【今週の今日の1冊】戦後76年。戦争の記憶をつなぎ、未来へつなげる作品紹介(絵本編)
8月2日~8月8日までの絵本「今日の1冊」をご紹介
2021年の今年は戦後76年。戦争体験者の高齢化がますます進んでいく中、次の世代に戦争の記憶と平和の大切さを伝えるために、毎年新しい作品がどんどん生み出されています。戦争を体験していない世代が、平和の尊さをどう自分事としてとらえ、考えていけるか、ということが問われているように思います。戦争を描く表現も方法も多様な作品が出ている近年、きっとそれぞれの心に響く1冊があることでしょう。戦争の惨禍と平和の大切さが伝わる作品を、8/2~8/15の2週にわたり、ご紹介します。
8月2日 かこさとしさんが体験した実話が、ついに刊行に
月曜日は『秋』
出版社からの内容紹介
かこさとし未発表作品、ついに刊行!
倉庫に眠っていた、かこさとし未発表作品は、コロナでステイホームの期間中、
加古総合研究所の鈴木万里さん(かこさとし長女)が作品整理中に見つけたものです。
この作品の最初の原稿執筆が1953年、なんと構想から実に68年、
半世紀以上を経て初めて世に出るオリジナル作品です。
テーマは、かこさんが終生、憎んでいた「戦争」です。
太平洋戦争のとき、高校生だったかこさんが体験した実話です。
戦争の悲惨さに怒り震えるかこさんが、いつまでも忘れないようにと
子どもたちに伝えようとした作品です。
平和を願うかこさんの強い思いが込められています。
子どもたちの未来を考えるすべての皆さんに、天国のかこさんからの贈り物です!
8月3日 「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」
読者の声より
小5で東京大空襲を体験した作者のノンフィクションです。
母から大空襲の話を聞いて育った塚本やすしさんが絵を添えています。
下町の、ごくごく普通の小学生の視点から、
戦争の気配、大人たちの様子、火の海を逃げ惑った実体験などが
リアルに語られます。
一瞬の判断で生死を分けた場面など、その真実が重いです。
人間が人間でなくなることがよくわかると思います。
だからこその、表題。
小学校高学年くらいから、その訴えを受け止めてほしいです。
(レイラさん 50代・ママ)
8月4日 あまんきみこさんが初めて語る戦時下・大連での物語
読者の声より
ささめやゆきさんの絵に惹かれて、手に取りました。
作者のあまんきみこさんの子供の頃の体験をもとに作られたお話とのこと。
自分がとても大事にしていたものと無理やり別れなければならないのは、子供にとってどんなにつらいものだったか。
ラストのページのご本人の祈りの言葉が、胸に迫りました。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子13歳、男の子11歳)
8月5日 大切なものを、戦争はどのように変えていくのだろう
木曜日は『なぜ戦争はよくないか』
出版社からの内容紹介
姿を巧みに隠し忍びよる戦争のこわさ、おそろしさを伝える絵本。深みのある文章と、力強い絵で静かに語りかけます。
読者の声より
なぜ戦争はよくないか
戦争を擬人法で表現しているのが、特徴あります。
そう、戦争はちっとも進歩しないし、反省もしない。
省みることなんてしない。
戦争が終わった後には何も残らない。
残らないどころか、戦争で巻き散らかされた汚染物が、目に見えないところにもそこらじゅうに残るだけ。
戦争の本質を、子供にもなんとなくわかる文章がすばらしいと思いました。
12歳の二男も、読み終わってちょっと首をかしげながら、でも戦争の愚かしさはわかったようでした。
(イザリウオさん 40代・ママ 男の子15歳、男の子12歳)
8月6日 家族のアルバム写真が語りかけてくる多くのこと
金曜日は『ヒロシマ 消えたかぞく』
出版社からの内容紹介
原爆投下前、戦争中であっても、広島の町には笑顔にあふれた家族の日々の暮らしがありました。散髪屋さんである鈴木六郎さん一家の6人家族も、少しの不安はあったかもしれませんが、毎日笑顔で楽しくくらしていました。お父さんの鈴木六郎さんは、カメラが趣味。たくさんの家族写真を撮りためていました。
あの日。1945年8月6日。
一発の原子爆弾がヒロシマのまちに落ちました。
六郎さん一家は全滅しました。
長男の英昭くん(12歳)と長女公子ちゃん(9歳)は、通っていた小学校で被爆。英昭くんは公子ちゃんをおんぶして、治療所があった御幸橋まで逃げました。衰弱した公子ちゃんを「あとで迎えに来るからね」と治療所にあずけ、英昭くんは親戚の家へ避難しましたが、高熱を出し、数日後に亡くなります。公子ちゃんの行方はわからなくなりました。次男まもるくん(3歳)と次女昭子ちゃん(1歳)は、六郎さんの散髪屋さんの焼け跡から白骨で見つかりました。お父さんの六郎さん(43歳)は、救護所でなくなりました。救護所の名簿には「重傷後死亡」と記録されていました。家族がみんな亡くなってしまったことを知ったお母さんのフジエさん(33歳)は、井戸に身を投げて亡くなりました。
たった1発の原爆が、六郎さん一家を消し去ってしまいました。
この本を開くことで、原爆の残酷さ、戦争のむごさを、読む人の身に引き寄せて考えるきっかけとなったら、という願いを込めてつくりました。また、愛情あふれるすばらしい家族写真の数々から、幸せにくらす人間の何気ない日常こそが大事であることに気づかされます。それは、幸せな平和を作っていくのは、私たち自身であると訴えかけているようにも思えます。
家族で平和を考えるために、最適の写真絵本です。
読者の声より
写真絵本です。
撮影者、鈴木六郎さんが撮った家族の写真集です。
家族の写真を撮るのが好きだったらしい六郎さん。カメラの向こうでは子どもたちや奥さんがいつも笑っています。
この写真を保管していたのは、親戚の鈴木恒昭さん(恒昭さんのお父さんと六郎さんがきょうだい)、この作品を監修したのはフリーの編集者指田和さんでした。
前半はひたすら幸せそうな家族の写真。
原爆投下の写真が真ん中あたりにあって、
後半はこの家族の素敵な写真とともに、どこで被爆して、どうやって亡くなられたかが説明がありました。
ぜひ、後書きまで読んでほしいです。
後書きで写真を保管していた恒昭さんは、いとこの英昭君とは前日も遊んでいて、その日分かれるとき、「さよなら」といえなかったことが心に残っていると、ありました。
原爆が投下されたことで、このような家族がたくさんいらっしゃったのだと思うと、胸が詰まります。
(てんぐざるさん 50代・ママ 女の子20歳)
8月7日 へいわって、しあわせって、どんなことだろう?
土曜日は『日・中・韓平和絵本 へいわって どんなこと?』
出版社からの内容紹介
へいわってどんなこと? きっとね、へいわってこんなこと 。いろいろな事から平和を考えます。日本の絵本作家が中国と韓国に呼びかけ、三か国12人の絵本作家の協力で実現した平和を訴える絵本シリーズ第一作。
読者の声より
平和ってどんなことなんだろう。
戦争をしないこと。
爆弾を落とさないこと。
作者は平和に対する考え方を、今の子どもたちの視点で掘り下げていきます。
戦争を知らない世代にとって、平和が身近すぎるようです。
こんなことも平和なんじゃないか?
そんな世界に私達は生活しているのです。
みんなが勉強できることも、歌えることも、食べ物に困らないことも平和なのでしょう。
そう考えると、貧困や差別も平和と相対する事柄なのでしょう。
作者は、様々なイマジネーションの中で、平和を維持するためには何が必要か。
子どもたち身近なところからも発想します。
悪いことをしたら謝ること。
嫌なことは嫌だといえること。
様々なことが平和につながると思ったら、平和という言葉が他人事ではなくなってきます。
見開き毎の絵に思いを込めて、浜田さんのこの絵本に込めるのは、子どもたちへの願いと教育でしょうか。
(ヒラP21さん 50代・パパ)
8月8日 くらべてみると、みえてくるのは……
日曜日は『へいわとせんそう』
出版社からの内容紹介
くらべてみると、みえてくる。「へいわのボク」と「せんそうのボク」では、なにが変わるのだろう。同じ人や物や場所を見開きごとにくらべると、平和と戦争のちがいがみえてくる。これまでになかった平和絵本!
<本作に寄せて>
戦争が終わって平和になるんじゃない。
平和な毎日に戦争が侵入してくるんだ。 谷川 俊太郎
読者の声より
今この時代にも戦争をしている国々があって、日本は平和を保っているけれど、それがいつ崩れるか分からないからこそ、未来を生きる子どもたちに訴えかけていかないと…と思います。
へいわの国もせんそうの国も、同じ朝日が昇って生まれてくる赤ちゃんに差はありません。5歳の娘はこれを読んで、「ここはへいわ?」って何回も聞いてきました。
5歳にとっては「せんそうはいやだ」「せんそうはこわい」という気持ちを持てただけでも読んだ価値はあったと思います。その年齢に応じた考え方ができるのでどの年代にもおすすめしたいと思います。
(ouchijikanさん 40代・ママ 女の子11歳、女の子5歳)
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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