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夏の終わりに思うのは…。「夏」を振りかえりたくなる絵本5選

あんなに楽しみにしていた夏なのに、あっという間にもう終わり。まだまだはしゃぎ足りないような、満足しているような。心地よい疲労を味わいながら、心の中に浮かんでくるのはどんな景色? 「夏の思い出」を味わいたくなる、この時期にぴったりな絵本をご紹介します。

「夏」を振りかえりたくなる絵本5選

夏のおわりに開きたくなる、美しい絵本『すなのたね』

すなのたね

すなのたね

なつやすみは、もうおしまい。
海から帰ってきたばかりのあたしの心は、波のようにゆれている。
その時、サンダルから砂つぶがさらさらこぼれ落ちた。

「おねえちゃん、なにしてるの?」

さっきまで泣いていた弟のユリスが聞くので、あたしは答える。

「海の砂をあつめてたの。すてるの、もったいないもん!
 そうだ、この砂つぶを、たねみたいにまいてみようか?」

すると、にょきにょき生えてきたのは……!?

フランスでの出版後、アメリカ、カナダ、スペインと続々と版権が売れ、各国から注目を集めているシビル・ドラクロワの翻訳絵本。思いっきり遊んで帰ってきた後の少し寂しい気持ちと、まだまだかみしめたいという気持ちから、どんどん広がっていく壮大なイメージ。パラソルの畑、アイスクリームの畑、それとも立派な砂の城?

色数を抑えた風景の中に浮かびあがるのは、鮮やかな黄色の「すなのたね」。そして満足そうな顔をしてあくびをする、女の子と弟の表情。こんな風に「夏の思い出」を振りかえることができたら素敵だなと、しみじみ思うのです。夏のおわりに開きたくなる、美しい絵本です。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

みんなの声より
夏らしい絵本が読みたいと思っていた時に見つけました。
夏休みの終わり。
サンダルからこぼれ落ちた海の砂。
たねみたいに蒔いたらどうなるかしら?と姉と弟が想像します。
モノクロに、黄色と青だけで描かれているのが、とてもおしゃれでした。
夏の終わりの、ちょっと寂しい感じと、次の夏への思いが入り混じる感じ。
夏の終わりに読むのにぴったりの絵本かなと思います。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子13歳、男の子10歳)

だんだんと沈みゆく太陽、空気がひんやりとし…『ゆうやけにとけていく』

ゆうやけにとけていく

ゆうやけにとけていく

広い空の中で、だんだんと沈みゆく太陽。すべてのものを金色に染め、空気がひんやりとし、遠くで優しい音がする。

田んぼで、プールの中で、公園のジャングルジムで、買い物帰りにおかあさんと一緒に、部屋の中ひとりで。どんな子のところにも、そこここで生きる全ての人のところに、夕焼けはやってくる。

今日は一日何があったのかな。誰かと笑いあっていたのかな、それともひとりで静かに過ごしたのかな。楽しいことも、くやしいことも、悲しい涙やギラギラした汗までも。夕焼けがすべてを包みこみ、とけていく。そうしてやってくるのが、この静かな夜の空……。

一日が終わる前のほんのひととき。ページをめくるたびに時間は少しずつ過ぎていき、目に飛びこんでくるのは、初めて見るような、どこかで体験したことがあるような、美しくも懐かしい場面の数々。それらを順に眺めていると、不思議と心が落ち着いてくるのです。自分の中の「何か」も、絵本の中に一緒にとけこんでいくようです。今最も注目を集める絵本作家ザ・キャビンカンパニーの最新作。彼らは最後につぶやいてくれます。

「ゆっくり おやすみ。」

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

かっぱと過ごした夏の記憶は…『おっきょちゃんとかっぱ』

おっきょちゃんとかっぱ

おっきょちゃんとかっぱ

おっきょちゃんが川で遊んでいると、カッパの子どもに水底のお祭に誘われました。おっきょちゃんは、キュウリをおみやげにもっていったので大歓迎され、お餅をもらって食べると、水の外のことを全部忘れてしまいました。カッパの家の子どもになって楽しく暮らしていましたが、ある時、人形が流れてくるのを見つけて、急に家を思いだし帰りたくなりました。はたして人間の世界に戻る方法は……。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=1476

みんなの声より

おっきょちゃんとかっぱ、題名も素敵な絵も昔話のような、それでも新しく、魅力的な絵本です。読んでいてふっと懐かしい気持ちになったりドキドキしたりしました。
子どももカッパの世界、おまつりの風景にみいっていました。
想像力豊かな子どもたち。やっぱり、子どもにしかわからない世界があるきがします。
赤いカッパのガータロ、子どもたちには本当に見えるかもしれないですね。
(おうさまさん 40代・ママ 男の子5歳)

夏休みの終わり、ぼくにはやり残したことがある。『夏』

夏

夏休みが明日で終わる。ぼくにはやり残したことがひとつある。神社の森で見たオオヒカゲチョウだ。羽に何かがかいてあった。もう一度見て、たしかめたい。

「カンッ カンッ カンッ カンッ」

あの日ぼくは、自転車に乗り、ふみきりがあくのを待っていた。晴れ渡る空のもと、畑の中の一本道をのぼりきり、目指す森が見えてくる。ひっそりとたたずむ神社に着くと、影が飛び込んでくる。オオヒカゲだ。ぼくを待っていてくれたんだ。その時……!

その瞬間に見たものを、体験した不思議な出来事を、ぼくはずっと忘れない。きっとこれから何度でも思い出す。絵本作家あべ弘士さんが故郷の旭川で体験した少年時代の出来事をもとに、夏の景色を色鮮やかに描き出し
たこの絵本。

「ぼくの夏を、かけぬける。」

広い景色、一本道、空にはチョウやキツツキが飛び、目指す場所に行きつく頃、遠くで雷が鳴りはじめる。どれもが記憶の中で生き続ける、大切な風景。読者もまた、その忘れられない一日を追体験できるのです。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

みんなの声より
少年が見たのは、羽一面の地図。
少年が住む町。あるいはやがて、少年がでていくだろう広い世界。
一瞬垣間見える、少年が見た夏の日の夢。
なんと多くの色に満ち溢れた世界だろう。
誰もが経験する「夏」。
あべさんはそんな経験を一冊の絵本に仕上げてくれました。
(夏の雨さん 60代・パパ)

浮かんでくるのは、時空を越えた海の物語…『うみのたからもの』

うみのたからもの

うみのたからもの

海辺にいったら、貝がらをさがそう。そっとゆらしてみて、チリン、カタンと音がしたら、中には小さなたからものが入っているかもしれない。海にゆらりと浮かぶなら、それは遠い国からやってきたふね。ポツンと穴があいていたなら、小さな小さな海の家かもしれない。

手のひらにのせた貝がらに、じっと耳をすませると。見えてくるのはどんな景色? 深い深い海の底や太古の昔、あるいは満点の星空、イルカの群れや空高く飛んでいく渡り鳥まで。伝えてくれるのは、時空を越えた海の物語。

形も色も大きさも、ひとつひとつがバラバラの貝がら。砂浜に落ちているそれらを、夢中になって拾い集めた経験がある人は多いはず。この子はどんな海にいたのだろう。渦をまいたその奥には違う世界が広がっているのかもしれない。耳にあてれば波の音が聞こえてくる。誰もが抱く、貝がらの向こう側にある未知の世界への憧れを、たかおゆうこさんが一冊の美しい絵本にして、私たちに見せてくれます。私の一番好きな貝がらは……。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

絵本を読んでいると、ふと子どもの頃に見た夏の景色を思い出すことがあります。具体的なようでいて、どこか幻想的。夏には、そんな不思議な雰囲気がありますよね。だからこそ、絵本とも相性がいいのでしょう。

「この絵本を読めば、あの日のことを思い出す」

そんなお気に入りの一冊が、皆さんにも見つかりますように……。

 

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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