【今週の今日の1冊】あふれるピンクが美しい! 満開の桜を愛でる絵本
2022年3月21日から3月27日までの絵本「今日の1冊」をご紹介
少しずつ嬉しい桜の開花ニュースが届きはじめましたが、今週はさらに全国あちこちで桜の開花ニュースを聞くことができるでしょうか。
3月27日(日)は「さくらの日」。日本さくらの会が1992年に制定したとのことですが、由来は、3×9(さくら)=27の語呂合せと、七十二候のひとつ「桜始開」(さくらはじめてひらく)が重なる時期であることからだそう。
今週はページいっぱいに広がるピンク色が美しい「桜満開の絵本」を特集します。またさくらについて詳しく知ることができる絵本も合わせておすすめします。
3月21日 だんだんつぼみがほころんで……
月曜日は『さくらがさくと』
みどころ
川沿いの桜並木は駅に向かう道。
すたすた カツカツ チョコチョコ タタタッ
まだコートが必要なくらい風が冷たい3月半ばの月曜日。
急ぎ足のおねえさんに、のろのろ歩く小学生に、走る高校生。
いつもの光景です。
桜の木に目を留める人はいません。
でもその間、桜の木は春に向けて準備をはじめているのです。
小さな芽がふくらんできみどりに、その芽からピンク色が顔をのぞかせて。
だんだんつぼみがほころんで、5枚の薄い花びらが……ひらいた!
すると、最初に目を向けるのは鳥たちです。
そして道行く人も足をとめ、桜まつりの準備も始まります。
夜になれば灯りに照らされ幻想的な風景になり、週末は大勢の人が訪れて。
女の子がねころがって、言います。
「わあ ピンクいろの てんじょうだ」
誰もが少しずつ心が浮き立ってくる3月半ばから4月半ばの約一ヶ月。横に長く広がった大きな画面を贅沢に使い、
桜の木に訪れるドラマティックな変化を丁寧に描き出しながら、日常を過ごす人々と自然との関わり合いの物語も味わうことができます。なんと言っても、「科学絵本」の枠におさまりきらない美しさが魅力的。本編だけでなく、見返しや装丁など全体を通して使われている上品な「さくら色」も素敵です。そして、4月の半ばを過ぎると待っている光景は……?
春が近づく頃、毎年開きたくなる定番絵本の誕生ですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
3月22日 著者がじっくり観察して描いた、サクラの1年
火曜日は『サクラ はるなつあきふゆ』(2022年2月の新刊)
出版社からの内容紹介
サクラの木を、1年間じっくり観察してみましょう。身近にあって、知っているつもりの植物でも、よーく観察してみると、いろんな発見があります。身近に1本の木があれば、それをよく見るだけで、季節はこんなに豊かになる??。自然を愛する著者が長い時間をかけて描いた、サクラの観察の記録。
3月23日 わたしがさく日は わたしがきめる
水曜日は『さくららら』
みどころ
五月に咲く桜って、どんな印象でしょうか。
遅い?
ようやく?
いいえ、そんなことはないのです。
絵本を手にして、まず、目に飛び込んでくるのは、桜の写真の表紙。
一瞬にして、お花見の気分です。
北海道の桜の木の開花の様子を、桜のモノローグ(わたし)で語る写真絵本です。
本州で桜の見ごろを迎えるころ、わたしはまだ雪の中。
ようやっと、五月、ゆっくりゆっくりと咲く準備を始めるのです。
わたしがさく日は わたしがきめる
おそくたって これがわたし
ちいさくたって これがわたし
その美しさ、誇らしさ、ため息モノです。
同時に、その姿は、新しい生活を始める読者へのエールにもなります。
不安もあるけれど、ゆっくりじっくり、マイペースで自分らしくあることの素晴らしさ。
小学生くらいから大人まで、それぞれ受け取ることができると思います。
北海道出身の升井純子さんは小学校教諭の経験があり、『空打ちブルース』にて第51回講談社児童文学新人賞を受賞。
桜へのまなざしにも、子どもたちへの思いが織り込まれているように感じます。
写真の小寺卓矢さんは、『森のいのち』などの森林をフィールドにした写真絵本で有名ですが、子どもたちへの「写真絵本作りワークショップ」や音楽家や芸術家とのコラボレーション公演などでも活躍されています。
納得のいく桜の撮影に、7年かかったという今作。
選び抜かれた写真だからこその輝きを堪能してください。
(中村康子 子どもの本コーディネーター)
3月24日 さくら村で起こる春夏秋冬の楽しい出来事♪
木曜日は『さくら村は大さわぎ』
みどころ
目に飛び込んでくるやわらかなピンク色に、こんもりとした緑の木々と青い鳥。
表紙を目にしただけで春がやってきたように感じられる、なんて素敵な1冊なのでしょう。
ここは、さくらでいっぱいのさくら村。
さくら村では、子どもが生まれたら、さくらの苗木を1本植える約束があるのだそうで、子どものまだ小さなさくらの木から、もう大人になった人の大きなさくらの木、さらにはひいおじいちゃんやひいひいおばあちゃんのもっと大きなさくらまで、村じゅうがさくら、さくら。さくらでいっぱいなんです。
そんなさくら村に住む、小学三年生のハナと、小学五年生の兄タロウ。もちろん二人のさくらの木もあります。近所に住むお友達のさくらもあります。さくら村では、毎日いろんなことが起きます。とんでもないことや、笑っちゃうことや、それはもうたくさん。こちらは、さくら村で春、夏、秋、冬に起きたちょっとした事件のお話です。
たとえば、自転車のかごに入れておいたお兄ちゃんのヘルメットに起きたびっくりな事件、「売り家」と書かれた「赤いれんがの家」に新しい誰かが越してきた時のこと、村のひとみんなが好きな「カワセミじいちゃん」の話、みんなで「ホタル狩り」に行った時の話‥‥‥。
どのお話の中にも、何かを楽しみに待ったり、村に住む人たちとの温かい交流があったり、ハナをはじめとした子どもたちのわくわくする気持ちがいっぱい詰まっています。読んでいるとそのわくわくがどんどん伝わってくるのですが、同時にびっくりすることもたくさんあって、大いに楽しませてくれます。
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3月25日 だれかさんと桜の木の話とは?
金曜日は『おひさまえんのさくらのき』
出版社からの内容紹介
入園式から帰ってきたまこちゃんは、「明日から行きたくない」と言います。おばあちゃんは「昔、幼稚園に行きたくなかった女の子」のお話をして…。
読者の声より
「春を感じる本」を探していて、タイトルと表紙の桜の木で選びました。
入園式から帰ってきて早々「明日から行かない」と泣いているまこちゃんにおばあちゃんが、昔まこちゃんのように行かないと泣いていた“誰かさん”と桜の木の話をしてくれました。
おばあちゃんの柔らかい語り方と絵がとても合っていて、まこちゃんの不安がだんだんとれていく様子が感じられました。
入園前のお子さんと読むのにぴったりの本だと思いますが、我が家はまもなく年長になる息子と読みました。「園で泣いている年少さんに優しくしてあげてね。」と伝えることもできますよ☆
(101ちゃんさん 40代・ママ 男の子5歳)
3月26日 さくらこさんのごきげんを直すには……!?
土曜日は『さくらもちのさくらこさん』
出版社からの内容紹介
さくらもちのさくらこさんは、なぜかごきげんななめ。おやつたちが声をかけても、しらんぷり。さくらこさんのごきげんを直すには、いったいどうしたらよいのでしょう? たべもの絵本シリーズ、初のヒロイン登場!
3月27日 今日は「さくらの日」。さくらを詳しく知ろう!
日曜日は『もっと知りたい さくらの世界(1) さくらってどんな木?』
出版社からの内容紹介
日本には何種類のさくらがあるの?
一番身近な「そめいよしの」の歴史って?
さくらの木の春夏秋冬はどうなっているの?
さくらの木に集まる生き物たちを見てみよう!
春になるたび、だれもが気になるさくらの話題が満載のシリーズです。
「もっと知りたい さくらの世界」シリーズ、続巻もおすすめ
いかがでしたか。春の慌ただしさとともにあっという間に過ぎていくような桜の時期ですが、本物の桜と一緒に絵本の中の桜もたっぷりと楽しんでみて下さいね。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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