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戦争と平和を描いた名作マンガ・グラフィックノベル20選【高学年~大人向け】

戦争を描いたマンガやグラフィックノベルは、映画のように物語に入り込みやすく、戦場の光景や、その悲惨さ・不条理さを視覚的に強く胸に刻みつけます。
この記事では、平和や戦争について考えるきっかけとなる、今こそ読みたいマンガとグラフィックノベルをご紹介します。
ロングセラーから新刊まで、中高生から大人に向けた作品が中心ですが、小学生から読める作品も取り上げています。ぜひ気になる作品から手に取ってみてください。

※マンガの絵には、刺激の強い描写が含まれています。記載の「対象年齢」はあくまで目安です。特に小中学生には、お子さん一人ひとりの受けとめ方に寄り添いながら、大人のサポートのもとで手渡していただければと思います。

空襲と戦時下の市民生活を描いたマンガ

12歳の少女あいが体験した名古屋大空襲【高学年~】

あとかたの街(1)

太平洋戦争末期の昭和19年、名古屋。優しい父と強い母、そして四姉妹の女系家族。木村家次女・あいは、国民学校高等科1年生。
青春真っ只中にいるあいの関心は、かっこいい車掌さんに出会ったことや、今日の献立のこと。自分が戦争に参加しているなんて気持ちは、これっぽっちもなかった――。
しかし、米軍にとって名古屋は、東京や大阪と並んで重要攻撃目標だった。

少女・あいにとって、戦争とは、空襲とは、空から降り注いだ焼夷弾の雨とは、一体何だったのだろうか。

作者・おざわゆきさんは、自身の両親それぞれの戦争体験をもとに、2つの作品(『あとかたの街』『凍りの掌』)を描いています。
本作『あとかたの街』は、母親の名古屋大空襲前後の実体験をもとにした物語。12歳の少女・あいの視点で、戦時下のごく普通の家庭の日常が描かれ、巻を追うごとに戦争の恐怖がどんどん身近に迫る様子が浮かび上がります。そして訪れる、大空襲——。
語られる機会の少ない名古屋大空襲の記録としても、小学校高学年から大人まで、広く手に取ってほしい作品です。

広島県の軍都「呉」を舞台にした、戦中を生きる小さな家族の物語【高学年~】

この世界の片隅に【新装版】 上

主人公・すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。だが、昭和18年から描かれる一日一日を確かに健気に生きていく。広島県の軍都「呉」を舞台にした、戦中を生きる小さな家族の物語。アニメ映画の大ヒットも記憶に新しい名作が令和に新装版で登場!

アニメ映画も話題となった『この世界の片隅に』の原作マンガ。広島・呉に18歳で嫁いできた主人公・すずが、戦時下で過ごす日々を描いています。

丹念に描かれる穏やかな日常と、戦争の残酷の対比が、読む人の心を深く揺さぶります。 世代を超えて読み継がれてほしいマンガです。

そのほかの戦時下の生活を描いたマンガ【高学年~】

兵士の視点から戦争を描いたマンガ

美しい南の楽園が、極限の戦場になった【中高生~】

ペリリュー ―楽園のゲルニカ―(1)

昭和19年、夏。太平洋戦争末期のペリリュー島に漫画家志望の兵士、田丸はいた。そこはサンゴ礁の海に囲まれ、美しい森に覆われた楽園。そして日米合わせて5万人の兵士が殺し合う狂気の戦場。当時、東洋一と謳われた飛行場奪取を目的に襲い掛かる米軍の精鋭4万。迎え撃つは『徹底持久』を命じられた日本軍守備隊1万。祖国から遠く離れた小さな島で、彼らは何のために戦い、何を思い生きたのか──!?『戦争』の時代に生きた若者の長く忘れ去られた真実の記録! 

太平洋戦争末期、激戦地となり多くの犠牲を出した南国・ペリリュー島を舞台に、戦場の狂気と兵士たちの日々を描いた衝撃作です。
理不尽な命令、飢えと恐怖、まるで運次第のような死の危険――凄惨な光景も多く描かれますが、主人公のキャラクターとやわらかな画風で、重すぎることなく読み進められます。 戦争のリアルを知る一冊として、大人はもちろん、若い世代にもぜひ手に取ってほしいマンガです。2025年12月にはアニメ映画が公開予定です。

第二次世界大戦におけるソ連の従軍女性たちの証言【中高生~】

戦争は女の顔をしていない(1)

「一言で言えば、ここに書かれているのはあの戦争ではない」……500人以上の従軍女性を取材し、その内容から出版を拒否され続けた、ノーベル文学賞受賞作家の主著。『狼と香辛料』小梅けいとによるコミカライズ。

原作、ノーベル文学賞受賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの代表作『戦争は女の顔をしていない』は、1978年から開始した500人以上のソ連従軍女性へのインタビューをもとに、第二次世界大戦を描いたドキュメンタリーです。
コミカライズ版で描き出される女性たちの証言は、マンガならではのビジュアル表現で、文章だけでは想像しづらい戦場や当時の暮らしの空気感が伝わります。
現在5巻まで刊行中。原作は、その内容から長く出版を拒否されたそうです。今、この作品を、マンガとして手に取りやすい形で読めることは、貴重なことだと感じます。大人の方は原作と併せて読むのもおすすめです。

シベリア抑留を生き抜いた著者の父親の実体験をもとに描かれた衝撃作【高学年~】

新装版 凍りの掌 シベリア抑留記

小澤昌一は東洋大学予科生。東京・本郷の下宿先で銃後の暮らしの中にいた。戦況が悪化する昭和20年1月末、突然名古屋から父が上京し、直接手渡された臨時召集令状。
北満州へ送られた後、上官から停戦命令の通達、すなわち終戦を知らされる。実弾を撃つことなく終わった戦争だったが、その後ソ連領の大地を北に向かわされ、ついにシベリアの荒野へ。待っていたのは粗末な収容所と、地獄のような重労働だった。

『あとかたの街』の作者・おざわゆきさんの、こちらは実父の体験をもとに描かれたシベリア抑留記。
極寒の地での強制労働、飢えと病気、仲間たちの死――。 温かみのある絵で淡々と綴られる体験談がかえって胸に迫ります。戦争の「その後」を知るための、貴重なノンフィクションマンガです。

そのほかの、兵士の視点から戦争を描いたマンガ

原爆・核兵器の悲劇を伝えるマンガ・グラフィックノベル

原爆投下から10年後、40年後、60年後のヒロシマを描く【高学年~】

夕凪の街 桜の国【新装版】

こうの史代新装版シリーズ第1弾。

原爆投下から10年後、40年後、60年後のヒロシマを舞台に一人の女性の日常生活を描いたマンガ。

文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞作が新装版で登場!著者による広島のスケッチ、秘蔵エッセイ、カラー漫画など新規収録をふんだんに収録した決定版!

『この世界の片隅に』と同じく、こうの史代さんによる作品です。
広島を舞台に、原爆投下から10年後の一人の被爆女性、そして40年、60年後を生きる被爆二世の女性の姿が描かれます。3世代にわたる家族、異なる時代を生きる登場人物たちの物語を通して、「ヒロシマ」の過去と現在が語られます。
穏やかな絵柄とは裏腹に、深い痛みが心に残る一冊です。

原爆投下後の広島を生き抜く少年ゲンの物語【高学年~】

完全版はだしのゲン(1)

広島で被爆した主人公ゲンが、家族を失いつつ戦後を強く生きる姿を描いたロングセラー漫画。作者の被爆体験に基づく。

 

完全版には、連載当時の扉ページを収録。マンガ雑誌でおなじみの惹句(あおり文)を採用している。また、難しい言葉に注釈を入れているほか、巻末に用語解説を入れることで、読者が内容を理解しやすくしている。

広島を舞台に、被爆した少年・ゲンの視点から戦争の悲惨さを描いた『はだしのゲン』。多くの大人にとって、なじみ深い作品かもしれません。
被爆直後から戦後の混乱期まで、過酷な状況の中で生き抜こうとする姿は、読む人の心に深く刻まれます。壮絶な描写もありますが、それだけに、戦争の現実と平和の尊さをより深く伝えてくれます。
「戦争とは何か」「人間とは何か」、私たちに問いかけ続けるマンガです。

そのほかの原爆・核兵器をテーマにしたマンガ・グラフィックノベル【高学年~】

原爆の悲劇を伝える貴重なノンフィクションコミック【中高生~】

漫画 いしぶみ 原爆が落ちてくるとき、ぼくらは空を見ていた

1945年8月6日、雲ひとつない夏の朝。
空襲で火事が燃え広がるのを防ぐ、建物の解体作業のために集められていた広島二中一年生の上空で原爆が爆発。そこにいた320余名の生徒たち、全員が命を落とした。
彼らがどんなふうに亡くなっていったか、家族の証言をもとに克明に記録し、50年以上読み継がれてきたロングセラーを漫画化。
大けがをしながらもなんとか家に帰りついた子、途中で家族に会えた子、逃げる途中で力尽きた子……。
一人一人の最期から、原爆の悲痛な実相が伝わってくる、貴重なノンフィクション。
巻末に池上彰さんの解説を収録。

広島テレビが制作したドキュメンタリー番組と、それをもとに出版された書籍を原作とするコミック作品です。
被爆死した旧制広島二中の1年生321名の最期を、遺族への取材をもとに淡々と伝えます。
家族に会えぬまま亡くなった子、家族の目の前で息を引き取った子――321人全員が命を落としました。 この記録をこれからも決して風化させてはならない。強い思いが込められた一冊です。

ホロコーストの証言を伝えるグラフィックノベル

アンネ・フランク財団監修のもと刊行されたグラフィック版【高学年~】

[グラフィック版]アンネの日記

隠れ家での2年間の雑居生活。異常な環境で思春期を迎えた13歳の少女の不安、恐れ、怒り、愛を書きつづった「アンネの日記」。500ページ近い大著を、アンネ・フランク財団監修のもと、150ページのグラフィック版で刊行。

グラフィック・ノベルになって、フルカラーのビジュアルで味わえる『アンネの日記』。500ページ近い原作が読みやすい150ページにまとめられ、原作を読んだことがない人も手に取りやすくなっています。

アンネ・フランク財団監修のもと、隠れ家の部屋の構造や当時の生活を詳細な絵で見られるのも、グラフィック・ノベルならでは。原作を読んだことがある方にも、改めて発見がある一冊です。

生き抜いた6人の人生を知る【中学年~】

ホロコーストを生きぬいた6人の子どもたち

1933~1945年――。
ヒトラーが率いるナチ・ドイツのもとで、
ヨーロッパに暮らす何百万人ものユダヤ人への迫害が起きました。

ホロコーストと呼ばれる
このできごとを生きぬいた6人の子どもたちが、
このような悲劇を起こさないためにはどうすればよいのか、
物語の中で教えてくれます。

友達と遊び、学校で学び――そんな当たり前の日常が、ある日突然奪われました。

学校を追い出されたハインツ。両親を殺されたトルーデ。海を越えて必死に逃げたルース。空襲におびえたマルティン。ひとり農場に置き去りにされたスザンヌ。アウシュヴィッツで骨と皮になるまで働かされたアレク。

6人の子どもたちが、自分の身に実際に起きた出来事を語ります。6つの物語はすべて異なり、それぞれが深く痛ましい記録です。

総ルビで読みやすく、絵も怖すぎないように描かれているため、小学校中学年ごろから読むことができます。巻末には、年表や用語集、第二次世界大戦の歴史を学ぶための書籍など、もっと知りたい子どもたちへの情報が掲載されています。

父の記憶からホロコーストを描くグラフィック・ノベル【中高生~】

完全版マウス アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

アウシュヴィッツの生存者、ヴラデックの体験記録。息子のアート・スピーゲルマンがマンガに書き起こした『マウス』と『マウス2』を一体化さた“完全版”。

アウシュヴィッツを生きのびた父親の体験を、マンガ家である息子がインタビューで聞き取り、描き起こしたグラフィック・ノベル。戦争やホロコーストの記憶、父の人生が、父子の対話を通して浮かび上がってきます。同時に、作者自身と父との関係を見つめた物語でもあります。

特徴的なのは、ユダヤ人がネズミ、ドイツ人が猫、アメリカ人は犬など、登場人物が動物の姿で描かれている点。

30以上の言語に翻訳され、ピューリッツァー賞を受賞した、グラフィック・ノベルの名作です。

難民となった人々を描くグラフィック・ノベル

シリア内戦下に生きる少女の物語【中高生~】

ZENOBIA ゼノビア

世界17の国や地域で翻訳された北欧グラフィックノベルの傑作!
子どもの目線で描かれた不条理な現実。
繊細なイラストと言葉で紡がれるメッセージは、国境を超え、あらゆる世代の心に 戦争の意味を投げかける。

デンマーク発のフルカラーグラフィック・ノベル。シリアの内戦下、難民となった少女アミーナ。彼女の乗った漁船が荒波で転覆するところから物語は始まります。深い海に飲み込まれたアミーナの頭に浮かぶのは、家族との幸せな思い出の断片、国外へ脱出する漁船に乗るまでの出来事、ママがよく話してくれたシリアの女王「ゼノビア」のこと……。 子どもを飲み込む不条理な現実が読者に突き付けられます。ページを閉じたあとも、アミーナの記憶が心に残り続けるでしょう。

子どもの視点から難民生活を描いたグラフィック・ノベル【高学年~】

オマルとハッサン 4歳で難民になったぼくと弟の15年

こんにちは、オマルです!
ぼくはソマリアで生まれました。
内戦でお父さんを殺され、お母さんとは生き別れになりました。
そして、4歳のとき、まだあかちゃんだった弟のハッサンとともにふるさとを離れ、ケニアの難民キャンプに行きました。
これは、15年にわたる難民生活の記録です。
ぼくの子ども時代は失われたも同然でした――

「本書は、難民の子どもたちが不遇な環境の中でも夢と希望を捨てず、夜空に輝く星を目印に行く旅人のようにひたむきに歩き続ける姿を描き出します。その姿から私たちは多くを学ぶでしょう」(監修者より)

ケニアの難民キャンプで15年を過ごしたオマル・モハメドさんが、アメリカへ移住後に企画し出版されたノンフィクションのグラフィック・ノベル。子どもの目から見た難民キャンプの生活が、フルカラーで読みやすく描かれています。難民キャンプについて知り、考えるきっかけになることはもちろん、そこで生きる子どもたちの友情や兄弟の絆が描かれ、物語としても読み応えがある内容となっています。

そのほかの、難民となった人々を描くグラフィック・ノベル【大人向け】

歴史の痛み、誰かの記憶、そして今この瞬間に起きている戦争——。
そんな現実を描いたマンガやグラフィック・ノベルが、日本でも世界でも次々と生まれています。
胸に迫る作品があふれています。ぜひ、ページをめくってみてください。 記事内で紹介しきれなかったマンガがたくさんありますので、テーマ「マンガで考える平和と戦争」のページも合わせてご覧ください。

文・構成:掛川 晶子(絵本ナビ副編集長)

https://www.ehonnavi.net/pages/war-and-peace 今 子どもたちに伝えたい絵本と児童書約500冊を、年齢、舞台となった地域・戦争、テーマ別に紹介
掲載されている情報は公開当時のものです。
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