【編集長の気になる1冊】がんばってでもなりたいのは…こんな顔。『どこちゃん』
かつて私が大好きだったその友達は、目が合えば必ず思いっきり手を振ってくれ、どんなに遠くから見ても笑っているという確信が持てるほど表情がはっきりしていた。
楽しそうな時は漫画みたいに顔からキラキラした何かが出ていたし、怒っている時は気の毒になるほど可愛くない。授業中はよく白目になっていたし、好きなものを食べている時は真剣そのもの。要するにとってもわかりやすく、明るい。真顔の時だって何だか面白いのだ。
それってとっても憧れる。
一方で、何を考えているか全くわからない人もいる。何だかいつもつまんなそうにしているし、怒っているようにも見える。何か悪い事言っちゃったかなと心配をしながらチラチラ見ているけど、その人はずっと一緒にいるし帰らない。あれ、もしかして……楽しいのかな!?
そういう人の顔も目が離せない。だって不意打ちに表情が変わったり、急に笑ったり泣いたりするんだもん。嫌いじゃないし、余計観察してしまう。
要するに私は人の顔が大好きなのだ。
まばたきする時に音がしそうなほどぱっちりした目を見ているのも。
起きているか寝ているか判明できないほど小さな小さな目を観察するのも。
泣きそうな顔で笑う人も、笑っているように見えて泣いている人も。
どちらも大好きだし、気が付けば見入ってしまう。
伏し目がちな顔も、見下ろしてくるような表情も。
人の顔には、表情には、本当に様々な情報がつまっているから。
振り回される事の方が多いけれど、やめられない。
見てくださいよ、この力強い表情を。
みた瞬間に頼りたくなっちゃう。ずっとずっと年下だけど……ね。
どこちゃん
目がくりくりっとして、ほっぺが赤くて、おかっぱ頭で……笑顔が素敵! それがどこちゃん。よーく覚えておいてね。さて。
「どこちゃんの……」
「どこが かわったでしょうか?」
あ、すぐわかったよ。頭にリボンをつけてるね。
「あたり!」
かわいいね。どこかにおでかけするのかな。
「どこちゃんの……」
「どこが かわったでしょうか?」
え、まだ変わるの? そうですよ、どんどん変わりますよ。よーく観察しないとわかりませんよ。服装だけじゃなくってね、表情だってちゃんと見てくださいね。どこちゃんは感じていることがすぐ顔に出てしまうから、何があったのかまでわかるはず。あ! どこちゃん、今度はふざけだしたよ。そんなに小道具使ったら……。
子どもたちが心の底から楽しめる、そして思いっきり笑える絵本を次から次へと生み出してくれる鈴木のりたけさん。今度の主役は「かお」。基本的には「まちがい探し」なのだけれど、なぜか普通の遊びでは終わりません。どこちゃんの顔には力があるのです。気が付けば目が離せなくなって、細かい表情まで読み取って余計な詮索までしたくなっちゃうのです。可愛いなあ、どこちゃん。
おふざけもたっぷり、楽しい会話で進むから声に出して読むのも難しくありません。家族で一緒に読みながら、どこちゃんにおうちの中を明るくしてもらいましょうね! そしてお互いの顔もよーく観察して……。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
実は子どもの頃の私、心の中では「どこちゃん」と同じような顔をしているつもりだったのだ。パーンと明るくて、安定した表情。
だけど気が付けば周りの人に「大丈夫?」「眠そうだね」と心配されたり、ふと誰かのことをじとーっとにらんでいる自分に気が付いたり。思った以上に不安定な表情をしているらしいことに段々と気が付いていくのです。
でも意識すればもうこちらのもの、近づくことならできます。
みなさん、私がもしどこちゃんみたいな表情をしていたら。それは思いっきり「よそいき」であり、思いっきり「力を入れている」証拠です。
がんばってるなあ……と同情しながらそっと心の中で応援してくださいね。
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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