スタイルトップ  >  絵本・本・よみきかせ   >   絵本ナビ編集長の気になる1冊   >   現役にはかなわない。

絵本ナビ編集長の気になる1冊

現役にはかなわない。

 

「ラララン ロロロン♪」

 

西巻茅子さんの原画展を観にきています。
彼女の代表作『わたしのワンピース』の、圧倒的で完璧なリトグラフ。私たちの知っている、あの場面、この場面が、くっきりと色鮮やかに迫ってくるので、瞬時に子どもだった頃の自分が戻ってきて、ウキウキ、ランラン歩いているのです。本当に素敵…。

 

すっかり少女気分になって、他の原画を楽しんでいると、さっきまでいた場所から可憐な声が。

 

「はなもようのワンピース わたしににあうかしら」

 

はっとして、そちらを見ると、小さな女の子が原画を見ながら、まっすぐとはっきりとした声で朗読しています。それを聞いた瞬間、私は思ったのです。

 

「ああ、現役の女の子にはかなわない!」

 

なにが?と聞かれればはっきりとした答えはないけれど。もうその絵は、完璧にその子のために輝いて見えるのです。西巻さんと女の子の心が通じ合っている瞬間を目の当たりにした、と言えば伝わるでしょうか。

 

西巻さんは最近出版されたばかりのエッセイ集の中でもおっしゃっています。「ずっと あの子たちに向けて 絵本を描いてきた」 と。ひとりひとり違う感受性を持った子どもたちに向けて、自らもかつて子どもだった頃の感覚を呼び起こしながら描き続けているのだと。発売から40年以上経った今も、この絵本は子どもたちの感性に直接よびかけ続けているってことなんです。

 

かっこいいなあ、西巻さん。

わたしのワンピース

わたしのワンピース

「まっしろなきれ
ふわふわって
そらから おちてきた」
野原で白いきれをひろったうさぎは、黒い足踏みミシンでワンピースを縫います。
「ミシン カタカタ
わたしの ワンピースを つくろうっと
ミシン カタカタ ミシン カタカタ」

目がさめるような色づかいと、ふんわりしてリズミカルな言葉が、あっというまに子どもの心をとらえます。
「ラララン ロロロン わたしににあうかしら」
お花畑をとおればまっしろなワンピースが花もようへ、雨がふってくればみずたまもようへ。
それだけではありません。草の実もようになった実を小鳥が食べにきて、小鳥もようのワンピースは空を飛んだりするんです! まるで夢のような「わたしのワンピース」!

最後はどんなもようのワンピースになったのでしょう。家族で「ラララン ロロロン」と楽しんでくださいね。
1969年の刊行当初から幼い子たちに圧倒的に支持され、今なお、輝きを放つロングセラーです。

 

(大和田佳世  絵本ナビライター)

http://www.ehonnavi.net/ehon/134/%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%AE%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%B9/

展覧会から帰る頃には、すっかり西巻さんのかっこよさにメロメロになってしまった私ですが、きっとあの女の子が発した「わたしににあうかしら」という声の響きはずっと忘れないはず。絵本とセットにして、心の中に大切にとっておこうと思います。

西巻茅子さん初のエッセイ集

子どものアトリエ 絵本づくりを支えたもの

ロングセラー絵本『わたしのワンピース』の作者、西巻茅子の初エッセイ集。幼少期の思い出や芸大卒業後にはじめた絵の教室「子どものアトリエ」、絵本作家になるまでの道のりまで作者が考え続けてきた「子ども」「絵本」「絵を描くこと」について率直な筆致で綴る。
今では代表作となった『わたしのワンピース』が発売当初は全く理解も評価もされなかったという意外なエピソードや絵本になる前のラフスケッチなど貴重な資料も掲載したファン必見の一冊。

http://www.ehonnavi.net/shopping/category.asp?n=1147

磯崎園子 (絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部

人気連載