと思います。
コツコツと粘り強く、でも楽しそうなケイトさん。
すきのちからって、凄いなぁ…と感じました。
(しゅうくりぃむさん 40代・ママ)
5月17日 森の音ってどんな音?
みんなの声より
扉というのでしょうか、本を開いたとき、見返しの次ぐらいに
タイトルの書いてるページに、ウサギたちの家があります。
その家が、うさぎさんのおうちらしくって素敵です。
おばあちゃんが、森の音のことを話してる時の
兄弟ウサギたちの耳をたてて、真剣に音を聞いてる様子を
描いた絵もかわいいです。その絵をみながら、耳をすますと
森の音が聞こえてきそうな。
私はまだ、本当の森に入ったことはありません。
けれど、こうさぎたちが歩いてる森の絵を見てると
鳥の声も水の音も、木の葉が鳴る音も
聞こえてきそうな気がします。
こうさぎたちが届けた森の音を聞いてる時の
おばあちゃんのピンとたった耳とじっと聞き入ってる表情も
いいですね。
おばあちゃんには、どんな音が聞こえてるのでしょうか?
体も心も健やかになれるような そんな音かも。
(桜子さん 50代・その他の方 )
5月18日 木は支えあい、一緒にいることで強くなる!
木曜日は『木に なろう!』
「木になろう!すっくと立って、お日さまにむかい、えだをつきだせ」
見開き画面いっぱいに描かれた大きな木。大地に根をはり、空に向かって力強く立つその姿は、私たちに雄弁に語りかけます。
みなさんは木が会話をするのをご存知でしょうか?
実は、木々たちが根っこの菌根菌をとおして会話をすること(ウッド・ワイド・ウェブ)が近年、知られてきました。木々たちは土の下に隠された通信網をもっていて、互いにコミュニケーションをとっているというのです。本書は、そんな自然が生み出した驚くべきしくみを、美しいイラストと短い言葉で、分かりやすく伝えてくれます。
イラストを描くのは、『せかいでさいしょのポテトチップス』や『ライラックどおりのおひるごはん』(共にBL出版)など、日本でも注目を集める絵本作家フェリシタ・サラ。穏やかな色合いのおしゃれなイラストは、子どもだけでなく大人の目も楽しませてくれます。左右にさらに広げた観音開きのページは、人々が木のそばで憩うシーンをワイドに映し出し、とても見応えがあります。
森の木々たちは、身を守るために大切な情報を知らせ合い、栄養を分け合い、若い木や弱った木を守ります。これは人間社会に例えることもできそう。まるで家族や地域のように、互いに助け合って、一緒にいることでより強くなるのです。
「樹木を守るためにできること」さらには「森がしているように、社会を守るためにできること」を考えるきっかけにもなる作品です。子どもも大人も一緒に読んで、語り合ってはいかがでしょうか?
「みんなでいっしょに木になろう!」
(出合聡美 絵本ナビライター)
5月19日 動物の息づかいや葉擦れの音が聞こえそうな森の世界
みんなの声より
森に行ってきたような気分になりました。
幹から、枝から、茂みから。
隠れて見えるその姿を予想して次は何かな?と息子と一緒に考えながら読み進めました。
クマもよかったけど、トナカイには驚き。
イラストでしか見る機会がないので写真で大きく載せられていたのがよかったです。
ひょっこり姿を現す動物たちから力強い視線を感じました。
対象は2歳から4歳と書いていて、確かに文字が少ないのであっという間に読み終わるかもしれませんが、小学生でも大人でも自然に溶け込んで楽しめる一冊だと思いました。
(ほっこりタイムさん 30代・ママ 男の子10歳、男の子2歳)
5月20日 春も、夏も、秋も、冬も。
土曜日は『まちあわせは木のところ』
みんなの声より
牛窪さんが描くかわいい動物たちに癒やされます。
タイトルの「待ち合わせは木のところ」というセリフが続きます。
ブタやアライグマ、ライオンなど、いろんな動物たちが一本の木のところで待ち合わせをしています。
息子はゾウが出てくるところがお気に入りのようでした。
そして、待ち合わせの理由はピクニックだったり、冬眠の準備だったりと様々ですが、一本の木を目印に待ち合わせしている様子がとてもかわいらしい絵本です。
セリフもリズミカルに読めて、楽しい一冊でした。
(ちびっこおばちゃまさん 30代・その他の方 男の子3歳)
5月21日 木がある生活の素晴らしさを描いたロングセラー
みんなの声より
こんなにも飾らない素直な気持ちで
「木はいいなあ」と語れる人がどれだけいるかしら?
緑の中をお散歩している時、
誰でも自然に感じる「ああ、いいな」の思いが絵本になった、
そんなホッとできる本です。
どことなく、ターシャ・テューダーさんの世界に近い雰囲気もあって
子どもが赤ちゃんの頃は自分の癒しのために読み、
間もなく4歳になろうとしているこの頃は
自然が大好きな娘がすすんで選んでいます。
日々の生活にお疲れ気味の大人の方にも
オススメできると思います!
(しょこらぷりんさん 40代・ママ 女の子3歳)
いかがでしたか。
新緑の頃の気持ち良い季節。あっという間だからこそ、たっぷり味わいたいですね。
秋山朋恵(絵本ナビ 副編集長)
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