【編集長の気になる1冊】推理する力があれば…? 『このあいだに なにがあった?』
小児科での待ち時間。
ふと横を見ると、息子がウルトラマンのフィギュアを10体ほどずらりと並べています。全員手をバンザイにさせて。しかも全員逆立ちで。
思わず心でつぶやきます。
「…なんでこうなった?」
これは2歳の頃の可愛いエピソード。
なんとなく想像はつきますよね。並べるのに夢中になって、向きを揃えてみたくなって、両腕を全部あげさせてみたくなって。なんだか物足りなくて「えいっ」と次々に逆さまにしていく。そういう「流れ」の途中なのでしょう。
小学生になっても色々なことが起こります。
疲れて早めに布団に入って寝入っている息子。布団を掛けなおそうとしてよく見ると…手錠がかかってる。(おもちゃです。念のため)
「どうしてこうなった!?」
まだまだあります。
気がつけば、顔が真っ黄色になっている。
りんごをかじりながら爆睡している。
パンツを頭にかぶっている。
お皿とおかずが全部ひっくり返っている。
家にある部活の練習着が他のうちの子と全部入れ替わっている!?
生徒手帳がどこにもない。
「どうしてこうなった!!!!!」
怒鳴りたくなります。皆さんも身に覚えがある事でしょう。
でも、ちょっと待って。
推理をしてみましょうよ。ここに至るまでに何があったのか。
パンツを頭にかぶらなくてはならなくなった重大な理由があるのかもしれない。友だちと洗濯物を交換するまでに、涙なくしては語れない友情物語があったのかもしれない。どうしてもりんごを口に入れたままじゃないと、怖い夢を見てしまうのかもしれない。失くしてしまった大事なものを探し出す、という試練を神様から与えられているのかもしれない。
「それじゃあ、仕方ないよね(笑)。」
ほら、逞しい想像力と推理力のおかげで怒らずに済み、解決に結びつけ、なおかつ笑い話にまで持っていけるのです。さすが大人です。
ということは、子どもの頃から「推理する力」を鍛えておくのは大事だってこと。ほら、こんな絵本がありますよ!
このあいだに なにがあった?
質問はとてもシンプル。写真を2枚並べて…
「この あいだに なにが あった?」
毛がもこもこしている羊と、とっても短い毛の羊。もちろん、瞬間的に変身するなんて事はあり得ません。何かが起こっているのです。
答えはわかりますよね。飼い主さんが羊の毛を刈ったのです。「あいだ」に入った写真を見れば一目瞭然です。
更に続きます。「オタマジャクシ」と「カエル」の写真。「ひっくり返ったカメ」と「起き上がっているカメ」の写真。「湯船に浮かんだおもちゃ」と「洗い場に転がったおもちゃ」の写真。
一体「あいだ」には何が起きているのでしょう。ページをめくれば、すぐに答えの写真を見ることができます。でも、ちょっと待って。推理してみましょうよ。知らないことだからこそ、想像してみましょう。経験の少ない子どもたちの方が、とんでもない答えを導き出してしまうかもしれませんよ。
この絵本は言っています。「推理する面白さと喜びを味わえる写真絵本」だと。確かに推理するという行為は、人間ならではの能力であり、人生を楽しむ醍醐味でもあるかもしれません。だったら、思いっきり味わいましょう、隠された「あいだ」を。遠回りするのは自由です。ゴールにたどり着けばいいわけですから。
…なんだか「あいだ」って、クセになりそうですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
こうやって写真で前と後だけを見比べてみると、つくづく世の中では「あいだ」に色々な出来事が起きているんだってことを実感しますよね。私たちの知らない「あいだ」、まだまだ沢山ありそうで、ゾクゾクしてきます。
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磯崎園子 (絵本ナビ編集長)
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