思わず「ゾクッ」とする!“ちいかわ界隈絵本”特集
可愛さの裏にブラックな哲学が潜む絵本
大人気の『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』。原作漫画を読んだことはございませんでしたが、世間の評判を聞き観てまいりました。 公開から1ヶ月経っておりましたが、グッズプレゼント第3弾のスタートと重なっていたためか、夜遅い回にも関わらず満員御礼でございました。全員大人でございます。さらに、かなり深い時間帯なのにご高齢の方も…。きっとお孫さんにグッズをプレゼントするために来られたのかと…。恐るべし「ちいかわ」人気でございます。
私の映画鑑賞後の感想はというと…。「絵はかわいくて、言葉づかいもやさしい。それなのに、ラストでゾクッとする……。なるほど、世間で言われていたのは、こういうことね…」と。そして、もうひとつ思ったことがございました。「こんな絵本、あったなあ…。子どもにはそのまま届いて、大人には別の意味で刺さる、これって絵本と似ているなあ」と。
そこで今回は、『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』を観て「似ているなぁ」と思った絵本。幼児はストレートに物語として楽しめる一方で、大人が読むと少し“ゾクッ”とする現実や哲学が潜んでいる絵本を「ちいかわ界隈絵本」と勝手に名付けさせていただいて、ご紹介したいと存じます。
かわいいけれどゾクッ…ジョン・クラッセンのぼうしシリーズ
最初に「こんな絵本あったな」と頭に思い浮かんだのが、『ちがうねん』(クレヨンハウス)と『どこいったん』(クレヨンハウス)でございます。
とぼけたなかにドキッとする結末が!
くまが大事なぼうしをさがしています。みんなに「どこいったん?」と聞くけれど、誰も知りません。あれ、でも、さっき! とぼけたなかにドキッとする結末が!人気絵本作家・長谷川義史さんが初めて翻訳に挑戦した大阪弁の絵本。
ケイト・グリーナウェイ賞とコールデコット賞をダブル受賞している世界的人気作家ジョン・クラッセンさまの作品でございます。翻訳は、こちらも大人気絵本作家の長谷川義史さまです。
どちらも、アーティスティックな画風とユーモラスでのんびりとした独特の世界観で物語が進み、それでいて最後にゾクッとさせられる絵本でございます。
とぼけた表情の動物たちに長谷川さまのこれまたとぼけた感じの大阪弁(長谷川節)が超効果的にハマっております。ちなみに、この『どこいったん』が、数々の絵本の翻訳をされている長谷川さまにとって初めて手がけた翻訳絵本でございます。
『どこいったん』より
『どこいったん』は2011年、『ちがうねん』は2012年に出版。『どこいったん』は、赤い帽子をなくしたクマが「ぼくのぼうし どこいったん?」とまわりの動物たちに聞いて回るお話で、『ちがうねん』は、小さな魚が大きな魚の帽子を盗んで逃げるお話でございます。『ちがうねん』は海中でのお話ということもあって、ちいかわと、より共通点があるかもしれません。どちらも、ほのぼのとしたユーモアとシュールさ、「ゾクッ」が楽しめる絵本でございます。
ちなみに、帽子3部作と言われていて、もう一冊、2016年に出版された『みつけてん』(クレヨンハウス)もございます。こちらは、2匹のカメが1つの帽子を見つけることから始まるお話でございます。前2作は奪い合いや嘘がテーマになっていたブラックユーモアでしたが、こちらは友情や分け合うことの葛藤が描かれております。
『はらぺこあおむし』だと思って読むと…?ショッキングあおむし絵本
そして、私が最もちいかわに似ているなぁと思った絵本がこちら。『くいしんぼうのあおむしくん』(福音館書店)でございます。
ある日まさおの帽子についていたのは、何でも食べる青虫くん。最初はごみを食べていたのですが、あんまりお腹がすいたので、家や船、町や国まで飲み込んでしまい、ついにはまさおのことまで……。
月刊絵本『こどものとも』から、2000年に単行本化された絵本でございます(月刊絵本初版は1975年に刊行)。あおむしのお話でございますが、『はらぺこあおむし』(偕成社)の「あおむしくん」だと思って読んだら、……な絵本でございます。読む前に少し覚悟が必要でございます。
お話はというと、くいしんぼうのあおむしくんがなんでも食べてしまうというストーリーでございます。
「えっ、まさか?そんなものまで食べちゃうの…」とお話は展開していきます。かなりショッキングでございます。ちいかわをご覧になった方は、「たしかに、ちいかわに似ている」と思うこと、間違いナッシングーでございます。ただしラストが、ちいかわと違うのでございます。ゾクッと来た後に、「やられた!そうくるか…」というオチになっております。ぜひ、こちらはご自身でご体験いただければと存じます。
映画『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』もそうですが、「食べる」という行為には、命を奪うことの矛盾や倫理が潜んでおります。私たちは、何か他の生き物の命を奪わなければ生きていけない。誰かの犠牲の上に、自分たちの暮らしが成り立っております。しかし、普段はそうした残酷な矛盾や罪悪感を、食肉加工や流通など、社会の仕組みの向こう側に隠したまま、何事もなかったかのように平穏に暮らしております。だからこそ、かわいいキャラクターたちの世界を通して、また、絵本を通して、普段は見ないようにしている「生きることの矛盾」を突きつけられると、大人は思わずドキッとするのかも…と、今回改めて考えてしまった次第でございます。
N田N昌さんの新刊絵本
読んだら最後、つい口ずさんじゃう!クセになる新感覚絵本
・「ぱかぱかぱかぱかぱかぱかアルパカ」 声に出して読みたくなる、不思議な言葉遊び動物園にようこそ!
・ちょこっと聞こえる次ページの言葉でクイズ遊びができます! ex.おらおら→オランウータン
・動物なりきりごっこで 大盛りあがり!
「ぱかぱかぱかぱかぱかぱかアルパカ」…。思わず声に出して読んでみたくなる、不思議なことば遊び動物園へようこそ。ページをめくればリズムがはずみ、子どもも大人もつい口ずさみたくなる、読みたくなる。ハムスターやアルマジロ、フラミンゴたちも、ゆかいなオノマトペにのってご来場をお待ちしています。読めば読むほどクセになる、口が勝手に動きだす新感覚絵本。親子で声をそろえれば、楽しさはさらに広がります。読み終わっても、気がつくと「ぱかぱかぱかぱか…」とつぶやいてしまう不思議な絵本です。
N田N昌さんの絵本
「じゃあね」「さよなら」
夕方、公園で遊んでいたこどもたちが家に帰っていきます。
「いいなぁ いいなぁ」
遊具のパンダは他の遊具が止めるのも聞かず、ぴょんぴょんと公園外に出ていってしまいました。
「ぼくもいっしょにかえっていい?」「みんなあそぶのやめてまでかえるんだからすごくたのしいことがあるんでしょ」と、一人のおとこのこを背中に乗せて、ぴょーんとその子の家へと向かいます。
「ただいまー」とおとこのこ。
(ただいまってなんだろう)。
パンダはおとこのこが入った家の窓から中をのぞいていると、ごはんをつくるママ。仕事から帰ったパパと三人で食卓を囲む楽しそうな姿が。パンダは急に公園に帰りたくなり・・・。
ふだん何気なくしている、大切なことに気づく心温まるお話。
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