【編集長の気になる1冊】ウソつきは治らない…?
正直な話、私はウソつきです。
いや、本意じゃないんです。何かやらかした時、咄嗟の判断で思わずウソをついて、結果的に墓穴をほってしまうスネ夫みたいなタイプなのです(スネ夫はもっとウソが上手でしたね)。ウソは嫌いですし、ウソをつくのは良くないとわかっているのに。遅刻してきて「寝坊しました」と言い放つ男子を尊敬してしまうくらい、正直者に憧れているのに……やっぱり結構ウソをついてしまいます。
「ウソつきは泥棒のはじまり」とはよく言ったもので、童話でも小説でも小さなウソの積み重ねから大きな落とし穴へと転落していくパターンがお決まりです。結果的に自分のついたウソに追い込まれていくのです。わかっているのです。
でも……一方ではこんな疑問も生まれてきます。
「ウソをつくのは本当にいけないこと?」
全部本当だらけだったら、ちょっとつまんない気もするのです。笑わせてくれるウソや、夢を見られるウソもあるからです。
使い方次第、という考えはどうでしょうか。
ほら、この絵本。
うそうさぎ
え、ちょっとうそでしょ。こんなの。
いくら耳が長いからといって、これで「うさぎ」だなんて。
だって、体中がしましまだよ。
虎模様だよ。獰猛な顔して獲物にとびかかってるよ。
体中に斑点のあるこのうさぎなんて、ひょうひょうとした表情で木の上にいるよ。
……そうなのです。
このうさぎたち、みんな「うそうさぎ」なのです。
うそはエスカレートしていきますよ。
耳は長いけど、体はかばの「かばうさぎ」。
うそじゃ!こんなうさぎ、「うさぎへび」。
だけど、不思議。耳があるだけでちっとも怖くなくなる「うさぎゆうれい」、ちょっと崇高な雰囲気すらある「うさぎだちょう」、もはやアートな「うさぎピカソ」。これは面白いことになっています。ほらほら、子どもたちだってお腹を抱えて笑ってますよ。
「うそ」も使い方次第で、こんなヘンテコリンだけど新しい世界を生み出しちゃうのです。いつもは叱られてばかりのあの子も、いつも怒ってばかりのお母さんも、知らない才能を開花させちゃうかもしれませんよ。さあさあ、大人も一緒に自分の「うそうさぎ」、作ってみよう!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
こんなウソなら、いくらでもついちゃうよ!なんて、調子に乗っている間はウソつきは治りそうもありませんね。
エンターテイメントとして楽しませてくれるウソ。これこそ、使う人の技術や才能が大きく左右してくるのでしょう。私にはまだまだ、の様です。自覚することが大事です。
そんな私の息子はどうでしょう。
「今日、勉強した?」「寝てしまいました」
「これ、美味しいでしょ?」「あんまり」
ウソはつかないタイプのようです。
「この服、似合ってる?」「すごく似合ってる、可愛い」
…いや、意外とウソを使いこなせるタイプだったりして。
「ウソ」がテーマの絵本、ほかにもありますよ。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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