【編集長の絵本日記】夏になれば、ぬぐよね。2021年7月13日『とうもろこしぬぐぞう』
またこの季節がやってきた。
「夏になれば、ぬぐよね」
……なんて、口に出しては言わないが。息子が当然のごとくに服をぬぐ。いかにも自然に服をぬぐ。こんな暑い日に服を着ている意味が見いだせないとばかりに服をぬぐ。子どもって本当に服をぬぐよね。(個人差ありあり)
私だって努力はしましたとも。洗ったばかりの気持ちよさげなTシャツを着せてみたり、気がつかないようにそおっとすっぽり見事に頭からかぶせてみたり、気に入るような絵の入った服を用意してみたり。特に嫌がっている様子もないのだけれど。気が付けばいつの間にかぬいでいる。
けれど、私はそこに理由を求めた事はない。だって、伝わってくるから。その気持ちよさ、爽快感が。だからこんなにぬぎっぷりが見事なのだ。だからこんなに堂々としているのだ。息子はどうやら「ぬぐぞう」さん、なのか……?
とうもろこしぬぐぞう
その手足は健康的に日焼けをし、青々とした身体にふさふさのひげ。あぐらをかいて、まっすぐにこちらを見る彼の名前は「とうもろこしぬぐぞう」。なんて堂々した名前なのでしょう。今から彼がすることといえば、もちろん。
「いくぞ!」
さあ、はじまりました。ばりばり、べりべり、ぺりぺりときて、べろーん。それは見事なぬぎっぷり。黄色に輝くつやつやの粒も見えてきましたよ。ついでにふわふわのひげも……。
そうなのです。この絵本は、とうもろこしが自ら、ただひたすらにその葉っぱをぬいでいくお話。どうでしょう、この気持ちよさ。ぬぐぞうさんにつられて、みんなが嬉しくなってしまいます。力強い墨の線と、愛嬌のある表情。そして、どこか懐かしい雰囲気を漂わせながら、きっと彼は、あっという間に子どもたちの人気者になってしまうのでしょうね。
ああ、とうもろこしにかぶりつきたくなってきましたよ。作者はらしままみさんの絵本デビュー作です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「とうもろこしだから、ぬぐよね」
そこにもやっぱり理屈は皆無。見ていて本当にスカッとする。だからといって、自分が真似できるわけでもない。絵本の中のぬぐぞうさんは、いつでも、いつまでも、きっと子どもにも大人にも必要とされ続けるのでしょうね。だって、繰り返し見ていたい。
息子には……そろそろ引退してもらわなくてはいけませんね。
服をぬぎたくなる…!? 絵本
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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