【子どもの読書Q&A】小学2年生ママからのお悩み 本に興味がない子に、読書の面白さを伝えるには?
絵本ナビ児童書担当の秋山です。
小学生のお子さんを持つお母さん、お父さん、子どもの読書のお悩みいろいろ抱えていませんか?
お子さんが小さいうちは一緒に絵本を読んだり選んでいたけれど、成長するにつれ、どんな本をどんな風に手渡したら良いのか迷うことはないですか?
そこで、小学生の読書のお悩みについて、親子の皆さんと一緒にあれこれ考えてみよう始まった「子どもの読書Q&A」コーナー。
3回目のお悩みは、小学2年生のママからのこんな質問です。
とにかく全く本に興味を示さない!という小学2年生男子のお母さんからのお悩み
Q. 2人の息子の子育て中です。長男は小さい頃から本が好きでどんどん読んでいるのですが、小学2年生の次男は全く本に興味を示しません。今後、文章を読むことが苦にならないように、どうにか本に触れさせたいのですが、なにか良い方法はないでしょうか?
(40代ママ 小学2年生男の子)
絵本ナビ児童書担当 秋山:
子どもが本を読まない、全く興味を示さないという悩みは本当に多くの親御さんが抱える共通の悩みですよね。今回の相談者様のように兄弟がいて、片方は自然と本を読むけれど、もう1人は全く読まない、と兄弟姉妹によって差がある場合についてもよく耳にします。自分ひとりではなかなか本に向かうのが難しい子に対しては、自分で読むようになるまでとにかく親御さんが読み続ける、という方法が大きな解決策となります。
本に興味を示さない子に、興味を持たせるには?
ポイント① まず、お子さんが本に興味を示さない原因から対策を考えてみましょう。
お子さんが本に興味を示さない理由は大きく分けると以下のような理由が主ではないでしょうか。
- 面白い本がない
- 字を読むのがめんどくさい
- 字を読むのが苦手
- 文字だけだとお話の世界を想像することが難しい
このうち「面白い本がない」というのは、まだ本の面白さに気づけていない、面白さに到達する前に、文字を読むということの壁にぶつかっているという状態です。ですので、「読む」のではなく「聞く」ということを繰り返して、まずは本の面白さにお子さん自身が気づくまで読んであげて下さい。「本って面白いものなんだ」という気づきから、「それなら自分でも読んでみようかな」というやる気に繋がるまで、辛抱強く大人が読み続けていくことが、本に興味を持たせるのに有効な方法です。
ポイント② 親御さんが読んであげる時には、ロングセラーで面白いと定評のある本を選びましょう。
では、早速読んでみるところから始めてみようかなと考えたら、次に大切なのは読んであげる本選びです。ここでつまらないお話を選んでしまうと、最終目標である「本って面白いものなんだ、自分でも読んでみたい」という気持ちに辿り着くまでに、より多くの時間がかかってしまいます。ではどんな本を選べば良いのでしょう。ポイントは以下の3つです。
- 長く読み継がれていて、定評のある作品を選びましょう(判断に迷う時には、絵本ナビの評価やレビューを参考にしたり、絵本クラブのコース作品を参考にしてみて下さいね)
- 親御さんご自身が小さな頃に読んで面白かった記憶のある作品を選びましょう(読み始める前に、これはお母さん(お父さん)の小さい頃に好きでよく読んでいた本だよ、と一言伝えるだけで、お子さんの興味が増すことと思います)
- お子さんの様子を見ながら段階を経て、易しい作品から難しい作品へと難易度をあげていきましょう(下記で紹介する作品にレベルをつけておきますので、ご参考に!)
ポイント③すぐには結果は出ません。長いスパンでトライして!
言うのは簡単ですが、お子さんに本を読んであげるというのは、忙しい毎日の中でその時間を作るのも大変ですし、読む方もなかなか根気がいることと思います。けれどもこれを中学生から始めようと思ったらそれこそかなり難しくなってくることなので、まだ読んでもらうことに抵抗なく、ママやパパに読んでもらうことそれ自体を嬉しいと思う小学生のうちに、ぜひ頑張って時間を作って読んであげることをお勧めします。
また、本を面白いと思い、自分で読みたいとお子さんが自ら思うようになるのには、それなりの時間が必要です。3年ぐらいは様子を見ていただきたいというのが本当のところですが、そんなに長く頑張れない、という方には、少なくとも1年は続けてみてほしいと思います。
おまけの裏ワザポイント!
もしご家庭で読んであげる時間がどうしてもうまく取れず、またなかなかお子さんが集中して聞くのが難しいという場合には、担任の先生に教室での読み聞かせを提案・お願いするという裏ワザもあります。
小学校勤務の経験上、担任の先生の影響力は年齢が低ければ低いほど絶大で、ふだん本を読まない子でも、担任の先生の読み聞かせはよく聞き、少しでも先生が何か本をおすすめしたら、その本をめがけて休み時間には図書室に走ってくるという光景が何度も見られました。
もしご家庭での読み聞かせに行き詰ってしまった時には、担任の先生に相談してみたり、ここでおすすめしている本をクラスで読んでほしいと持っていく!という方法もアリではないかと思います。(余談ですが、私の母はよく担任の先生に、本や市販の朗読テープなどを渡し、それが授業で使われるということがありました。今になって、そのことをよく思い出します。)
子どもが夢中になる!読み聞かせにおすすめの本をレベル別にご紹介
レベル1 読みはじめにおすすめの易しい本
絵がたくさん入っていながら、文章が縦書きなので、読み物への橋渡しにぴったり!
森の郵便局のはりねずみさんは、お弁当のサンドイッチの間に、手紙の切れっぱしをみつけてびっくり。いったい誰の手紙だったのでしょう。
お話が8つ入っているので、少しずつ読み進められます
小さなチムと、のっぽのターク。小さなチムは大きくなりたくて高い家を、反対に小さくなりたいタークは、低くて長い家をそれぞれ町はずれの空き地に建てます。同じ空き地に建てたので、チムとタークの家は隣どうし。引越しの日に窓越しに出会った2人は、毎日おしゃべりするうちに友だちになり、ある日外で会おうと話します。しかし相手に対してせい高のっぽだとウソをついてしまったチムと、体が小さいと言ってしまったターク。会えば本当の体の大きさがばれてしまいます。そこで2人がとった行動とは!?
仲良しチムとタークのお話が8つ。春、夏、秋、クリスマス、節分…と、友だちと一緒に過ごす季節は、楽しさに満ちて毎日がきらきらしています。2人がお互いを思いやる気持ちもお話のあちこちから伝わってきて、何とも優しく、読んでいると心がウキウキ、ほかほかしてきます。
そんな優しいお話に挿絵で一層温かみを添えてくれているのは、『どんくまさんシリーズ』や『どうぞのいす』でおなじみの柿本幸造さん。本の最初のページについている贅沢なカラーの口絵は、最初にながめてから読むと、あの絵はこのお話の場面だったんだ!と読んでいる途中で楽しい発見があったり、読み終わった後にながめると、お話の余韻が戻ってきたりして、お話をさらに味わい深いものにしてくれます。
どのお話も絵本から読みものへの架け橋にぴったりの長さ。絵本と同じように読んであげるのもおすすめですが、1人で読んでもどんどん読めてしまうはず。チムとタークに会いたくなったら、何度でもくり返し読んで楽しんで下さいね。
1~10番地に住む個性的なハツカネズミのお話シリーズ。どのネズミさんのお話から読んでもOK!
絵本の次の段階に何を読んだら良いか迷ったら、まずこちらの「チュウチュウ通りのなかまたち」シリーズ(全10巻)をおすすめします。
舞台は、ネコイラン町のチュウチュウ通り。1番地から10番地まで、それぞれ個性的なハツカネズミが住んでいます。1巻目は1番地に住むおじいさんネズミ:ゴインキョのお話、2巻目は2番地に住む古道具屋さん:クツカタッポのお話……10巻目は10番地に住む郵便屋さん:スタンプのお話と、10匹のハツカネズミを主人公にした楽しい事件のお話が10続きます。
1巻目のゴインキョは、お宝をどっさり持っているおじいさんネズミ。ネズミのお宝といったら……?!そう、それは金色にかがやくチーズ!ゴインキョは、そのチーズを眺めたり、においをかいだりするのが大好きで、でもひとりじめせずに友だちにごちそうすることも好きで、ゴインキョ家のチーズ・パーティは、チュウチュウ通りで有名でした。
しかしある日、ゴインキョの元に「きんきゅう」と書かれた、どろぼうへの警告の手紙が舞い込みます。宝物のチーズがあぶない?そしてゴインキョの身にも危険が!?ハラハラドキドキの展開に最後まで目が離せません。お話の中には他の巻に出てくるハツカネズミたちも登場しますのでこちらにも注目して下さいね。
作者は、オーストラリアで最優秀児童図書賞をたびたび受賞されているエミリー・ロッダさん。日本でも子どもたちに大人気の「デルトラ・クエスト」シリーズや、「フェアリー・レルム」シリーズ、「リンの谷のローワン」シリーズなどを手がけられている人気作家さんです。その楽しいお話に丁寧で温かみのある絵を描かれているのは、かわいらしい動物たちの絵に定評のあるたしろちさとさん。絵がたっぷり入っているので、文字の多い読み物にまだ慣れていない子どもたちでも無理なく読むことができますよ。
実際に子どもたちにすすめる時のおすすめの方法は、まず見開きのネコイラン町チュウチュウ通りの地図を見せて町の様子を伝えた後に、全巻の目次の後についている登場ネズミ紹介のページで、1~10番地の個性的なハツカネズミを紹介します。
そして「1巻から読んでも、好きなネズミさんのお話から読んでもいいんだよ、どれから読みたい?」と聞くと、たちまち子どもたちはお気に入りのネズミさんを見つけて読む気満々に……。
ぜひ、ご家庭や学校で、10匹のネズミたちのさまざまな奮闘やドラマや感動が詰まったチュウチュウ通りの物語を、子どもたちにどんどんすすめてみて下さいね!
レベル2 少し読む習慣がついてきたら・・・
お話が気に入ったら、同じ「たんた」が主人公のこちらも合わせてどうぞ。
50年以上読み継がれている名作。懐かしいと感じられるママもいるのでは?
お話は短いですが、ドキドキしたり、きつねの子に共感したり、心が動かされます
きつねの子が、丸木橋のたもとできいろいばけつを見つけました…。子ぎつねのばけつへの想いを優しく温かく描く。
レベル3 次は、もっと長いお話にも挑戦してみよう
なぞなぞを楽しみながら読もう
なぞなぞ遊びの楽しさがたっぷり詰まったお話です。はじめてなぞなぞを知る子どもたちにも、すでになぞなぞが大好きな子どもたちにも、おすすめの1冊です。1年生が一人で読むには文章が多いので、はじめはぜひ読んであげて下さいね。女の子がなぞなぞでどんな風にオオカミに立ち向かったのかに注目してみて下さい。
もともとは素話で楽しまれていた作品ということで、読み聞かせにもぴったりです
ドドさん夫婦の家の壁と壁のすき間に住む、おかあさんねずみと、四ひきの子ねずみ。そのうち四ひき目は、「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。
どうしてこんな名前がついたかって?
それはね…このヤカちゃん、とてつもなく声が大きかったからなんです。
たとえばこんな風。おかあさんねずみが、ドドさん夫婦に存在を気づかれないよう「けっして音をたててはいけない」と注意している時も「うん、わかったよ、おかあさん」と答える声のなんと大きいこと!他にもおかあさんねずみの注意に対して、全部うんと大きな声で答えるヤカちゃんのお返事の繰り返しが何とも愉快でたまりません。でもお返事のしかたから、ヤカちゃんがとっても素直でまっすぐで良い子だということが伝わってきて、どんどんヤカちゃんを応援したくなってしまいます。けれどもやっぱりその大きな声のせいで、ドドさん夫婦の家にねずみがいることがばれてしまって…。ここからドドさん夫婦のねずみ退治作戦が始まります。ドドさん夫婦とヤカちゃんの対決の結末やいかに…?
繰り返しの楽しさや、ヤカちゃんの声の大きさ具合、ドドさん夫婦とヤカちゃんとのやりとり、ここぞという時に役に立つおかあさんねずみの歌など、注目したい楽しみ満載のこちらの読み物は、一度読んだら子ども達のお気に入りになるに違いありません。『なぞなぞのすきな女の子』でおなじみの大社玲子さんのさし絵もユーモラスで楽しく、特にころころ変わるヤカちゃんの表情と目の動きはみどころたっぷりです。
アメリカ生まれの詩人・翻訳家であるリチャード・ウィルバーさんによって書かれたこちらのお話は、アメリカでは1963年に出版された後、ストーリーテリングによって多くの子どもたちに親しまれているのだそうです。ぜひ日本でも、さまざまな場所で大人から子ども達へ声に出して読んであげると、一層楽しい世界が増すことでしょう。
さて、ヤカちゃんの大きな声のところはどんな風に読みましょうか。
低学年の子どもの気持ちがたっぷり詰まっていて、ホッとしたり励まされます
体は大きいけれど弱虫のまさやと、体は小さいけれどしっかり者でけんかにも強いあきよ。まさやはあきよとの関わりを通して大きく成長します。1970年に刊行されてから40年以上たった今でも全く内容が古くならず、等身大の子どもの悩みや成長がしっかり描かれているところが大きな魅力です。ぜひ親子で一緒に出会ってほしい1冊です。
レベル4 より深い物語世界へ
本格的な冒険物語の入口に!
初めての冒険物語との出会いにおすすめの1冊。読み始めたらワクワクドキドキの連続で、あっという間にお話にひきこまれます。低学年ぐらいだと1人で読むにはまだ難しいので、ぜひ大人の方が読んで聞かせてあげて下さいね。エルマーが冒険に出かける時にリュックにつめこむ道具や、見開きの地図がお話の楽しさを盛り上げてくれます。
「エルマーのぼうけん」シリーズは、3巻まで。続けて読もう!
子ども時代に1度は出会いたい「王さま」と言えば・・・
読み始めたらたちまち夢中に。さあ、大どろぼうホッツェンプロッツと対決だ!
盗まれたコーヒーひきを取り戻すため、大どろぼうホッツェンプロッツに、少年カスパールとゼッペルがあれこれ作戦をたて挑みます。さらに悪い魔法使いも登場し、どちらが勝つのか最後までハラハラドキドキ、一気に引き込まれます。本当に面白いと思える本との出会いのために、ぜひ小学生のうちに出会わせたい傑作です。
ホッツェンプロッツとの対決はまだまだ続きます
いかがでしたか?
読み物(物語)は長さがあるので、読む方の根気も必要ですが、しかし物語をじっくりお子さんに読んであげる時間というのも過ぎてみればきっと貴重な時間になるはず。
以前勤務していた小学校では、すでに1人でも本が読めるようになった六年生でも本を読んであげる習慣を続けている、という親御さんがいらっしゃいました。実際に読んでみると分かるのですが、長く読み継がれているお話というのは、子どもの本といいながら大人をも夢中にさせる力があります。どうぞお子さんと一緒に物語世界に入り込む、幸せなひとときを大いに楽しんでみて下さいね。
子どもの読書のお悩みに答えたのは・・・
秋山朋恵
絵本ナビ児童書担当
書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎなにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。
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