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“母と娘でおもしろかった児童文庫について語り合ってみました”ーおしゃべり読書のすすめ

冬休みにおすすめ! 母と娘で語る、岩波少年文庫 その1

岩波少年文庫シリーズ、おすすめは? 母と小6娘でおしゃべりしました!

わが家では、小6長女と本についてよくおしゃべりします。年長から就学時、長めのおはなし絵本を1人読みするようになるのと同時並行で、『いやいやえん』『エルマーのぼうけん』など幼年童話をたくさん読んだ娘は、小学3、4年生頃から児童書の文庫に手が伸びるようになりました。児童書の文庫には、母の私も読んだことがある、昔から読み継がれる作品や、大人になった今も手にとりたくなる名作がそろっています。

 

本好きな小学生にするためには、親も一緒に楽しむのが一番! というわけで、「母と娘でおもしろかった本について語り合ってみました」の連載企画です。まずは岩波少年文庫シリーズの中で気軽に手にとりやすいものからスタート。冬の読書の参考にしてくださいね。

 

娘:やったー、冬休み! 学校もないし、寒い朝は布団から出たくなくなるなー。

この間読んだ『大力のワーニャ』の、3人兄弟の末っ子ワーニャは、なまけもので、7年間も「パンやきかまど」の上に寝転がったまま動こうとしないんだよね。昔話では、兄弟の下の子が気だてがよくて働き者というのがよくあるパターンだけどさ、ワーニャはぜんぜん働かないんだよ。でも、なまけている間にものすごい力持ちになって、力を蓄えていたんだな、なまけていた時間も意味があったんだと思った(笑)。挿絵も迫力があって好き。

映画のように楽しめる痛快冒険物語!

岩波少年文庫 大力のワーニャ

三人兄弟の末っ子でなまけもののワーニャに与えられた試練とは,七年間もかまどの上で寝てくらすこと.ワーニャはたいへんな力を身につけ,とちゅうで人びとを苦しめる怪物や魔女とたたかいながら,白い山々のかなたの国にあるという,皇帝のかんむりを目指して旅をします.名手プロイスラーがロシアを舞台に描く,痛快冒険物語.

母:布団から出てこないのにちょうどいい言い訳ができそうだね(笑)。

挿絵は堀内誠一さんだよ。絵本では『ぐるんぱのようちえん』『たろうのおでかけ』(共に、福音館書店)が有名だけど、お母さんは堀内誠一さんの挿絵が好きなの。光と闇の感じが、勢いのある白黒の線で、印象深く描かれていると思わない? かまどに乗った魔女のババヤガーや、龍の子フォーマとの剣の戦いの場面は、ちょっとおそろしい雰囲気でドキドキするね。ロシアの宮殿やお姫さまの衣装も素敵だなあ。

作者のプロイスラーは、『大どろぼうホッツェンプロッツ』(偕成社)を書いた人なんだけど知ってた?

娘:あ、本当だ! 同じプロイスラーだね。「ホッツェンプロッツ」は笑っちゃうおもしろさで、「ワーニャ」は昔話みたいに楽しめたかな。旅に出てからはおはなしがぐいぐい進んでいく、映画みたいな感じ。読みやすかった。

母:ロシアの民話がもとになっているといえば『森は生きている』はどう? 読んでみた? 毎年冬になると、演劇やミュージカルがあちこちで上演されるでしょう。その元になっている演劇の台本なんだよ。「戯曲」っていうの。

読み継がれる児童劇の名作

岩波少年文庫 森は生きている

気まぐれな女王が真冬に4月の花マツユキソウをほしいといいだし、国じゅう大さわぎ、継母の言いつけで吹雪の森に分け入った少女は、12の月の精たちに出会います。有名な児童劇。

娘:ああ、お母さんにすすめられて読んだんだ。第一幕、第一場とか書いてあるし、セリフが並んでいるから読みにくいかなーと思ったけど、読みはじめたら気にならなくなった。セリフをずっと読んでいくから、目の前で本当にしゃべっているみたいだったよ。雪の森に出てくる動物たちとか、親切な兵士とか、14歳の女王さまのわがままと周囲の人の会話がおもしろかった。

母:真冬の森に、大きな焚き火があわれて、12人の月の精たちがいるというのが幻想的じゃない? 春の月の精は若者、冬の月の精はおじいさん。彼らが杖を一振りすると、花が咲いたり、イチゴが実ったり……。この民話はいろんなバージョンで翻訳も出ているし、日本でも昔から繰り返し上演されていて、有名だから、おじいちゃんやおばあちゃんも知っているかもよ。お正月に会ったとき「知ってる?」って聞いてみたらいいかも。

関連書籍:『森は生きている』のもとになった昔ばなしの絵本

娘:岩波少年文庫の中で3・4年生の頃に好きだったのが、やかまし村シリーズ! リンドグレーンの本は、ファンタジーっぽい長編物語とか、他にも好きな本はいろいろあるけど、「やかまし村」は自分と同じふつうの子がたくさん出てきてすごく楽しそうだった。

子どもたちの暮らしをいきいきと描いたリンドグレーンの人気代表作

岩波少年文庫 やかまし村の子どもたち

小さい小さいやかまし村には,家は3軒きり,子どもは6人しかいません.6人はいっしょに遊んだり,女の子組と男の子組で張りあったり,いつもにぎやかです.スウェーデンのいなかの豊かな自然と,いきいきとした子どもたちのくらしを描いた,リンドグレーンの人気代表作.はじめての少年文庫化です.【解説 菱木晃子】

岩波少年文庫 やかまし村の春・夏・秋・冬

スウェーデンの田舎の小さな「やかまし村」――6人の子どもたちは,厳しい冬でも,クリスマスに大みそかと,楽しみがいっぱい.やがて春.湖に水の精を見にいきますが…….夏休みには,ゆかいな宝さがし.秋には大好きなおじいさんの誕生日.四季折々を背景に,子どもたちの暮らしをいきいきと描きます.[解説・高楼方子]

岩波少年文庫 やかまし村はいつもにぎやか

やかまし村の子どもたちは,楽しいことを見つける天才.リーサが小ヒツジを学校へ連れていったり,みんなでオッレの歯をぬく作戦をたてたり,宝箱をめぐって男の子と女の子がかけひきをしたりと,陽気な話がいっぱい.村じゅうで祝うスウェーデンの夏至の祭りも印象的です.「やかまし村」三部作の3冊目.【解説・長谷川摂子】

母:3冊の中でも、『やかまし村の春・夏・秋・冬』は、クリスマスのためにショウガ入りのクッキーを焼く場面からはじまるのよね。イブの夜に友だちの家にプレゼントを投げ入れに行くところや、モミの木の飾り付け、夜ごはんを囲む場面が好きだったなあ。お母さんも子どもの頃に読んで、「クリスマスって、じつにすばらしいものです。クリスマスが、年に1回しかないなんて、じっさい残念です」というリーサの言葉に激しく同意していたのよ(笑)。

娘:せめて半年に1回でもいいからクリスマスがもっとあってほしい! 『やかまし村の春・夏・秋・冬』で、冬のリーサたちのそり遊びも好き。男の子チーム「大蛇」と女の子チーム「黄金のバラ」が競争して、「かわいそうだぜ 『黄金のバラ』 じきに沈没しちまうぞ!」とどなっていた男のほうが雪だまりにつっこんで、リーサが「沈没しちまったのは、こっちじゃなくて『大蛇』のほうでした」と言うの。言葉の言い回しみたいなのもおもしろい(笑)。雪が降るのが待ち遠しくなるなー。

母:文庫は大塚勇三さん訳、おなじみのイロン・ヴィークランドさんの挿絵だけど、最近、ハードカバーで石井登志子さんの新訳が出たのよ。リンドグレーンの初期作品に挿絵を描いていたイングリッド・ヴァン・ニイマンの挿絵で、デザインもおしゃれでかわいいよ。

娘:へえー。読んでみたいな。

痛快なストーリーの本筋より、前段の「なまけもの期間」をおもしろがったり、滑稽なやりとりや、ちょっと古くさい言い回しを楽しんだりと、こまかいところに目が行く娘の話しぶりに「そんなところを見ているのか……」とこちらもびっくり。そんな楽しみ方も娘の個性なのかもしれません。

「森は生きている」はソビエト連邦時代に書かれた戯曲ですが、日本では1950年代の初演から、60年以上も上演されつづけているそう。親子二世代、祖父母三世代で観劇する機会に恵まれれば、作品への愛着も深まりそうですね。

今回は、世界でたくさんの子どもたちに愛されてきたリンドグレーンの作品の中から、自伝的要素が強いと言われる「やかまし村」シリーズをご紹介しました。現在、映画『リンドグレーン』も公開中(2019年12月公開)なので、この機会に大人も手にとってみてくださいね。

文・構成:大和田佳世(絵本ナビライター)

編集:掛川晶子(絵本ナビ編集部)

掲載されている情報は公開当時のものです。
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