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子どもの視点でストン!とわかる絵本 〜てらしま家の絵本棚から〜

【6か月】【2歳】【小学生】子どもの心をググッ! とつかんだ絵本3冊

絵本記事を書いたり、絵本について研究の日々を送る、絵本研究家のてらしまちはるさん。その活動の原点には、小さな頃にお母様から読み聞かせてもらったたくさんの絵本があるそうです。子ども時代の一風変わった、けれど本当はどこにでもある絵本体験を、当時の視点で語ってもらいます。「絵本の楽しさって何?」「読み聞かせているとき、子どもは何を思っているの?」そんな大人の疑問を解く、意外なヒントが満載です!

1. 小学生をとりこにする絵探し絵本『ミッケ!』

今年も、ひと月足らずでおしまいです。早いものですね。

 

街でクリスマスソングを耳にしたら、年末に盛り上がれる絵本をこの連載でも紹介したくなってきました。それで思いついたのが『ミッケ!』です。

 

もうご存じですよね。絵探しをたっぷり楽しむ、あの絵本です。

『ミッケ!1』

ミッケ!1

「みずでっぽうをミッケ!」「カウボーイハットもミッケ!」おもちゃばこにかくれている、いろんなものをみんなで探しっこ。楽しい写真絵本。
世界中で大人気! ミッケシリーズ

【読んであげるなら】(対象年齢表記なし)
【私が昔読んだ年齢(連載をあわせて)】8歳〜15歳、いまもたまに

見た目がクリスマスカラーというだけが、思い出した理由じゃないんです(それもあるけど)。

 

子どもと「ミッケ!」をすると、ホントに、ホントに、盛り上がるんですから!

 

絵本のたくさんある場所で、小学生くらいの子に「何か読んであげるから、持ってきてごらん」というと、何人かに一人は必ずこのシリーズを小脇に抱えて戻ってくるんですよ。読み始めたら、大人が疲れてもず〜っと「ミッケ!」しています。それくらい、みんな大好き。

 

絵本ナビ「みんなの声」にも、そんな様子を伝えるコメントがありましたよ。

子どもが取り合って探す本
3歳と5歳の姪に。探すのに必死になるあまり、二人が本をひっぱり合いするほど夢中になって探していました。
(ユウコフランさん/30代ママ/0歳女児、投稿2011年 ※原文から抜粋、要約)

この子たちの気持ち、私もよくわかります。なんたって私は、この絵本が日本で発売された時に小学生だったんですから。

 

8歳のある日、突然目の前にあらわれた『ミッケ!』は、それは魅力的な絵本でした。

 

画面いっぱいに広がるおもちゃの中から、お目当ての一つを見つける遊び。一緒に読む子とは、毎回、どっちが早く見つけられるかを競ったものです。

 

絵本棚からひっぱり出しては三姉妹でのぞきこみましたし、家に友達がやってくれば、その子と開きました。どこに何があるか、全部覚えているくらい、何度も何度も「ミッケ!」したなあ。

大人になってから、この楽しみを思い出させてくれたのは、Aちゃんという女の子でした。

 

当時、小学校低学年だった彼女。「ねえねえ、これ読もうよ」といいながら、私のもとに持ってきてくれて。

 

その時、私は大切な絵本の勉強会に参加している最中でしたが、『ミッケ!』をやろうと子どもが誘ってくれるなんて、またとない機会です。二つ返事でページを開きました。

 

一冊を時間をかけて探したあとも、シリーズ続刊を開き直して、また最初から……。今からもう10年以上も前のこと、2人でへとへとになるまで遊んだのがいい思い出です。

 

結局、遊んでいた時間分は勉強会の内容を聞き逃すことに。でも、子どもが身をもって「面白い」と伝えてくれることが、何より私の栄養になりました。絵本をいちばんわかっているのは、子どもですから。

 

Aちゃん、元気かな。もうすっかり、お姉さんだろうなあ。

2. 通りすがりの2歳男児と盛り上がった『かにこちゃん』

いつもは、子ども時代の私が読んでもらったものを紹介するこの連載。

 

Aちゃんを思い出したら、ほかの子たちのことも話したくなってきたので、今月は趣向を変えて「大人になった私が、だれかと読んで盛り上がったもの」を紹介しようと思います。

 

2冊めはつい先日、2歳ごろの男の子と近所の図書館で盛り上がった『かにこちゃん』です。

 

男の子とは初対面で、会ったのもその時だけ。いってみれば通りすがりの関係ですが、ちょっとした経緯からこの絵本を2人で開くことになりました。

かにこちゃん

かにこちゃん

赤をテーマにした絵本で、赤いカニを主人公に、朝日がのぼり夕日が沈むまでの海辺の一日をダイナミックに表現しています。
リズミカルで想像力をかきたてる豊かな文章にあわせて、絵本のなかをあちこちと動き回る、かわいいかにこちゃん。かにこちゃんに打ち寄せる波しぶきや、燃えるような赤い夕日など、魅力あふれる絵でかにこちゃんの一日を描きます。

乳幼児向け「くもんのはじめてであうえほんシリーズ」第1弾として、岸田衿子・堀内誠一の優れた絵本を復刊しました。
1967年に世界出版社より刊行された『からーぶっくふろーら かにこちゃん』を大幅に加筆・修正したものです。1987年より公文式教室の読書教材に収録され、以来、多くの子どもたちに喜ばれているお話です。

前置きはひとまず置いといて、読んだときの様子を。

 

−−私が「かぁにぃこ、ちゃん」と、ちょっとおおげさにタイトルを読み上げると、それまで曇っていた彼の目の奥に、きらりと光が生まれましたのがわかりました。

 

これは、いけるぞ。好奇心をくすぐられた私は、語りかけるような文章を声に出して反応を見つつ、ところどころで「かにこちゃん、どこにいる?」とその子に話しかけます。

 

最初の返事は、はずんだ声で「ここっ」。次の返事は、ページを指差しながらふり返って「ここ、いるよ!」。その次は、私に体をあずけて歓声をあげながら「かにこちゃん、ここぉ!!」。

 

絵本が進むにつれて、男の子の声は大きくなり、表情はどんどんきらめきを増します。最後には、図書館じゃ迷惑になりかねないと、こっちがなだめるくらいになっていました−−。

 

この作品は、カニの子ののどかな一日を描いています。ストーリーに大きな起伏はないのですが、きわめてドラマチックな一冊。色づかいが、構図が、しずかに劇的です。

 

本の息づかいを、男の子はみごとに読み取って、この興奮にいたったのでした。

 

絵本が子どもに、ぴったりはまった瞬間だったと思います。

ちょっとした経緯と先ほどいいましたが、ここに至るには、少しやりとりがありまして。

 

そもそも私は、その日、子どもに絵本を聞かせるために図書館に行ったんじゃないんです(笑)。仕事に必要な赤ちゃん絵本を、閲覧テーブルで読んでいただけでした。

 

その隣に、別の絵本をかかえた彼が一人でふらりときて、着席したのです。

 

平日の昼間、空いているのになぜ横に? そして、保護者はどこ??

 

次々と疑問のわきあがるなか、職業病でしょう、彼と彼の手にした絵本とがミスマッチなのが、私にはいちばん気になりました。

 

その本を、私は初めて見ました。消防車の物語のようで、翻訳絵本でした。ぱっと見たところ、小学校入学以降なら自分で読めなくもないだろうけど、この子にはいろんな理由でフィットしないんじゃないかなあ……という感じです。

 

彼は、難しい顔でそれを机に開いて、表情も変えずにじーっと見つめています。

 

なんとなく、ですが、彼は声をかけられるのを待っている気がしました。私の隣にわざわざ来たのも、そのためかもしれません。

 

私は「その本、おもしろい?」と彼に話しかけ、結局一緒に読むことになりました。

 

けれど、せっかく読みはじめたのに、途中で完全に飽きちゃったんですね。いやもう、選書ミスが原因なのは明らかなんですが……。

 

ストーリーに出てくる要素の多さや、翻訳版ならではの「知ってるはずなのに微妙に違う風景」をのみくだすのに、彼はまだ幼すぎたんだと思います。

 

たくさんの本の海から、きっとインスピレーションだけでつかんできたんだもの。無理もありません。でもね、行動の結果じゃなく、過程にあった気持ちをくみとりたいなと、私は強く思いました。

 

まだ知らない、おもしろい本を見てみたいという気持ち。それが彼に、書架の間を歩かせ、一冊を手に取らせて、テーブルまで運ばせたんでしょうから。

 

よっしゃ! モヤモヤした今の気分、一緒にほどいてあげるよ。

 

私は、仕事用に積み上げていた赤ちゃん絵本から『かにこちゃん』を引っぱり出しました。

『かにこちゃん』を選ぶとき、私はこんなことを考えました。

 

(2歳くらいに見えるこの子は、そぶりからして、絵本経験は豊富だろうな。)

 

幼児が自分で選んでテーブルにつくという行動は、絵本がおもしろいと知らなければ、あり得ないからです。つまり、いつもだれかに読んでもらっているということ。そして、

 

(消防車の絵本を気に入ったということは、消防車が好きか、赤が気になったか……。)

 

この年頃だと、消防車に目がない子ってたくさんいますよね。それかもしれないと一瞬思いましたが、もし該当するのであれば、一心不乱に本にかじりつくはず。一緒に読んだときの飽き方からすると、そっちではないように思えます。

 

もしかして、赤が気になったのかな。消防車の絵本は、表紙も裏表紙も深めの赤で染められて、目を引くものでした。なんか、これがポイントな気がするぞ。

 

この予想をたよりに、選んでみることにしました。絵本に慣れた2歳児の心をつかむ、赤の印象的な絵本。条件にあてはまりそうなのが『かにこちゃん』でした。

 

実際に読んでみたら、期待をこえた反応。曇った顔がみるみる晴れて、めでたしめでたし、というのが話の全貌でした。

 

ちなみに、一緒に来ていたのはお母さんで、上階で本を探していたそうですよ。しばらくして迎えに来られたので、こちらも一件落着です。

3. 6か月の新太くんと盛り上がった『もけら もけら』

最後の3冊めは、友人宅の6か月の赤ちゃん、新太(あらた)くんと盛り上がった『もけら もけら』です。

 

これは、抽象的な絵とオノマトペが印象に残る絵本。友人夫婦の家に、この本をプレゼントにして遊びに行ったときのことです。

もけらもけら

天才ジャズ・ピアニストとモダンアートの鬼才のコンビによる美しく面白いもう一つの宇宙。言葉はリズムとなって、つぎつぎに展開する絵の世界を行進し、私たちの心を解き放ちます。

もけらもけら

 

包みを開いて取り出すと、新太くんの顔と、お母さんの顔が、パアッと同時に明るくなりました。あ、うれしい、と私は思いました。

 

お母さんは私の手から絵本を受け取って「あーちゃん、ほら、も、け、ら、も、け、ら、だって」と、新太くんをのぞきこみます。「も、け、ら、も、け、ら」という音のリズムにあわせて、新太くんの体をやさしく指でつっついています。

 

新太くんは「あー!」と愉快そうに笑って、絵本とお母さんの顔を交互に見ていました。

 

この二人もきっと、いつもおもしろがって、いろんな絵本を読んでいるんでしょう。そのことが、私にはかなりうれしかったのです。

赤ちゃんは基本的に、初めて絵本を見ても喜ばないんですよね。「なんだろう、これ?」となったり、ほかに気がそれたりするのが普通です。

 

絵本を見て赤ちゃんの気分が上がるという状況が生まれるには、やっぱり、それまでの積み重ねがあります。まわりの大人が日ごろから何度も絵本を出してきては、おもしろそうに話しかけながら読むという時間のくりかえしです。

 

それを経て、赤ちゃんは「四角くてぺらぺらしたコレは、なんだかわからないけど、おもしろいんだな」とはじめて認識しはじめます。

 

1回のプレゼントでこの反応を見られた私は、いうなればオイシイトコ取りしただけです。

 

この2人なら、私がわざわざ読まなくたっていいや。いつものやり方に任せようっと。そう思って、このお母さんが新太くんに読む横で、ついでに私もちゃっかりまぜてもらうことにしました。だれかに読んでもらうのって、大人になってもうれしいですからね。

 

しずかな印象のページ、ユーモラスな動きのあるページと、お母さんは声色や声の大きさを変えて読んでいきます。そして、新太くんに触れたり、顔をのぞきこんで自分の表情を大きく変えたり。

 

それに反応して、新太くんはいろんな声をあげ、体を動かします。

 

このお母さんの声は、つるんとして、でこぼこして、ずしんと、ふわっと、あったかい。ゆかいな音楽に思えました。

 

「ずばらば」という最後の言葉を読み終えて、絵本が閉じられると、私まで(もっかい読んで!)と思わずにいられませんでした。

実は、この絵本をこの家族にと思った理由のひとつに、文章を書いた人が音楽家だったことがありました。ジャズピアニストの山下洋輔さんが筆をとっています。

 

新太くん一家はお父さんが音楽家ということもあって、家のなかがここちよい多様な音で、いつも満たされています。そしてこのお母さんは、昔から野生的な直感力にたけた人でもありました。

 

この大人たちなら、絵本の言葉にこめられた音の感覚を、上手に使って遊んでくれるんじゃないかと考えたのでした。結果はさっき見たとおり、私まで心底楽しいひとときになりました。

4. 【まとめ】読んでほしいの、ためしに10回だけ

『ミッケ!』『かにこちゃん』『もけら もけら』と、3冊の絵本を紹介しました。クリスマスや年末年始に、子どもたちと読んでみるのはいかがですか?

 

そうそう、ここで紹介した3つのエピソードは、どれも私の「とっておきの成功例」だというのを、つけ加えておきます。

 

エピソード内の子どもの反応は、日ごろから絵本に親しんでいる子が相手のときに見られやすいもの。だから、当たり前ではありますが、同じ絵本でトライしたからといって、どの子からも同じ反応が見られるわけではありません。(すみません、終わりぎわにネガティブで。もう少しお付き合いくださいね)。

 

「じゃあ、読んだってムダじゃない」となるのが自然ですが、そこをちょっとこらえてほしいの……!

 

もし期待した反応がなくても、手にした絵本をあなたが心の底から「おもしろい!」と思うなら、ためしに10回だけ、読みつづけてみてくれませんか。同じ1冊を10回です。

 

そうすると、その子にとっての「絵本を読んでもらう日常」が、そこからはじまることになります。

 

子ども相手に10回開けば、なにかの反応はかならず見られるはず。声をあげてよろこぶだけが反応ではありません。画面をじーっと見つめたり、「この絵本はいやだ」とそっぽを向くのだって、反応です。

 

声にならない子どものしぐさを、大人は読み取って、つぎの球を投げつづけてあげられたらいいんだと思っています。

 

さて、今年2月にスタートした本連載。みなさんに読んでもらって、年末を迎えることができました。ありがとうございます。新年も子どもの視点で、絵本の「へぇ〜」をほりだしますので、よろしくお願いします。よいお年をお迎えくださいね!

てらしま ちはる

1983年名古屋市生まれ。絵本研究家、フリーライター。雑誌やウェブ媒体で絵本関連記事の執筆や選書をするかたわら、東京学芸大学大学院で戦後日本の絵本と絵本関連ワークショップについて研究している。『ボローニャてくてく通信』代表。女子美術大学ほかで特別講師も。日本児童文芸家協会正会員。http://terashimachiharu.com/

写真:©渡邊晃子

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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