絵本ナビスタイル トップ  >  絵本・本・よみきかせ   >   “母と娘でおもしろかった児童文庫について語り合ってみました”ーおしゃべり読書のすすめ   >   冬におすすめ! 冒険ファンタジー。母と娘で語る、岩波少年文庫 その3
“母と娘でおもしろかった児童文庫について語り合ってみました”ーおしゃべり読書のすすめ

冬におすすめ! 冒険ファンタジー。母と娘で語る、岩波少年文庫 その3

岩波少年文庫の冒険ファンタジー、おすすめは?

「母と娘でおもしろかった本について語り合ってみました」の連載企画。その1その2につづき、今回は岩波少年文庫の中から、わくわくする冒険ファンタジーを3つご紹介します。

わが家では、小6の長女と本についてよくおしゃべりします。年長から就学時、長めのおはなし絵本を1人読みするようになるのと同時並行で、『いやいやえん』などの幼年童話をたくさん読んだ娘は、小学3、4年生頃から児童書の文庫に手が伸びるようになりました。児童書の文庫シリーズには、長年読み継がれてきた名作や、大人も手にとりたくなる作品が多数入っています。


中でも、冒険ファンタジーは年齢関係なく楽しめるエンターテインメント! 2020年は岩波少年文庫創刊70年の記念イヤー。キャッチフレーズは「冒険してる?」です。本好きな小学生にするためには、親も一緒に楽しむのが一番! おうち読書の参考にしてくださいね。

母:この間『冒険者たち』読んでたでしょう、どうだった?

岩波少年文庫 44 冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は,船で夢見が島に向いました.しかし,白毛のノロイがひきいる,どうもうなイタチの群れに追いつめられ,海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます.

娘:ミュージカルを見たことあったからストーリーは何となく知ってた。冬休み、テレビで『GAMBA ガンバと仲間たち』(2015年公開の映画)がやっていたけど、ちょうどつけたらもう終わりかけで、「本を読めば? うちにあるよ」とお母さんに言われたんだよね。

「どこ? ちょうだい」と言って持ってきてもらって、ソファで本を開いたらそのまま一気に読んじゃったんだよ。読んでいる間、弟に話しかけられても返事しなかったし、ドキドキしながら最後まで読み終わったときの達成感がすごかった!

母:読んでる間、ソファからまったく動かなかったもんね(笑)。ずぶぬれになったり、のどがひりひりしたり、島の砂浜を走ったり、ノロイ(白毛のイタチ)を目の前にしてすくんだり……。ガンバたちの気持ちになって、細部をリアルに肌で感じられるのが、物語を読むおもしろさなんだろうなー。動物画家・薮内正幸さんの挿絵もすごいね。ネズミが酒飲んだり踊ったり、寝そべってしゃべるしぐさが人間みたいなリアリティで、なおかつ、体つきや毛の一本一本までネズミそのものだから!

娘:うん、絵がすごいなと思った。スキーキャンプに行く前日の夜だったけど、本を閉じた後、あれ?スキーキャンプはもう終わったんだっけ……?って、日にちの感覚が一瞬わからなくなった。まだ海の波がまわりで揺れているような感じがするの。

母:大人になるとそこまで物語に入り込めないんだよ。子どもの特権だよ、うらやましいなあ。 ガンバが出てくる物語は、あと2つあるんだよ。シマリスのグリックが主人公の『グリックの冒険』が先に書かれたおはなしで、そのとき脇役だったガンバに人気が出て書かれたのが『冒険者たち』なんだって。さらに『ガンバとカワウソの冒険』もあるよ。

娘:『冒険者たち』を前に読もうとしたとき、なかなか話に入っていけなかったけど、今回はびっくりするくらいすーっと入れた。そういうことってあるんだね。今ならほかの本も読んでみたいな。

娘:お母さんが小学生のとき、何度も読んだファンタジーの本って、ある?

母:真っ先に思いつくのはミヒャエル・エンデの『モモ』や『はてしない物語』だけど、それより前に出会って、はじめてファンタジーのおもしろさに目覚めたのが「ナルニア国ものがたり」シリーズ(全7巻)。近くの図書館にハードカバーがそろってて、何回借りたかわからないくらい、繰り返し読んだなあ。

娘:あぁ、あのシリーズ! 『ライオンと魔女』を読んでから、大きな両開きの洋服ダンスがあると、奥がどこか別の世界につながっていないか手で触ってみたくなる(笑)。

岩波少年文庫 ナルニア国ものがたり 1 ライオンと魔女

4人のきょうだいが,ある日大きな衣装だんすに入ると,雪のふりつもる別世界へとつづいていました.このナルニア国で,子どもたちは正義のライオンとともに悪い魔女の軍と戦います.

母:コートをかきわけてタンスの奥のほうに入ってみると、いつの間にか雪でおおわれた真っ白な森の中だったんだもんね。しかも真夜中で……向こうからやってきたのは腰から上は人間だけど、腰から下はヤギそっくりのフォーン! 神話に出てくるような伝説の生きものや、木や水の精、知的で思慮深い動物たちがいっぱい出てきて、人間以外の存在感がすごい。

娘:白い魔女に「永遠の冬」に閉じ込められたナルニアを解き放つのが、洋服ダンスをくぐってきた4人きょうだいと、偉大なライオンのアスラン! 『ライオンと魔女』はおもしろかったけど、『カスピアン王子のつのぶえ』『朝びらき丸 東の海へ』とつづけて読んで、『銀のいす』の途中でストップしてる……。

母:お母さんは『銀のいす』と『馬と少年』も大好き。でもストーリーの盛り上がりがはっきりしている『ライオンと魔女』が読みやすいのもわかるな。このシリーズは1950年代にイギリスで出版されているんだけど、今も世界中で売れている大ベストセラーなんだよ。映画化もされているし、英語圏で“Narnia”と言ったら話が通じる人がきっといるよ。

娘:えっ、そんなに有名なんだ。たしかに世界中で読めるような物語の舞台設定だもんね。それがファンタジーということなのかな。世界で同じ物語を読んでる人たちがいるっておもしろいね。

娘:さっきエンデの話してたけど、『ジム・ボタンの機関車大旅行』と『ジム・ボタンと13人の海賊』はお母さんより先に読んだよ! 3、4年生くらいだったかな。

母:そうそう。読んだことないと言ったら「おもしろいから、お母さんもお父さんも読んだほうがいいよ」って言ってたね(笑)。

ジム・ボタンの機関車大旅行

小さな島国フクラム国に、赤んぼうの入った小包みが届きました。赤んぼうは成長して、機関車の大すきなジム・ボタンとなり、親友の機関士ルーカスとともに、ふとっちょ機関車エマにのって冒険の旅へ。

ジム・ボタンと13人の海賊

ジム・ボタンは,見かけ巨人のトゥー・トゥーさんをフクラム国に迎えるため,ふたたび機関士ルーカスとともに,冒険の旅に出ます.船が難破する〈オソロシノ海〉の秘密をとき,砂漠や山脈を機関車で乗りこえ,ついに宿敵,海賊〈荒くれ13〉と対決する二人.そこでジムは自分の出生の秘密を知るのでした…….

娘:どうして子どものとき読まなかったの?

母:お母さんが育った地方の、公民館の図書室にあったエンデの本は、『モモ』『はてしない物語』だけだったの。本当は、エンデのデビュー作で「ドイツ児童図書賞」や「国際アンデルセン賞」を受賞したのがこの「ジム・ボタン」なんだけどね。日本で最初に翻訳出版されたのは『モモ』(1976年日本で刊行)で、次が『はてしない物語』(1982年刊)。「ジム・ボタン」の2冊はその後(1986年刊)だから、図書室に届く頃には、中学生になっちゃってて、読まずに大人になったんだと思う。

娘:じゃあ私はエンデが書いた順なんだね、「ジム・ボタン」が最初だもの。『モモ』と『はてしない物語』もすごくおもしろかったけど、「ジム・ボタン」がいちばん読みやすいし、とにかく私のイメージは、「かわいい」だったな。 主人公のジムがふつうの明るい男の子だからかなあ。モモも同じくらいの年頃かもしれないけど、あまりしゃべらないし、不思議なところがある子だから。

母:お母さんはね、ふとっちょの機関車エマがかわいくて気に入った! 陸も走るし、船にもなる。空も飛べるでしょう。ジムみたいに、信頼する大人の友だち(ルーカス)とこんな機関車に乗って旅ができたら楽しいだろうなあ。

娘:いきなり魔法とかで飛ぶわけじゃなく、こんなふうにしたら機関車も水に浮かぶとか、空を飛べるという具体的な解説がわくわくした。あとね、王様の名前が「十二時十五分前王」とか、「ナーニおばさん」「フクラム国」とか、名前とその意味のつじつまが合ってるのが楽しい(笑)。

母:なぞかけや言葉遊びみたいのが随所にあって、おはなしの推進力になるのがエンデらしいね。遠くから見ると巨大だけど近づくとふつうの「見かけ巨人」とか、竜を殺さず打ち負かすと変質するとか、哲学的なエンデらしさがいっぱいあってなおかつ最後はハッピーエンド。なるほど、これがデビュー作だったのか!!と感動しちゃった。

娘:最近『魔法のカクテル』っていう文庫を読んでたよね。あれもエンデ?

母:そうだよ。『モモ』や『はてしない物語』とも違うし、「ジム・ボタン」とも違う雰囲気。主な登場人物はたった4人で、しかもネコとカラスと、魔術師と魔女(笑)。大晦日の一日が描かれるんだけど、また言葉がめちゃくちゃ風刺が効いてて、味わいが違っておもしろかったよ。

娘:1人の作家がいろんなものを書くんだね。いつか読んでみる!

岩波少年文庫について3回に分けて語ってきた、母娘トーク第1弾、いかがでしたでしょうか。母から娘にすすめることもあれば、娘からおしえてもらう本もあり。どんどん本はつながって、広がっていきます。

 

今回、娘が『冒険者たち』にハマるのを横目で見、懐かしくて再読したところ、あることに気づきました。舞台の「夢見が島」が、どこかに似てない……? そう、八丈島だ!と。あとがきまで読んで納得、作者・斎藤惇夫さんが編集者時代、『宝島』(スティーブンソン)を手がけるため、翻訳者と画家と、南洋・八丈島へ取材旅行をしたとき、野生のイタチに目を奪われたのだそうです。『グリックの冒険』に挿絵を描いた薮内正幸さんにその話をすると、穀物をネズミから守るために栃木県からつれていかれたイタチの子孫ではないかと教えてくれたそう。くわしくはあとがきを読んでいただきたいのですが、そのことをきっかけに斎藤さんの中でガンバたちとノロイ一族が動き出したとのこと。娘もハッという顔で「確かに(島に)山が2つあった、社会の教科書に載ってた!」と気づき、親子で盛り上がりました。娘が小さいときに訪れた八丈島を、“ガンバの島”として再訪したくなりました。 『冒険者たち』は雪国(新潟)育ちの作者の南へのあこがれが、ほかの作品にも、故郷の信濃川や野尻湖半の原風景が織り込まれているそうです。時を置いて、こんなふうに作品を味わい直すのも大人ならではの楽しみかもしれませんね。

 

次回は、しばらく間をおいて、ほかの児童書の文庫についても取り上げてみたいと思っています。どうぞお楽しみに。

文・構成:大和田佳世(絵本ナビライター)

編集:掛川晶子(絵本ナビ編集部)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
人気連載
JavaScriptをOnにしてください