【今週の今日の一冊】卒業生に贈る絵本
今年度、卒業を迎える皆さん、ご卒業おめでとうございます。
卒業は、子ども達にとっても、これまで見守り続けてきた親御さんにとっても、大きな節目の行事ですね。小学校、中学校、高校……を卒業して、明るい未来へ飛び立っていく子ども達。これから広い世界に向かっていくことへの応援の気持ちや、自分自身を大切にしてほしい願いを、絵本のことばや物語に託して贈ってみませんか。
今週は、卒業生に贈りたい絵本を特集します。
2024年3月4日から3月10日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
3月4日 こわがらないで あかるいせかいに とびたとう
月曜日は『ひろいせかいは きみのもの』
ゾウと一緒に行進し、鳥の背に乗って空をひとっとび。ジャングルをかきわけ、オオカミと雪山を走って…。想像力をはたらかせれば、どこにいようとすばらしい冒険に繰り出すことができるのです。勇気をだして一歩ふみだせば、かがやく世界が君を待っている!
読者の声より
人の心をとてもポジティブにしてくれる絵本だと思います。
広い世界は自分のためにあるのだと、様々な場面を通して語りかけてきました。
世界に対してなんと自分の小さいことでしょう。
でも、無限の可能性を持っているのも自分です。
勇気と希望が、自分を後押ししてくれるような絵本でした。
(ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
3月5日 自分らしさって何だろう
読者の声より
ひとりひとり「じぶん」は「じぶん」
せかいは「じぶん」でいっぱいだ
忘れがちなことだけどとても大切なことが、この絵本に書かれていました。
いいな「じぶん」!
毎日忙しくしていると、嫌なことが続くと、簡単に忘れてしまう「じぶん」という存在。
「じぶん」はこの世にたった一人でかけがえのない大切な存在のはずなのに。
とても大切なことを教えてもらいました。
年齢性別に関わらず、全ての方々に読んでもらいたい一冊です。
(めむたんさん 40代・ママ 男の子21歳)
3月6日 違っているからこそ、支えあい、つながりあえる
水曜日は『すきなこと にがてなこと』
ぼくはスポーツが大好き。ボールを使うと大活躍できる。でも……みんなの前で発表するのが苦手なんだ。そんな時は話すのが大好きなりんちゃんが一緒に発表してくれる。
そのりんちゃんは、動物が苦手。飼育係の時には、動物大好きけんちゃんが手伝ってくれる。歌が大好きなソフィアちゃんは、工作が苦手。工作が得意なこうくんは、じっとしているのが苦手。
誰だって好きなことがあれば、苦手なこともあるよね。
それは大人だって同じ。料理が好きなお父さんに、運転が好きなお母さん。小さい子どもが苦手な郵便屋さんに、早起きが苦手な保育士さん。さらに「すき」「にがて」は国境だって越えていく。英語の得意なマリーちゃんはパソコンが苦手。ミンジュンはパソコンが得意だけれど……。
苦手な事は克服するべきだと、前向きな気持ちで頑張ることは、もちろん大切だけれど。「にがて」が個性になり、どこかの誰かとつながっていき、「すき」が隣にいる人を助けることがある。そんな素敵な考え方もあるんだということを、この絵本は丁寧に優しく伝えてくれています。
多様な人々が共生していける社会になるには「自分を認め、他者と支えあう」ということが不可欠です。こんなにも身近なところからスタートできるのだという発見は、大人になった私たちも含めて、見失ってはいけないことかもしれませんよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
ぼくは、スポーツが大好き。だけど、みんなの前で話すのは苦手。話すのが大好きなりんちゃんは、動物が苦手。「すき」も「にがて」も、ありのままでいい。それぞれが持つ個性を認め、受け入れる社会を描いた絵本です。本当にその通りだなぁと納得です。子供にも「個性」の素晴らしさが伝わる内容です。
(ぼんぬさん 40代・ママ 女の子5歳)
3月7日 「みらいのちず」って、あるのかな。
木曜日は『ぼくはいったい どこにいるんだ』
おつかいを頼まれたけど、おかあさんの書いた地図じゃ、さっぱりわかんない。みーちゃんのママが書き足してくれたら、すぐに目的地についた。うーん、地図ってすごいな。
地図があれば自分が今どこにいるかわかるし、どうすれば行きたいところにいけるのかがわかる。小さな地図から大きな地図、うちがわの地図もあるし、仕組みがわかる地図だってある。他にもいろんな地図がありそうだ。
誰かにとっては便利の地図でも、他の人にはわからない地図。自分のためだけの地図だってあってもいい。たとえば……。
地図にすると、わからなかったことも見えてくる!? 今年、絵本作家デビュー10周年を迎えるヨシタケシンスケさんによる「発想えほん」シリーズ第5作目のテーマは「地図」。自分がいるのは、今どこなの? 何をめざして進めばいいの? いや、わからないままだっていいんじゃない? 想像をふくらませながら、「地図」についてあらゆる視点から考察し、整理していくまったく新しい「地図絵本」。
地図を見るのが好きな人も、地図を書くのが下手な人も。さあ一緒にあたらしい地図を考えて、世界と自分をつかまえにいこう!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
「ブロンズ新社・発想えほん」の最新作ということで期待して手に取りました。
結果、現行の5作品中一番お気に入りの本になりました。
おつかいに出掛けた少年が母親に渡された地図をきっかけに、世の中の仕組みや過去・現在・未来という時間軸、そして自分の気持ちを俯瞰的に捉えることヘと気付いていく。
母親や友達のお母さんよりもぼくは「ちずがうまい」という自負を持つに至る少年の心の動きが細かく描かれた絵や文字で楽しく表されています。
表・裏見返しの絵も本文のおはなしと連続しており、そのような細かい工夫も素敵だなと思いました。
(てんちゃん文庫さん 40代・ママ 女の子21歳、男の子18歳、女の子13歳)
3月8日 「ともだちって すばらしい」
金曜日は『ともだち』
「ともだちって」
かぜがうつっても へいきだっていってくれるひと
いっしょに かえりたくなるひと
「ともだちなら」
いやがることを するのは よそう
「ひとりでは」
もてない おもいものも ふたりでなら もてる
つまらないことも ふたりでやれば おもしろい
ともだちってなんだろう・・・例えば子どもたちがそんな風に思っていたとしたら、こんなにも具体的にわかりやすく教えてくれる答えはないですよね。
谷川俊太郎さんの詩に、和田誠さんのほのぼのとした絵が子ども達の心にぐっと近づいてきます。
そこで、詩の内容は広がっていきます。
「どんなきもちかな」「けんか」「ともだちはともだち」
それぞれのテーマに続く詩はひとつひとつ、どれも相手の気持ちを想像することにつながります。ともだちはどんな気持ちになるんだろう、ともだちにこういう事をするのは良くないな、お父さんお母さんだってともだちみたいな時があるな。
こんな風に考えられるようになったら、想像する力は大きくなっていきます。
会った事のない子だってともだちになれるかもしれない。
その子たちが困っていたら、なにをしてあげられるんだろう。
難しいことはありません。だれだってひとりで生きていくことはできない、みんなともだちが必要なんだ、そういう大切なことは小さな子どもたちにだってきっと伝わるはずです。
「ともだちって すばらしい」
子どもから大人まで、年齢に関係なく読み続けていきたい一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
谷川俊太郎さんの詩は、本当に心に沁みます。
小さな子たちにもわかる易しい言葉で、ともだちの本質をついてくる谷川俊太郎さんの詩。
その詩に、素朴で温かい和田誠さんの絵がとてもマッチして、大好きな一冊です。
どの学年の子どもたちも、それぞれの思いで、ともだちについて考えられると思い、ブックトークで紹介することが多い絵本です。
会ったことがなくてもそのこはともだち。
心を馳せて考えてみよう。ともだちが笑顔になれるように。
ともだちが笑えば自分も嬉しい。幸せはそうやって連鎖していくんだね。
ともだちって大切。ともだちって素敵。
そんなことを、子どもたちに伝えたい。でも、語らなくても、絵本を読むだけでいい。
谷川俊太郎さんの詩は、誰にでもストレートにと心に響くと思うから。
これからもずっと大切に読んでいきたいと思います。
(あさみーこさん 50代・その他の方)
3月9日 新しい道を歩き出す人へ
読者の声より
卒業式の日。感謝の気持ちが溢れます。空、花、お母さん…そして、私を私にしている私にも。短い当たり前のような言葉ですが、詩人、谷川俊太郎さんの言葉には、その短さのなかに凝縮された大きなものへとイメージが広がるように感じます。
(水仙の丘さん 30代・ママ 男の子2歳)
3月10日 すきなことを いろいろ ためしてごらん
日曜日は『たったひとりの あなたへ 』
アメリカで半世紀以上親しまれた国民的子ども番組の制作、司会を務めたフレッド・ロジャーズ。自身の闘病やいじめの経験から、自分を肯定し、自分らしく生きることの大切さを子どもたちへ伝え続けた生涯を描く。
読者の声より
孤独を感じたとき、自信を失ったとき、心を支えてくれるようなお話です。 「ロジャースさんのご近所さん」 という外国の放送番組は知りませんが、身近な人々の支えや親しさが、生まれること、語りかけるという素朴な第一歩から生まれるのだということを教えられました。 そのためには、お互いに自分が自分のままで良いのだという自己肯定、人はその人のままで良いのだという人の存在肯定ができることが大事なのだとも教えられました。 誰でもできること、心がけたいことだと思います。
(ヒラP21さん 60代・その他の方)
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いかがでしたか。
新しい毎日に踏み出すたくさんの卒業生たちに、心からのメッセージが届きますように。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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