【今週の今日の1冊】「聴く」を感じる、育てる絵本
10月4日~10月10日までの絵本「今日の1冊」をご紹介
毎日いろいろな音や声や情報が溢れていますね。意識してきこうとしなくても、きこえてくる音、きこえてしまうたくさんの情報。今週は「きく」について考えてみたくなり、漢字の「聞く」と「聴く」の違いを調べてみたところ、「聞く」は「ただ単に「きく」場合に使い、注意深く(身を入れて)あるいは進んで耳を傾ける場合には「聴く」を使います」(NHK放送文化研究所HPより)という記述を見つけました。
このうち注意深く進んで耳を傾ける「聴く」を意識することが今とても大切なように感じます。自然の音を聴く、相手の話を聴く、子どもの話を聴く、ニュースを(注意深く)聴く‥‥‥。
今週は「聞く」よりも「聴く」を意識できる本、体験できる本を集めてみました。本からきこえてくる豊かな音の美しさを体験してみて下さいね。
10月4日 「はじまりは、しーんと、しずか。」
月曜日は『うるさく、しずかに、ひそひそと 音がきこえてくる絵本』
みどころ
「はじまりは、しーんと、しずか。」
テーマは「音」。
音とは何なのか。どんな音があるのか。
音のかさなりを楽しむこともあれば、騒音のように聞くに堪えない音があり。
私たちの体や生活の中から生まれてくる音があれば、自然の音もある。
次々に登場する音の種類を、絵で解説する科学絵本。そう聞くと、どんなに難しい絵本になっているだろうと想像してしまうのですが、心配はページを開いた瞬間に吹き飛びます。
「なんて美しい、なんて刺激的な絵本!」
音の振動、大きさ、強さ。音色、かたち、感覚。
グラフィックの手法を使い、それら一つ一つが丁寧に賑やかに表現されていき、見たことのない世界が目の前に広がっていきます。
音が見えると感じる子もいるでしょうし、画面から音が聞こえてくる子もいるでしょう。わからないけど美しい、どれだけ眺めていても飽きることがない、という人もいるでしょう。
さらに「聴く」というテーマに移っていき、概念が広がっていきます。
音の捉え方、大きさや高さの計り方、
聞こえる音、聞こえない音。
音を仕事にする人たち、音を使うコミュニケーション。
そして……音がきこえない世界まで。
ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)とボローニャ・ラガッツィ賞のダブル受賞をしているこの作品。作者はウクライナを拠点に、絵本を中心に夫妻で活動をするアーティスト、ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ。彼らがいかに絵本づくりを楽しんでいるか、隅々まで見れば見るほど伝わってきます。
「すっかり音をけして、耳をすまし……」
読み終わってみれば、世界の受けとめ方がかわっている。これはやっぱり絵本なんだと実感するのです。
さあ、声に出して読もうか。一人でじっくり静かに堪能するか。
読むたびに、きっと新たな発見があるはずですよ。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
音のしくみが見えてくる!?蛍光色で描かれた、オシャレでカラフルで繊細な絵は、アート感にあふれていますね。楽器、人間の体、自然、いろいろなところから音が聞こえます。そして、聞こえない音も大切な音です。こなれた訳文が読みやすかったです。NEXTプラチナブックにふさわしい、子どもから大人まで楽しめる絵本でした。
(どくだみ茶さん 40代・ママ 女の子19歳)
10月5日 そっと耳を傾けると、心に広がる豊かな世界
読者の声より
絵は動物や自然のシルエットのみ、言葉もとてもシンプル。
なのにページをめくるたびに聴こえてくる音。
木の葉が風で揺れる音、呼吸の音、さざなみ…
静かな時間に読むと心も静かに落ち着いていきそうです。
たくさんの音を体感してきた大人のほうが楽しめるのかもしれません。
子どもには「どんな音が聴こえる?」と聞きながら読んで行くのもあいいかも。
うちの0歳児には早いけど、
この本を読むだけで音を思い浮かべられるような
豊かな体験をさせてあげたいと思います。
(ゆべりいぬさん 20代・ママ 男の子0歳)
10月6日 ずきんをかぶってみると、鳥や動物の声が‥‥‥
読者の声より
昔話が二話収録されています。
「うりこひめとあまんじゃく」、息子は「あまんじゃく」が何なのか今一つわからなかったようです。妖怪のようなものと理解していいのでしょうか。それともざしき童子のようなもの?
「ききみみずきん」はいかにも孝行息子といった感じで優しいお話だなあと思いました。
自然の音が聞こえるずきんというのはいいですね。
初山さんの絵は静かですが幻想的でもあり、お話にマッチしていてよかったです。
岩波子どもの本シリーズはいい作品が多いですね。すべて読んでみたいです。
(はなびやさん 40代・ママ 男の子8歳)
10月07日 モモにできたこと、それはあいての話をきくこと。
木曜日は『モモ / 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語』
みどころ
赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人間が平等に持っている24時間。自分の時間を自由に使えるのは当たり前? でも、もし、あなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら……?
どこからともなくやって来て、町の円形劇場の廃墟に住みついたモモ。みすぼらしい服装に、ぼさぼさの巻き毛をした小さな女の子モモは、豊かな想像力と、特別な力を持っていました。モモに話を聞いてもらうと、ふしぎなことに悩みがたちどころに解決してしまうのです。
ある日、町に灰色の男たちが現われてから、すべてが変わりはじめます。「時間貯蓄銀行」からやって来た彼らの目的は、人間の時間を盗むこと。人々は時間を節約するため、せかせかと生活をするようになり、人生を楽しむことを忘れてしまいます。節約した時間は盗まれているとも知らず……。異変に気づいたモモは、みんなに注意をしようとしますが、灰色の男たちに狙われるはめになります。
不気味で恐ろしい灰色の男たちに、たったひとりで立ち向かうモモ。彼女をひとりぼっちにしようとする時間泥棒たちのずるがしこい作戦の数々! いったいどうなっちゃうの? と、予想できない展開にハラハラドキドキ、目が離せません。
(続きを読む>>>)
読者の声より
人々から時間を騙し取る灰色の男たち。
その恐ろしい組織に立ち向かう女の子モモの、勇気溢れる物語です。
時にはくじけそうになりながらも、仲間のことを思い懸命に戦おうとする姿に元気をもらうことができます。
目に見えないけれど大切なものが世の中にはたくさんあります。
『時間』もまたそのひとつ。
時間を奪われた人々は、常に何かに追い立てられ、がむしゃらになって働きます。
その姿は、物語のなかのシーンなのに、なぜか現実を見ているような不思議な感覚に襲われました。
私たちの今の社会でも同じような場面に出くわすことが、実際あるのです。
自分たちがどのように時間を使っているか、どのように使うことが幸せなのか、改めて見つめなおすきっかけになると思います。
(こりえ♪さん 30代・ママ 女の子2歳)
10月8日 どんな音がきこえる?
金曜日は『きこえる?きこえるよ』
みどころ
聴覚、味覚、触覚、嗅覚、視覚、感覚(感情)、
6つの感覚を絵本にするという画期的なシリーズ「The Book of Sense」。
4冊目にあたる本作品のテーマは「音」。
さて、一体どんな風に表現してくれるのでしょう・・・期待して開いてみると。
「文字がない!」
画面の中には、主人公の男の子を取り巻く世界が生き生きと描かれています。
朝起きて、遊んで、食べて、散歩して・・・。
そして静かに耳を澄ましていると、聞こえてくるのです。
様々な音が。その音は、繰り返し絵本を開く度にクリアになっていき・・・。
私達は記憶の中の「音」を聞いているのだな、と気づかされます。
すると今度は、人の聞いている「音」が気になってくる。
もしかして、全然違う「音」を聞いているのかも!
特に我が子の「音」を聞いてみたい!
絵本の中の男の子と同じ位、ワクワクしてきてしまうのです。
「くんくん、いいにおい」でも様々な匂いを表現してくれた、たしろちさとさん。
新作が出る度に、その世界は広がっているようです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
文字のない絵本です。
ページを開いて見た瞬間にぱっと頭の中に
音が聞こえてくるような、感覚に訴えかけられる本です。
朝起きた時の声、楽器、料理の音、食べるときの音・・・
その場面をみて、息子がどの音を拾うのか、
私も楽しみながら一緒にページをめくりました。
息子はみんなで食事をしている時の音が楽しいようで
繰り返し繰り返しその場面を再現します。
ページをめくりながら気付いたのですが、
こちらが意識的に音に着目していないと
息子は音ではなく、その物を指さして発見を楽しんでいる様子。
普段、私と絵本を読むときにそういった読み方を
していた事に気付かされました。
他の物語でも言えることですが、
絵から聞き逃してしまいそうな音たち。
本の中で耳をすませる大切さを教わった気がします。
このシリーズは奥が深いですね。
(空色のかわうそさん 30代・ママ 男の子1歳)
10月9日 きのうの あまだれに みみをすます……
読者の声より
谷川俊太郎さんの 詩です
絵がいい! 柳生弦一郎さんのさまざまな 人の顔を見ているだけで嬉しくなりました
詩を声を出して読んでいたら 長くて とぎれなくて 世界がどんどん広がっていくのです
いろんな 感性が吹き出てきて
自分の目で見て 聞いて 感じて
いろんな世界を旅できるような気持ちになりました
すごいな~
この詩集
いろんな人が いる そして 自分がいる
☆みみをすます
☆えをかく
☆ぼく
☆あなた
☆そのおとこ
☆じゅうにっき
6つのタイトルがあります
じゆうにっきはおもしろかったです
六月から始まり五月まで
そうだいな 世界観を感じる 詩でした!
(にぎりすしさん 60代・その他の方 )
10月10日 虫の音をきいてみよう♪
日曜日は『ボードブック だんまりこおろぎ』
出版社からの内容紹介
生まれたばかりのこおろぎ坊やは、一所懸命に羽をこすって音を出そうとしますが。ラストのこおろぎの音色が美しいボードブック版!
読者の声より
タイトルの下の、「虫の音がきこえる本」と」いうサブタイトルに、『なるほど~、エリック・カールの世界だもんな~。絵で音を表現するのか~』と、急いで開きました。
ぽかぽかあたたかいある日
ぽっこり!
こおろぎぼうやが うまれました
おおきなこおろぎが お誕生を祝って、羽をこすって挨拶を。
こおろぎぼうやも挨拶したくて、小さな羽をこしこししても…。
この後、たくさんの虫たちに会いますが、こおろぎぼうやは挨拶が上手にできません。
出てくる虫たちがとっても綺麗です。
じっと見つめていると、特徴がよく出ていて見入ってしまいます。
本当に、虫の音が聞こえてきそうな絵です。
後半出てくるうすみどりの蚊のページは、息をのみました。
ここのこおろぎぼうやの思うことも深い。
最後のページでビックリ。
あわてて、表紙を見直して、一人「うっかりものだな~、わたしって」とにやりとしてしまいました。
虫の音の聞こえてくるこの季節、お子さんと楽しんでください。
(アダム&デヴさん 50代・ママ 男の子11歳)
いかがでしたか。
本の中からさまざまな音がきこえてきたでしょうか。
静かに耳を傾けると、きこえてくるのは実は自分の心の声だったりもするかもしれませんね。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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