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【編集長の気になる1冊】あの道へ行くには…『めっきらもっきら どおん どん』

 

その日は確か、半泣き状態の息子を前かごに乗せ、私だって疲れてはいたけれど、最後の力を振り絞って自転車をこぎながら、必死に家路についていたのです。

 

保育園の帰り道、あちらへこちらへ寄り道をしてからでないと帰りたくないという息子に振り回され、体力の限界と戦う日々だったその頃。家と反対方向にある川の横の道を通り、工事現場のある場所を見てまわり、さらに違う方向へと行こうとする息子に我慢ならず、「ああ、もうママ道がわからなくなっちゃった。家に帰れないかもしれないけど、どんどん行っちゃうね」と息子をおどしてしまい、ひと悶着あってからの帰り道。

 

日も暮れはじめ、薄暗くなった道のどこをどう走ったのか、はっきりとは覚えていないけれど、ふと気が付くとそこは小さな神社の脇の道。うっすらと街灯に照らされて、突然立ちはだかるように目に飛び込んできたのは、大きな木の太い幹にあいた穴。そこから一匹の白いへびが頭を出し、どこかに消えていったのです。

 

思わず足を止め、息子と目を合わせ。
同時に叫びます。

 

「へびがいた!!」

 

それはとても神秘的で美しく。疲れていたことも相まって……。

 

「今、いたよね? 白かったよね? 
 あれは絶対かみさまだよね…!!」

 

二人で異常に興奮し、盛り上がりながら帰ったのです。

 

当然その日から「へびの木」と命名された御神木。次の日から、帰りに神社脇の道を通って確認するのがルーティンとなった訳なのですが。明るい陽射しの中で見るその木には全くそんな雰囲気がなく、幹にあいた穴さえも見つからない始末で。あれは一体……。

めっきらもっきらどおんどん

めっきらもっきらどおんどん

おかしいな、遊ぶともだちが誰もいない。
みんなどこへ行ったのかな。

歩いて来たのは、お宮の前。
かんたは、しゃくだからと大きな声で歌います。

「ちんぷく まんぷく……
 ……めっきら もっきら どおんどん」

めちゃくちゃの歌です。すると、どこかからか声がして、かんたがのぞきこんだ途端吸い込まれ、知らない世界の夜の山にたどり着いた! 向こうの方からやってくるのは、見た目も名前もへんてこりんな3人組。“もんもんびゃっこ”に“しっかかもっかか”に“おたからまんちん”。おっかない顔をしているクセに、なんだかひどく子どもっぽい。

ところが……この3人の遊びの素敵な事と言ったら。ふろしきを首に巻けば、どこへでも飛び回ることができ、たくさんの宝の玉の中から不思議な水晶玉をもらい、なわとびをすれば、山をけとばし月までひっかける!かんたは時間を忘れ、夢中で遊び回ります。そのうち疲れ果て3人が寝てしまうと、かんたは心細くなり……。

ちょっと不気味な表紙の雰囲気に「もしかしたら、うちの子には怖い絵本かな」と遠ざけてしまっていたらもったいない! なぜなら、子どもたちが夢中になる世界には、いつだってスリルが隣り合わせにいるのですから。テンポの良い文章と展開であっという間に惹き込まれ、画面を縦に横に自由自在に扱った躍動感あふれる絵の世界に、心が躍りっぱなし。絵本を読み終わり、大人だって、なんだかもうちょっとここに残っていたくなるほど。

でも大丈夫。子どもたちならきっとあの「歌」を覚えてくれるはず。そうすればいつだって、ね。ファンタジーの傑作絵本を体感する喜びを、ぜひ親子で味わってください。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/129/%E3%82%81%E3%81%A3%E3%81%8D%E3%82%89%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%8D%E3%82%89%E3%81%A9%E3%81%8A%E3%82%93%E3%81%A9%E3%82%93/

10年以上経った今では、その木を見ても何も感じない。それはそうでしょう。だって何だかとても普通の木なのです。

 

だけどあの頃の私は、再び「へびの木」を見たいと結構がんばった。わざと遠回りしてから寄ってみたり、日が暮れ始めた頃を見計らって通ってみたり。息子と一緒なら姿を現してくれるかと、連れて行くことも。あれからもう一回くらい見た気もするし、見れなかった気もする。息子はどうだったのかな。

 

でも、またいつか。忘れていた「呪文」を急に思い出す日がくるかもしれないし…なんて。通るたびにチラッと横目で見たりする日々なのです。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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