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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】和歌山静子さん特集。「王さま」から赤ちゃん絵本、平和絵本、紙芝居まで

絵本作家の和歌山静子さんが1月8日、83歳でお亡くなりになりました。
和歌山静子さんと聞いてすぐに思い浮かぶのは、何の絵本でしょうか。55年以上の長きにわたり描きつづけてこられたという「ぼくは王さま」シリーズ(理論社)の王さまの絵を思い浮かべる方が多いでしょうか。「ぼくは王さま」シリーズの他にも、赤ちゃん絵本、平和の絵本、30年以上読まれ続けている性の絵本など、子どもたちの平和を願う活動や絵本作りにおいてもさまざま尽力された和歌山静子さん。楽しい紙芝居もたくさん手がけられています。
今週は、和歌山静子さんが残してくださった作品全てに、そして子どもたちや平和に関わる活動に、敬意と感謝を込めて、和歌山静子さん特集をお送りします。

2024年1月29日から2月4日までの絵本「今日の一冊」をご紹介

1月29日 たまごやきが大好きで、わがままで、なまけもの…

月曜日は『王さまめいたんてい』

王さまめいたんてい

「ぼくは、あたまがいいんだぞ!…って、自分でいうんだ、王さまは。」
頭のいいところを見せようと王さまが思いついたのは、名探偵になること!?

たまごやきが大好きで、わがままで、なまけもので、くいしんぼう。
こんな王さまが活躍するのが寺村輝夫さんの「ぼくは王さま」シリーズ。
「どこのおうちにも こんな王さま ひとりいるんですって」
というフレーズにもある通り、とんでもなく困った、でも愛嬌たっぷりの王さまは
親子三代にわたって愛され続けているみんなのお友だちなのです。
王さまが巻き起こす珍騒動・事件の数々は、今も変わらず子どもたちを惹きつけてやまないのです。
そんな王さまのお話が、親子でも、ひとりでも読める「絵本」となって新しく生まれ変わりました!

45年以上も「王さまの本」の絵を手がけられてきたのは和歌山静子さん。
ひげと王冠と赤いガウンを羽織った愛らしい王さまの姿はすっかりお馴染みですよね。
寺村さんのお話の面白さを熟知されている和歌山さん、
そしてその後多くの創作絵本も手がけられてきた和歌山さんだからこそ、
実現可能となった「新・王さまえほん」シリーズの誕生。
新しく絵を描き下ろされているのは勿論のこと、構成も和歌山さんの手によるこの作品。
「絵本」としての面白さを徹底的に追求したことにより、
寺村さんの物語と和歌山さんの絵に科学反応が起きて、また新たな魅力をみせてくれているのは、王さまファンにとっては嬉しい限りなのです。
そして、王さまの小さなお友だちが沢山増えること。寺村さんもきっと喜んでいるのでしょうね。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=87246

読者の声より

王さまシリーズ、大好きです。
王さまがかわいくて、かわいくて、たまに、かわいそうで、やっぱりかわいくて・・・♪
今回も、ほんとは犯人なのに、めいたんていのふりをして!!
やることがおさなくて、ほんとに王さまなの???って思いますが、そんなところが、身近に感じられていいんでしょうね♪
王さまにいつも寄り添うだいじんも、大好きです!!素敵なキャラクターですね♪
(スケボウさん 30代・ママ 女の子4歳)

https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents_old.asp?id=13 新・王さまえほん誕生!『王さまめいたんてい』和歌山静子さんインタビュー

1月30日 雨の日も、風の日も…「どんどこどんどこ」

火曜日は『ひまわり』

ひまわり

地面に一粒の小さな種が落ちました。お日様の光をいっぱい浴びて、芽が出て、茎がどんどこどんどこ伸びます。雨が降って、たっぷりと地面をうるおし、葉っぱが出て、どんどこどんどこ大きくなります。どんどこどんどこ。強い風が吹いても、大丈夫。月が輝く夜も、どんどこどんどこ伸びていきます。そして、つぼみができ、とうとう大きな大きな太陽のような花が咲きました。どんどこどんどこどん! たて開きの絵本いっぱいに、生命力あふれるひまわりの成長が描かれます。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=2157

読者の声より

種から1ページごとに向日葵が育っていく。
ただそれだけなのです。「どんどこ」育っていくのです。

力強い向日葵の絵と、だんだん大きくなっていく様子にこちらも元気が出ます!
種が落ちて、また最初に戻ってエンドレスなのも気に入りました。

次男はこの絵本を読むと、座ってだんだんぐんぐん伸びるような、向日葵のマネをします(笑)
シンプルだけど、力強く生命力を感じる一冊です。
(きゃべつさん 30代・ママ 男の子8歳、男の子5歳)

1月31日 「わたしの未来に戦争はいらない」

水曜日は『くつがいく』

くつがいく

日本・中国・韓国の絵本作家が手をつなぎ、子どもたちにおくる平和絵本シリーズ。
それぞれの作家がご自身の戦争の体験と真摯に向き合い、自分の国が行ってきた事実と向き合う。
そこから生まれてくる作品は、それでも希望と平和への強い意志を感じることができるのです。

和歌山静子さんは幼い頃、何もわからず戦争を体験された。
その時、日本の兵隊たちはアジアの国ぐにで何をしたのか。本当の戦争の姿とはどんなだったのか。
その事実を知った今、和歌山さんが描き出したのは兵隊に履かれて海を渡っていった「靴」の運命。
ざっざっざっざっ ざっざっざっざっざっざっ
足音を揃え、靴たちが勇んで向かった場所は戦争。
海をわたり、隣の国の人たちをふみにじり、痛めつけ、また次の戦場へ。
やがて、靴はぼろぼろになり、履いていた兵隊たちも、命令した国もぼろぼろになり・・・。

絵本を開けば言葉も絵もシンプル、和歌山さんらしく力強い線がおどっています。
こわい場面が描かれているわけではありません。でも、一つ一つの言葉と表情が深く心につきささってきます。
子どもたちには本当の戦争を知ってほしい、そんな願いが込められているのです。
そして最後の場面。
「わたしはわたしの未来を生きていく。わたしの未来に戦争はいらない」
少女が見せる、はっきりとした自分の意思。
力強い言葉は、子どもの心、そして大人の心も奮い立たせてくれるようです。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

読者の声より

日・中・韓平和絵本シリーズの一冊。
表紙の少女の敬礼の表情が、戦時の空気を感じさせます。
戦時の靴音で、戦争の悲惨さを語ります。
そう、隣国や南国の人々を踏みにじり、痛めつけた軍靴。
そして自らもボロボロになっていく軍靴。
そう、戦争って、そんなものだということが、悲惨な描写がないのに伝わってきます。
だからこそ、ラストの少女の言葉が印象的です。
(レイラさん 40代・ママ 男の子19歳、男の子17歳)

2月1日 どんどん大きくなっていくことりたちはいよいよ……

木曜日は『とべたよ とべたよ』

とべたよ とべたよ

ぴこっ うまれたよ。
ことりが元気に殻を割って生まれてきます。
ちこっ こちっ ぱこっ ぴちっ。
次々に生まれたことりたちは全部できょうだい5羽。
ことりたちは、大きな口をあけて、ぴーぴー泣きながらお父さんとお母さんが持ってきてくれるごはんを待ちます。
「おなかがすいたね おかあさんまだかな おとうさんまだかな」
どんどん大きくなっていくことりたちはいよいよ・・・。

太い線で力強く描かれていることりたちは生命力にあふれていて、とっても元気。
そして、とっても可愛い。
「ぴーぴー」「ぐじゅるる ぴーちゅ」「「ぴっぴっぴー」
はじけるような擬音を耳にしながら、ページをめくるたびに成長していくことりたちを見るのは、
小さな子どもたちにとっても嬉しくて仕方がないはず。
ぱたぱた ぱたぱた とべたよ、とべたよ
おとうさんおかあさん、子どもたち、そして作者の喜びがたくさんつまっているこのページ。
何回だって読みたくなっちゃいます。
和歌山静子さんの1歳からの認識絵本の最新作は、喜びが追体験できる内容です。
嬉しいっていう気持ちを大切にしていきたいですね。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=90570

読者の声より

ヒナがうまれて、旅立つまでのお話。
大きな口をあけて、エサをねだるヒナたちの生命力がまぶしなと思いました。けれど、いつまでもねだってはいられません。はじめてとびたつときのドキドキ感がつたわってきます。絵本を見ている大人の私も、元気になれそうでした。
力強く、あたたかさを感じさせる絵がいいなと思いました。
絵本の大きさも、小さな子にぴったりのサイズです。
(どくだみ茶さん 40代・ママ 女の子13歳)

2月2日 みんなみたいに黒くなりたい!ロングセラー紙芝居

金曜日は『紙芝居 こねこのしろちゃん』

紙芝居 こねこのしろちゃん

おかあさんも、きょうだいたちもみんな毛の色がまっ黒なのに、ひとりだけまっ白なしろちゃん。自分だけ色がちがってよその子みたい。みんなみたいに黒くなりたいしろちゃんは、池のどろんこで泥だらけになりますが、お母さんにみつかって、洗ってもらい、やさしく抱かれてぐっすりお昼寝です。でも、やっぱり黒くなりたいしろちゃんは、ペンキやさんの黒いペンキをみつけて、近づいていきますが……。

しろちゃんの行動に、観客もハラハラドキドキ。最後には立派な白猫のおとうさんに出会って、自分がなぜ白いのかわかったしろちゃん。自分が自分であることが誇らしく、うれしいしろちゃんの気持ちが、紙芝居をみる子ども達にも伝わってきます。人気のロングセラー紙芝居。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=17378

読者の声より

黄色い画面が印象的なねこちゃんの紙芝居です。
きょうだいはみんな黒いのに自分だけ白いしろちゃん。
くろくなりたくていろいろと試みますが、いつも止められちゃって頑張る姿がとてもかわいいです。長いお話ではないのですが、子守唄ありいたずらありどんでん返しありで何度読んでも楽しめます。
お外でしろいねこを見たら「しろちゃん」っと娘はすっかりお気に入りです。
おかあさん猫のやさしさが素敵で、おとうさん猫の悠々っぷりがまた素敵。家族の温かいお話としてもおすすめです。
(ミルキーミルキーさん 20代・ママ 女の子2歳、女の子0歳)

2月3日 豆まきのあと、家族で読みたい豆のかぞえ歌絵本

土曜日は『まめのかぞえうた』

まめのかぞえうた

「ひとーつ まめ ひとつ あったとさ」「ふたーつ ふたごの はっぱの あかちゃん げんきよく でてきたよ」…と数を数えるたびに豆が生長していくかぞえ歌です。表紙に描かれたたくさんの豆が印象的。裏表紙では鬼も豆を食べていますよ。節分の夜、豆まきをしたあとに家族みんなで読みたい絵本です。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=6329

読者の声より

2歳と8歳の子どもに読みました。
8歳の次男は「ひとーつ、ふたーつ」で始まる言葉のリズムを楽しんでいるようでした。
2歳の三男は、一粒一粒の豆の表情が気になったようで「怒ってるね」「こんな顔してる」とお豆の顔真似をしていました。
小学校の低学年の節分頃の読み聞かせにも向いているかなと思いましたので、早速読んでみたいと思います。
(ゆずれもんさん 30代・ママ 男の子11歳、男の子8歳、男の子2歳)

2月4日 自分の体と心はたった一つの大切なもの

日曜日は『わたしのはなし』

わたしのはなし

短い文章とシンプルな絵で、幼児にむけて自分の体と心を守ることの大切さを描いた性教育のロングセラー絵本。
自分の体と心はたった一つの大切なものであること、プライベートゾーンを「水着でかくす部分」とわかりやすく伝え、そこをさわろうとしたりする大人がいたら、はっきり「やめて」と声を出そう、大人に話そう、と読者の子どもたちに語りかけています。

「自分はどうやって生まれてきたのか?」出産・性交などの科学的な知識とともに、私たちがかけがえのない命を受け継いだ大切な存在であることを描く姉妹本『ぼくのはなし』も、ぜひあわせてお読み下さい。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=29429

30年以上読まれ続けている「おかあさんとみる性の本」シリーズ

和歌山 静子(わかやましずこ)
1940年京都に生まれ、幼少期は函館で過ごした。武蔵野美術大学卒業。力強く大胆な絵を寺村輝夫氏に見出され、20代後半から子どもの本の仕事を始める。絵本『あいうえおうさま』(絵本にっぽん賞受賞)『おおきなちいさいぞう』(講談社出版文化賞受賞)をはじめ、「王さまシリーズ」「オムくんトムくんシリーズ」など寺村氏との仕事が多い。ここ20年程は『てん てん てん』『ひまわり』『どんどこ どん』『おーい はーい』『おかあさん どーこ?』など自作の赤ちゃん絵本も多い。ほかに『ぼくのはなし』『よあけまで』『ぼく とりなんだ』など。

和歌山さんの描き出す力強い線、あたたかな絵を見ていると、なんだか元気をもらえる気がしますね。これからも大切に読み継がれていくことでしょう。素晴らしい作品を残してくださったことに深く感謝したいと思います。
 

 

選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

 

掲載されている情報は公開当時のものです。
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