【編集長の絵本日記】どんな世界をみているの? 2022年2月1日『すうがくでせかいをみるの』
好きなことをしている人を見ているのは楽しい。そしてうらやましくもなる。けれど、そんな自分にも定期的に「好きなこと」がやってきては夢中になり、そういう時期を何度も繰り返す。きっと息子も同じだろう。小さい頃から色々なものに夢中になってきた。ところがある日。
「自分には、本当に好きなものがない」
なんてことを言う。そんなはずは……。だってあんなに嬉しそうに虫を追いかけ、あんなに楽しそうに野球をやり、本やマンガやゲームに夢中になって。それって本当に好きなことじゃないの?
「本当に好きなのとはちがう。好きなことをしている人を見ていると、自分はちがうなって思う。」
と言う。彼の考える「好きなもの」ってなんだろう。誰を見て「好きなことをしている人」だと思ったのだろう。でも確かに……じゃあ自分はどうなんだろうと考える。何か一つに固執してきたわけでもなく、その時その時で好きなものは変わり、仕事と重なっていたりいなかったり。それは果たして「本当に好き」と言えるのだろうか。
だけど、わかっていることだってある。何かに夢中になるたびに、世界が少しだけ変わって見えてくるということ。そういう小さな積み重ねだって、十分に個性になり得るのだということ。そんな答えは、まだまだ知らなくてもいいのかもしれないけれど。
たまに「その子にしか見えない世界」というものをのぞかせてもらえると、たまらなくワクワクする。そこは彼と一緒なのだろう。
すうがくでせかいをみるの
うちの家族には、みんなそれぞれ好きなことがある。パパは絵を描くし、ママの部屋には昆虫の資料がたくさん。お兄ちゃんは音楽が好き。好きなことがあるって、いいな。私だっていろいろ挑戦してみるけど、なかなかピンとくるものがない。でもひとつだけ、これだって思ったのが……
すうがく!
彼女に言わせれば、すうがくはどこにでも隠れているんですって。公園にも、湖にも、窓からの景色にも、絵画の中にだって。かずや形のことを見つけて、それについて考えるのが楽しくてたまらない。彼女の目には、世界がどんな風に見えているんだろう。想像するだけで、ワクワクしてきますよね。
世界をみる方法は、いくつもある。こんな風に、自分が一番好きなことが見つけられたら、夢中になればいい。その先にはきっと夢をかなえるための扉が待っているから。作者の、子どもたちに託す気持ちが伝わってきます。
巻末には、主人公オリジナルの「数学ノート」付き。誰かの世界をのぞいてみることだって、好きなことを見つける一つの方法かもしれませんよね!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
考えごとや悩みごとなんて関係なく、時間はどんどん過ぎていく。今日もやらなくてはならないことに追われていく。でも、それでいい。そんな中にも「きみの世界」はあるのだから。できることなら母はのぞいてみたい。
今日もぼんやりとした姿で玄関を出て行く背中を見ながら、「それなりにがんばれ」とつぶやくのです。
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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